
いわゆる人手不足と言われる昨今、ジョブ型人事の導入や初任給アップなど若い人材の獲得競争が激しさを増している。だが、会社や職場は、どれほど若者のホンネを理解しているだろうか。若者の「転職」と「出世(管理職への昇進)」に関する本当の意識を2回に分けて探っていく。
(児島 功和:パーソル総合研究所・研究員)
若者にとって転職は“ありふれた”選択肢
若者はどの程度転職しているのであろうか。パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」のデータによれば、2024年時点で学生アルバイトを除く20代の有業者(以下、この定義をもって「若者」とする)の転職経験率は約4割であった。転職経験者のうち転職回数が1回の若者は約6割、2回以上の若者が約4割となっている。
このように多くの若者が転職を経験しており、若者にとって転職はキャリアのなかで“ありふれた”選択肢となっている。
若者は転職を肯定的に捉えてもいる。先ほどの調査では、転職に対して「積極的にしていくほうがよいことだ(A)—できれば避けたほうがよいことだ(B)」という選択肢を提示して、AとBどちらに自身の考えが近いかを答えてもらった。
若者がAと回答した割合は約7割。「総合的に見てよいことだと思う(A)—総合的に見て悪いことだと思う(B)」という選択肢では、Aの回答率が約8割に達していた。数値は省略するが、上記2つの選択肢に対するA回答率(転職に対する肯定的回答率)は、他の年代(30~60代)よりも20代のほうが高かった。
現代は不安定さが常態化した時代とされている。そうした中、企業は若者に対しても、キャリアを会社任せにするのではなく自らの手で積極的に切り拓いていく姿勢、いわゆるキャリア自律を求めるようになっている。上述したような若者の転職に対する“積極性”を見ると、若者は今の時代によく適応し、キャリアに関する意識も高く、積極的にキャリアを追求する過程のなかで転職を選んでいるように見える。
しかし、若者に転職を決断させるのは、本当にそのような「キラキラ感」があるポジティブな理由からだろうか。若者の転職に関する実態を詳しく見ていくと、どうもそうとは言い切れない。
再び「働く10,000人の就業・成長定点調査」の結果から見てみよう。