「採用において何を重視するか」は、企業によって異なりますが、早期離職の低下や生産性の向上を目指すなら、カルチャーマッチ採用が有効です。
この記事では、カルチャーマッチとは何か、なぜ早期離職や生産性向上に期待できるのか、について解説していきます。
その他にも、導入時のポイントや、カルチャーマッチ採用が重視されるようになった理由などをご紹介いたしますので、ぜひご覧ください。
カルチャーマッチ採用とは?
カルチャーマッチとは、社員や応募者が、社風や理念、ビジョンといった企業文化に共感していることです。
そして、企業文化とマッチしている応募者を積極的に採用することを「カルチャーマッチ採用」と言います。
また、カルチャーマッチの対義語として「スキルマッチ」があります。
スキルマッチとは、業務遂行に必要なスキルと、社員や応募者の持つスキルがマッチしていることです。
即戦力を期待することの多い中途採用では、スキルマッチ採用が重視される傾向にあります。
採用においては、どちらも重要な指標ですが、近年では、よりカルチャーマッチを重要する企業が増えています。
なぜなら、入社後は企業の価値観に沿った考え・行動が求められるため、カルチャーマッチしない人には、負担が大きいからです。
例えば、
-
個人の裁量が大きい企業
-
周囲と話し合いながら物事を決めていく企業
では、コミュニケーションの取り方や仕事の進め方が全く異なりますし、どちらがフィットするかは、人によって異なります。
そのため、スキルの高い人を採用できても、企業文化に馴染めないと十分に能力を発揮できませんし、早期離職にもつながります。
さらに、スキルは入社後の教育・研修で身につけられますが、その人の考え方や価値観を変えることは困難です。
このことから、採用においてカルチャーマッチは、非常に重要な指標と言えるでしょう。
カルチャーマッチ採用のメリット
カルチャーマッチ採用の主なメリットは、
- 離職率の低下
- 採用・教育コストの削減
- 生産性の向上
です。
離職率の低下
リクナビNEXTが行った退職理由の本音ランキングによると、
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)
引用:リクナビNEXT「転職理由と退職理由の本音ランキングBest10」
となっています。
「人間関係」や「経営者の考え」「社風」といった、企業文化に関する項目でのミスマッチを理由とした退職が多いです。
この結果からも明らかなように、価値観に相違がある状態からフィットさせるのは非常に困難であり、早期離職につながります。
そのため、カルチャーマッチ採用を行うことで、企業文化による離職を防ぐことができるのです。
採用・教育コストの削減
採用活動では、求人広告への掲載や人材エージェントの利用、説明会の開催、応募者対応から面接にいたるまで、様々な工程や費用が発生しますし、採用した社員が独り立ちするまでには、入社後の研修・教育が欠かせません。
早期離職されてしまうと、採用・教育にかかったコストが無駄になるだけでなく、改めて人員募集する必要性も出てくるため、余計にコストがかかります。
そのため、カルチャーマッチした人材を採用し、早期離職を防止することができれば、採用・教育にかかるコストを削減することができるのです。
生産性の向上
カルチャーマッチ採用を行うと、理念やビジョンといった、企業の価値観・方向性を理解し、それに共感した人材を獲得することができます。
こういった人材は、会社へのエンゲージメント(愛着・貢献心)が高まりやすいです。
エンゲージメントの高い社員は、「会社に貢献したい」「役に立ちたい」などの思いから、周囲と積極的にコミュニケーションを図ったり、創意工夫を行ったりと、自発的に行動するため、生産性の向上につながるのです。
カルチャーマッチ採用を導入するポイント
カルチャーマッチ採用の概要やメリットについての理解が深まったところで、自社でカルチャーマッチ採用を導入するには、どうしたらいいのでしょう。
カルチャーマッチ採用を導入する際は、
- 自社のカルチャーを言語化させる
- 応募者の価値観や行動特性を把握する
- 自社とのマッチ度を比較する
がポイントです
自社のカルチャーを言語化させる
カルチャーマッチ採用を導入するには、採用担当者や面接官が、自社のカルチャーを正しく理解している必要があります。
なぜなら、自社のカルチャーが理解できていないと、採用担当者や面接官は、応募者の価値観とのマッチ度を適切に判断できないからです。
カルチャーとは、「社員一人ひとりの価値観や行動特性の傾向」です。
そのため、自社社員の価値観や行動特性を把握し、その傾向を可視化することから始める必要があります。
自社社員の価値観や行動特性の把握は、「ヒトマワリ」や「mitsucari」などのサービスを利用すると、簡単に可視化できるため、おすすめです。
自社のカルチャーを言語化できるまで明確にし、それを社員にも伝えることで共通認識を持てるため、自社のブランディングや一体感の向上にもつながります。
応募者の価値観や行動特性を把握する
自社のカルチャーが明らかになったら、次は応募者の価値観や行動特性の把握です。
応募者の価値観は、
- どのような想いを持って働いているのか
- 仕事に何を求めているのか
- どのように成長し、何を成長と捉えているのか
を、面接などで確認することで把握できます。
面接で質問する際は、応募者の経験や実績にもとづいた回答が引き出せるような質問や、回答への深堀をすると、その場しのぎの回答を防げます。
また、「もしも、あなたが○○の状況に陥ったら、どういった対応を行いますか?」「また、それはなぜですか?」といった、仮説条件の質問もしてみましょう。
応募者の考え方や行動特性を把握しやすくなります。
自社とのマッチ度を比較する
応募者の価値観を把握できたら、自社のカルチャーとのマッチ度を比較しましょう。
自社のカルチャーとは適合しない考え方を持っている応募者の場合、パフォーマンスを十分に発揮できなかったり、成長スピードも遅くなったりする可能性があります。
ただし、カルチャーが完全一致するケースは珍しいため、あまりこだわりすぎてしまうと、採用機会の損失につながります。
カルチャーマッチ採用を判断する際は、応募者と自社の共通している項目や、似通っている部分がどの程度あるのかを見ていきましょう。
「仕事に対する想い」や「成長への考え方」を比較していくと、判断しやすくなります。
また、自社の社員として外せない価値観を定め、そこから応募者を評価していくと、大きなミスマッチを防ぐことができます。
面接以外でカルチャーマッチ採用を判断するには?
カルチャーマッチ採用は、面接でのやり取りを通して判断する方法が一般的ですが、「ワークショップ」や「リファラル採用」などの導入も有効です。
ワークショップを実施する
面接以外では、選考過程にワークショップを導入するのも効果的です。
自社社員とワークショップに参加し、ディスカッションなどでコミュニケーションを取ることで、自社カルチャーとのマッチ度を測ることができます。
リファラル採用(社員紹介)を導入
リファラル採用とは、自社社員が自分の友人・知人を紹介する制度です。
自社社員であれば、企業文化や仕事に対して深く理解しているのはもちろんのこと、友人・知人の特性を把握しています。
双方を理解している社員が紹介するため、マッチ度の高い人材である可能性が高いです。
スキルマッチとは?
先述の通り、スキルマッチとは、業務遂行に必要なスキルと、社員や応募者の持つスキルがマッチしていることです。
応募者のスキルを重視した採用手法を、「スキルマッチ採用」といい、即戦力を求められる中途採用では、スキルマッチが重視される傾向にあります。
一概にスキルといっても、
- 業務に必要となる専門的なスキル
- テクニカルスキル(業務遂行能力)
- ヒューマンスキル(対人関係能力)
- コンセプチュアスキル(概念化能力…本質を見極める能力)
など、様々です。
スキルマッチよりカルチャーマッチ重視の理由
中途採用では、スキルマッチが重視されることが多いですが、近年はカルチャーマッチを重視する企業が増えています。
では、なぜスキルマッチが重視されていたのか、そして、なぜカルチャーマッチを重視するようになったのか、その理由を見ていきましょう。
スキルマッチが重視されていた背景には、バブルの崩壊やリーマンショックが関係しています。
バブル崩壊やリーマンショックによる経済的打撃を受けたことで、日本企業は、従来のような大量採用が困難になりました。
採用枠が少なったことで採用基準が高まり、即戦力の期待できる人材を獲得するべく、スキルマッチが重視されるようになったのです。
しかし、先述のように、カルチャーマッチを軽視した採用は、早期離職につながります。
また、IT化やグローバル化などの影響により、変化スピードの激しい時代に入ったことで、採用時のスキルが役に立たなくなることも珍しくありません。
そのため、スキルマッチよりも、カルチャーマッチが重視されるようになったのです。
事実、2019年に発表されたキャリア採用に関するアンケート調査によると、あまり重視しない項目では、3位に「語学力(39%)」、4位に「資格・スキル(22%)」が来ています。
一方、「価値観」や「人柄」といった、カルチャーマッチに関する項目をあまり重視しない、と回答した企業はほとんどいないのです。
このことからも、多くの企業がカルチャーマッチを重要視していることが分かります。
カルチャーマッチ採用を導入して活性化を目指しましょう
いくら優秀な人材でも、価値観の合わない環境では、パフォーマンスを十分に発揮できませんし、早期離職にもつながります。
カルチャーマッチ採用を導入すれば、離職率の低下や採用コストが削減できるだけでなく、生産性の向上にも期待できます。
ご紹介したポイントを参考に、カルチャーマッチを意識した採用を行いましょう。