少子高齢化が進行している日本では、外国人採用が活発化しています。
そうした中、政府の積極的な推進により受け入れが拡大しているのが「高度人材(高度外国人材)」です。
しかし、外国人の採用には在留資格などが関係してくるため種類や概要、手続きは分かりづらいです。
そこで、この記事では高度人材や高度人材ポイント制の概要や計算方法、申請手続きなどについてご紹介していきます。
また、高度人材を受け入れるメリットについてもまとめていますので、是非ご覧ください。
高度人材とは?
高度人材とは、2015年に新設された在留資格「高度専門職」を保有する外国人労働者のことです。
内閣府では、下記のように定義付けています。
高度人材とは、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」と定義付けることができる。
つまり、高度人材は優秀な能力や資質を持ち、専門性の高い職種についている外国人労働者のことを指しているのです。
例えば、
- 優良大手企業の経営者
- 著しい研究成果を出した博士号取得者
- IT人材
などが当てはまります。
高度人材は、
- 高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」
- 高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」
- 高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
のいずれかの活動を行う外国人が対象です。
では、それぞれの活動内容について見ていきましょう。
高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動
引用:入国管理局「高度人材ポイント制とは?」
研究者や研究の指導、大学教授などが挙げられます。
高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
入国管理局「高度人材ポイント制とは?」
具体的には、
自然科学…生物学や物理学、化学などの研究者
人文科学…心理学や哲学、社会学などの研究者
が当てはまり、3つの活動の中で最も認定数が多いです。
高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動
入国管理局「高度人材ポイント制とは?」
会社経営や役員といった、会社を管理するポジションの人が当てはまります。
高度人材ポイント制とは?
高度人材ポイント制とは、高度人材へのポイント制による出入国管理上の優遇制度です。
高度人材の活動内容を
- 高度学術研究活動
- 高度専門・技術活動
- 高度経営・管理活動
の3つに分類し、各特性に応じた多様なポイント項目が設けられています。
該当項目を算定しポイントの合計数が70点以上に達すると「高度専門職」の在留資格を得ることができ、出入国上の優遇措置を与えられます。
高度人材ポイント制の目的は就労資格を取得できる外国人の中でも、特に優れた人材に一定の優遇措置を与えることで、その受け入れを促進することです。
高度人材ポイント制の計算方法について
高度人材ポイントは学歴・職歴・年収・年齢に加え、活動内容ごとにボーナスポイントが設けられています。
引用:入国管理局「ポイント計算表」
学歴
高等専門学校・短期大学・大学・大学院のいずれかの卒業者または、専修学校の専門課程卒業者(高度専門士)がポイントの対象です。
ただし、専修学校の専門課程を修了し「専門士」の称号を受けた外国人は対象外です。
職歴
実務経験3年以上でポイントが加算されます。
実務経験10年以上の場合、「高度専門・技術分野」では20ポイント「高度経営・管理分野」では、25ポイントの加算となります。
年収
「高度学術研究分野」「高度専門・技術分野」は、年齢区分に応じてポイントが付与されますが、この2分野には最低年収基準(年収300万円以上)が設定されています。
そのため、年収300万円に満たない場合は他項目でポイントの合計が70点以上であっても、高度人材とは認められません。
「高度経営・管理分野」は、年収1,000万円以上でポイントが加算されます。
年齢
「高度学術研究分野」「高度専門・技術分野」の2分野のみに設けられた項目で、若い程加算されるポイントが大きいです。
高度人材ポイント制については、入国管理局が「高度人材ポイント制Q&A」を公開していますので、不明な際はご覧ください。
高度人材が優遇措置
では、高度人材に認定されると、どのような優遇措置を受けられるのでしょうか。
高度専門職1号
まずは、高度専門職1号の優遇措置からご紹介します。
複合的な在留活動が可能
通常の在留資格は、取得した在留資格で認められた範囲内での活動しかできません。
高度人材に認定されると、特別な許可を取得しなくても「研究の仕事をしながら研究成果を活かして経営も行う」といった、複合的な活動ができるのです。
在留期間「5年」の付与
在留期間は在留状況などに応じて決定されるため、初回の在留資格申請時は1~3年程度になることが多いです。
しかし、高度人材の場合、法律上最長の在留期間である5年が一律に付与されます。また、在留期間は更新可能です。
在留歴に係る永住許可要件の緩和
外国人が永住許可を受けるには、原則として10年以上日本に在留していなくてはなりません。
しかし、
- 高度人材としての活動を継続的に3年間行っている場合
- 高度人材の中でも特に高度と認められる方(80点以上の方)が、高度人材としての活動を継続的に1年間行っている場合
は、永住許可の対象となります。
配偶者の就労
原則、就労ビザで滞在している外国人の家族の在留資格は「家族滞在」です。
そのため、配偶者が「技術・人文知識・国際業務」や「教育」などの活動を行う場合、学歴や職歴といった一定の要件を満たした上で、在留資格を取得しなくてはなりません。
一方、高度人材の配偶者であれば要件を満たしていなくても「特定活動」の在留資格で、こうした活動を行うことができます。
一定の条件下での親の帯同
通常、就労ビザで在留する外国人の親の受け入れは認められていません。
高度人材であれば、
- 高度人材または、その配偶者の7歳未満の子を養育する場合
- 妊娠中の高度人材の配偶者または、妊娠中の高度人材本人の介助等を行う場合
のいずれかに該当する場合、一定の要件下で高度人材または、その配偶者の親の入国・在留が認められます。
親の帯同の主な要件
- 高度人材の世帯年収が800万円以上であること
- 高度人材と同居すること
- 高度人材または、その配偶者のどちらかの親に限ること
一定の条件下での家事使用人の帯同
通常、外国人の家事使用人の雇用が認められているのは、「経営・管理」「法律・会計業務」で在留する一部の外国人のみです。
ただし、高度人材は一定の条件下であれば、外国人の家事使用人を帯同することが認められます。
家事使用人の帯同の主な要件
外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合(入国帯同型)
- 高度人材の世帯年収が1,000万円以上あること
- 帯同可能な家事使用人は1名まで
- 家事使用人に対して20万円/月以上の報酬支払いを予定していること
- 高度人材と共に入国する場合、帯同する家事使用人が入国前に1年以上当該高度人材に雇用されていること
- 高度人材が先に入国する場合、帯同する家事使用人が入国前に1年以上当該高度人材に雇用されており、当該高度人材が入国後、引き続き当該高度人材または、当該高度人材が入国前に同居していた親族に雇用されていること
- 高度人材が出国する場合、共に出国することが予定されていること
上記以外の家事使用人を雇用する場合(家庭事情型)
- 高度人材の世帯年収が1,000万円以上あること
- 帯同可能な家事使用人は1名まで
- 家事使用人に対して20万円/月以上の報酬支払いを予定していること
- 家庭の事情(申請時点で13歳未満の子または病気等により日常の家事に従事できない配偶者を有すること)が存在すること
入国・在留手続の優先処理
通常、入国・在留手続きには1ヶ月~3ヶ月程度掛かります。
高度人材は優先的に処理されるため、
入国手続(在留資格認定証明書交付申請)…申請受理から10日以内
在留手続(在留期間更新申請・在留資格変更申請)…申請受理から5日以内
に申請処理が完了します。
高度専門職2号
「高度専門職1号」で認められている活動と併せて、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことができます。
また、
- 在留期間が無期限となる
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和
- 配偶者の就労
- 一定の条件下での親の帯同
- 一定の条件下での家事使用人の帯同
- 入国・在留手続の優先処理
の優遇措置を受けることができます。
※「高度専門職2号」は、「高度専門職1号」で3年以上活動を行っていた外国人が対象です。
参考:入国管理局「どのような優遇措置が受けられる?」
高度人材ポイント制の申請方法と必要書類
高度人材を受け入れるには、入国管理局への申請が必要です。
ここでは、高度人材ポイント制の申請手続きについて「新規で在留資格を申請する場合」と「在留資格の切り替え・更新をする場合」の2通りに分けてご紹介いたします。
新規で在留資格を申請する場合(これから入国する場合)
これから日本に入国される外国人の場合、在留資格を取得する必要があります。
STEP1. 地方出入国在留管理局の窓口で申請する
在留資格認定証明書交付申請書を作成
↓↓
行おうとする活動にかかわる「ポイント計算表」と「ポイントを立証する資料」を作成
↓↓
地方出入国管理在留管理局へ資料を提出
必要な書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 当該高度人材の写真
- ポイント計算表
- ポイントを立証する資料
参考:入国管理局「在留資格認定証明書交付申請」
STEP2. 出入国在留管理庁による審査
上陸条件への適合性やポイント計算が行われます。
審査の結果、
- 在留資格該当・上陸条件適合と判断された場合:在留資格認定証明書交付
- 在留資格非該当・上陸条件不適合と判断された場合:在留資格認定証明書不交付
となります。
ただし、就労を目的とするその他の在留資格の上陸条件に適合している場合、申請人が望めば、当該在留資格にかかわる在留資格認定証明書が交付されます。
STEP3. 在留資格認定証明書交付
交付された在留資格認定証明書は、申請者または代理申請を行った機関の元に届きます。
STEP4. 日本大使館で査証(ビザ)申請を行う
申請者が居住している国の日本大使館にて在留資格認定証明書を提示し、査証申請を行います。
STEP5.日本の空港または港にて上陸手続きを行う
入国する空港または港で在留認定証明書と査証が添付された旅券を提示し、在留カードを受け取ります。
在留資格の切り替え・更新をする場合(既に日本に在留している場合)
つづいて、在留資格の切り替えもしくは、更新手続きを行う場合についてご紹介いたします。
STEP1. 地方出入国在留管理局の窓口で申請する
当該外国人の保有している在留資格の種類によって、必要となる申請が異なります。
- 「高度専門職」を保有している場合:在留期間更新許可申請
- その他の在留資格を保有している場合:在留資格変更許可申請
「在留期間更新許可申請」または「在留資格変更許可申請」を作成
↓↓
行おうとする活動にかかわる「ポイント計算表」と「ポイントを立証する資料」を作成
↓↓
地方出入国管理在留管理局へ資料を提出
必要な書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 当該高度人材の写真
- ポイント計算表
- ポイントを立証する資料
- 申請人のパスポートおよび、在留カード
参考:入国管理局「在留期間更新許可申請」「在留資格変更許可申請」
STEP2. 出入国在留管理庁による審査
高度人材該当性などについて審査が行われます。
高度人材の該当性では、
- 行おうとする活動が高度人材としての活動であること
- ポイントの合計が70点以上であること
- 在留状況が良好であること
などを基準に「許可」「不許可」が判断され、許可された場合は在留資格認定証が交付されます。
なお、「在留資格変更許可申請」で不許可となった場合、保有中の在留資格での在留期間が残っていれば、当該在留資格による在留継続は可能です。
高度外国人の推移、受け入れのメリット
高度人材について理解が深まったところで、高度外国人材の推移と受け入れるメリットについて見ていきましょう。
引用:出入国管理庁「高度人材ポイント制の認定件数」
高度人材の認定件数は、
2018年6月:12,945件
2019年6月:18,286件
2020年6月:23,876件
と年々増加しています。
2022年末までには40,000人の認定を目指していることからも、政府が高度人材の受け入れに積極的であることは明らかです。
では、高度人材を受け入れるとどのようなメリットを得られるのでしょう。
高度人材を受け入れるメリット
高度人材は、高い技術力や豊富な知識・経験などを有しているため、専門性の高い業務に従事させることができます。
また、就労を目的とした在留資格の在留期間は、基本的に1年~3年と短期間です。
一方、高度人材の在留期間は「5年」もしくは「無期限」で、永住許可も取得しやすいため長期就労が期待できます。
さらに、複合的な活動が認められているため、本来の活動とリンクした幅広い活躍も可能でしょう。
今後、日本がグローバル競争で勝ち残るには、高度人材のような世界各地で活躍できる優秀な人材の受け入れが必要不可欠です。
高度人材を受け入れるには申請手続き整備などの国としての対策はもちろん、生活環境の支援や相談体制の整備といった企業の努力も重要となるでしょう。
高度人材を獲得してグローバル競争を生き残る
高度人材は「我が国に産業にイノベーションをもたらし、労働市場の効率性を高める」と期待されており、今後は更なる受け入れの増加が見込まれています。
高度人材は在留期間も長く、能力や資質も高いです。
優秀な人材の長期就労が見込めるため、高度人材の受け入れは、企業にとって大きなメリットとなります。
また、グローバル化が進むにつれて、高度人材の重要性はさらに増していくでしょう。