派遣が途切れた空白期間にリスキリング支援 派遣社員の賃金がアップ、正社員化も
リスキリングプレーヤーズエヌエフエーは派遣登録者へのリスキリング研修に力を注ぐ
企業で研修を受けられる正社員に比べ、リスキリングの機会が少ない派遣社員のリスキリングや雇用の安定に取り組むエヌエフエー(東京・大田)。リーマン・ショック後の「派遣切り」を機に、「派遣社員が安心して働け、スキルアップをして次の派遣先に行けるシステムを作りたい」と「エヌエフエー式PEO(Professional Employer Organization、習熟人材雇用組織)モデル」を構築した。大崎玄長社長に、取り組みの意義や手ごたえを聞いた。
――「PEOモデル」とはどんな仕組みですか。
エヌエフエーの大崎社長
「PEOモデル」は米国などで普及している雇用の形態で、人材会社がクライアント企業の人材管理や教育を代行することで、人材会社とクライアント企業が働く人の共同雇用主となるモデルです。これにより、採用されていた人材がクライアント企業で働けなくなっても、人材会社を通じて別の企業で働くことが可能になり、「失業なき労働移動」ができると注目されています。
弊社が採用している「エヌエフエー式PEOモデル」では、登録スタッフは派遣期間が終わって次の派遣先で働き始めるまでの間、弊社で働いて収入を得ながら新たなスキルを身につけています。
たとえば、弊社内にあるコールセンターやデータセンターでは、常時40人ほどの登録スタッフを受け入れています。A社への派遣期間が終わった後、B社への派遣期間が始まるまでの2週間は、弊社のコールセンターで働く、といったスタイルです。
ほかにも、パソコンやプログラミングを学べ、マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(MOS)の資格も取得できるキャリアスクールも運営しているので、派遣社員に求められることが多いスキルを幅広く学ぶことができます。
派遣切り対策で社内にコールセンター
――「PEOモデル」を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
弊社は2006年の設立以来、登録スタッフを企業に派遣する事業を続けてきました。いわば一般的な人材派遣業です。しかし、08年9月、リーマン・ショックが起こると一気に派遣切りの波が押し寄せました。派遣先で働いていた100人のうち、2カ月後も残っていたのは40人だけ。派遣会社が派遣社員を守ることは大事だと改めて実感し、派遣社員の雇用の受け皿を作ろうと10年、社内にコールセンターを設けました。登録スタッフには、外部のコールセンターに派遣されるまでの研修と、賃金を受け取れる仕事を兼ねた形でリスキリングしてもらいました。
さらに、派遣先の地域を集中させることも意識しました。私たちが「この会社では派遣の仕事がなくなってしまったけれど、別の地域では仕事がありますよ」と言っても、派遣社員として働く人は家庭の事情や趣味を優先しているケースも多いんです。徒歩や自転車で通勤していた人がいきなり電車で2時間もかけて通勤するのは現実的に難しく、働く場を失ってしまう人を多く見てきました。でも、派遣先の場所が隣の駅に変わるくらいなら、登録スタッフもスムーズに移ってくれました。そこで、地元の大田区に派遣先を集中させる戦略をとることにしました。
このように、派遣と派遣の間でのリスキリングと雇用の継続、そして派遣先地域の集中を実現し、派遣社員が安心して働けるようになったことで、弊社に登録して働く方々は7年で10倍以上に増え、現在その数は約1500人にのぼっています。
――派遣社員の方がリスキリングした上でキャリアアップした事例を教えてください。
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