働き方の多様性が求められる現在、労働環境の整備は人手不足解消の重要なキーポイントとなっています。
今回は、労働環境を整えることで得られるメリット、失敗や成功事例をご紹介します。
この記事を見て、従業員がどのような環境を求めているのか、ヒントになれば幸いです。
セブン-イレブンの24時間営業問題にみる「働きづらい労働環境」とは
今年2月、東大阪市にあるセブン-イレブンの店舗が19時間に営業時間を短縮したことで、本部と激しく対立した報道は記憶に新しいかと思います。
同店のオーナーが営業時間を短縮したのは、深刻な人手不足が原因です。
慢性的なアルバイト不足で、過労による命の危険を感じたオーナーは、営業時間短縮を決行。
このような危機的状況にも関わらず、本部は24時間営業再開と違約金請求という強硬な姿勢を示したため、批判が殺到する事態となりました。
契約不履行が明らかとなった場合、オーナー側へ契約解除や違約金請求をすること自体、違法ではありませんが、世論の反響を受け、セブン-イレブンでは一部店舗で24時間営業の見直しに向けた営業時間短縮実験を開始しました。
少子高齢化が加速し、労働人口が減少し続けている現在、24時間営業自体が難しくなっており、他コンビニチェーンでも営業時間短縮の実験が始まっています。
また、長時間労働問題は、コンビニに限らず人手不足業界で多く発生しており、『働いている人の仕事量が増加』⇒『労働環境が悪化』⇒『人手が集まらなくなる』という負のループに陥っている状況が多く見受けられます。
働きやすい環境で得られるメリット
労働環境の改善は、働いている人すべてが望むことでしょう。環境改善により得られるメリットは主に下記の3つが挙げられます。
労働意欲向上
労働環境が整うと働きやすくなるため、生産性の向上や労働に対する意識が高まります。
離職率低下
賃金の高い職場でも、労働環境が整っていないと人は定着しません。
柔軟な対応をしてもらえる働きやすい環境は、離職率の低下に大きな効果があります。
また、人員が定着することでスキルの継承などがスムーズにでき、企業全体の品質向上も期待できます。
企業評価の向上
働き方改革が推進されているように、社会的にも労働環境問題は関心の高い問題です。
環境整備によって社会的評価が高まれば、厳しい採用市場でも強いアピールポイントとなります。
適切なコミュニケーション、人事対応の在り方とは
人の集合体である会社に“人間関係”問題はつきものです。
離職理由の上位には常に人間関係がランクインしており、働く人にとっていかにコミュニケーション重要なポイントになっているかが分かります。
実は、コミュニケーションに課題を感じている企業は多く、環境改善には「課題がどこにあるのか」知る必要があります。
上司とのコミュニケーション課題改善
・定期ミーティング
ミーティング・面談会などを設けることで、経営者の考えを従業員に周知することができる。
トップダウンだけではなく、従業員の意見やアイディアを聞くことが重要です。
・メンター制度
新入社員1人に対して、指導役となる先輩社員が仕事の指導・育成をする他、社会生活の不安などについても相談に乗る教育制度。
新入社員と年齢が近いなど、話しやすさを感じるような社員に任命することが大切です。
同僚とのコミュニケーション課題改善
・研修制度
研修は実務面でのスキルアップ以外にも、社内のコミュニケーションを図る効果がある。
研修に参加すると同じ目的を共有するため、一体感を生まれて、自然とコミュニケーションを取ることができます。
・食事会
同期や職場の同僚と集まり、食事会を開催することで円滑なコミュニケーションが期待できる。
新入社員を気軽に行けるランチなどへ誘うと、早く職場に馴染めるようになります。
他部署とのコミュニケーション課題改善
・フリーアドレス
オフィスで自席を持たないフリーアドレスを導入する企業が増加中。
自身の落ち着く場所で仕事ができるため、生産性の向上が期待される他、他部署とのコミュニケーションを活発に取るようになる効果があります。
・社内イベント
社員旅行や社内コンテストなどのイベント開催。
関わりのなかった他部署とも接することができ、コミュニケーション促進に繋がります。
ただ、イベントが多すぎたり参加を強制すると逆効果なので注意が必要です。
働きやすい労働環境の改善事例
他の企業ではどのように労働環境を改善したのか、事例をご紹介いたします。
大和田カーボン工業株式会社
・高齢者雇用
定年後、65歳まで一年更新で働ける制度を導入し、専門知識を活かした業務を行う他、知識の伝承もされている。
・ワーク・ライフ・バランス
管理職を中心としたワーク・ライフ・バランスの講習会実施で、上層部の認識を高めると共に、重要性を全社員に周知。
『週1回のNO残業デー』や『夏季休暇制度』などを導入。
・人材育成
OJTを中心として、多様な仕事に対応できる人材育成の取り組み。
仕事に集中できる環境が整備され、生産性と社員の定着率が向上し、働きやすい環境に改善した。
株式会社ヒューマンラボ
・女性が働きやすい環境づくりに注力
フレックスタイム制や在宅勤務の推進、ワーク・ライフ・バランスへの取り組みなどを行っている。
雇用形態に関わらず、月例ミーティングや経営者との対話など、自由に発言できる機会を設けた。
全従業員が現状を把握し、協力して問題解決に当たっている。
コミュニケーションを活発に取り合える風土作りと、多様な働き方に対応できる体制を整えることで、平成20年~平成25年まで離職した社員はゼロと激減した。
出典:労働環境改善の取組み好事例集 大阪府総合労働事務所
まとめ
労働環境の失敗や成功事例を見てみると、働きやすい環境づくりをすることが離職率低下や生産性の向上に繋がっていることがわかります。
労働環境に対する就労者の関心も高まっており、今後さらに厳しくなる採用市場を勝ち抜くために、重要な指標と言えます。
『多様性を認めた、働きやすい環境整備』の施策を、少しずつ取り入れていきたいものですね。