このページでは、採用、育成、組織開発など人事領域のさまざまなテーマについて、株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健さんに解説していただいています。

 

人事領域は、会社ごとに環境や課題が異なるため、担当者自身が積極的に情報を吸収していくことが求められます。

 

ぜひ、参考にお読みいただき、普段の業務に生かしていただければ幸いです。

 

採用のブルーオーシャン戦略である「ポテンシャル採用」

採用活動で考えるべきポイントの1つに、スキルや実績がどれくらい顕在的な人材を狙うか、という候補者ターゲティングの問題があります。

 

これは大きく分けて、今すでに目に見えている実績やスキルをもっている人材を採用する「即戦力採用」と、これに対してまだ顕在的な実績を持たない候補者を採用する「ポテンシャル採用」とに分かれます。

 

まさにマーケティングの世界で行われている、どの市場を狙うか?というターゲティングと同様です。

 

実は、採用の世界においても、採用市場には、レッドオーシャン(激戦市場)とブルーオーシャン(不戦市場)が存在します。

 

例えば、新卒を例にターゲティングを考えてみます。

 

市場全体の新卒学生を

①自社へのフィット度

②就活への意識の高さ(早くから就活を始めたり、何社も受けていること)

という二軸でセグメンテーションした場合、しばしば多くの企業で、自社へのフィット度合いが高く、就活への意識も高い層を知らず知らずのうちに狙いにいっていることがよく見受けられます。

 

しかし、この層は、自社だけでなくどの企業も狙いにいっている層ですので、競合がひしめくレッドオーシャン市場となります。

 

自社に何か差別化された魅力があったり、採用ブランド力が高くなければ、競合に勝ってレッドオーシャン市場を勝ち抜くことはできません。

 

まさに「労多くして益少なし」な市場です。

 

加えて、本質的には、採用するかどうかは自社へフィットしているか否か“だけ”が重要であるはずのため、本来であれば、「自社へのフィット度が高いが就活意識は低い層」が、競合も少なく比較的採用しやすい、まさにブルーオーシャン市場で、本当に狙うべき層なのです。

 

冒頭で挙げた「ポテンシャル採用」は、まさにブルーオーシャン市場。

 

ポテンシャル採用を行うことはブルーオーシャン戦略を採ることです。

 

しかし、ポテンシャルを狙うというのは、なにも就活意識の高さだけではありません。

 

ポテンシャル採用は、“候補者が顕在的な実績を持たないこと”ですので、新卒では派手な実績を持っているわけではない学生を狙うこともそうですし、そもそも自社の採用を中途採用ではなく、新卒採用に特化させること自体もポテンシャル採用といってもよいでしょう。

 

例えば、人材獲得競争が熾烈なエンジニア職を採用するのに、中途採用であれば膨大な採用コストをかけて1人採れるか採れないか、という難しいものを、新卒の文系学生をエンジニア職として大量に採用し、一から育てていく、という企業も実際に存在します。

 

但し、相応のコストがかかる覚悟も必要

またポテンシャル採用の効能はそれだけではありません。

 

本来同じポテンシャルを持っていても誰の目から見てもすでに華々しい実績を持っている人材は、レッドオーシャンに位置するため、自社の採用ブランド力以上の人材はより採用ブランド力がある企業にとられてしまいます。

 

しかし、その力がいまだ顕在化していないポテンシャル層は競合の息がかからないため、自社の採用ブランド力以上の人材を獲得できるのです。

 

またポテンシャル層は必然的に市場規模も大きく、大量採用、急募などにも向いています。

 

候補者は数多の企業からオファーがあるわけではないため、実際の選考でも辞退率の減少など、採用活動効率が高まります。

 

このような良いところがたくさんあるポテンシャル採用ですが、実はその反面、難易度の高い採用手法でもあります。

 

まず他社が目をかけないポテンシャル人材を見極める必要があるため、面接官には見極めの熟練が求められます。

 

新卒採用が本当はすごく難しいといわれる所以はここにあります。

 

また、なによりポテンシャル人材のため入社後すぐに成果を挙げてくれるわけではありません。

 

入社してから戦力になるまでの間にタイムラグがあるのです。

 

このように、ポテンシャル採用にはお金以外の様々なコストが発生します。

 

入社後の育成方針や評価制度を方向合わせする

逆に言うと、このように難しいポテンシャル採用だからこそ、完璧に成功させているといえる企業は少なく、これをうまくまわせることが、すなわち企業のゆるぎない差別化要因となるのです。

 

そのためには、ポテンシャル層が入社した後の、教育体制の整備が重要です。

 

せっかくポテンシャルを見込んで採用した人材も、いざ入社した後は放っておかれて勝手に育ってくれ、というのは、決して人材開発の方向性が一貫しているとはいえません。

 

ポテンシャルを採用するからには、育成にもコストやパワーをかけるべきなのです。

 

また、評価制度の方針もここに合わせる必要があります。

 

ポテンシャル採用は、言い換えれば大器晩成型の人材を採用しているということ。

 

戦力化するまでどうしても時間がかかります。

 

それなのに、入社後すぐに短期的成果のみで評価をしてしまうことは、モチベーションを阻害してしまうことにもなりかねません。

 

むしろこうした人材には、入社後半年間、もしくは1年間は評価を据え置き(全員一律5段階中3としたり、賞与は一律固定)とするのが良いかと思います。

 

これはポテンシャル採用で採用した中途社員においても同様です。

 

このように、ポテンシャル採用を行う企業は、採用後の人事諸施策の方向性を一致させておくことが、ポテンシャル採用成功の非常に重要なファクターとなるのです。

 

著者プロフィール

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

 

児童心理治療施設(旧情緒障害児短期治療施設)での約1年半の現場経験を経て、心理学が日常生活に困難をきたす様々な障害の治療に活きる現場を体験。

その後、心理学を逆に人間の可能性を最大化する方へ活かしたいと感じ、現職である人事コンサルティングに転向。

 

現在は新卒採用・中途採用をメインとして、育成教育配置、評価報酬制度などのコンサルティングに幅広く従事。

 

そのほかに人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」運営、人事向けセミナー、若手・新入社員向けキャリアワークショップなども多数実施。

 

■ 株式会社人材研究所
2011年設立。代表取締役社長 曽和 利光

世の中のあらゆる組織における「人と組織の可能性の最大化」を目指している人事コンサルティング会社。

 

組織人事コンサルティング、採用コンサルティング、採用業務代行(RPO)、各種トレーニング(面接官トレーニング、評価者訓練、新入社員研修等)などを提供。

HP:株式会社人材研究所

 

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