株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘)は、AIに関わる求人動向について、転職支援サービス『リクルートエージェント』のデータをまとめましたのでご報告いたします。
AI関連求人:求人票の仕事の名称または仕事の概要に、AIに関する単語が含まれる求人を抽出し、エンジニア系職種、営業や企画・管理部門職種で独自に定義(詳細な定義はP3)。
AI関連求人は2017年度の約4.7倍。一方転職者は増加しているものの充足には至っていない
『リクルートエージェント』におけるAI関連求人・エンジニア系職種では、2017年度を1として指数化すると、2023年度は4.73と伸長している。2017年というのは、現在の大規模言語モデルの飛躍的成長を実現したTransformerモデルが提案された論文「Attention Is All You Need」(※1)が発表された年である。求人の中身を見てみると、AIを使った音声認識サービスやチャットボット、製造業向けの画像処理やロボティクス制御開発等、社会実装を主としたものが増えてきている。AI技術は今後も急速に進化し、関連分野への転職者がさらに増加することが予想される。また、事業のデジタル化(DX)や新規事業開発などにおいても、AIに関する知識を持つ人材のニーズが高まっている。ただし、AIに関する開発経験を持つ人材は限られるため、雇用条件にとどまらないさまざまな工夫で各社が人材の争奪戦を繰り広げている。
(※1)「Attention Is All You Need」:それまで主流だった仕組みとは異なり、現在の生成AIの中核となる「Transformer」という仕組みを提案した論文。Attentionとは、画像や文章の特定の部分に注意を向けるよう、学習させていく方法
エンジニア系職種だけでなく、関連する営業や企画・管理部門職種でも求人数が増加
エンジニア系職種だけでなく、営業や企画・管理部門職種でもAI関連求人が出てきている。エンジニア職種の2017年度を1とすると、1.78倍になっており(※2)、着実に増加傾向にある。例えば、営業職種では、AI関連製品の導入・販売に関する求人などがある。また、企画・管理部門職種では、AI製品のマーケティングをするポジションや、経理・人事などの専門職でAIを活用して業務改革を進めるポジションなどがある。(※2)営業・企画・管理部門職種の2023年度の求人数は2017年度比5.24倍(1.78÷0.34)
求人例:【税務】税務業務にAIを使うことで効率化するプロジェクトに参画
【人事】AIを使い従業員の評価や育成状況などを分析し最適な人事配置を検討
2023年度のAI関連求人を3つの職種系統で分析すると、約7割がエンジニア系で、残りの約3割が営業と企画・管理部門だった。今後AIを活用する専門職などが増加することで、この3割が増えていく可能性がある。ここ数年は、経理財務や人事企画などの専門職において、AIを活用して業務改革や企画立案を進めるポジションも出てきている。こういったポジションでは、必ずしもAIに精通している必要はなく、業務自体の専門性や課題設定能力を求められている傾向がある。いかにAIを活用して業務効率化や新しい価値の創造を進められるのか、少しずつ求められるスキルが変化していくのかもしれない。
【解説】管理部門でAIを使う仕事とは? どんな方が転職しているのか?
管理部門でもAIに関連する求人が増加してきている。エンジニア系に比べれば量としてはまだ顕著に多いというわけではないが、今後こういった求人が増加する可能性は大いにある。
企業は、AIを使って管理部門などの専門業務を効率化したり、より成果を上げるための課題特定や企画に生かしたりする方法を模索している。管理部門職種にAIのプロンプトを設定・開発するスキルを求めているのではなく、その業務のうちAIに任せられることは何か、さらに高い成果を出すためにどうAIを使ったらいいのかを考えられるような高い課題設定力と業務自体の専門性を求めている。
働く個人は、AIが得意とすることを理解する必要があるものの、AIに関する基礎的な知識さえあれば、こういった新しい職種にチャレンジできる機会がある。今までどのようなことに課題を感じてきたか、それをどう効率化してきたかなどがアピールポイントになるだろう。
(解説者:コンサルタント 高橋 紀夫)
【解説】AI関連のエンジニアを採用できている企業の特徴は?
AIに関する求人のうち、エンジニア系職種の採用が難しいと悩んでいる企業は多い。そもそも市場にAIに精通した人材が少ない中、どういう企業が人材を引きつけて採用できているのか?
『リクルートエージェント』のハイキャリア・グローバルサービスでは、経験を積んだデジタル人材の登録も多い。そんな方々の支援を通じて見えてきた採用に成功している企業の特徴は「業務の細分化ができている」ことだ。AIという言葉自体はバズワードになっており、企業ごとにAIが何を指すかに違いがあるほどだ。AIを使って何をしたいのかが経営陣でさえ漠然としがちな中で、それをしっかりと言語化し求職者に伝えることができる企業とそうでない企業の差は大きい。どういったことを任せたいのか、具体的かつ明確に伝えられる企業は求職者も納得して検討できる。採用がうまくいかない企業によくあるパターンとしては、DXを進める中で今まで外部委託していたことを内製化しようとしてうまくいかず、とりあえずAIを使いたい、とにかく自動化したい、というようなものが多い。これでは、何に課題があって、どこにAIを使って何を変えたいのかがイメージしづらく、丸投げをされているように感じる求職者が大半だろう。AI関連求人に限らず、どんな仕事を任されるのかイメージがつきやすい方が応募につながる。
また、そのポジションに継続性があるかどうかも求職者が気にするポイントだ。お任せしたいプロジェクトが終わったらどのような案件やキャリアがあるのか、今後の展望もセットで伝えていく必要がある。
(解説者:コンサルタント 丹野 俊彦)
■AI関連求人の定義について
求人票の仕事の名称または仕事の概要に、AIに関連する単語(※3)が含まれる求人を抽出。
その中で、AIに関係のない求人の除外するために、キーワード(”AI”を含む、AIに無関係の単語など)による除外および目視による除外を行い、残った求人を「AI関連求人」とした。
(※3)AIに関連する単語例
AI、人工知能、ディープラーニング、ディープニューラルネット、NLP、自然言語処理、LLM、大規模言語モデル、ファインチューニング、深層学習、Transformer、転移学習、教師あり学習、教師なし学習、機械学習、マルコフ決定過程等
■職種定義について
企画・管理部門:マーケティング、経営企画・事業企画・業務企画、経理・財務、人事、総務・広報、内部監査・内部統制、法務・知財
エンジニア系:SE、インターネット専門職、機械エンジニア、組込・制御ソフトウェア開発エンジニア、化学エンジニア、電気エンジニア
■データ分析担当:リクルート HR横断リサーチ推進部 研究員 菊池 満帆
新卒でパナソニック株式会社に入社し、機構設計エンジニアとして特に熱設計
およびCAEを用いた熱シミュレーション業務に従事。その後リクルート(旧
リクルートキャリア)に入社し、ハイキャリア・グローバル・コンサルティング
部に配属。営業およびコンサルタントとして、ハイキャリア領域の製造業分野の企業および求職者の支援に従事。現在は中途、新卒、アルバイト・パート領域等HR全般の市場調査やデータ分析を担当。
調査概要
調査方法:リクルートエージェントの求人と転職者分析
調査対象:リクルートエージェントの求人と転職者のうちAIに関連するものを分析
有効回答数:非公開
調査実施期間:2024年4月~2024年9月
調査機関:リクルート
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引用:PR TIMES「AI関連求人が増加。2017年度から約4.7倍に エンジニア系職種だけでなく、営業や企画・管理部門も伸長」