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学校や職場では、メンタルヘルスに関する話題は避けられがちである。マイケル・フェルプスやレディ・ガガなど、著名人がその苦しみを公にし始めたのは大きな変化だが、負のイメージを完全には拭えていない。筆者らの調査によると、心の問題を抱えている人は予想以上に多く、特に若い世代を中心に、会社がメンタルヘルスの問題に対処することを望んでいることがわかった。企業はこの課題に対して、人事の観点だけでなく、DEIの観点からも取り組むべきである。本稿では、職場でメンタルヘルス対策を進める3つの方法を示す。


 メンタルヘルスの啓発は転換期を迎えている。

 著名な歌手や俳優、アスリートが次々に、自分の苦しみを語り始めている。マイケル・フェルプスは鬱病との戦いを赤裸々に語った。レディ・ガガはPTSD(心的外傷後ストレス障害)とともに生きることについてメディアで告白し、ヘンリー英王子は不安症の苦しみを明かしている。ザ・ロックことドウェイン・ジャクソンも鬱との戦いを告白し、「いちばん大切なのは、君は一人じゃないということだ」と語っている

 彼らのエピソードはメンタルヘルスにつきまとう負のイメージを軽減するが、残念ながら、職場でメンタルヘルスについて安心して語れるまでには至っていない。メンタルヘルスを原因とする労働日数の損失は年間2億日を超える(従業員の生産性の損失は168億ドル)にもかかわらず、職場では、メンタルヘルスの話はいまだにタブーとされる。従業員の約60%が、自分のメンタルヘルスについて、職場で誰にも話したことがない。

 この理由を探るために、マインド・シェア・パートナーズ、SAP、クアルトリクスは共同で、米国の職場でメンタルヘルスの問題と負のイメージがどのように広まっているかを調査した。精神状態が100%良好な人から、慢性的で深刻な障害を抱えている人まで、あらゆるレベルを対象とした。

 従来の研究は、診断可能な症状か、一般的なストレスレベルでメンタルヘルスを評価する。ただし、これら2つの基準だけでは、そのあいだに位置する幅広い経験を捉えきれない。診断が確定していない症状や一時的な問題、臨床的な基準を満たさない症状もある。

 そこで今回は、より幅広く捉えるために、回答者の抵抗感が少ない個人的な状態をもとに質問を作成した。特定の症状があるかどうかではなく、一般的なメンタルヘルスの状況のうち、当てはまる経験があるかどうかを質問したのだ(例:悲しい、思考が麻痺する、多くの活動に興味や楽しみを感じないという状態を、この1年間で少なくとも2週間経験したか?)。

 全米の営利部門、非営利部門、政府部門の成人1500人以上から回答があった。回答者の人種、性別、LGBTQプラスのアイデンティティ、学歴、勤続年数は、統計的に優位な範囲に広がっており、この分野では軽視されて調査対象になりにくい層も含まれている。