「士気の低いチーム」に活力を与える3つの行動
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サマリー:労働条件が改善しているにもかかわらず、現代の労働者はエンゲージメントの低下やストレスの増加に直面している。経済の不確実性やAI(人工知能)の脅威も加わり、仕事が人間味を失っているのだ。本稿では、チームの... もっと見る士気やパフォーマンスに大きな影響を与えるマネジャーやリーダーが、この状況を打破するために、行動を起こすべき3つの領域について解説する。 閉じる

チームの士気はマネジャーやリーダーに左右される

 過去100年間、特に知識経済において、世界中の労働条件が大幅に改善したが、私たちがやるべきことはまだ残されている。

 有意義な仕事やキャリアへのアクセスは言うまでもなく、最近になってより高いレベルの自由と柔軟性による恩恵を受けている熟練労働者や、労働者の健康とウェルビーイングを改善すると表明している雇用主でさえ、慢性的なエンゲージメントと生産性の低さに苦しんでいる。そして、ストレスと燃え尽き症候群(バーンアウト)は増加し続けている。これに、経済の不確実性と潜在的な景気後退の圧力、仕事とスキルを自動化し産業全体を破壊するAI(人工知能)の脅威、そして多くの人の仕事に倦怠感と孤独感が加わり、全体的な見通しはかなり暗い。

 いまこそ、仕事を再び人間的にする絶好のチャンスだ。他者(クライアント、同僚、上司、さらには配偶者や子どもなど)との日常的な交流の大部分が、味気ないテクノロジーを介した交流になり、私たちのキャリアは効率性のために最適化されているように見える時代において、多くの労働者が創造性や好奇心、人間性を完全に奪われていると感じても驚きはない。

 それが意味することは何か。人材獲得競争を勝ち抜き、チームや組織において魅力的な環境をつくり、そこで人々が活きいきと活躍することを望むなら、仕事を単なる仕事以上のものにするため、人間味のある性質を再発見できるようにしなければならないということだ。

 これは、部下をマネジメントする立場にある人にとって特に重大である。メタ・プラットフォームズの分析によると、チームの士気やパフォーマンス、重要な組織行動(良いものも悪いものも)の変動性の約30~40%は、マネジャーやリーダーの行動で説明できるという。簡単に言うと、上司はチームのウェルビーイングと成功に影響を与える重要な役割を担っているということだ。

 エカチェリーナ2世の国家建設から、監督を務めたアレックス・ファーガソン卿の下で記録的な成績を収めたマンチェスター・ユナイテッド、サティア・ナデラによるマイクロソフトの急進的な変革に至るまで、この研究結果を説明する歴史的な事例は枚挙に暇がなく、人と人との効果的な協働は、効果的なリーダーシップによって劇的に強化される。

 このことから、特に厳しい時期や不確実な時期にチームの士気、ウェルビーイング、パフォーマンスを高めたいマネジャーやリーダーには、3つの潜在的な行動領域があると考えられる。

活性化

 どのような組織においても、エネルギーとアウトプットのレベルは、個人におけるものと同様に変動する。同じ従業員でもそうだ。ある年には生産性が高くても、次の年には低くなることもある。

 不利な状況(経済危機、政情不安、世界的なパンデミックなど)の下では、多くのチームで士気やパフォーマンスが低下する。したがって、マネジャーやピープルリーダーは、チームの活性化に焦点を当てるべきである。これは基本的に、人々に再び活力を与え、モチベーションを向上させるということだ。

 そのための効果的な方法は、リーダーシップの重要な側面は「意味をマネジメントする」ことであるという概念に沿って、「なぜ」から始めることだ。人間は意味を強く求めており、リーダーは意味を形成し、世界の意味を理解する手助けをする立場にある。

 最も重要な仕事は、チームが行っている仕事がなぜ重要なのかを「頻繁に」強調することだ。厳しい経済状況であっても、たいていの人はキャリアにいくつかの選択肢を持ち、どこへ行くべきか、次に何をすべきか、どう決断すべきかについて疑問や不安を感じている。

 リーダーが従業員に「なぜ」を思い出させ、それを受け入れる手助けをすることで、彼らは自分が会社の目標達成に重要な存在だと考えるようになる。これは活力となり、人々を再び活気づかせる。その方法の一つは、過去の業績を称え、それを将来の目標や成功に結びつけることだ。チームメンバー間の社会的なつながりを強調し、共通の歴史や過去の課題を思い出させることで、チームメンバーが互いにつながり、そしてチームの使命とつながっていると感じられるようにする。

チームの活性化のためにリーダーができること

・チームや組織のパーパスを繰り返し強調する。
・メンバー本人にとって何が重要なのか、本当に関心があることや信じていることは何かを尋ねる。
・メンバー本人のしていること(役割)が、チーム、ひいては顧客(または組織の仕事によってサービスを受ける人々)にどのような影響を与えているかを説明する。
・チームとそのメンバーが互いに何を得ているか、一緒に働くことのどのような点に感謝しているかを語ってもらう。