採用代行は、採用活動に関する様々な業務を外部へ委託することです。
効率的な採用活動が期待できるため、注目されていますが、「採用代行は委託募集にあたるのではないか?」「違法性はないの?」と不安に感じている人も多いでしょう。
本記事では、採用代行と委託募集の関係について解説いたします。
委託募集の概要や採用代行の違法性、委託募集の許可の取り方についてご紹介しますので、ぜひご覧ください。
委託募集とは?
委託募集とは、労働者の募集を第三者(自社従業員以外)に委託することです。
労働者募集を第三者へ委託する場合、その適正を事前に確認する必要があるため、許可制となっています。(職業安定法第36条1項、第60条、施行規則第37条1項3号)
そのため、労働者の募集や選考といった採用業務を外部へ委託する場合、
- 厚生労働大臣
- 就業地を管轄する都道府県労働局長
どちらかの許可を受けなくてはなりません。
募集主と募集受託者の両方が「委託募集の許可基準」をクリアすることで、許可されます。
採用代行は委託募集にあたるのか?違法性は?
労働者の募集・採用に関する実務を企業の代わりに行う採用代行サービスは、「委託募集」にあたります。
そのため、採用業務を外部へ委託するのであれば、厚生労働大臣か、就業地を管轄している労働局長から許可を取る必要があります。
つまり、採用代行は委託募集にあたりますが、ちゃんと許可を取っていれば違法性はないのです。
ただし、求人企業が募集や選考を行い、採用試験問題の作成・実施を外部へ委託するのみであれば、「事業主以外の第三者が募集を行った」とまでは言えないため、委託募集にはあたらないと考えられます。
また、職業紹介事業の許可を受けている事業者に募集を委託し、当該事業者が求職者を募集して、その中から人材を紹介された場合は、「職業紹介」にあたるため、原則として委託募集の許可は必要ありません。
委託募集の許認可の取り方
採用代行サービスを利用する場合、費用が発生します。
そのため、ここでは「第三者に報酬を支払って委託募集する場合」の許可の取り方についてご紹介します。
許可基準
委託募集は、下記の基準に基づいて審査され、許可・不許可、条件付きの許可といった判断がなされます。
【委託募集の許可基準】
<募集主に関する要件>
- 事業主の徳性
職業安定法その他、次にあげる労働関係法令に係る重大な違反がないこと
1) 労働基準法第117条、第118条第1項(同法第6条、第56条の規定に係る部分に限る)および、これらの規定に係る同法第121条の規定
2)労働者派遣事業の適正な運営の確保、および派遣労働者の保護等に関する法律第58条~第62条、附則第6項・第7項の規定
3)港湾労働法第48条、第49条(第1号を除く)、第51条(第2号・第3号に係る部分に限る)の規定、並びにこれらの規定に係る同法第52条の規定
4)建設労働者の雇用改善等に関する法律第12条の規定(第1号に係る部分に限る)、同
条の規定に係る同法第13条の規定
5)中小企業における労働力の確保、および良好な雇用機会創出のための雇用管理の改善促進に関する法律第19条、第20条、第21条(第1号に係る部分に限る)の規定、並びにこれらの規定に係る同法第22条の規定
6)育児・介護休業等育児または家族介護を行う、労働者の福祉に関する法律第62条、第63条、第65条の規定と、これらの規定に係る同法第66条の規定
7)林業労働力の確保の促進に関する法律第32条、第33条、第34条(第1号に係る部分に限る)、並びにこれらの規定に係る同法第35条の規定
- 募集に係る労働条件
1)募集に係る労働条件が適正であること
イ 法令に違反するものでないこと(賃金の毎月払い原則等)
ロ 同地域における同業種の賃金水準に比較し、著しく低くないこと
2)募集に係る業務内容および労働条件が明示されていること
法第5条の3の規定による明示を適切に行うこと。また、労働条件等の明示について指針に定めがあるものについては、当該定めの要件を満たすこと。
3)適用事業所については社会・労働保険に適切に加入していること
- 報酬
厚生労働大臣の認可を受けた報酬以外の財物を与えるものでないものとすること
<募集受託者に関する要件>
- 職業安定法その他次に掲げる労働関係法令に係る重大な違反がないものとすること
1)労働基準法第117条、第118条第1項(同法第6条、第56条の規定に係る部分に限
る)、これらの規定に係る同法121条の規定
2)労働者派遣事業の適正な運営の確保、および派遣労働者の保護等に関する法律第58条~第62条まで、附則第6項および第7項の規定
3)港湾労働法第48条、第49条(第1号を除く)、第51条(第2号、第3号に係る部分に限る)の規定、並びにこれらの規定に係る同法第52条の規定
4)建設労働者の雇用の改善等に関する法律第12条の規定(第1号に係る部分に限る)、同条の規定に係る同法第13条の規定
5)中小企業における労働力の確保、および良好な雇用機会創出のための雇用管理の改善促進に関する法律第19条、第20条、第21条(第1号に係る部分に限る)の規定、並びに
これらの規定に係る同法第22条の規定
6)育児・介護休業等育児または家族介護を行う、労働者の福祉に関する法律第62条、第63条、第65条の規定、およびこれらの規定に係る同法第66条の規定
7)林業労働力の確保の促進に関する法律第32条、第33条、第34条(第1号に係る部分に
限る)、並びにこれらの規定に係る同法第35条の規定
- 成年被後見人または被保佐人でないこと
- 労働関係法令および募集内容、職種に関して十分な知識を有している者であること
<その他>
募集を行おうとする期間が1年を超えないものであるものとすること
【報酬の認可基準】
報酬が、支払われた賃金額の100分の50(同一の者に引き続き1年を超えて雇用される場合は、1年間の雇用にかかわる賃金額の100分の50)を超えるときは、委託募集に必要となる経費が特に高額となる特段の事情がある場合を除き、認可しない。
厚生労働省「委託募集」
申請の手続き
募集主は、「委託募集許可等申請書(様式第3号)」に必要事項を記載した上で、都道府県労働局長へ提出します。
また、申請の際は、委託募集許可等申請書の内容を証明する帳簿や、書類を同時に提出する必要があります。
【提出期限】
- 厚生労働大臣の許可に係るもの:募集開始月の21日前まで(正本と写しを1部ずつ提出)
- 都道府県労働局長の許可に係るもの:募集開始月の14日前まで(正本1部を提出)
【厚生労働大臣の許可に係わるもの】
- 一の都道府県からの募集人員が30人以上
- 募集人員総数が100人以上
※一の募集事業所ごと
【就業地の都道府県労働局長の許可に係わるもの】
上記以外
「募集開始月の2~3週間前までに提出すること」とされていますが、書類の不備など、何らかのトラブルが発生した場合、間に合わないことも考えられます。
最低でも募集開始月の1ヶ月以上前には提出できるよう、できる限り早めに準備しておきましょう。
また、許可の申請手続きは、募集主の代わりに募集受託者(採用代行業者)が行うことも認められています。
面倒な場合は、委託する代行業者に相談してみましょう。
採用代行は違法ではない!しっかり許可を取ってから依頼しましょう。
採用代行は、委託募集に該当しますが、しっかりと許可を取っていれば、違法性はありません。
ただし、委託募集の許可が必要ないケースもあります。
申請が必要かどうか判断しづらいため、採用代行サービスを利用する際は、委託先業者に確認すると安心です。
プロが採用活動に関わることで、自社の抱えている採用課題の解決に役立つため、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。