整理解雇に厳しい規制のある日本では、労働者が不当解雇されないよう手厚く守られています。
しかし、非正規社員よりも正規社員の整理解雇規制が厳しいなどの歪んだ二重構造や、企業の負担増加といった様々な要因から、整理解雇の緩和が検討されるようになりました。
もし、今後規制緩和が実現しても、人材やノウハウの流出など様々な課題がありますよね。
今回は、人材流出などに効果の見込まれる『レイオフ』について、ご紹介していきます。
レイオフって何?レイオフの必要性について
レイオフとは、再雇用を前提とした、業績悪化による『一時的な解雇』のことを言います。
業績不振の中、生産性の低い従業員を雇い続けることは、企業にとって負担が大きいなどの理由から、解雇規制緩和が検討されています。
解雇規制緩和が実現されれば、人件費を抑えつつ、ノウハウや人材流出を防げるレイオフは、有効な手段と言えるでしょう。
日本のレイオフ事情
労働者を守るための厳しい法規制により、おいそれとレイオフを実施することはできません。
そのため、レイオフと似たような制度の『一時帰休』を利用する企業もあります。
一時帰休とは雇用関係を保った状態で従業員を休業させることで、平均賃金の6割以上の手当を支払わなくてはなりません。
レイオフとリストラの違い
レイオフもリストラも、人件費抑制のために従業員を解雇する手法です。
では、具体的にどのような違いがあるのか見てみましょう。
レイオフ
企業の業績が悪化したとき、再雇用前提で行う一時的な解雇。
従業員の保有しているノウハウなどを流出させないために行う人件費抑制の手法です。
レイオフは、勤続年数の短い従業員から行われ、再雇用をする際には勤続年数の長い従業員が優先される『先住制度』を利用するケースが多いです。
リストラ
リストラクチャリングの略で、本来は再構築という意味があります。
再構築の一つの手段である人員整理や解雇というマイナス面が強調されたことで、一般的には『人員削減による解雇』と解釈されています。
企業の業績が悪化したとき、人件費を抑える目的で行われることは、どちらも共通しています。
レイオフは『人材流出を防ぐ目的で、再雇用が前提』であることが大きな違いです。
ただし、再雇用されるかどうかは業績次第なので、雇用されない場合もあることを留意しておきましょう。
レイオフの事例
アメリカやカナダでは人材流出やノウハウの流出を防止するため、従業員の技量に頼ることの多い製造業などで、よくレイオフが行われています。
ここでは、海外企業で実際に行われた事例をご紹介します。
Tesla
電気自動車などの開発、製造・販売を行う自動車メーカーのTeslaでは、2018年にコスト削減のため、従業員の約9%をレイオフすると発表しました。
Apple
2019年カリフォルニア州の自動車部門で働いていた技術職を中心に、従業員190人をレイオフすると発表。
その大部分が自動運転車開発プロジェクト『Titan』に携わっていたメンバーであると報じられています。
intel
半導体メーカーのintelでは、2007年マーケティング部門、情報技術部門で1万人以上のレイオフが実施されました。
レイオフを正しく行うための注意点
レイオフは一時的であっても解雇するため、対象期間中の雇用関係はなくなります。
先述している通り、日本では業績悪化など企業側に理由のある解雇整理に、厳しい条件が定められています。
解雇整理を行うためには、下記の条件を満たさなくてはなりません。
・会社存続のために人員削減が必要であること
・解雇回避のために行った企業努力に相当性が認められること
・客観的な基準で解雇対象者が選定されたこと
・解雇対象者への十分な説明と理解を得られたこと
規則違反の解雇と判断された場合、労働局などから解雇撤回を言い渡される可能性があるため、注意が必要です。
また、レイオフを行う場合は、対象者からの納得を得る必要があります。
解雇を言い渡される従業員へ十分な配慮をすると同時に、議事録などの記録を残して説明の証拠を残しておきましょう。
まとめ
雇用関係を維持したままの一次帰休と違い、期間中は雇用関係がなくなるレイオフは、人件費削減に大きな効果が見込まれます。
業績悪化時の企業にとって、メリットも大きいですが、対象者がそのまま別の企業へ就職してしまうリスクもあります。
また、対象者は精神的にも経済的にも大きなダメージを受けるため、実施は慎重に検討しなければなりません。
今後のことを考えると、企業はレイオフについて理解を深める必要があると言えますね。