業績評価を通して、部下のやる気を高める手法
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サマリー:景気が低迷し、自社の業績も低調な状況下において、マネジャーはどのように部下のパフォーマンスを評価すればよいだろうか。本稿では、昇給や昇進といったインセンティブを用意できない中でも、業績評価に関する議論... もっと見るを建設的に行い、来期以降も部下にモチベーションを高めて働いてもらうための8つの戦略と、覚えておくべき原則を6つ紹介する。 閉じる

業績低迷時、個人のパフォーマンスをどう評価するか

 通常、業績評価がToDoリストの上位に位置づけられることはない。経済状況が不安定で困難な四半期が何度か続けば、加速度的にやりがいは失われる。上司は部下に対して、やる気と情熱を持って仕事に取り組んでほしいと願うものだ。しかし、ビジネスが低迷している時こそ、自分が会社の利益にどのように貢献しているかを従業員自身が明確に理解しておく必要がある。

 では、組織の業績が低迷している状況で、個人のパフォーマンスを客観的に評価するにはどうすればよいのだろうか。昇給や昇進といった通常のインセンティブがない中で、チームを鼓舞する方策はあるのか。また、リーダーとしての楽観的な感覚を育む一方で、将来への現実的な期待とのバランスを取るにはどうすればよいのだろうか。

専門家の見解

 業績評価は、単なる退屈な日常業務ではない。面談の際には、高いリスクと激しい感情、健全で相応な個人的エゴがすべて会議室(場合によってはズームの画面上)に集結し、多大なストレスを引き起こしかねない。

 エモリー大学ゴイズエタ・ビジネススクール教授のカレン・セダトールが、「年度末の評価」はマネジャーからも従業員からも「普遍的に嫌われている」と語ったのも当然だろう。「上司にとっては、フィードバックや修正点を指摘するのは気まずいものだ。指摘を受ける従業員にとっても、楽しい時間ではない」と、彼女は言う。「しかも、財務状況が芳しくない時期には緊張感がいちだんと高まる」

 重要なのは、自社のビジネスが直面している課題と、それが従業員の目標や期待にどう影響するかについて、「前もって、明確に」伝えておくことだと、ブティック型人事コンサルティング企業を経営するトヌシュリー・モンダルは言う。「年間を通して現実的な態度を取っていれば、サプライズはないはずだ」

 業績評価の目的は、過ぎた1年を振り返るだけでなく、これから始まる1年の潜在的な課題に従業員が対処できるようにすることだ。建設的な議論を確実に実現するための戦略をいくつか紹介しよう。

準備する

 モンダルによれば、配慮が行き届いた業績評価を行うには、上司の側に一定の準備と内省が必要だという。「マネジャーが目的を明確にしないまま、次々に会議を渡り歩いているケースが多い」と、彼女は語る。「しかし、業績評価に関する面談では、証拠となる書面を準備しておく必要がある」

 従業員の業績──プロジェクトを成功させた、要求の厳しいクライアントへの対応が素晴らしかったなど──をまとめ、改善すべき点があればメモにまとめておこう。あなたの部下と緊密に連携して働いている同僚にも意見を求めよう。事前の準備は、経済状況に関係なく極めて重要だが、景気が悪い時期にはなおさら、正確で洞察に富んだフィードバックを提供することが重要になる、と彼女は言う。

現実を確認する

 面談の冒頭でいきなり経済の話ばかりするのは、生産的な(あるいは愉快な)やり方には思えないかもしれないが、セダトールは業績評価の対話をより広範な経済的文脈に位置づけることを推奨している。「業績を左右する要因の中には、従業員や組織のコントロールが及ばないものもあると認識すべきだ」と、彼女は言う。重要なのは、現実的でありつつ、相手をサポートする姿勢を忘れないこと。「これが私たちが乗り越えるべき環境の現実であり、私たちはともにこの環境に身を置いている」と伝えよう。

 不安定な経済状況について話すことで、たとえば「今年のボーナスプール(賞与基金)が低いのはなぜか」といった変化の背景を説明しやすくなる利点もあるとモンダルは指摘する。こうしたオープンなコミュニケーションを継続し、「1年を通して、マクロ経済の状況に基づいて期待値を再調整する」ことが望ましいという。

点と点を結びつける手助けをする

 第一のステップとして、広範な経済状況が企業の業績に及ぼす影響についてチームメンバーに理解を促すことができたら、次は彼らの具体的な役割が組織の長期目標にどう組み込まれているかを理解させる必要がある。「従業員にもビジネスの視点で物事を考えてもらいたい」とモンダルは言う。

 話が進んできたら、彼らの日々のタスクやプロジェクトが組織の業績にどのように貢献してきたかを伝えるべきだと、セダトールは提案する。点と点を結びつけることで、「この1年間の自分のパフォーマンスが会社の業績をどのように支えたのか、あるいは損なったのか」をより明確に理解できるようになる。昨年の業績は変えようがないが、このように明確な理解によって、将来に向けた改善を促進できる。また、彼らの目的とコミットメントを強化し、翌年の自分にとっての優先事項と組織の目標をすり合わせる方法を見つけ出すのにも役立つという。