持ち株会とは?仕組みやメリット・デメリットを分かりやすく解説!

 

ほとんどの上場企業が持株会を導入しており、未公開企業も福利厚生の一環として導入する企業が増えています。

企業や従業員にとってさまざまなメリットをもたらす持株会ですが、デメリットも存在するため、導入・利用する前に仕組みなどをきちんと把握しておきましょう。

 

本記事では、持株会の仕組みについてご説明した上で、企業側と従業員側それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

 

また、導入にあたって検討すべき事項や、よくある質問もご紹介していますので、ぜひご覧ください。

持株会とは?

持株会とは、自社の株を従業員が購入して保有できる制度です。

「従業員持株制度」とも呼ばれており、給与天引きで自社株を共同購入した後、拠出金額に応じて持分が再分配されます。

 

従業員持株会には、取締役や執行役など経営側である役員は加入できません。

役員も従業員持株会と同様に自社の株式を取得できますが、従業員とは異なる規制があるため、別の組織となります。

 

ここでは、従業員持株会について解説します。

 

持株会の基本的な仕組み

持株会の基本的な仕組みは、以下のようになっています。

 

  1. 従業員の給与・賞与から一定額を天引きし、自社株を購入する原資金として会員から拠出金を集める
  2. 持株会が自社の株式を共同購入する
  3. 買い付けた株式が拠出金に応じて会員に配当される

 

持株会は従業員の給与や賞与から一定額を天引きした資金をもとに、自社株を共同で購入します。

従業員には出資額(拠出額)に応じた配当金が配られる仕組みです。

【会社側】持株会のメリット

会社側から見た持株会のメリットには、下記のような点が挙げられます。

 

  1. 持株会が安定株主になる
  2. 福利厚生が充実する
  3. 従業員のモチベーション向上

 

持株会が安定株主になる

企業にとっての持株会は、自社株を長期的に保有し続ける安定的な株主と言えます。

 

かつて、日本では取引先同士がお互いの株式を保有し合う「持ち合い株」を活用してきました。

持ち合い株は取引先が株主になることで、取引関係の強化や安定株主の確保を目指すものです。

 

しかし、バブル崩壊後は取引先同士で株式を持つリスクが表面化したため、持ち合い株を活用する企業は減少しています。

 

一方、持株会の株主は自社で働く従業員です。

会社の経営方針におおむね賛同している人が株主となるため、株の流動性が低くなり安定的に資金を確保できるようになります。

 

福利厚生が充実する

持株会は、さまざまな便宜を図って従業員の長期的な資産形成を支援します。

 

企業にとっては安定株主を確保しつつ、会社独自の福利厚生として機能できるメリットがあります。

 

福利厚生の充実は、従業員の満足度の向上にもつながるでしょう。

 

従業員のモチベーション向上

会社の業績が上がり自社株の配当が増えれば、株主である従業員に資産として還元されるため、モチベーションアップにつながります。

 

また、株式を持つことで自社の動向に関心を持ち、経営への参加意識も高まるでしょう。

 

【会社側】持株会のデメリット

会社側から見た持株会のデメリットには、下記のような点が挙げられます。

 

  1. 配当を出し続ける必要がある
  2. インサイダー取引の対象になることもある

 

配当を出し続ける必要がある

持株会の導入は、業績が良好で配当が継続できる場合には、従業員と企業の双方にとってメリットがあります。

 

しかし、常に安定した状態で経営を行うことは不可能です。

世界情勢などの影響により、業績が悪化する可能性も考えられます。

 

業績の悪化によって配当がゼロになると、社員のモチベーションや会社への信頼が低下する恐れがあります。

 

かといって、無理に配当を出せば会社のキャッシュフローが悪化して、経営のかじ取りが難しくなるでしょう。

 

これらを考慮すると、業績が悪化しても、ある程度の配当を出し続けなければならないという点がデメリットと言えます。

 

インサイダー取引の対象になることもある

インサイダー取引とは、会社の内部情報を知る関係者が、株価の変動を事前に把握した上で情報公開前に株式を売買する不公正取引のことでです。

 

インサイダー取引は法律で禁止されており、違反した場合は課徴金納付命令や刑事罰を受ける可能性があります。

 

持株会を通じて、一定の計画に基づき1回あたり100万円未満の拠出額で毎月定時定額の株式を購入するものは、インサイダー取引規制の対象外となります。

 

ただし、情報を得た後で株式を追加で購入する場合や、新たに持株会に加入した場合などは、インサイダー取引の対象となる可能性があるため注意が必要です。

 

【従業員側】入るべき?持株会のメリット

持株会に加入することで得られる従業員の主なメリットには、以下の5つが挙げられます。

 

  1. 奨励金をもらえる
  2. 配当金をもらえる
  3. キャピタルゲインを得られる
  4. 少額で株式を買える
  5. 手間なく財産形成できる

 

持株会に入るべきか迷っている人は、具体的なメリットも考慮して判断するのも良いでしょう。

 

奨励金をもらえる

一般的に、持株会に加入して自社株を購入すると、会社から奨励金がもらえます。

 

5~30%程度の奨励金をもらえるケースが多く、毎月一定額を銀行に預けようとする場合、持株会を通じて株を購入する方が利回りが高いと言えるでしょう。

 

奨励金は、持株会への参加を促す強い原動力となるため多くの企業で導入されており、従業員にとって大きなメリットとなっています。

 

配当金をもらえる

通常発行される株式と同じように、持株会でも株主は配当金をもらえます。

持株会から得た配当金はそのまま再投資でき、保有している株式を増やすことが可能です。

 

配当金の受け取りは持株数の増加につながるため、複利の効果により利益をさらに増やせます。複利効果によって、さらに利益を増やせるでしょう。

 

キャピタルゲインを得られる

キャピタルゲインとは、資産の売却によって得られる利益のことで、資産を購入した価格と売却した価格の差額です。

 

上場銘柄の場合は価格が変動するため、価格差で利益を得られます。

一方、非上場企業は増資などで多少の利益は生じますが、上場した時に大きな利益を得られる可能性があるため、長期的な視点で保有するのが良いでしょう。

 

少額で株式を買える

2018年10月より全国の証券取引所では、株式の売買単位が100株に統一されました。つまり、株式の購入は100株単位で行うということです。

 

1株あたりの金額が高い場合、多額の資金が必要になるため、投資しにくいケースもあるでしょう。

 

一方、持株会では、毎月一定額で自社株を購入できるため、少額で株式を購入できます。

 

手間なく財産形成できる

持株会に加入すると、給与や賞与から毎月一定額が天引きされて自社株の購入に当てられます。

 

手間なく自動的に貯まっていくので、自己管理が苦手な方や面倒な手続きを省いて財産形成したい場合にもメリットがあります。

 

また、毎月の金額を変更できるため、生活スタイルの変化などに応じて必要な金額を増減させることも可能です。

 

【従業員側】やめたほうがいい?持株会のデメリット

持株会について調べると、「やめたほうがいい」というキーワードでも検索されていますが、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

 

会社への依存度が高まる

従業員が持株会に加入すると、

  1. 持株会を通じて自社株を購入して利益を得る
  2. 給料を毎月受け取る

ということになります。

 

これらは、どちらも会社の状況に大きく影響を受ける事柄です。

もし会社の経営が不安定になれば、給料が減少するだけでなく、最悪の場合には上場廃止となり自社株の価値がゼロになる可能性もあります。

 

給与と投資先が同一という状況には、リスクが集中するケースがあるため、注意が必要です。

 

株主優待はもらえない

株式投資を行う目的の1つに、株主優待が挙げられます。

株主になると、投資している会社の商品や商品券など、さまざまな優待を受けられます。

 

しかし、持株会は個人名義ではなく、持株会として株式を購入するため、株主優待はもらえません。

 

すぐには売却できない

持株会で購入した株は従業員の個人資産となりますが、一般の預貯金とは異なり、自由に引き出すことはできません。

 

株の売買を行う場合、売買単位は最低売買数量の1単元からとなります。

株の売買には個人名義の証券口座が必要で、その証券口座に持株会の株を出庫すれば売買できます。

 

ただし、個人口座の開設から手続き完了まで数週間かかることもあるため、「損切りのために今すぐ売りたい」といった対応は難しいでしょう。

 

ほかにも、最低売買数量に達していない株を現金化したい時は、持株会を解約して買い取りしてもらう手続きが必要です。

 

解約すると一定期間再加入ができなくなったり、会社によっては再加入が認められなくなったりするケースがあります。

柔軟な運用が難しい点は、従業員側からするとデメリットと言えるでしょう。

 

持ち株制度導入にあたって検討すべきこと

持ち株制度を導入するにあたって、検討すべき主な事柄は以下の通りです。

 

  1. 持株会の株式保有率
  2. 出資金の拠出方法
  3. 奨励金の有無
  4. 配当金の支払い基準
  5. 脱退時の買取価格
  6. 運営管理の方法
  7. 規約の策定

 

持株会の株式保有率

従業員が会社の株式を取得すると、持株数に応じて以下のような権利を得られるので、支配権の確保と節税の観点から持株会の株式保有率を決めます。

 

持株数 得られる権利

1株

株式代表訴訟、議事録閲覧

1%以上

株主総会での議案提出

3%以上

株主総会の開催、帳簿の閲覧

33.33%以上(1/3以上)

特別決議の否決

 

経営に大きな影響を及ぼすケースは少ないです。

しかし、安定した経営を維持するためには、議決権をなくして配当を優先する株のみを購入するなどの対策が不可欠です。

 

また、持株会が保有できる株式数の上限を、あらかじめ検討しておく必要があります。

 

出資金の拠出方法

出資金の拠出方法には、

  1. 給与から天引きされる定期的な拠出
  2. 会員の手持ちの現金からの拠出
  3. その両方の組み合わせ

の3つのパターンがあります。

 

一般的には、給与から天引きされる定期的な拠出が多いです。

 

奨励金の有無

奨励金の有無は、自社株保有を希望する従業員のモチベーションに大きな影響を与えます。

奨励金を支給するかどうか、支給金額をどのくらいに設定するかなどを、専門家の意見を聞きながら検討する必要があります。

 

配当金の支払い基準

持株会の会員の期待は配当金の還元に集中します。これは、自社株を第三者に売却してもキャピタルゲインを得られないためです。

 

従業員の加入を促し、円滑な持株会の運営を実現するためには、他の株主への影響なども考慮しつつ、配当金の支払い基準を明確化する必要があります。

 

脱退時の買取価格

従業員が持株会から脱退する場合の買取価格を明確にしておくことも必要です。

上場企業の株式なら、退職時などに個人口座に移して市場で売却できる可能性がありますが、非上場企業の場合は持株会が買い取ります。

 

そのため、どのような条件で持株会が株を買い取るのか、算出方法をあらかじめ規約などに定めておく必要があります。

 

運営管理の方法

持株会の運営管理を自社で行うか、あるいは外部に委託するかを検討します。

また、設立後の事務局の運営方法についても決めておきましょう。

 

規約の策定

持株会の規約の策定を行います。

従業員の退職後の株式の売買方法も、明確にしておかなければなりません。

 

持株会のよくある質問

最後に、以下の持株会に関するよくある質問についてご紹介します。

 

  1. 毎月いくらが適切?
  2. 途中で売却できる?
  3. 株の売却にはどのくらいかかる?
  4. 積み立ての上限は?
  5. 退職したらどうなる?
  6. 持株会を退会するタイミングは?

 

毎月いくらが適切?

毎月の適切な拠出額について、明確な答えはありません。

個人の収入や、他に投資をしている場合は、その資産構成の状況などを鑑みて毎月の拠出額を決定します。

 

また、対象株価の変動や市場全体の動向、自社の業績や将来性などを考慮して、その都度拠出額を変更することも重要です。

 

途中で売却できる?

持株会で購入した株は、そのままでは売却はできません。

しかし、取引口座を開設して持株会から本人名義の証券口座へ振り替えた株は売却できます。

 

売却手順は以下の通りです。

  1. 会社指定の証券会社に口座を開設する
  2. 持株会から自分の株を証券口座へ移す
  3. 証券会社で売却手続きを行う

 

株の売却にはどのくらいかかる?

持株会で購入した株は、1単元株の100株に達していない限り売却できません。

 

また、単元株であっても多くの手続きが必要なため、会社によっては2~6週間程度はかかると想定されます。

 

持株会で購入した株を売却するには、一般的に以下の手続きが必要です。

 

  1. 持株会が提携する証券会社で口座を開設する
  2. 持株会が保有する株式の一部を会社に出申請する
  3. 会社が引出を承認
  4. 保有株式が証券会社に振替される
  5. 株式を自分で売却する

 

積み立ての上限は?

ほとんどの会社では、毎月の積立金に上限を設けています。

一般的には1口1,000円で、30口を上限としている会社が多いですが、上限は規約によって異なるため、自社のマニュアルをよく確認しましょう。

 

とされています。

 

毎月の積立金に対して、5%の奨励金が支払われる場合の例をご紹介します。

毎月の積立金が10,000円の場合、会社は500円上乗せするため、10,500円ずつ積み立てすることになります。

 

退職したらどうなる?

退職後、会員は持株会から脱退し、再入会できません。

 

持株会を退会する際には、個人口座が必要です。

持株会が委託している証券会社などを通じて、退職者名義の個人口座を開設して株を預けます。

 

持株会を退会するタイミングは?

持株会の脱会は、投資でいう「損切り」の感覚に似ています。

良いタイミングで持株会を退会するには、事前の準備が大切です。

 

株価が平均取得価格よりも上がっている時に、個人口座の開設と振替手続きが終わったら売却しましょう。売却により利益を出し、損失を最小限に抑えられます。

 

理想的なタイミングは株価が上昇した時で、いつでも損切り可能な状態です。

 

持株の売却は、証券会社に振替した後となります。

手続きに数週間から1カ月程度かかる場合もあるため、手続き中に株価が高騰している間は売りたくても売れない状況になることもあります。

 

株式投資は手放すタイミングも重要なため、会社を退職する時期が分かった時点で、いつでも行動に移せるように準備しておきましょう。

すぐに動けるようにするためにも、早めに個人口座を作り、証券会社に振り替えておくことがベターです。

 

まとめ

持株会とは、自社の株を従業員が購入して保有できる制度です。

従業員の給料から天引きして拠出金とし、自社の株式を共同購入した後に拠出金額に応じて再分配します。

 

会社にとっては、持株会が安定株主になるほか、従業員にとっても手間なく資産運用が行えるなどのメリットがあります。

 

ただし、双方にとってのデメリットもあるため、メリットとデメリットを考慮した上で、持株会の設置を判断することが大切です。

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