トライアル雇用とは? メリット・デメリット、助成金の種類、流れについて解説!

 

トライアル雇用は、本採用前に一定の試用期間を設け適性を見てから雇用の判断ができる制度で、就職困難者の救済措置と位置づけられています。

 

企業と求職者の双方が本採用前にマッチ度を確かめられるため、多くの企業で積極的に導入されています。

 

この記事では、トライアル雇用制度の概要や種類、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

 

トライアル雇用を導入する流れや期間終了後の対応についてもご紹介しますので、ぜひご覧ください。

本記事で紹介している制度、法令などにつきましては所管する厚生労働省などの情報も必ずご確認ください。

 

▼厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/index.html

 

▼ハローワークインターネットサービス

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

 

 

トライアル雇用とは

トライアル雇用とは、3か月間の試用期間を設けた上で、常用雇用(期間の定めのない雇用)するかどうかを見極める制度です。

 

職業経験の不足や長期間のブランクなどによる就職困難者を対象に、救済措置として設置されており早期就職の実現や雇用機会の創出を目的としています。

 

ハローワークや職業紹介事業者からの紹介でトライアル雇用を行った場合、対象企業に助成金が支給されます。

 

なお、企業と求職者が適性を判断した上で本採用が決まるため、必ずしも常用雇用に移行するとは限りません。

 

試用期間との違い

試用期間とは、業務適性を判断するための期間のことです。

 

適正を見極めるための期間である点はトライアル雇用と共通していますが、実施期間や採用義務、雇用しない場合の手続きなどさまざまな違いがあります。

 

両者の違いは、以下の通りです。

  トライアル雇用 試用期間
採用義務 ない ある
実施期間 原則3か月 12か月以内
雇用しない場合 契約期間満了により終了 具体的な解雇事由が必要
助成金 対象 対象外

トライアル雇用は、原則3か月間の期限つきで労働契約を締結します。

 

そのため仕事ぶりなどを見て適性がないと判断した場合、契約満了によって当該労働者との契約を終了させられます。この場合、解雇にはあたりません。

 

一方、試用期間は継続雇用を前提とした労働契約を締結した上で、業務適性を見極める期間ですので、万が一雇用しない場合は解雇にあたります。

 

通常の解雇同様、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

 

トライアル雇用助成の種類

トライアル雇用助成制度には「一般トライアルコース」「障害者トライアルコース」「障害者短時間トライアルコース」があります。

 

一般トライアルコース

一般トライアルコースは、職業経験・技能・知識不足などで安定的な就職が困難な求職者を対象として、トライアル雇用した際に支払われる助成金です。

 

支給額は、

  • 通常…対象者1人につき月額4万円
  • 対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父…対象者1人につき月額5万円

で、最長3か月間支給されます。

 

また、支給対象者が期間中に離職したり途中で常用雇用へ切り替えたりした場合、支給額は以下の表にしたがって決まります。

  通常 母子家庭の母等または、父子家庭の父
A≧75% 4万円 5万円
75%>A≧50% 3万円 3.75万円
50%>A≧25% 2万円 2.5万円
25%>A>0% 1万円 1.25万円
A=0% 0円 0円

※A=支給対象者が1か月間に実際に就労した日数/支給対象者が1か月間に就労を予定していた日数

 

障害者トライアルコース

障害者トライアルコースは、就職が困難な障がい者を対象として、トライアル雇用した際に支払われる助成金です。

 

支給額は、

  • 精神障がい者の場合…月額最大8万円を3か月、その後月額最大4万円を3か月(最長6か月間)
  • 精神障がい者以外の場合…月額最大4万円(最長3か月間)

です。

 

支給対象者が期間中に離職したり、途中で常用雇用へ切り替えたりした場合、支給額は以下の表にしたがって決まります。

  通常 精神障害者雇用後3か月間の場合
A≧75% 4万円 8万円
75%>A≧50% 3万円 6万円
50%>A≧25% 2万円 4万円
25%>A>0% 1万円 2万円
A=0% 0円 0円

※A=支給対象者が1か月間に実際に就労した日数/支給対象者が1か月間に就労を予定していた日数

 

障害者短時間トライアルコース

障害者短時間トライアルコースとは、障がい者の週の所定労働時間を10時間以上20時間未満にして、トライアル雇用した際に支払われる助成金です。

 

職場への適応状況や体調などに応じて、徐々に就労時間を延ばし、最長12か月までのトライアル期間中に、20時間以上の就労を目指します。

 

支給金額は、支給対象者1人あたり4万円(最長12か月間)です。

 

なお、支給対象者が期間中に離職したり、途中で常用雇用へ切り替えたりした場合、支給額は以下の表にしたがって決まります。

  精神障害者雇用後3か月間の場合
A≧75% 4万円
75%>A≧50% 3万円
50%>A≧25% 2万円
25%>A>0% 1万円
A=0% 0円

※A=支給対象者が1か月間に実際に就労した日数/支給対象者が1か月間に就労を予定していた日数

 

トライアル雇用の対象者

トライアル雇用は、すべての求職者が対象となるものではありません。

 

ここでは、トライアル雇用制度の種類ごとの対象者についてご紹介します。

 

一般トライアルコース

一般トライアルコースの対象となるのは、以下①~⑤のいずれかに当てはまる求職者です。

 

「紹介日の時点で安定した職業に就いている人」「自営業または役員として週30時間以上働いている人」「学生」「トライアル雇用期間中の人」は、対象外です。

  • 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している人
  • 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている人
  • 妊娠や出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている人
  • 紹介日時点で、ニートやフリーター等で55歳未満の人
  • 紹介日時点で、就職の援助を行うにあたって、特別な配慮を要する以下の人
  • 生活保護受給者
  • 母子家庭の母等
  • 父子家庭の父
  • 日雇い労働者
  • 季節労働者
  • 中国残留邦人等永住帰国者
  • ホームレス
  • 住居喪失不安定就労者
  • 生活困窮者

 

一般トライアルコースで雇い入れるには、

  • ハローワークまたは紹介事業者等の紹介による雇い入れ
  • 原則3ヶ月のトライアル雇用をすること
  • 1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同程度(30時間を下回らない)

の要件を満たす必要があります。

 

障害者トライアルコース

「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定める障害者のうち、①~③のいずれかの要件を満たした上で、トライアル雇用を希望した人が対象です。

 

障がいの原因や種類は問いません。

  • 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
  • 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
  • 紹介日の前日時点で、離職している期間が6か月を超えている

※重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者は上記の要件を満たさなくても対象となります。

 

障害者トライアルコースで雇い入れるには、

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介による雇い入れ
  • 障害者トライアル雇用の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届け出ること

の要件を満たす必要があります。

 

障害者短時間トライアルコース

障害者短時間トライアルコースは、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で、トライアル雇用による雇い入れを希望している精神障がい者または、発達障がい者が対象です。

 

障害者短時間トライアル雇用で雇い入れるには、

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介による雇い入れ
  • 3か月~12か月間の短時間トライアル雇用をすること

の要件を満たす必要があります。

 

トライアル雇用のメリット

では、トライアル雇用を行うとどういったメリットを得られるのか、見ていきましょう。

 

採用のミスマッチ防止

トライアル雇用最大のメリットはミスマッチの防止です。

 

書類や面接といった限られた情報から応募者を見極めるのは非常に困難なため、入社後に「期待していたのと違った」とギャップを感じることもあるでしょう。

 

トライアル雇用は原則3か月間、実際の業務を通して適性を見極めます。

 

労働者の仕事ぶりを見てから、本採用するかどうかを判断できるため、ミスマッチ防止に有効です。

 

本採用を容易に断れる

トライアル雇用は、原則3か月の労働契約を結ぶため、期間が満了すれば契約終了となります。

 

解雇と違って合理的な理由も社会通念上の相当性も必要ないので、マッチしないと判断した場合、容易に本採用を断れます。

 

採用コストの軽減

採用活動には、求人広告掲載費や人件費など、さまざまな費用が発生します。

 

トライアル雇用制度は、利用した企業に国から助成金が支給されるため採用コストを大幅に削減できます。

 

トライアル雇用のデメリット

トライアル雇用には多様なメリットがある反面、デメリットも存在します。

 

教育体制を整備する必要がある

トライアル雇用は、就業経験が少ない人や長期間ブランクがある人などを対象としています。

 

未経験人材や社会人経験の少ない人材からの応募も多いため、教育体制の見直し・整備が欠かせません。

 

人材育成に手間とコストがかかる

トライアル雇用の応募者は、通常の中途採用よりも経験やスキル、知識が乏しいため、入社後は一から育てなくてはなりません。

 

戦力になるまで時間と労力がかかるため、現場の負担が大きくなって日常業務を圧迫したり、人材育成にかかるコストが増大したりする可能性があります。

 

場合によっては、社会復帰をサポートする役割を担うこともあるでしょう。

 

助成金の手続きに時間がかかる

トライアル雇用助成金を受給するには、手続きが必要です。

 

公共職業安定所と相談して採用計画を作成した上で、申請書や計画書、終了報告書といった各種書類を厚生労働省へ提出する必要があります。

 

要件に合致する労働者を雇い入れれば、自動的に支給されるわけではないので、注意しましょう。

 

トライアル雇用の流れ

ここからは、トライアル雇用導入の流れについてご紹介します。

 

STEP1.ハローワークに求人を申し込む

ハローワークでトライアル雇用求人の申し込みと、助成金の受給希望である旨を伝えましょう。

 

一般募集も行う場合は、「トライアル雇用併用求人」で申し込みます。

 

STEP2.応募者との面接

求人票を登録すると、ハローワークから条件に合致した応募者を紹介されるため、面接を実施します。

 

トライアル雇用では、面接による採用可否を定めているため書類選考はできません。

 

STEP3.雇用条件の決定

採用決定後は、賃金や勤務時間といった雇用条件を決定します。

 

トライアル雇用期間中であっても、労働関連法令は適用されるため、最低賃金を下回らないよう注意しましょう。

 

同様に、法定労働時間を超えた労働や休日出勤が行われた場合には、時間外手当や休日手当も支払わなくてはなりません。

 

また、労働条件や労働日数など一定の条件を満たす労働者には、社会保険や雇用保険に加入させる義務があります。

 

STEP4.有期雇用契約を結ぶ

雇用条件が決定したら、有期雇用契約を結びます。

 

労使間のトラブル防止のため、労働者に雇用契約書の内容を説明し合意の上で署名捺印をもらいましょう。

 

トライアル雇用期間中に残業などが発生する可能性があるときは、雇用契約書に記載しておく必要があります。

 

STEP5.トライアル雇用スタート

有期雇用契約を締結したら、トライアル雇用スタートです。

 

トライアル雇用期間中の残業は問題ありませんが、労働者が本来の力を発揮できるよう労働環境には配慮しましょう。

 

トライアル雇用開始日から2週間以内に、紹介してもらったハローワークへ「トライアル雇用実施計画書」を提出してください。

 

実施計画書は厚生労働省「一般トライアルコースの申請様式」「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの申請様式」からダウンロードできます。

 

トライアル雇用後の流れ

つづいて、トライアル雇用期間終了後の流れについてご紹介します。

 

常用雇用するかどうかを判断する

トライアル雇用は原則3か月間の期限つきの労働契約なので、その間に常用雇用するかどうかを判断しましょう。

 

常用雇用しない場合

勤務態度や適性などを総合的に見て、常用雇用しないと判断した場合、トライアル雇用終了予定日の30日以上前までに「雇止め予告通知書」を労働者に手渡してください。

 

本採用の義務がないとはいえ、契約満了による退職となることを誠実に説明することが大切です。

 

30日以上前までに解雇予告ができない場合、労働者に解雇予告手当を支払う必要があります。

 

常用雇用する場合

常用雇用する場合、労働者と新たに雇用契約を締結する必要があります。

 

賃金や勤務時間といった労働条件を明確にし、労働者にしっかりと説明した上で常用雇用契約書を作成の上、署名捺印をもらいましょう。

 

結果報告書兼支給申請書を提出する

トライアル雇用終了後、2か月以内に管轄のハローワークまたは労働局に「結果報告書兼支給申請書」を提出しましょう。

 

結果報告書兼支給申請書は、トライアル期間終了後の雇用について報告する書類のため、常用雇用するかどうかにかかわらず提出する必要があります。

 

結果報告書兼支給申請書様式は、厚生労働省「一般トライアルコースの申請様式」「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの申請様式」からダウンロードできます。

 

トライアル雇用中の離職の対応

トライアル雇用期間中、労働者から退職を申し出られるケースや、解雇せざるを得ないケースもあるでしょう。

 

ここでは、期間中の離職対応についてご紹介します。

 

自己都合退職の場合

トライアル雇用期間中に退職の申し出を受けた際は、通常の退職と同じ手続きをします。

 

助成金を申請するにあたり自己都合か会社都合かの区別を明確にする必要があるため、退職届の提出や退職合意書の締結など書面で残せるようにしておくと良いでしょう。

 

退職日を調整したら社会保険の喪失手続きを行い、「結果報告書兼支給申請書」を離職日の翌日から2か月以内に提出します。

 

解雇の場合

トライアル雇用期間の満了前の解雇には、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

 

また解雇する場合は解雇日の30日前までに、当該労働者へ解雇予告しなければなりません。

 

解雇予告期間が30日未満の場合は、解雇予告手当を支給する必要があります。

 

解雇の場合も、離職日の翌日から2か月以内に「結果報告書兼支給申請書」を提出します。

 

トライアル雇用でミスマッチ防止

トライアル雇用は、本採用前に試用期間を設けて、労働者の適正を見極められます。

 

制度を利用すれば採用コストを低減させつつ、ミスマッチも防止できるため、多くの企業が導入しています。

 

教育制度の整備や受給に時間がかかるなど、デメリットを把握した上で積極的に導入してみてはいかがでしょうか。

本記事で紹介している制度、法令などにつきましては所管する厚生労働省などの情報も必ずご確認ください。

 

▼厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/index.html

 

▼ハローワークインターネットサービス

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

 

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