仕事を手伝ってもらった同僚に、感謝の気持ちと報酬を送るピアボーナス。
アメリカではすでに主流となっており、日本でもGoogleやメルカリなど、多くの企業で導入しています。
日常業務を現場の視点で評価し合えるピアボーナスは、新しい人事評価制度として注目を集めています。
今回はピアボーナスのメリット・デメリット、運用する際のコツなどをご紹介していきます。
褒められると貰える給与「ピアボーナス」について
ピアボーナスとは、peer(仲間や同僚)とbonus(報酬)を組み合わせた言葉です。
日常業務で評価したいと感じた行動や成果に対して、従業員同士が小額の金銭やポイントなどを送り合う仕組みです。
ピアボーナスは給与や賞与とは別に、評価に応じたボーナスが支給されることから『第3の給与』とも呼ばれています。
仕事を手伝ってもらった時など、数値では測れない従業員の貢献度も可視化されるため、これまで把握できなかった細かな点まで評価できるのが特徴です。
また、労働力人口の減少やAI技術の向上によって、労働者の価値観や働き方が多様化している現在、企業は働き手の要望に対応できるような環境整備が求められています。
そんな中、ピアボーナスは従業員のエンゲージメントを向上させ、人材流出を防ぐための新しい人事評価制度として注目を集めています。
ピアボーナスのメリット・デメリット
メリット
評価指標が広がる
業績などの数字では判断できない業務にも対応できるため、現場でしか分からない貢献に対しても評価することができます。
従来の定量制評価では、対応できなかった細かな点まで把握することが可能なため、評価に対する従業員の納得感を得られます。
エンゲージメントが向上する
企業理念や行動方針をピアボーナスの評価基準に落とし込むことで、企業の求めている行動や目標が明確化されます。
自然と企業理念に沿った行動をするようになり、従業員のエンゲージメントが向上します。
モチベーションが向上する
小額でも金銭やポイントを得られれば、モチベーションが上がり、仕事に対する自信を持つことにも繋がります。
また、仕事の成果や貢献を評価し合うことで社内コミュニケーションも活性化し、従業員の承認欲求が満たされます。
デメリット
導入にコストがかかる
ピアボーナスを利用するには、専用サービスを導入する必要があります。
導入のための初期費用や毎月支払う利用料の他、ピアボーナスを現金支給する場合、その支給額も会社が支払うことになります。
付与されたポイントなどが忘れられる可能性も
商品券やポイントといった金銭以外のボーナスを付与する場合、付与されたまま放置されてしまう可能性があります。
ピアボーナスが普及しているアメリカでは、付与されたポイントがそのまま放置されていたり、商品券が未使用で残されていたりするケースが多く発生しています。
無駄遣いにならないよう、従業員に積極的な呼びかけを行うなどの対策が必要です。
ピアボーナスツールを導入する企業が増加中
Googleでは部門を超えた社員間の貢献を評価するために、互いのマネージャーから承認をもらった上で、ボーナスを送り合うという制度を導入しています。
ピアボーナスは他の社員にも内容が分かるよう、ボーナスにメッセージを付けて相手に送られます。
ボーナスを出したいと思った論理的な理由をマネージャーへ報告するため、評価基準がブレることなく、客観的に判断できます。
メルカリ
メルカリでは、拠点を超えてリアルタイムに褒め合うことができる会社を目指し、Uniposを利用したピアボーナス制度『メルチップ』を導入しています。
メッセージと共に貢献度に応じたポイントを送れるようになっており、手持ちのポイントがなくなってしまった時でもメッセージを投稿できるため、メッセージを見た方からポイントを集めることも可能です。
気軽にポイントを送り合うことができるため、部署間を超えた社内コミュニケーションの活性化にも繋がっています。
また、ピアボーナス制度浸透のために、最も多くメルチップを送った方と、送られた方を表彰する制度が設けられています。
ピアボーナスを運用する際のコツ・注意点
評価の指標を明確に
ピアボーナスを導入する場合、企業理念や行動方針をベースとした評価基準を設定することが重要です。
小額とはいえ、ピアボーナスは成果に対する報酬なので、その性質を利用して『ポイント稼ぎ』が起こらないとは言えません。
お互いが客観的に評価できるよう、明確な評価基準を設定することで、納得感を得られます。
表彰制度
ピアボーナスに関する表彰制度を作ることで、積極的に利用してもらえるようになります。
1ヶ月間など期間を区切って、「最も多く評価した社員と評価された社員を表彰する」といった制度を作ると、定着させていくことができます。
使いやすいツール
ピアボーナス制度を浸透させるには、ツールの操作性が重要です。
コミュニケーションの活性化や従業員のモチベーション向上のため、気軽に利用できるツールでないと、肝心の従業員が使ってくれないという可能性も考えられます。
まとめ
企業理念をピアボーナス制度に落とし込むなど、評価基準を明確にすることで、エンゲージメント向上が期待できます。
また、褒め合う文化が作られることで社内コミュニケーションも活性化され、離職率低下にも効果があると考えられます。
労働者が減少している現在、評価制度を充実させることは企業アピールになります。
人材流出防止や人材確保施策の一つとして、気軽に利用できるピアボーナス制度を検討されてみてはいかがでしょうか。