■メンター制度とは

「メンター(Mentor)」とは仕事上、または人生における指導や助言を行う人を指す言葉です。

 

このメンターと呼ばれる役割を担う人が、「メンティ(Mentee)またはプロテジェ(protégé)」と呼ばれる被指導者に助言を行うのが「メンター制度」です。

制度の内容の捉え方については企業ごとに若干異なりますが、一般的には指示・命令に基づく指導ではなく、助言や対話を通じ、メンティに自発的・自律的な成長を促す指導方法として流布しています。

 

また、メンターの役割を担うのがメンティの直属の上司・先輩ではなく、別の先輩社員や他部署の社員が担当するケースが多いのも特徴です。

メンティと関係が薄い社員が指導を担当するのには、仕事や人間関係、キャリア形成における悩みを打ち明けやすくするという意図があります。

 

この制度は1980年代のアメリカが発祥と言われています。

日本でもバブル崩壊以降、従来の終身雇用や年功序列といった人事制度が徐々に改められる中で、社員のメンタルヘルスが重視され、社員の悩みや疑問の解消を目的のひとつに掲げるメンター制度に注目が集まるようになりました。

 

 

■なぜメンター制度が必要なのか

(1)若手社員の成長と定着率の向上

メンターがメンティの悩みや課題を聞きつつ、自身の成功体験を交えた助言を行うことで、メンティは自分のキャリアに関するビジョンを描けるようになります。

メンターをロールモデルとして仕事のやりがいを感じてもらえれば、メンティのモチベーションは上がり、定着率向上にも繋がっていきます。

 

(2)メンター自身の成長にも繋がる

メンティを通して、メンターも自身のキャリアや仕事内容を振り返ることができます。

「自分も後輩の相談を受けたり、指導をしたりする立場になった」という自信を持つことにも繋がり、新たな気持ちでキャリア形成を考えられるようになるでしょう。

 

(3)人材育成を重視した風土の醸成

メンター・メンティの関係で結ばれた社員が増えていけば、企業全体に人材育成の重要性が浸透していきます。

今メンティとして指導を受けている社員が次代のメンターとして後輩の指導に当たるという好循環が生まれれば、社員を大切にするという風土を若い世代に継承することができます。

 

このように社員個々人の成長と定着率の向上だけでなく、企業を永続的に維持していく上でも、メンター制度の必要性は高まっているのです。

 

 

■メンターに適した人物像

メンティの直属の上司・先輩がメンターを務めるわけではないため、メンターは他部署の社員の中から慎重に選ばなければなりません。

メンティの悩みに応えつつ、キャリア相談なども行う必要があることを踏まえ、ある程度の社歴を経た社員に任せましょう。

しかし、年が離れすぎると気軽に相談しづらくなってしまうため、入社3~5年が適当です。

 

メンターに適した人物像として挙げられるのは面倒見が良く、後輩の教育に関心がある人ですが、それ以前にメンターとメンティのマッチングを必ず意識するようにしましょう。

優秀なメンティにはトップの成績を収める社員をメンターにしたり、女性としての働き方を重視するメンティには育休から復帰した社員をロールモデルとしてメンターにしたりするなど、メンティの仕事に対する考え方、能力などを踏まえた上でアサインすることが重要です。

 

 

■メンターの導入法や上手く運用するためのポイント

・運用ルールを定める

制度導入の際にまずすべきことは、運用ルールを定めることです。

最低限、「メンタリングの際に話し合われた内容は口外しない」「不都合が生じた際の相談窓口を設ける」「メンタリングは原則終業時間内に留めること」といった内容を周知徹底しておき、そこからメンタリングを行う期間、面談の頻度などを細かく定めていきましょう。

 

・メンターへの指導、研修を実施

メンティの指導だけでなく、メンターを対象にした指導・研修も必須です。

メンティの成長を担う重要な役割であることを自覚してもらいながら、メンターとしての心構えや基礎知識、対話の方法を人事部主導でレクチャーし、メンターが自信を持ってメンタリングできるようサポートしていきましょう。

 

・メンタリング内容は記録に残す

実際に行われたメンタリング時の相談内容はワークシートなどに記録し、次回面談を行う際の参考にしましょう。

ワークシートの内容を、制度を推進する人事部などとも共有していけば、メンター・メンティ双方へのフォローアップも可能になります。

メンタリングの期間が終了したら合同報告会を催し、記録したワークシートやアンケートの内容を集計・分析し、次回のメンタリングに活かすことで、徐々にノウハウを積み重ねていってください。

 

■まとめ

上記で述べたルールの策定や新しい仕組みづくりはもちろん重要ですが、制度実施における最大のポイントは、制度に携わるメンターや人事部の「熱意」と、メンティに対して親身になる姿勢です。

 

当事者に人材育成への熱意がなければ制度は形ばかりのものになってしまい、企業の風土として根付くことはありません。

若手社員を長く定着させ、永く企業活動を続けていくという明確な意志を持って、制度に取り組むことが何より重要なのです。

 

人材育成への覚悟と、様々な創意工夫を求められるメンター制度ですが、社員の定着を図る手段としては非常に効果的です。

この機会に、貴社でも検討されてはいかがでしょうか。