Slack Japanは11月12日、オンラインイベント「Slack Tour Japan Online」を開催した。本稿では、Slackで変革する働き方をテーマにした基調講演を紹介する。

新しい働き方に求められる3つの軸

まず、はじめに登壇したのはSlack Japan 日本法人代表の佐々木聖治氏だ。同氏は、グローバルで調査したコロナ禍においてリモートワークが抱える課題について触れ、日本では『仕事における帰属感』と『生産性』のスコアが著しく低い結果となり、リモートワークにより会社や組織とのつながり・一体感が薄れ、生産性も低下したという。

  • Slack Japan 日本法人代表の佐々木聖治氏

    Slack Japan 日本法人代表の佐々木聖治氏

佐々木氏は「在宅勤務の実施は17%にとどまり、グローバルで最も低い数字だ。日本では、リモートワークそのものが進んでいないことが改めて浮き彫りになった。リモートワークを進めていた企業でも最近ではオフィスへの出社回数を増やしているが、変化の時代に最適な選択肢だと言えるだろうか?ニューノーマルの時代には、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドな職場環境が当たり前になると言われている。仕事における帰属感と生産性の低下などの課題を解決し、新しい働き方を再構築することが不可欠になる」と述べた。

そこで、同氏はニューノーマル時代に求められる新しい働き方に関して3つの軸を挙げている。1つ目は物理オフィスに代わる職場としてデジタル上の職場という概念を取り入れることで、つながりとエンゲージメントを高められるとしている。

2つ目は、非同期コミュニケーションを増加させ、働く時間・場所を問わずにコミュニケーションが取れることが生産性の向上に不可欠であることに加え、3つ目は社員やが外部取引先となる顧客、パートナー、業務システムの3つの要素をセキュリティを担保したチャンネルベースのプラットフォームに統一することで、変化が激しい環境でも組織のスピードを保った状態で目標に向かって各社員の足並みを揃えることができるという。

  • 新しい働き方の3つの軸

    新しい働き方の3つの軸

同氏は「この3つの軸を持つ組織は社員全員が目標に向かって足並みが揃い、高い生産性とスピード感を持ってビジネスの成果を出すことができる。これらを新しい働き方として取り入れるべく、昨今では経営層が採用を判断する事例も多くなっており、Slackの導入企業は業種・規模を問わず広がっている」と説明する。

日本は、国に次いで世界2位の市場であり、順調に成長を続けているという。2020年2月~7月において収益は前年対比82%、有料ユーザー数は同81%の成長率となっており、複数の組織とのコミュニケーションを可能とするSlackコネクトは有料ユーザーのうち利用している割合が同151%の増加となっている。佐々木氏は「日本のユーザーにSlackが広く受け入れられ、社内だけでなく社外とのコミュニケーションにメールやチャットツールの代わりに利用が広がっていることの表れだ」と強調した。

  • 2020年上半期は順調に成長したという

    2020年上半期は順調に成長したという

全社導入したソフトバンク - 5万アカウント

続いて、ソフトバンク 代表取締役執行役員兼CEOの宮内謙氏が登壇。宮内氏は「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い大きなデジタル革命が始まり、デジタルコミュニケーション、デジタルオートメーション、デジタルマーケティングの3つの革命が本格的に進んでいる」と話す。

  • ソフトバンク 代表取締役執行役員兼CEOの宮内謙氏

    ソフトバンク 代表取締役執行役員兼CEOの宮内謙氏

同社ではデジタルコミュニケーションを加速させるため、10月にSlackの全社導入を開始し、従業員などを対象に国内最大規模となる5万アカウントの導入を予定。同氏は「社員全員がSlackによりコミュニケーションの精度を向上させ、迅速なコミュニケーションで業務を加速している」という。

  • ソフトバンクでは国内最大規模となる5万アカウントの導入を決定した

    ソフトバンクでは国内最大規模となる5万アカウントの導入を決定した

同社の活用例としては、トップの考えを全社員に浸透させるためのトップメッセージ、組織を横断した活発な意見交換を行う「アイディア交換」、全国におけるiPhone12の販売状況を集約させる「iPhone12の販売報告」、AIが瞬時に問い合わせに回答する「社員サポート窓口」、獲得実績をRPAで毎時配信する「営業への実績配信」、おいしい飲食店を社員で共有する「おすすめランチ」を挙げている。

これらの社内事例を踏まえ、宮内氏は「現在、グループ内ではソフトバンクとヤフーを中心に活用しているが、今後はZOZOやGrabなど世界中のグループ社員が活用し、シナジーを創出していく。全社統一でシステム部門を中心にSlackを活用し、各部門ごとにSlackに詳しいアンバサダーを設けるなど、本格的に社内で徹底活用している」と力を込めていた。

社長専用チャンネルで交流を持つ日本IBM

最後に、佐々木氏との対談形式で日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏が事例を紹介した。IBMではグローバルにおいて全社利用しており、35万アカウントを導入している。同氏は「世界中のIBM社員がコラボレーションツールのプラットフォームとして、Slackを活用している。事業部、プロジェクト、イベント単位とさまざまな切り口で利用している」と説明した。

  • 日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏

    日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏

日本法人では、山口氏自身が社員とのコミュニケーションを図るための専用チャンネル「#yamaguchi-channel」を作成し、インタラクティブなコミュニケーションを行っている。また、4月にデジタル入社式を実施した際は、Slackで先輩社員からの応援メッセージを受け付け、新入社員からの評判も良かったという。

さらに、業務効率化の取り組みとして専門用語に回答するチャットボットのほか、従来は30分かけて故障した製品を解析して部品在庫の有無を確認した上で発注していたが、Slack上で障害の情報を入力して在庫情報を確認・オーダーするインタフェースを作成し、5分に短縮させている。

そのほか、ITシステムが複雑性を増していることから障害防止などが困難になっていることから、障害事前検知や障害発生時の対応策などを分析し、レコメンデーション・指示するWatson AIOpsの機能をSlackと連携させて通知する仕組みを構築しており、年内には提供開始を予定している。

  • Watson AIOpsとSlackが連携する

    Watson AIOpsとSlackが連携する