このページでは、採用、育成、組織開発など人事領域のさまざまなテーマについて、株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健さんに解説していただいています。

 

人事領域は、会社ごとに環境や課題が異なるため、担当者自身が積極的に情報を吸収していくことが求められます。

 

ぜひ、参考にお読みいただき、普段の業務に生かしていただければ幸いです。

 

人事の役割は変わりつつある

企業における人事の位置づけは年々変わってきているように思います。

 

これまでの人事といえば、経営トップから降りてきたミッションの元で、労務管理をひたすらこなすオペレーション中心の管理セクションであった印象が強いでしょう。

 

一方で、今後は経営と同じ視点で、事業を推進するために組織を主体的に変革していく、まさに「チェンジマネージャー」としての人事が求められ始めています。

 

ここでいう「チェンジマネジメント」とは元々アメリカで生まれた概念。

 

「チェンジ」とは「変革」のことであり、一言で言うと組織の変革を効率よく成功に導くためのマネジメント手法のことです。

 

人間個人が変わるのは心理的・身体的に相応の負荷がかかりますが、これが、その人間が複数集まる組織が変化するとなれば、なおさら負荷が大きくなります。

 

当然、組織の中には変革を望む人もいれば反対派(保守派)もいるでしょう。

 

但し、現在のビジネス環境を見ると、そうはいっても頑なに変化をしない、というわけにはいきません。

 

今や、あらゆる産業が変化・変革を求められています。

 

IT企業が金融業界に突然参入したり、最近では電気メーカーが突然自動車業界に参入するなど、かつてはどんなに安定的で参入障壁が高いと言われた業界といえども、今や異業種参入や情勢変化などにより胡坐をかいて座ってることはできません。

 

事業の戦略が変われば、当然組織もそれに向けて柔軟な変革が迫られます。

 

その際に、この柔軟な変革を主導するのは、従業員それぞれのパーソナリティデータを含めた様々な人事データを持っている人事なのです。

 

なぜなら、様々な企業で変革がうまく浸透しない理由を突き詰めてみると、適切な変革のステップを踏んでいないという理由の他、従業員のパーソナリティを考えない浸透のさせ方をしているためことが多いためです。

 

最終的には、変革を組織に定着させる主体となるのは大多数を占める現場です。彼らのパーソナリティを考慮した伝え方、施策の打ち方をするのが重要となり、それを把握・管理しているのは誰でもない人事なのです。

 

二つの変革の形「問題解決型」と「理想実現型」

組織における変革を行うというのは、まさに組織における課題解決を行うことです。

 

では、組織が行うべき変革とは一体どんなものがあるのか、言い換えると組織が抱える組織課題はどんなものがあるのか、というと、大きく分けて2つに分けられます。

 

一つは「問題解決型の変革」。

 

採用で全く人が採れない、退職率が高すぎて事業継続が難しい、など今組織で起きている由々しき問題を、解決しようとするのが問題解決型の変革です。

 

一方で、特に由々しき問題はないが、事業にとっての理想な組織や企業のビジョンを叶えるために、現状を変えていこうとする変革が「理想実現型の変革」です。

これらはいわば、マイナスから0に戻すような変革(問題解決型)と、0からプラスの状態へスケールさせるという変革(理想実現型)とも言い換えられます。

 

「チェンジマネジメント」の8つのステップと最も重要なこと

そして、冒頭で述べたように、実際には公明正大な変革をトップが唱えても、浸透、機能せずに頓挫してしまう、もしくはより組織がかき乱されるようなことになってしまう最悪のケースもしばしば見られます。

 

そこで、そうならないように2つの重要な点をご紹介します。

 

1つ目は、実は、「チェンジマネジメント」と公式名称がついているくらいなので、変革を実際に行うための体系的なステップが示されています。

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このステップ自体は企業変革の世界的権威であるジョン・コッターが打ち立てたものですが、中でも特に重要なステップは、①危機意識を作り出すことかと思います。

 

結局、人間は「こうなったら、こんな良い事がある」か「こうならないと、こんな悪い事がある」のいずれかでしか動かない存在です。

 

つまり、行動をとるためのインセンティブが必要なのですが、こと変革の場合は、問題解決型の変革の場合でも、理想実現型の変革の場合でも「このままではいけない!」といった危機意識を十分に認知してもらわなければその後に予定しているステップは有効には働かないでしょう。

 

むしろ理想実現型の場合は、危機が実際に目の前にない分、変革推進が難しく、“今は良いかもしれないが、現状維持は緩やかに死んでいく”という危機意識をいかに醸成するかが変革の成否を分けます。

 

そして重要な2つ目の点は、この危機意識を得てもらう際、従業員のパーソナリティを加味することです。組織はあくまで「人」で構成されています。

 

つまり自社が抱える課題の形が問題解決型、理想実現型どちらであっても、突き詰めると「人」の問題に帰結するのです。「人を見て法を解け」という言葉の通り、その人に最もふさわしい伝え方で、説得していくことが、周り道をしているようで組織が変わる最短ルートであるような気がします。

 

著者プロフィール

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

 

児童心理治療施設(旧情緒障害児短期治療施設)での約1年半の現場経験を経て、心理学が日常生活に困難をきたす様々な障害の治療に活きる現場を体験。

その後、心理学を逆に人間の可能性を最大化する方へ活かしたいと感じ、現職である人事コンサルティングに転向。

 

現在は新卒採用・中途採用をメインとして、育成教育配置、評価報酬制度などのコンサルティングに幅広く従事。

 

そのほかに人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」運営、人事向けセミナー、若手・新入社員向けキャリアワークショップなども多数実施。

 

■ 株式会社人材研究所
2011年設立。代表取締役社長 曽和 利光

世の中のあらゆる組織における「人と組織の可能性の最大化」を目指している人事コンサルティング会社。

 

組織人事コンサルティング、採用コンサルティング、採用業務代行(RPO)、各種トレーニング(面接官トレーニング、評価者訓練、新入社員研修等)などを提供。

HP:株式会社人材研究所

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