■調査の概要
2024年問題とは、自動車運転業務、建設事業、医師等について「働き方改革関連法」で例外的に認められている時間外労働の上限規制の猶予が終了する2024年4月以降に発生する諸問題のことをいいます。これらの問題がどの程度認識されいるのか、全国の18歳以上の男女1,000人を対象にオンライン調査を実施しました。調査日は8月30日。Yahoo!クラウドソーシングを利用しています。
■調査結果サマリ
「2024年問題」という言葉を聞いたことがあり、ある程度を含め内容を理解できている人は42%。聞いたことがない人は17%だった。
【物流、バス、タクシーの2024年問題】
トラックドライバーらの時間外労働の上限規制が始まると物流供給網に影響が出る試算について、かなり、あるいはやや問題だと認識している人は計87%。ドライバー不足で宅配便の配送が遅くなることなどを許容できるかどうかは、程度や場合などによると考える人が69%を占めた。ドライバーの人手不足の緩和策を複数回答で聞くと、労働環境改善が66%と最多、給与を上げるなど処遇改善が61%で続いた。
インターネット通販などの「送料無料」表示は消費者が物流コストを意識できなくなる恐れがあるため見直す必要があると思う人は48%、必要はないと思う人は32%だった。通信販売の利用頻度は「月に数回」が51%を占めた。
バスの運行本数やタクシーの稼働が人手不足や高齢化で少なくなったとされる状況の打破のためにできると思うことを複数回答で聞くと「自動運転のバスやタクシーの実証実験促進」が42%でトップだった。
【医師の2024年問題】
医師の時間外労働への上限設定は、医師不足や休診で支障が出たとしても、ある程度を含めて受け入れることができる人は59%を占めた。医師不足や偏在解消のためにできることを複数回答で聞くと「医療現場のデジタル化による業務負担軽減や効率化」が41%で1位となった。
【建設業の2024年問題】
人手不足解消と働き方改革が実現する方策を複数回答で聞くと「長時間労働の是正など労働環境の改善」50%が最多だった。下請けや孫請けは利益が少なくなるとの指摘に関し「政府が元請け業者への規制、監視を強めるべきだと思う」が64%に上った。2025年大阪・関西万博の運営団体が海外パビリオン建設の工事に従事する作業員を残業規制の対象外とするよう政府に求めていることに、反対の人が45%を占め、賛成21%、わからない33%だった。
【その他】
人口減少などにより人手不足が深刻化して日本の経済が縮小するという指摘に対し、適切な対策を複数回答で聞くと、短時間就労や仕事の細分化で就労しやすい環境や制度づくりを求めた人が49%でトップとなり、高齢者雇用推進の45%が続いた。
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「2024年問題」という言葉を聞いたことがあり、かつ内容を「理解できている」「ある程度理解できている」人は計42.1%。「聞いたことがない」人は17.9%だった。ある程度を含め内容を理解できているとした人を男女別に見ると、男性は4割台後半、女性は2割台半ばだった。(Q6)
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物流の2024年問題で、トラックドライバーらの時間外労働の上限規制のためサプライチェーン(物流の供給網)に影響が出る試算に関し、「かなり問題だ」あるいは「やや問題だ」と認識している人は計87.8%に達した。かなり問題だと認識している人を年代別に見ると、30代以上の各層はいずれも4割台以上で、10代と20代は3割台以下にとどまった。職業別では、会社役員・団体役員と教職員でいずれも5割台で最多だった。支持政党別では日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組でいずれも5割を超し、最も多い層となった。(Q7)
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物流の2024年問題におけるトラックドライバーの人手不足により、宅配便で荷物を運べなくなる、配送が遅くなるとの試算があることに関し、これを「許容できるかできないかは程度や場合などによる」が69.1%を占めた。(Q8)
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インターネット通販などの送料無料の表示は消費者が物流コストを意識できなくなる恐れがあるため「見直す必要があると思う」48.4%、「見直す必要はないと思う」32.0%だった。「見直す必要があると思う」とした人を職業別に見ると、会社役員・団体役員で8割を超して最多だった。岸田内閣を支持する層では6割台前半だったが、支持しない層では4割台半ばだった。(Q9)
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トラックドライバーらの稼働時間減少による物流業界の売り上げや利益減少の予想について、輸送費や配送費の値上げを許容できるか聞いたところ「程度や場合などによる」が68.4%を占めた。(Q10)
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トラックドライバーの人手不足の緩和策を複数回答で聞くと「労働環境の改善」66.2%が最多で「給与を上げるなど処遇の改善」61.0%が続いた。(Q11)
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物流の2024年問題に関し、政府がどうかかわるべきかを複数回答で聞くと「非効率な商慣行を見直すための行政の支援や指導の徹底」45.5%がトップで「再配達の削減など消費者の意識改革や行動変容への取り組み」43.7%が2位、「物流業界における多重下請け構造是正の取り組み」 42.2%が3位だった。(Q12)
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通信販売の利用頻度は「月に数回」が51.2%を占めた。(Q13)
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物流の2024年問題を解決するために消費者の立場からできることを複数回答で聞くと「急ぎの荷物以外は配送日に余裕を持たせて注文する」63.3%が最多で「在宅を心がけるなど再配達にならない工夫をする」61.7%が続いた。(Q14)
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人手不足や高齢化でバスやタクシーの乗務員が減り、バスの運行本数の減便やタクシーの稼働が少なくなっている状況を打破するためにできることを複数回答で聞くと「自動運転のバスやタクシーの実証実験の促進」42.2%が最多で「若者や女性の就業を促進するような労働環境の改善」35.3%が続いた。(Q15)
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医師の2024年問題では病院勤務医の時間外労働に上限が設けられるが、医師の働き方改革について、ある程度を含め「進めるべきだと思う」と答えた人は82.6%に上った。(Q16)
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兵庫県の甲南医療センターでの医師の自殺をきっかけに関心が持たれている医師の自己研さんを「すべて勤務時間に含めるべきだ」「範囲を広げて含めるべきだ」が計67.6%に上った。(Q17)
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医師の時間外労働に上限を設けることについて、医師不足や休診などで地域医療に支障が出ても、ある程度を含め「受け入れることができる」が59.6%を占めた。(Q18)
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医師不足や地域や診療科による医師の偏在の解消のためにできることを複数回答で聞くと「医療現場のデジタル化による業務負担軽減や効率化」が41.2%で1位となり「ITを活用した遠隔診療提供やオンライン診療」が40.5%で2位だった。(Q19)
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建設業の2024年問題では人手不足が深刻化すると予想されており、どうすれば人手不足解消と働き方改革が実現するかを複数回答で聞くと「長時間労働の是正など労働環境の改善」50.0%が最多、「働く人の給与を上げる」が41.6%で続いた。(Q20)
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時間外労働規制などによる建設の工期適正化で人材確保がさらに難しくなり、人件費が上がって受注価格が一層上昇するとの指摘があることについて「仕方ないと思う」27.9%がトップで「政府の支援と同時に建設業者側も一定の利益減少を受け入れるべきだ」17.7%が2位だった。4位の「外国人労働者の受け入れ促進をすべきだと思う」とした人を支持政党別に見ると、自由民主党・維新・公明党・共産党が2割台で最多だった。最低は社民党と参政党でいずれもゼロ。(Q21)
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建設業界では下請けや孫請けは利益が少なくなり、時間外労働の上限規制の恩恵を得にくいとの指摘があることに「政府が元請け業者への規制、監視を強めるべきだと思う」が64.2%に上った。年代別に見ると、年代が上がるにつれて割合が増えていった。職業別に見ると、会社役員・団体役員で7割台となり最多だった。内閣支持層と不支持層ともに6割台後半で差はほとんどなかった。支持政党別では、共産が唯一の8割台で最多だった。(Q22)
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2025年大阪・関西万博の海外パビリオン建設が人手不足や資材高騰で工事契約が停滞しており、万博運営団体はこれらの工事に従事する作業員を残業規制の対象外とするよう政府に求めていることに「反対」が45.2%を占め「賛成」は21.6%、「わからない」が33.2%だった。 「反対」とした人を職業別に見ると、学生が6割台で最多となり、教職員が5割と続き、最低は会社役員・団体役員の1割台後半だった。年収別では2000万円以上が7割台で、1000万円以上2000万円未満が5割台、それ以下の各層はいずれも4割台以下だった。(Q23)
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日本では高齢化や人口減少で人手不足が深刻化し経済が縮小していくとの指摘があり、ふさわしい対策を複数回答で聞くと「短時間での就労、仕事内容の細分化で就労しやすい環境や制度を整えるべきだと思う」49.9%がトップとなり「高齢者の雇用を推進し働きやすい環境を整えるべきだと思う」45.8%が続いた。(Q24)
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次期衆院選の小選挙区で投票したい政党の候補者は自由民主党が16.3%(前回7月27日14.8%)、日本維新の会14.1%(12.4%)、立憲民主党4.1%(4.0%)、国民民主党3.5%(3.8%)などとなった。(Q25)
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次期衆院選の比例代表で投票したい政党は自民15.2%(前回7月27日13.6%)、維新14.5%(13.9%)、国民4.0%(4.3%)、立憲3.8%(3.7%)などとなった。(Q26)
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岸田内閣を「支持する」15.5%(前回7月27日15.4%)、「支持しない」66.7%(67.9%)だった。支持する政党はないとする無党派層では、岸田内閣を支持する人は一桁だったのに対し、支持しない人は7割台に上った。(Q27)
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政党支持率は自民17.4%(前回7月27日16.2%)、立憲4.2%(3.6%)、維新12.3%(10.1%)、公明1.4%(1.1%)、国民3.1%(4.2%)、共産1.7%(1.6%)、れいわ2.3%(1.9%)、社民0.2%(0.2%)、政治家女子0.8%(0.9%)、参政0.9%(0.6%)、その他の政党・政治団体0.4%(0.2%)、支持する政党はない51.0%(53.7%)。(Q28)
調査レポートの詳細 https://ksi-corp.jp/topics/survey/web-research-56.html
【調査概要】
・調査期間: 2023年8月30日
・調査機関(調査主体): 紀尾井町戦略研究所株式会社
・調査対象: 全国の18歳以上の男女
・有効回答数(サンプル数): 1,000人
・調査方法(集計方法、算出方法): インターネット上でのアンケート
※「Yahoo!クラウドソーシング」(https://crowdsourcing.yahoo.co.jp/)を活用
【紀尾井町戦略研究所株式会社(KSI:https://www.ksi-corp.jp/)について】
KSIは2017年にZホールディングス株式会社の子会社として設立され、2020年4月に独立した民間シンクタンク・コンサルティング企業です。代表取締役の別所直哉は、1999年よりヤフー株式会社(現Zホールディングス株式会社)の法務責任者として、Yahoo! JAPANが新規サービスを立ち上げるにあたり大変重要な役割を担ってきました。その中で培った幅広いネットワークや政策提言活動を通じて得られた知見をもとに、新産業に挑戦する企業に対して政策活動やリスクマネジメントのサポートなど、パブリックアフェアーズ領域で総合的なコンサルティング行っているほか、社会に貢献していくという方針を軸に多様なサービスを提供しています。
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記事引用:PR TIMES「2024年問題「内容理解している」42% — 物流や建設の人手不足「労働環境改善を」最多、医師不足や休診で支障許容できる59% —」