休職したときに給与が支払われるかどうかは、会社の就業規則でどのように定められているかによります。一般的には無給になることが多いため、経済的不安を少しでも減らすためにも正しい知識を得る必要があります。この記事では、休職と休業の違いや利用できる公的制度について解説します。

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■休職とは

休職とは、労働者が病気やケガなど、主に自己都合により長期間仕事を休むことを言います。雇用契約を維持したまま、労働の義務を免除されている状態です。

【休職の種類】

休職にもその事由により、さまざまな種類があります。

業務外の病気やケガによる休職

業務とは関係のない病気やケガにより長期間仕事を休むこと

業務上の病気やケガによる休職

通勤中や業務時間中の災害により長期間仕事を休むこと

出産・育児休職

出産や育児により長期間仕事を休むこと

介護休職

家族の介護により長期間仕事を休むこと

依願休職

自己啓発のための留学や研修、ボランティア活動などにより長期間仕事を休むこと

【欠勤との違い】

法律上の明確な定義はありませんが、休職と欠勤の違いは労働義務の有無にあります。

休職は労働義務が免除されていますが、欠勤は労働義務が免除されているわけではありません。つまり、欠勤は本来働く義務があるもののその義務を果たしていない状態といえます。

■休職中に給料や手当はもらえる?

会社都合で仕事を休む場合、労働基準法では平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない、と定められています(労働基準法26条)。

ただし、自己都合で仕事を休む場合、給与等の支給については法的な決まりはなく、原則、労働していない場合は会社に給与の支払義務はありません。

休職制度を設けるかどうかは会社が自由に決めることができます。休職制度を設ける場合は、就業規則に記載します。就業規則に記載されると労働契約の一部となり、会社側は従業員に休職制度を適用することが義務付けられます。

■業務外の病気やケガで休職するときは傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

【もらえる条件は?】

業務外の病気やケガで療養中であること

業務上や通勤途中での病気やケガは労働災害保険の対象となります。

療養のため労務不能であること

労務不能かどうかは、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を考慮して判断されます。

4日以上仕事を休んでいること

療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間(待期期間)を除いて、4日目から支給対象となります。つまり、連続して4日以上休まないと支給対象とはなりません。

給与の支払いがないこと

給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。

以上の条件をすべて満たすときは、傷病手当金を受けることができます。ただし、対象は健康保険の被保険者のみとなります。健康保険の扶養に入っているパート勤めの方などは対象とはなりません。

【もらえる額は?】

傷病手当金の1日あたりの支給額は、直近1年間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3で計算されます。

たとえば、標準報酬月額の平均が31万円の場合、傷病手当金の支給日額は6,887円になります。ご自身の標準報酬月額は給与明細やねんきん定期便などで確認できます。

傷病手当金には所得税や住民税はかかりません。ただし、傷病手当金を受け取っている期間も休職前と同額の保険料を支払う必要があります。

【いつまでもらえる?】

傷病手当金の支給開始日から通算して1年6カ月に達する日までが支給対象となります。支給期間中に途中で働くなどして、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6カ月を超えても、支給期間が1年6カ月に達する日までは支給されます。

出典:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます

【休職中に給与が発生したらどうなる?】

傷病手当金支給の条件には、「給与の支払いがないこと」とあるので、休職期間に給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。 ただし、休職期間に給与の支払いがあっても、その給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

■業務上の病気やケガで休職するときは休業(補償)給付

業務上や通勤途中での病気やケガで休職するときには、労災保険から休業(補償)給付が支給されます。

【もらえる条件は?】

・業務上や通勤途中での病気やケガで療養中であること
・療養のため労務不能であること
・4日以上仕事を休んでいること
・給与の支払いがないこと

以上の条件をすべて満たすときは、休業(補償)給付が支給されます。

労災保険は、原則として一人でも労働者を使用する全ての事業者が加入する義務があります。パートやアルバイトなど雇用形態を問わず、支給の対象となります。

【もらえる額は?】

休業(補償)給付金は1日あたり、給付基礎日額(*)の80%(休業(補償)給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます。 休職期間に給与の支払いがあった場合、その日の給付基礎日額から実働に対して支払われる賃金の額を控除した額の80%(休業(補償)給付60%+休業特別支給金20%)に当たる額が支給されます。

休職期間の3日目までは待期期間となり、休業(補償)給付の対象とはなりません。ただし、3日目までは労働基準法により、事業主が休業補償をする義務があります。

*給付基礎日額は、原則として事故発生日以前3カ月に支払われた賃金(複数事業労働者は複数就業先の賃金の合計)の総額をその間の総暦日数で割ったもの。

【いつまでもらえる?】

支給の要件を満たす限り、休業4日目からその期間中支給されます。

病気やケガが1年6カ月を経過しても治らない場合、傷病等級表の傷病等級に該当すれば、休業(補償)給付に代わって、給付基礎日額の313日~245日分の傷病(補償)年金が支給されます。

【うつ病で休職した場合はどうなる?】

労災に認定される病気には、うつをはじめとする精神障害も含まれます。 厚生労働省によると、令和2年度の精神障害の労災請求件数は2051件。そのうち、支給決定件数は608件で、認定率は31.9%となっています。

参考:厚生労働省「令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

労災保険の休業(補償)給付は、健康保険の傷病手当金と比べると補償が手厚くなります。精神障害で休職した場合、治療が長引くことが多いので、休業(補償)給付が受けられると経済的な不安を減らせます。 ただし、労災認定されるには、発病した精神障害が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限られます。

■他にもある! 休職中に利用できる公的制度

【出産手当金】

出産のために仕事を休むときには、健康保険から出産手当金が支給されます。 出産手当金は、出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で休職し、給与の支払いがなかった期間に支給されるものです。

出産手当金の1日あたりの支給額は、直近1年間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3となっています。

【育児休業給付金】

育児のために仕事を休むときには、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。育児休業給付金は、子供が1歳に達する日の前日まで、もしくは、子供が1歳を迎える前に職場復帰をした場合は復帰の前日までが支給期間となります。

ただし、子供の預け先が見つからないなど一定の要件を満たした場合は、最大で1歳6か月又は2歳となった日の前日まで受給できる場合があります。

育児休業給付金の1日あたりの支給額は、休業開始時賃金日額の2/3(育児休業開始6カ月経過後は1/2)となっています。

【介護休業給付金】

家族の介護のために仕事を休むときには、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。目安としては、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するときに介護休業を取得できます。 対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休みが認められます。

介護休業給付金の支給額は、休業開始時賃金月額の67%となっています。

■まとめ

休職制度は法的に規定されている制度ではありません。とはいえ、就業規則で休職制度を設けている会社も少なくないので、まずは勤め先の就業規則を確認しましょう。 様々な理由で働けなくなったときには、公的制度で給付金が支給されます。利用できる制度を理解し、収入減少に事前に備えておけると安心です。