日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者などを対象に実施した「2024年度 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート」の結果を発表します。
1.調査結果サマリー
(1)半数以上が中期的(3年~5年)な経営戦略・経営計画を策定・公表しており、さらにその半数以上は「長期的な経営戦略」も策定・公表していることが分かりました。
(2)約4割の企業が最高財務責任者(CFO)を配置している一方で、約4割は「(CFOが)いない/当面採用(育成)する予定はない」と回答しています。
(3)売上高が大きい企業ほど、「人的資本」と「気候変動対策」に注力していることが分かりました。また、約7割が「働き方改革」、約6割が「社員エンゲージメント調査」に取り組んでいるという結果になりました。
2.各データ詳細
(1)半数以上が中期的(3年~5年)経営戦略・経営計画を策定。
52.7%が「中期的(3年~5年)な経営戦略や経営計画を策定し、社外に公表している」と回答しました。中期的な経営戦略および計画策定は経営の不確実性を下げるとともに、透明性の向上に繋がり、企業価値向上に寄与します。
また、33.9%の企業は「策定しているが社外には公開していない」と回答しておりますが、策定は内部での戦略実行に効果的であるものの、外部への情報発信も重要です。「策定していない」「今後も策定する予定はない」と回答した企業は合計で13.5%に。持続的成長のために戦略立案が急務です。
(2)中期経営戦略を策定・公表する企業の半数以上は「長期的な経営戦略」も策定・公表。
「中期的な経営戦略を策定し、社外に公表している」企業のうち、54.1%が「長期的な経営戦略も策定し、社外に公表している」と回答しました。一方で、「中期的な経営戦略を策定しているが社外には公開していない」企業では、長期計画を策定・公表している企業は1.6%に留まりました。
中期的な経営戦略を公表している企業ほど、長期的な計画を公表している割合が多く、ステークホルダーとの情報の非対称性の解消を目指した透明性を高める努力を行っていることがうかがえます。
(3)約4割の企業がCFOを配置している一方で、約4割は「当面採用する予定はない」と回答。
財務戦略を主管するCFOが社内に存在する企業は全体の40.3%であることが分かりました。一方で、11.3%の企業はCFOがいるものの十分に機能していないと回答しています。また、38.7%の企業は「いない/CFOを当面採用(育成)する予定はない」と回答しています。
(4)企業価値向上にはCFOの存在とその適切な機能が不可欠!
CFOが存在し機能している企業は、CFOが存在しない企業と比べて「投資回収期間法」(42.7%)や「投下資本利益率(ROIC)」(32.0%)、「内部収益率(IRR)」(24.0%)を重視しているという結果になりました。このことから、CFOが存在する企業では、資本効率や収益性を重視した投資判断が行われており、財務戦略の整備が進んでいることが分かります。
一方で、CFOが存在しない企業は「投資判断基準が存在しない」(32.2%)という回答が多く、統一された投資判断基準が欠如していることで、投資判断の一貫性や精度に課題があると考えられます。したがって、企業価値向上にはCFOの存在とその適切な機能が不可欠であると言えます。
(5)企業価値向上に向けての経営戦略として、6割以上が「人的資本の充実」を重視。
「企業価値向上に向けての経営戦略」として、「人的資本戦略の充実」(60.8%)が最も重視されていることが分かりました。これは、優れた人材の確保と育成が企業価値向上に直結すると考えられているためであると推察できます。次に多かったのは「事業ポートフォリオの見直し」(47.8%)であり、これは経営資源の最適配置と成長分野への集中が求められていることを示しています。
「価値創造ストーリーの策定」(46.8%)も重要視されており、企業のビジョンや使命を明確にすることで、ステークホルダーとの信頼関係を強化する狙いがあると言えます。また、23.1%の企業が「M&A戦略」を重要と考えており、これも成長戦略の一環として注目されております。これらの結果より、人的資本の充実と戦略的な資源配分が企業価値向上において重要な要素であることが示唆されています。
(6)売上高が大きい企業ほど、「人的資本」と「気候変動対策」に注力。
売上高1,000億円以上の企業は「人的資本(ダイバーシティー含む)」(27.8%)や「気候変動(TCFD、カーボンニュートラル)」(22.2%)を重視していることが分かりました。これらの企業は、多様性と持続可能な環境対策に注力し、高い企業価値を維持していることが示唆されます。一方、売上高が50億円未満の企業では、「人的資本」(22.8%)や「従業員の健康と安全」(22.8%)を重視しています。これらの企業は、人材の多様性と働き方の見直しに力を入れているものの、気候変動対策への取り組みは相対的に低いです。売上高が500億円~1,000億円未満の企業も、「人的資本」(27.9%)や「気候変動」(21.3%)を重視しており、大企業と同様の傾向が見られます。以上より、売上高が大きい企業ほど、人的資本と気候変動対策に注力していることがうかがえます。
(7)約7割が「働き方改革」、約6割が「社員エンゲージメント調査」に取り組んでいる。
人的資本に関する取り組みの設問では、「働き方改革(テレワークなど)」(68.3%)が最多であり、次いで「社員エンゲージメント調査」(57.5%)が続きました。これにより、柔軟な働き方と従業員の意識向上が重視されていることが分かります。一方で、「人的資本KPIの設定とマネジメント」(23.7%)や「人材ポートフォリオ計画の策定と運用」(9.7%)といった具体的な数値目標や計画の設定は、比較的少ない回答数になりました。総じて、企業は柔軟な働き方と従業員の意識向上に注力しているものの、数値目標や具体的な計画の設定にはさらなる取り組みが求められます。
3.専門コンサルタントによる総括
近年の上場企業における企業価値向上の取り組みは多岐にわたります。これは、従来の財務価値の向上に加えて、ESGの観点、つまり環境負荷の低減、社会貢献活動、ガバナンスの強化など、ステークホルダーから求められることが多様化しているためです。このような背景から、持続可能な経営を推進する企業が増加していると言えます。
企業価値向上に向けた取り組みは、企業の持続可能な成長と競争力の強化に不可欠です。まず、財務戦略においては、CFOの存在が企業価値向上に大きく寄与していることが示されております。特に株価純資産倍率(PBR)が高い企業ほどCFOの役割が明確であり、戦略的な財務管理が行われております。逆に、CFOが存在しない、または十分に機能していない企業は、財務戦略の欠如が企業価値の向上を妨げている可能性があります。
ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも重要な要素です。企業は、人的資本(ダイバーシティーを含む)や気候変動、コーポレート・ガバナンスなど、幅広いESGテーマに取り組んでおり、特にPBRの高い企業はこれらの取り組みを積極的に行っており、ESG情報の開示も多様な媒体を通じて行われております。これによって企業の透明性と信頼性を高め、投資家やステークホルダーとの関係強化に繋げております。
〈総括 執筆者プロフィール〉
株式会社タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
エグゼクティブパートナー 鈴村 幸宏
メガバンクにて融資・外為・デリバティブ等法人担当を経て、当社入社。「企業を愛し企業繁栄に奉仕する」を信条とし、経営戦略・収益戦略を中心に幅広いコンサルティングを展開。企業を赤字体質から黒字体質にV字回復させる収益構造改革、成長企業に対するホールディングス化とグループ経営推進支援、ファイナンス視点による企業価値向上、投資判断、M&A支援の実績を多数持つ。また、オーナー企業に寄り添った事業承継支援、経営者(後継者)育成も数多く手掛け、高い評価と信頼を得ている。
株式会社タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー 公文 拓真
銀行にて、リテールからホールセールまでを経験。当社入社後は管理会計を中心とした財務戦略や、ホールディングによる資本戦略策定などに従事。企業価値向上の観点による中期経営計画策定など、コーポレートファイナンス分野における上場企業向けのコンサルティング支援を得意とする。
4.関連リンク
・「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート」資料ダウンロードページ
https://www.tanabeconsulting.co.jp/finance/document/detail29.html
5.調査概要
[調査対象] 全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者など
[調査期間] 2024年5月13日~2024年5月31日
[調査エリア]全国
[有効回答数]計186件
※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
タナベコンサルティンググループ(TCG)について
TCGは、1957年に創業し、67年の歴史と実績を有する日本の経営コンサルティングのパイオニアです。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、現在地から未来の社会に向けた貢献価値として、「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパスを定めています。
大企業から中堅・中規模企業、行政/公共のトップマネジメント(経営層やリーダー)を主要クライアントとし、創業以来17,000社以上の支援実績を有しています。
経営コンサルティング領域として、戦略策定(上流)から現場におけるDXなどの経営オペレーションの実装・実行(中流~下流)まで、企業経営を一気通貫で支援できる経営コンサルティングモデルを全国地域密着で構築しています。そして、「All for Client Success-すべてはクライアントの成功のために」という徹底したクライアント中心主義のもと、個社ごとの経営課題に合わせて複数名のプロフェッショナルコンサルタントを選定してチームを組成する「チームコンサルティング」を提供しています。
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