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リモートワークが浸透すると同時に、在宅で働く従業員が抱える孤独が取り上げられるようになった。だが、オフィスが再開し、以前のように対面交流が可能になれば、従業員の孤独が改善されるかといえば、そうではない。実はコロナ前から、職場の孤独は深刻化していたと筆者は指摘する。従業員の孤独を和らげ、職場に質の高いつながりを構築するには、心理的安全性に基づいた仕組みと手法を整備する必要があるという。本稿では、職場の孤独に悩む従業員をサポートし、同僚間の人間関係を深化させるために考慮すべき5つの要素について概説し、具体的な解決策を論じる。


 コロナ禍で従業員の孤独が高まったことを受け、ほとんどの企業が今後の働き方を考えるにあたり、従業員のウェルビーイングを最優先課題としてとらえるようになった。孤独は健康問題をもたらす可能性があるだけでなく、生産性を低下させ、離職率の増加につながり、燃え尽き(バーンアウト)を引き起こすことを企業は知っている。

 JPモルガングーグルのように、すでに出社勤務の再開を宣言した企業もある。対面交流の増加は、仕事のある側面に関しては有益かもしれないが、だからといってそれだけで従業員間に強力な絆が生まれるわけではない。

 仮に対面交流だけで絆が生まれるなら、ソーシャルディスタンシングの必要性からリモートワークに移行する前の段階で、筆者がINSEAD教授のマーク・モーテンセンと共同で行った研究で、従業員が高い割合で孤独を感じていることが示されることはなかっただろう。

 職場への復帰がどのような形になるにせよ、従業員間に質の高いつながりを築くには、心理的安全性に基づく一連の仕組みと手法を整備する必要がある。そこで考慮すべき5つの重要な要素を紹介しよう。

 ●見えない敵を探す

 自分が孤独であることを吹聴して回る人はいない。チームメンバーであることやネットワーク構造、あるいは外向性レベルといった客観的な基準を持ってしても、孤独を感じている人を発見できないことが多い。

 職場の孤独とは、「私のことを本当にわかってくれる人はいないし、いざという時に私をサポートしてくれる人もいない」という、完全に主観的かつ内面的な感覚だ。孤独な人は、他者との間に表面的なつながりしか感じられない。友好的な関係だとは思うかもしれないが、真の仲間意識は得られないのだ。

 本人が、自分は孤独だと認識していない場合もある。たとえば、あるエグゼクティブが最近、仕事のモチベーションに問題があるようだと、筆者のところに相談にやってきた。

「昨年の夏に転職した時は、製薬業界で仕事ができることを楽しみにしていた」と彼は言った。「でも、半年経ったいまは、まったくやる気が出ない。この業界もこの仕事も、自分が思っていたほど好きではなかったようだ。だから、別の仕事を探そうと思っている」

 何が問題なのか一緒にひも解いていくと、彼のモチベーションが低下し、関心が薄れている理由は、仕事の内容とはまったく関係ないことがわかってきた。すべての問題は、仕事を遂行する際の社会的コンテクストにあったのだ。

 彼が所属する小さなチームは、大きな事業部門に組み込まれているため、毎日同僚との会議が開かれるなど、表向きは組織内のつながりが数多くあった。にもかかわらず、彼は誰とも真のつながりを感じていなかった。筆者とともに振り返って初めて、職場で社会的な充実感を得られていないことに気づいたのだ。