「社内政治」という言葉に、ごまかしや裏切り、上司に媚びへつらいといったイメージを持つ人がたくさんいます。

不公正の臭いがするうえ、ほとんどの場合は職場の暗部を指すものとして使われている言葉です。多くの社員は、関わり合いになることを真っ向から拒むか、目立たないようにしつつ自分の仕事を全うし、揉め事は避けようと心に決めています。

しかし、このような態度には問題もあります。社内政治に対するこのような見方は中途半端であり、避けていることによって実はキャリアに傷がつくかもしれないのです。

社内政治をもっと大きな文脈で理解し、自然かつ予測可能な仕事の一面として受け入れれば、誰もがメリットを得られます。今回はそのヒントをご紹介します。

1. 社内政治を理解する方法

このような仕事の側面に嫌悪感を抱いているのであれば、理解を深めてみると良いでしょう。『Organizational Behavior』には、次のような定義が出てきます。

「組織内政治とは、アイデアを売り込む、組織に影響を与える、権力を高めるなどの目的を達成するための非公式で非公認、時には舞台裏での努力のことである」。

この定義が中立的であることに注目しましょう。

このような努力がどのように「行なわれる」かが、その良し悪しを決めるのです。悪い社内政治では、資金をもっと得るために情報を改ざんしたり、同僚の噂を流したり、他人の手柄を横取りしたりするといったことが起きます。

一方で、良い社内政治とは、組織の上下や全体との関係を築き、情報を共有し、目標を前進させる方法を模索するといったことであり、つまりは自分自身の野心を手放す可能性があるということなのです。

私は、社内政治の一方的な意味合いを軽減するためにリーダーやチームが良い社内政治について語ることを提唱しています。

周囲を見渡して、いかにチームや組織の全体の利益のために、非公式あるいは非公認の方法で物事が進められているか、注目してみましょう。

そうすることで、職場内政治に踏み込みながらも、正しいと感じる方法で関わることができるようになります。

2. 良い社内政治に必要なスキルを知る

社内政治をうまくこなせるようになりたいなら、必要なスキルを知ることが大切です。フロリダ大学教授で『Political Skill at Work』の共著者であるGerald Ferrisなどの研究者らは、職場における政治的スキルの4つの側面を指摘しました。

  • 社会的洞察力:他人が自分をどう見ているか、自分の行動が他人にどう影響するかを知っているということ。
  • 対人関係における影響力:他人を理解することで、その人が何をどう考えるかに影響を与える説得力。
  • ネットワーキング能力:幅広い多様な人たちと、双方にとって有益な関係を築くことのできる能力。
  • 目に見える誠実さ:サポートしよう、信頼しようと思ってもらえるような、正直でオープンに見えるということ。重要なのは、正直で「いる」だけでは不十分で、正直な人だと他人に「信じてもらえる」ことが必要。

研究者らが明らかにしたのは、「ある人の職場での働きが効果的かどうかを左右し得るのは、こうした側面でのパフォーマンスが高いことだ」ということです。Robert Kaiser、Tomas Chamorro-Prezumic、Derek Luskの3人は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に次のように書いています。

これらの政治的スキルは、性格や知性とは関係なくキャリアに影響を与える。

一方では、政治的スキルは、あまり社交的でないことや、その場にいる人の中で一番賢い存在ではないということの埋め合わせになる。

他方で、政治的スキルが不足していると、そうでなければ知的かつ誠実で勤勉な人を失敗に追い込むことがある

必要なスキルを知ることが第一歩です。第二のステップは、それを実践することです。一番簡単な出発点は、幅広い人たちと関係を築くことです。

自分の部署内からはじめ、徐々に部署の壁を越えて広げていきましょう。

考え方の中心にあるのは、この関係が将来役に立つかもしれないということを理解しつつ、関係を構築することです。

3. 社内政治が得意な人と仲間になる

誰でも社内政治を無視したり避けたりしたいのは山々ですが、そうもいきません。政治は常に存在するものであり、人間が一緒に仕事をするうえで自然なことなのです。

決めることができるのは、それをどのように行うか、つまり、良い社内政治をするか悪い社内政治をするかです。

まずは、そのスキルを身につけ、最も尊敬されている人と仲間になることからはじめましょう。重要なのは、職場で良好な人間関係を築き、それを育むことに尽きるということがわかるでしょう。

Source: Organizational Behavior, HBR, Semantic Scholr, Amazon