doda転職求人倍率は、中途採用市場における需給バランスを表すもので、dodaの会員登録者(転職希望者)1人に対して、中途採用の求人が何件あるかを算出した数値です。 <算出式※:求人数(採用予定人員)÷ 転職希望者数>※分子・分母はdoda独自の定義により算出したものです。 |
■doda編集長が語る“小売・流通業界”の最新転職トピックス
・小売・流通業界の求人数は、調査開始以来過去最多を更新(P.1)
・ コロナ禍で打撃を受けた鉄道業界は、人流回復で人材不足。希少性が高い電気系技術職は未経験採用も(P.2)
・ コンビニエンスストア業界は、エンジニアや商品開発などの専門性が高い即戦力人材の採用にシフト(P.2)
■2023年7‐9月期の概況
小売・流通業界の求人数は調査開始以来、過去最多を更新。しかし、転職希望者は減少、かつ異業種への転職者が多く、企業の採用難易度はさらに高い状態に。
求人数(採用予定人員、以下求人数)とは、転職求人倍率を算出する期に新たに掲載された求人に加え、算出期の前期末時点、かつ算出期に掲載があった求人に記載されている採用予定人員のことを指します。 |
2023年7-9月期の小売・流通業界の転職求人倍率は、0.53倍でした(表①)。求人数は前期比106.4%、前年同期比142.7%と5期連続で増加し、2019年1-3月の調査開始以来、過去最多を更新しました(図①)。転職希望者数は前期比98.6%、前年同期比111.5%でした。例年7‐8月は、夏季休暇の影響で転職希望者数は減少傾向にあり、今期も前期から微減しました。求人数は増加し、転職希望者は減少したため、転職求人倍率は上昇しました。
転職求人倍率は0.53倍と未だに1倍を切り、一見すると買い手市場のように見えますが、小売・流通業界は、他業種への転職を希望する人も多いことから、転職求人倍率以上に採用難易度は高い状況です。例えば、転職サービス「doda」のデータでは、2023年1-6月に転職した小売業界経験者のうち、94%が異業種に転職しています。一方で、小売業界未経験者のうち、小売業界に異業種転職した人の割合はわずか1.8%に留まりました。そのため、今後も小売系企業は、人材確保に苦戦する状態が続くと予想されます。
*全体版の求人倍率は、doda転職求人倍率レポート< https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/ >を参照ください。
■2023年7‐9月期の動向
コロナ禍で打撃を受けた鉄道業界は、人流回復で人材不足。採用難易度が高い電気系技術職は未経験採用も
緊急事態宣言や在宅勤務推奨の影響で急激に利用者が減少するなど、コロナ禍で打撃を受けた鉄道業界。コロナ禍で、企業が新卒・中途ともに採用を控えたことに加え、先行き不安から異業種へ転職する個人も目立ち、業界内のはたらき手はさらに減少しました。今年はコロナが5類に移行し、出社回帰の動きが顕著となり、国内旅行ニーズやインバウンド需要も急回復しています。結果、人材確保が急務になり、2023年7-9月期の「鉄道業」の求人数は前期比で168%、前年同期比で247%と、大幅に増加しました(表②)。
近年相次ぐ新線建設や延伸を受け鉄道業界では、特に電機系技術職の採用ニーズが高い状態です。しかしながら電気設備のメンテナンスなどを行う本職種は、専門性や希少性が高く、採用が難航しています。そのため企業は、理系学部出身者を対象に未経験採用にまで間口を広げ始めています。安全な運行に必要不可欠な電機系技術職の採用優先度は高く、今後も入社後の育成を前提とした未経験採用の動きが続くと予想します。
コンビニエンスストア業界は、エンジニアや商品開発などの専門性が高い即戦力人材の採用にシフト
2023年7-9月期の「コンビニエンスストア」の求人数は、前期比の増加率が「小売」のなかで最も高く、129%増でした。また、前年同期比でみても165%増と伸長しています(表②)。これには大きく2つの要因が考えられます。
1つ目は、DX推進に伴うIT人材の採用強化です。コロナ前は、店舗の売り上げ管理やサポートを行うスーパーバイザーの求人が多くみられました。しかし店舗数が伸び悩み、飽和状態が続いていることから、省人化や業務効率化に重きを置き、即戦力となるIT人材の採用を強化する動きが強まっています。具体的には、セルフレジなど店舗のオペレーションを効率化させるシステムや、SCM(サプライチェーンマネジメント)・物流の業務効率化につながるシステムを開発・構築するITエンジニアのニーズの高まりが顕著です。
2つ目は、PB(プライベートブランド)強化のための商品開発部門の増員です。近年、比較的利益率が高く、他店舗との差別化が図れるPB商品の開発に力を入れることで、顧客体験価値の向上や来店頻度アップを狙う動きが各社で目立っています。そのため、商品開発の経験を有する即戦力人材の確保に力を入れる企業が増加傾向にあります。
しかしながらエンジニアは業界問わず引く手あまた、経験者採用が基本となる商品開発はそもそもの母数が少なく転職市場に出てこない傾向にあることから、採用難易度が非常に高い状態が続いています。一部の企業では、スキルや経験を有する人材に好条件のオファーを出せるよう人事制度を改定したり、採用ブランディングに力を入れるなどの工夫も見られます。現時点では未経験採用に間口を広げるなど条件緩和の動きは見られず、今後も即戦力人材を求める状況が続く見込みです。
【取材可能】解説者 doda編集長 加々美 祐介(かがみ ゆうすけ)
2005年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。人材紹介事業、転職メディア事業で法人営業、およびマネジメントを担い、一貫して企業の採用支援、個人の転職支援に従事。
2013年にはカルチャー変革の仕組みづくりと推進をミッションとした新規部署を立ち上げ、企業変革を成功に導くためのチェンジマネジメントを主導。2014年には人事部門も管掌し、人事制度企画や採用、異動・配置転換、組織・人材開発など、ビジョンの実現と経営戦略の実行に向けた、戦略人事全般を担う。2019年、新しいマッチングサービスを開発する新規事業開発部門を立ち上げ、本部長に。ダイレクトリクルーティング全般、そしてハイクラス転職サービス「iX」(現「doda X」)の事業・プロダクト開発を牽引。2021年には執行役員に。2023年4月、doda編集長、プロダクト&マーケティング事業本部 事業本部長に就任。
記事引用:PR TIMES「【小売・流通業界】2023年7‐9月期版doda転職市場動向レポートを発表」