人事のための情報サイト 人事バンク

■ワークシェアリングの意味と誕生の背景

ワークシェアリングは読んで字の如く、「ワーク(仕事)」を「シェア(共有)」すること、つまり従業員同士で仕事や雇用を分かち合うことを指します。

日本ではテレビや新聞で「ワーキングシェア」と呼ばれることもあるので、そちらの呼び方で認識している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

では、仕事を共有するとはどういうことなのか。

具体的な内容については後述しますが、一人当たりの労働時間や業務量を削減し、新しい雇用を生み出すこと――それがワークシェアリングです。

元々ヨーロッパで生まれたものですが、その背景には不況に伴う労働環境の悪化や失業・過労死の増加があります。

そうした状況を改善するために、「雇用の創出」を目的として時短化、パートタイムといった様々な形で労働者を雇用し、一人ひとりの労働時間を減らしながら仕事を分担する試みが始まったのです。

長時間労働によるうつ病の発症や自殺が社会問題となる中、日本でも働き方改革の一環として導入する企業は増えつつあります。

オランダやドイツ、フランスなどではすでに多くの企業で導入され、オランダでは失業率を大幅に減少させたという報告もあります。

 

 

■ワークシェアリングの種類

「仕事の分かち合い」とも訳されるワークシェアリングですが、その取り組みは様々です。

アメリカ合衆国国際入庁によると、ワークシェアリングは以下の六種類にまとめられます。

 

【週当たりの労働時間短縮による雇用創出】

一人ひとりの一週間あたりの労働時間を短縮することで、それに代わる雇用を生み出す方法です。

 

【ジョブシェアリング】

通常、フルタイムで働く労働者が一人で担当する業務を二人以上の労働者がチームで分担し、一人の負担を減らしつつ評価や待遇もセットで受けられる働き方です。

 

【早期退職措置としてのパートタイム化】

定年退職者の再雇用で嘱託やパートとして雇用するケースはよくありますが、この取り組みは早期退職措置として労働者の勤務時間をパートタイムに切り替えるというものです。

 

【自発的パートタイム化】

自発的にフルタイムからパートタイムに働き方を転換するワークシェアリングの方法です。

 

【連続有給休暇時の代替要員】

病気などが原因で長期休暇を取る正社員の代わりに代替要員を雇用する取り組みです。

 

【キャリア・ブレーク時代の代替要員】

産休・育休の取得で長期休暇を取得する社員の代替要員として、新しい労働者を採用する方法です。

 

 

■導入のメリット

前述の通り、ワークシェアリングは「雇用の創出」を目的としており、高齢者の雇用や女性の社会進出を進めるという大きなメリットが見込めます。

 

時短やパートタイムといったフレキシブルな勤務が可能になるため、子育てや介護との両立など、ワークライフバランスを意識した働き方も実現できます。

働きやすい職場環境に従業員が満足を覚えれば、自ずと定着率も上がっていき、結果として企業の長期的な成長に繋がっていきます。

 

ただし、一人ひとりの労働時間が短くなった分、効率よく仕事をこなしていかなければ生産性は落ちてしまいます。

一歩間違えばデメリットとなってしまいますが、見方を変えれば短い時間で仕事を終わらせようと意識することで、業務の進め方を見直すきっかけなるという考え方もあります。

 

社会全体から見れば、人員削減に歯止めをかけることで給与所得者の減少を防ぎ、年金などの生活福祉金の減額を抑えることにも繋がります。

普段からその影響を意識する機会は少ないと思いますが、社会全体に福祉などの公共サービスが行き渡ることを考えれば、導入する意義はあると言えるでしょう。

 

 

■導入のデメリット・注意点

従業員の仕事における負担が減り、生産効率が上がったとしても、雇用を増やせばそれだけ賃金にかかる費用が膨らみます。

給与負担が生産を上回れば、結果的に不利益を被るのは企業です。

給与負担を減らすためにパートタイム雇用がありますが、正社員との格差を感じて結局退職してしまうケースも少なくありません。

さらに、生産効率の上げ方を間違えればサービス残業が増える可能性もあります。

労働時間短縮のために実施したワークシェアリングによって、かえって時間外労働が増えてしまっては本末転倒です。

 

社内にワークシェアリングを定着させるためには、ワークシェアリングの特徴である多様な働き方を紹介し、様々なキャリアの選択肢があるというメリットを従業員に示しておく必要があるでしょう。

労働時間が短くなれば、必然的に報酬も引き下げられることになります。

そうした状況を望まない従業員もいることを踏まえた上で、必ず従業員の合意を得てワークシェアリングを導入するようにしましょう。

 

 

■まとめ

メリットの一方で、課題の多い取り組みであるワークシェアリング。

他の先進諸国にはあまり見られないサービス残業の問題もあり、欧米とは違ったアプローチで問題解決を図る必要があります。

 

しかし、実際にワークシェリングを導入した国内企業からは、「余暇の利用拡大に繋がった」「社員の士気が上がった」「稼働時間の削減によって経費・人件費を削減できた」という声も上がっています。

労働者の働き方に関するニーズを汲み取り、デメリットをひとつずつ解消していけば、ワークシェアリングによって企業の成長を推し進めることができるでしょう。

最新記事