調査結果のポイント
2. DX推進について「管理職としてしっかり取り組むべき」 65%
3. 課長の困りごと 「DXの知識がない」「どう進めればいいかがわからない」
自由記述に「若手に置いて行かれそうで怖い」「決裁者の認識が古く、システム化しても運用姿勢がオールドスタイル」
4. 課長のDXの困りごと対処法、結局「ネット検索」、次いで「社内のDX関連部門に聞く」
5. 「全社戦略」「トップメッセージ」が、課長のDX推進への取り組み意欲と相関
6. 会社の業績につながるDXは「業務の効率化」「部門間交流」「ビジネスモデルの変革」
7.DXなど変化の激しい現代に課長職にいることに「責任を感じる」46%、2019年調査より12%高い割合
若い課長ほど「チャンスである」と認識
8. 人生をやり直すとしたら、「家庭や趣味を大切にマイペースの人生」との回答が最も多く42%
まとめと提言
■全社戦略に基づき継続的に、トップからの強いメッセージの発信が効果的
■DXで行うべきは業務の効率化、ビジネスモデルの変革だけでなく、意義ある部門間交流
調査概要
調査方法 | インターネットリサーチ |
調査地域 | 全国 |
調査対象者 | 全国在住の男女で従業員数100人以上の企業に勤務し、「課長」または同等の 職位にある人(部下のいない人は対象外) 30歳代20%、40歳代40%、50歳代40%の割合で抽出 |
有効回答者 | 1,000サンプル |
実施期間 |
2022年3月3日~3月4日 |
■主な調査結果
【1】 課長の4人に1人「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」
全国の100人以上の会社の課長1,000人に自分の仕事とDXとの関わりを聞いたところ、「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」という回答が25.4%と4分の1を占めました。具体的にどのような仕事に携わっているかを聞くと、営業、人事、総務、教育、医療などの回答がありました。
DXとの関わりでは「業務の中でDXを推進している」が60.7%と最も多く、「DX推進のための部門やプロジェクト・委員会などに、自分が所属している」という回答も13.9%ありました。(図1)
DXは様々な業種、職種に関連すると考えられますが、組織の中核である課長職にあっても4人に1人は自分には関係ないと認識する現実があることがわかりました。
【2】「管理職として、DXにはしっかり取り組むべき」65%
全体の65.0%が「管理職の役割として、DXにはしっかり取り組むべきと思う」と回答しました。ただし従業員規模による差が見られ、100~499人規模の会社では56.2%にとどまり、4割以上の課長は取り組むべきと思っていないこともわかりました。(図2)
【3】課長の困りごと 「DXの知識がない」「どう進めればいいかがわからない」
DXに関する困りごととして、最も多かったのは「DXに関する知識やスキルを身につけていない」(38.1%)でした。次いで「DX推進を、具体的にどう進めればいいかがわからない」(25.2%)と、1位・2位とも「わからない」ことに困っている状況を示しています。【1】で「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」という回答が25.4%あったのも、こうした「わからない」ことが背景にある可能性があります。
その他「DXの知識やスキルを持った人材が不足している」(24.6%)、「本来の業務で忙しく、DXまで手がまわらない」(24.1%)、「部門によって温度差があり、足並みがそろわない」(16.2%)などが挙げられました。(図3)
自由記述には、「DXとは何?というレベルで、ついていけない」(男性50代/新潟/100~499人)や「若手に置いて行かれそうで怖い」(男性50代/大阪/500~2,999人)といった本音を吐露するコメントの他、「決裁者の認識が古く、結局システム化しても運用姿勢がオールドスタイルのまま変わらなく、費用対効果に乏しい」(男性30代/東京/500~2,999人)や「どこの部署で何が行われていて、全社戦略としてどうなっているのか打ち出されていない」(男性40代/大阪/3,000人以上)など、社内の決裁者や情報共有の課題を嘆くコメントが見られました。
勤め先の会社のDX推進に関する悩みや不安
コロナ禍において資金に余剰がない中、新規分野への出資が理解を得づらい | 男性30代/神奈川/100~499人 |
必要性を理解している人間が少ない | 男性30代/京都/100~499人 |
会社からDXの話が一切なく世の中からの遅れを感じている | 男性40代/東京/100~499人 |
DXとは何?というレベルで、ついていけない | 男性50代/新潟/100~499人 |
普段の業務の合間に行うには負担が大きすぎるため、一様に及び腰になっている | 男性30代/北海道/500~2,999人 |
決裁者の認識が古く、結局システム化しても運用姿勢がオールドスタイルのまま変わらなく、費用対効果に乏しい | 男性30代/東京/500~2,999人 |
会社としての方針が明確でないため、推進が難しい | 男性40代/広島/500~2,999人 |
若手に置いて行かれそうで怖い | 男性50代/大阪/500~2,999人 |
現状維持を良しとする組織や人が少なからず存在する、また承認プロセスが多いためスピード感が出ない | 男性40代/神奈川/3,000人以上 |
外部コンサルタントを起用しているが、そのコンサルタントの能力に疑問を感じている | 男性30代/千葉/3,000人以上 |
どこの部署で何が行われていて、全社戦略としてどうなっているのか打ち出されていない | 男性40代/大阪/3,000人以上 |
何処と連携して、どういう取組みをしていけばいいか、いまいちわからない | 男性50代/埼玉/3,000人以上 |
困りごとへの対処法としては、「インターネットで検索して、解決策を見つける」(44.6%)が最も多く、次いで「社内のDXやデジタル関連の部門に聞く」(30.3%)、「DXやデジタルに詳しい部下や同僚に聞く」(22.6%)が挙げられました。社内の専門部門や同僚よりも、自分でネット検索する割合が多い現状が明らかになりました。
なお、若い課長ほど「本や専門雑誌などを読む」「上司に相談する」なども多く、解決策の間口が広いことがわかります。(図4)
「管理職の役割として、DXにはしっかり取り組むべきと思う」の回答と相関が高かったのは、「全社戦略に基づき、持続的に実施されている」や「社長や経営層がDX推進の必要性を訴えている」の回答でした。いずれも従業員規模との関連も認められますが、会社としての姿勢が課長のDX推進意欲を高める可能性は指摘できます。
(図5-1/5-2)
【6】 会社の業績につながるDXは「業務の効率化」「ビジネスモデルの変革」「部門間交流」
「会社の売上や業績は全体に伸びている」という項目への回答と、DXの様々な施策に関する回答の相関を見たところ、最も相関が高かったのは、「データやデジタル技術によって業務の効率化が進んでいる」「部門間の交流がデジタル技術によって盛んに行われている」「データやデジタル技術によって、製品やサービス、ビジネスモデルの変革ができている」でした。
DXを象徴する業務の効率化とビジネスモデル変革とともに、部門間の交流も、業績向上に結びついている可能性があります。(図6-1/6-2/6-3)
DXなどの変化の激しい現代に課長という役職にいることをどう思うかを聞きました。「責任を感じる」(46.0%)を半数近くが挙げています。この割合は、前回の2019年調査の回答(34.2%)と比べても10%以上増加しており、自身の役割に大きな責任を感じている様子がうかがえます。
その他では、「チャンスである」(23.4%)、「もっと昇進していたかった」(16.3%)という前向きな考えの一方、「自信がない、不安である」(17.5%)という弱気な意識も見えます。
なお、若い課長ほど「チャンスである」という意識が強くなっています。(図7)
「知識や技術を身につけた専門家を目指す」は2019年調査よりも減少。若い課長ほど転職、昇進、独立なども多い
DX時代の課長に、「新入社員として人生をやり直すとしたら」と聞くと、「家庭や趣味を大切に、マイペースの人生を送りたい」(42.3%)が2位以下を10%以上引き離しトップとなりました。次いで「知識や技術を身につけ、専門家として高みを目指す人生を送りたい」(31.8%)、「安定した組織で、安心して仕事をしたい」(26.8%)、「新しい事業や商品で社会を変えるような、革新的な仕事がしてみたい」(18.0%)など、人生のやり直しに多様な希望があることがわかりました。
前回の2019年調査結果と比べ、「知識や技術を身につけた専門家」は10ポイント近く低下しており、「家庭や趣味を大切にマイペースの人生」の突出傾向が強まっています。
若い課長ほど「様々な会社でのキャリア」「昇進」「独立や起業」などの割合も多い傾向にありました。(図8)
【本調査の対象者プロフィール】
【参考】 2019年3月実施 「平成時代の課長調査」 について
URL :https://www.jtbcom.co.jp/article/hr/758.html
まとめと提言
課長の「関係ない」「わからない」への対応急務
全社戦略、トップメッセージの重要性
DXで行うべきは業務の効率化、ビジネスモデルの変革だけでなく、意義ある部門間交流
DXという文字が新聞やニュースサイトに載らない日はありません。こうした中で事業を発展させるためには、企業も多かれ少なかれDXを推進することが求められます。企業がDXを推進し成果を出すためには中核である課長の取り組み姿勢や活動の内容は、重要な要素となるでしょう。
調査結果から、DX時代の課長の現状と企業が行うべき対応策を考えます。
■課長の「関係ない」「わからない」への対応は急務
課長の4人に1人が「自分の仕事の性質上、DXは関係がない」と認識し、困っていることとして4割近くが「DXに関する知識やスキルを身につけていない」、約25%が「具体的にどう進めればいいかがわからない」を挙げました。「関係ない」「わからない」という感覚は、関心の欠如や、 “自分ならできる”という自己効力感の低下により、モチベーションを低下させる大きなリスクとなります。企業としてDXを推進する際には課長を始めとした社員に対して、DXの意義や重要性、現在の事業や将来展望との関わりについて十分な納得を得ること、知識やスキルを学習できる環境や気軽に質問できる仕組みを整えることが必要です。特に課長という中間管理職層には、自分の業務とDXの関連を理解してもらい、DXの具体的な進め方についてイメージしてもらう必要があります。部門ごとに進め方のモデル事例を提示したり他の部門の進め方を知る場を設定したりするなどの施策も有効と思われます。
■全社戦略に基づき継続的に、トップからの強いメッセージ発信が効果的
DXが全社戦略に基づき継続的に行われていることや、社長や経営層がDXの必要性を訴えていることが、課長のDXへの取り組み姿勢に関わることがわかりました。社長や経営層の姿勢や発言が中間管理職である課長の取り組み姿勢を変え、「関係ない」という意識を低減させる可能性は高いはずです。DXを進める上では、全社戦略を策定すること、それをトップメッセージで強く伝えること、納得感や共感を得てDX推進へのモチベーションを向上させることが求められます。オンラインやリアルのミーティング・イベントなど、様々な場面で継続的に経営トップがメッセージを発信することもさらに効果を高めるでしょう。
■DXで行うべきは業務の効率化、ビジネスモデルの変革だけでなく、意義ある部門間交流
会社の売上や業績との相関が高かったのは、業務の効率化、部門間の交流、ビジネスモデルの変革でした。業務の効率化やビジネスモデルの変革はDXという言葉から想像しやすい内容ですが、部門間の交流も重要であることが明らかになりました。他の部門との連携が容易になれば業務の流れが円滑になったり新たなアイデアや事業も生まれたりしやすく、効率化やビジネスモデルの変革につながっていきます。
例えば全社横断的なコミュニケーションイベントや社員総会、知識やスキルを学びながら情報共有ができるラーニングイベントの開催など、部門横断的な交流ができるオンラインやリアルでの場づくりで社内コミュニケーションを活性化させることが、DXを業績につなげる要になると考えられます。
◆株式会社JTB コミュニケーションデザイン (JCD) 会社概要
所在地:東京都港区芝3-23-1 セレスティン芝三井ビルディング12階
代表者:代表取締役 社長執行役員 古野 浩樹
設 立:1988年4月8日
URL :https://www.jtbcom.co.jp
◆ワーク・モチベーション研究所
URL :https://hr.jtbcom.co.jp/work_motivation/
記事引用:PR TIMES「<DX時代の課長調査>課長の4人に1人「自分の仕事にはDXは関係ない」」