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■コンピテンシーとは

コンピテンシー(competency)は元々「資格」「能力」といった言葉に訳される英語ですが、「職務で一貫して高いパフォーマンスを発揮する人の行動特性」という意味もあり、今回は後者の意味で扱います。

 

「業務遂行能力が高い人には、何かしら共通する考え方や行動の特徴がある」という考えに基づいていますが、学歴や優れた専門性などの目に見えやすいスキル・資格とは明確に区別され、他の人とは異なる行動の特徴――

例えば、コミュニケーション力やスケジュール管理能力、仕事への積極性などを着眼点としています。

 

このコンピテンシーを実務で活用するためにモデル化されたものが「コンピテンシーモデル」です。

高い実績を収めている人材の共通項を明文化できれば、他の従業員もそのモデルに沿って業務を遂行し、高いパフォーマンスを上げられる可能性があります。

採用活動を行う際、モデルに沿って採用すれば社内の風土に合ったハイパフォーマーを採用しやすくなります。

 

上記のような理由から、コンピテンシーは組織の生産性を高められる要素として、人材開発の分野で注目を集めています。

 

 

■活用のメリット~評価と採用時~

行動特性を分析することで具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。

評価制度と採用活動の両面からメリットを見てみましょう。

 

【評価基準の明確化】

前項でも述べた通り、社内で活躍している従業員の行動特性をモデルとする評価基準を作ることができれば、具体的な評価制度を定める指針となります。

評価基準が明確になることで、従業員も「コンピテンシーモデルに近づくことで評価が上がる」と、高いモチベーションを保ちつつ仕事に取り組むことができます。

 

【採用基準の刷新】

職歴や専門性、資格の有無などを基準に採用活動を行うのが従来の方法ですが、実際に現場に入ってみると既存の従業員とのコミュニケーションが上手くいかないことや、勤務態度が思わしくないというケースも見られます。

 

しかし、コンピテンシーモデルを採用基準に据え、「高いパフォーマンスを上げるために必要なコンピテンシーが応募者に備わっているか」を判断することで、成果に直結する人材を採用しやすくなります。

 

 

■導入方法

資格や経験と異なり、コンピテンシーは従業員の性格や志向に依る面が大きく、評価基準が曖昧であるという指摘もあります。

恣意的な評価を行うことがないよう、人事政策研究所代表の望月 禎彦氏が提唱する「3ステップ方式」を挙げ、導入方法の具体例をご紹介します。

 

(1)コンピテンシーの選定

社内独自のコンピテンシーと思える要素を数十個挙げた上で、それらをトランプ大のカードに落とし込みます。

選定に参加した従業員はいくつかのグループに分かれ、「仕事ができる人の行動だ」と思うカードを一人5枚選びます。

選び終わったら今度はグループ内で5枚に絞り込み、最終的には他のグループを交え、さらに5枚まで絞ります。

 

(2)コンピテンシーに対応する行動の明記

例えば「ユーモア=その場を和ませるような雰囲気づくりができる人」など、行動特性に対応する具体的な行動内容を、付箋に書いて貼っていきましょう。

 

(3)行動内容のまとめ

模造紙を用意し、付箋に書かれた行動内容をグループ化して貼っていき、見やすい形に構造化してまとめましょう。

見やすくすることが社内にコンピテンシーモデルを広める第一歩です。

 

 

■注意点~アップデートの必要性~

コンピテンシーモデルに沿った評価制度、採用活動の実施が企業の生産性を高めるというお話をしてきましたが、組織や事業によってモデルとすべきコンピテンシーは大きく異なることを念頭に置いておく必要があります。

場合によっては部署の違いでもコンピテンシーが異なってくることもありますので、自社の事業環境の特徴を充分に理解した上で、行動特性を分析していきましょう。

 

また、「一度コンピテンシーモデルを定めたらずっとそのまま」というわけにもいきません。

社会や市場の変化に応じて企業の体質も変化していかなければならず、それに伴ってコンピテンシーモデルのアップデートを求められることもあるでしょう。

トレンドの移り変わりに沿わないコンピテンシーは逆に生産性を低下させる可能性もあります。

放置はせず、常に時勢や企業の目指す方向性に最も合ったコンピテンシーを取捨選択し、モデルの再構築を行っていきましょう。

 

 

■まとめ

「自社の商品やサービスに精通しているにもかかわらず、営業成績が振るわない」「対して商品・サービスの知識は平均的だが、多くの受注を獲得できている」

営業の現場でしばしば起こり得るこうした状況に答えを出し、新たな評価基準・採用基準として昇華できるメリットを持つのがコンピテンシーです。

 

「冷静さ」「几帳面さ」など、漠然とした要素を扱うものであり、導入にあたっては注意が必要です。

しかし正しい行動分析を行い、活躍が見込めるコンピテンシーが社内に行き渡れば、全社的な生産性の向上、企業の活性化を図ることができるでしょう。

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