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定年後に「新天地」で挑戦する高齢者 中小企業の支援で新たな生きがい見つける70歳の働く場(1/5 ページ)

» 2021年07月28日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]

 高年齢者雇用安定法が改正されて、企業は4月から70歳までの社員の就業機会を確保するよう努力しなければならなくなった。企業にとっては継続雇用と定年延長・廃止に加え、個人事業主として業務委託契約を結ぶなどの対応を迫られている。

 形の上では高齢者の雇用拡大につながる一方、組織の高年齢化が進み、会社としての活力が低下するリスクがつきまとう。働かざるを得ない中高年層が増え続ける中で、企業の「お荷物」にならない「70歳の働く場」を考えてみた。

「70歳の働く場」とは?(以下写真提供:ゲッティイメージズ)

増える中高年労働者

 厚生労働省が発表した2020年版厚生労働白書にある労働力人口の推移によると、18年に6830万人でピークをつけてからは人口減が続く。18年の年代別では、15〜29歳が1140万人で16.7%、働き盛りの30〜59歳が4275万人で62.6%、60歳以上が1414万人で20.7%。これが40年になると、30〜59歳が3417万人と大幅に減少して55.2%になる。

 一方で、60歳以上は29.6%の1830万人に急増すると推計している。つまり若手、中堅の労働人口が減少して、働き手4人に1人以上は中高年になり、その世代に頼らざるを得なくなる。中高年労働者は今後、日本経済にとっては欠くことのできない労働力となるのだ。

退職者を全て抱えるのは無理

 一昔前ならば、60歳くらいで定年を迎えると、あとは余生を悠々自適というのが通常だったものの、いまはそうはいかない。寿命が延びて「人生100年時代」と呼ばれる中で、年金だけでは心もとなく、生活の足しになるものも欲しい。19年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書をきっかけに「老後2000万円問題」が大きな話題になった。余生を経済的に不安なくすごすためには、定年以降もある程度の期間は働かざるを得ないのが実態だろう。

 実際にいくつかのアンケートをみても、健康である限りは70歳くらいまでは働きたいという希望が強い。その場合に選択肢として、今まで働いていた会社で働き続けるか、全く別の会社で働くかの道がある。

 毎年35万人から40万人が定年で退職しているが、このうちの希望者を働いていた会社やその関連会社だけで抱えるのは無理がある。かつては下請け企業に退職者を押し込められたが、いまではそうしたことは好まれない。会社で仕事が見つかったとしても、一部の才能のある人を除いては自分のキャリアを生かしたものはほとんどない。補助的な仕事が大半で、デジタル化などの変化に追い付けないシニアは、現役世代から“厄介者扱い”されがちだ。

 この法律が成立する前後にメディアでは、企業が70歳まで働く場を用意した事例がいくつも報告されたものの、モチベーションを高く持って働ける場は限定されるケースが多い。公的な職探しには「ハローワーク」があるが、求人の大半は案内や警備業務など単純作業が多く、キャリアを生かした仕事は見つけにくいのが現実だ。

「老後2000万円問題」が大きな話題になった
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