良い雰囲気の職場と、悪い雰囲気の職場の違いは何か。人材育成メソッド「ほめ育」の開発者で、経営コンサルタントの原邦雄さんは「上司の何気ない言葉が、部下に大きな影響を与えることがある。ある企業では、新入社員がすぐに辞めてしまうことが問題になっていたが、原因は上司のある口癖だった」という――。
失敗した部下にどう声をかける?
職場の雰囲気は、上司が発する言葉で大きく変わります。例えば、部下が失敗したときに「チャレンジしてくれてありがとう。どうすれば次はうまくいくか、一緒に考えよう」と前向きな言葉をかければ、部下は安心して自分のミスや原因と向き合えます。結果として、改善のための行動が増え、職場全体に活気があふれます。
一方で、失敗したときに「なぜこんなミスをしたんだ!」と鋭く問い詰める言葉ばかりをかけていると、どうでしょうか?
部下は「また怒られるのでは」と構えるようになり、自分のミスを報告することに消極的になります。後ろめたさから働くこと自体が苦痛になり、職場全体にも重たい空気が漂い始めるかもしれません。
キツイ言葉が飛び交い、社内がギスギス
私が提唱する「ほめ育」を導入して10年になる「株式会社サンパーク」(大阪府吹田市)。全国で「びっくりドンキー」「丸源ラーメン」「髙木珈琲」「豚骨火山ラーメン」などの飲食店を100店舗以上展開し、売上は140億円(2025年3月期・グループ全体)と好調。社内の人間関係も良好です。
しかし導入前は、店舗によってアルバイトスタッフの定着に大きな差が出ており、業績にも大きな差が出ていました。当時は「結果主義」「営業至上主義」が根付いており、数字を達成できない店長はさらに厳しい言葉を部下にぶつけるのが当たり前。店内はギスギスした雰囲気が漂っていたといいます。
新しいバイトが入っても続かず、多くは半年以内に退職。なぜ、ここまで定着しないのか? 原因を探ったところ見えてきたのが、“上司の何気ない口癖が、職場の空気を悪くしている”という事実だったのです。