近年、若者を中心に地方へ移住や就職・転職する「U・I・Jターン」希望者が増えています。

 

U・I・Jターン採用を実施することで人手不足の解消はもちろん、多様なメリットが期待できるため地方企業は積極的な実施がおすすめです。

 

この記事では、U・I・Jターンの概要やメリット・デメリット、募集方法について詳しく解説いたします。

 

U・I・Jターン採用で押さえておきたいポイント、助成金についてもご紹介します。

 

U・I・Jターンとは

「Uターン」「Iターン」「Jターン」とは、いずれも地方への就職・転職を指す言葉です。

 

日本では、長らく東京一極集中が起こっていましたが、近年は東京から転出する人が増えており、地方での就職・転職を希望する人も多くなったため、注目が高まっています。

 

Uターンとは

Uターンとは、地方から都市部へ移住した後、故郷に戻って働くことです。

 

例)

 

都内企業に就職したが、実家の都合で地元の長野県に戻る

大学進学のために福島県から転出したが、就職で地元に戻る など

 

 

Iターンとは

Iターンとは、故郷の都市から出て地方に移住して働くことです。

Uターンのように故郷へ戻ることなく、故郷以外のところに移住して働くことを言います。

 

例)

 

東京都で生まれ育ち、大学卒業後も都内企業に就職したが、数年後に新潟県の企業へ転職する

東京都で生まれ育ち、青森県の大学に通い、そのまま現地で就職する など

 

 

Jターンとは

Jターンとは、地方から都市へ移住した後、故郷近くの地方都市に移住して働くことです。

Uターンは故郷に戻りますが、Jターンは故郷の近隣の県や都市部までしか戻りません。

 

例)

 

北海道帯広市で生まれ、都内の大学に進学した後、北海道札幌市で就職する

兵庫県で生まれ、大阪府の企業に就職した後、京都府の企業に転職する

 

 

U・I・Jターンの転職者が増加している背景

ここでは、U・I・Jターン者が増えている背景についてご紹介します。

 

地方創生政策の推進

U・I・Jターン者の増加要因として、地方創生政策の推進が挙げられます。

 

東京一極集中が進む日本では、地方の人口減少に歯止めをかけるため、2014年に地方創生政策として「まち・ひと・しごと創生法」が施行されました。

 

地方創生の一環として、

  1. U・I・Jターンによる地方での起業や就業への支援金支給
  2. 地方自治体への交付金支給
  3. 地方創生の相談窓口設置

など、さまざまな施策を実行しています。

 

移住者への支援が手厚くなって、移住のハードルが下がったため、U・I・Jターン者が増加しました。

 

新型コロナウイルス感染症の流行

株式会社学情『20代UIターンに関する意識調査』

引用:株式会社学情『20代UIターンに関する意識調査

 

新型コロナウイルス感染症の拡大も、U・I・Jターン者の増加に大きな影響を与えています。

 

株式会社学情が2020年9月に発表した『20代UIターンに関する意識調査』によると、「UIターンや地方での転職を希望する人」は65.8%、同年5月比では29.7ポイントも増加しています。

 

さらに、UIターンを希望する理由として、

 

地元に帰りたいから…8%

地元に貢献する仕事をしたいと思ったから…9%

都市部で働くことにリスクを感じたから…9%

テレワークで場所を選ばずに仕事ができることが分かったから…5%

 

が、上位を占めました。

 

新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークが定着したことで、都市圏にこだわる必要がなくなったため、地方での転職を希望する人が増加したと言えるでしょう。

 

今後もテレワークを導入する企業は増えると考えられるため、地方での就職・転職者は増加が期待できます。

 

UIJターン採用のメリット

では、U・I・Jターン採用をすると、企業はどういったメリットを得られるのでしょうか。

 

都市部にネットワークを活用できる

U・I・Jターン採用のメリットは、都市部のネットワークを活用できる点です。

 

限られたエリアや取引先との交渉で成り立っている企業は、外部との交流が少ないため、U・I・Jターン者を採用すると、都市部の人脈やネットワークを取り入れられます。

 

その人材を通して都市部へネットワークを広げていくこともできるため、事業拡大につながる可能性が高いです。

 

新しいアイデアが生まれる

限られた範囲でしか交流がないと、新しい文化に触れる機会がほとんどありません。

 

都市部とのつながりを持つ U・I・Jターン者を採用すると、異なる考えや文化、ノウハウを取り入れられるため、新しいアイデアの創出につながります。

 

幅広いニーズに対応した製品開発や社内の活性化も期待できるため、事業にも良い影響を与えるでしょう。

 

優秀な人材を採用できる

中小企業庁が発表した『第2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍』によると、U・I・Jターン転職経験者のうち、大企業から中小企業への転職者は33.6%です。

 

中小企業や小規模事業者が、U・I・Jターン転職の雇用の受け皿となっていることは明らかなため、U・I・Jターン採用を行うと、優秀な人材を採用できる可能性があります。

 

大企業で活躍した人材の知識やノウハウを吸収できれば、自社の技術・品質向上に役立てられるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

 

また、ノウハウの吸収によって業務が効率化すれば、労働時間短縮も可能なため、従業員満足度の向上にも期待できます。

 

離職率が低い

Uターンは、「もともと住んでいた土地で知り合いが多く、居心地が良い」「地元から離れたことで地元の良さを再認識した」などの理由から、離職率が低い傾向にあります。

 

IターンやJターンの場合、転居を伴う転職になるため、覚悟を持って転職活動を行っている人が多く、Uターン同様に離職率が低い傾向です。

 

U・I・Jターン採用のデメリット

多様なメリットを得られるU・I・Jターンですが、デメリットも存在します。

 

選考プロセスで応募者に負担をかけやすい

U・I・Jターンの採用選考を対面で行う場合、応募者に自社まで足を運んでもらう必要があります。

 

遠距離の就職・転職活動は、移動にかかる交通費や宿泊費、時間が大きな負担となるため、選考参加へのハードルが高いです。

 

交通費や宿泊費を企業側で負担しない場合、金銭面がネックとなって応募を控えたり、選考を辞退したりする人もいます。

 

そのため、最終面接以外はWeb面接を行う、移動費用の一部または全部を企業で負担するなど、求職者の負担を軽減する配慮が必要です。

 

待遇面を見直す必要がある

中小企業庁『第2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍』

 

引用:中小企業庁『第2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍

 

一般的には、都市部の企業よりも地方の企業の方が給与水準は低くなります。

 

中小企業庁の調査を見てみると、程度の差はあるものの、U・I・Jターン転職者の過半数が「収入が減少した」と回答しています。

 

また、U・I・Jターン転職者の32.4%が「賃金収入の低下・不安定化」を課題に感じていることが分かりました。

 

そのため、U・I・Jターン採用を行う際は、給与水準や評価制度、福利厚生の見直しといった待遇面の是正が必要になるでしょう。

 

移住に伴う手続きのサポートも他社との差別化につながります。

 

U・I・Jターン希望者の募集方法

ここでは、効率よくUターン・Iターン・Jターン希望者を募集する方法についてご紹介します。

 

Webツールを活用する

マイナビ『マイナビ 2021年卒 大学生 Uターン・地元就職に関する調査』によると、「就職サイトのエリア特集ページを見て」企業情報を得た学生が過半数を占めています。

 

また、企業のホームページやWebセミナーなども多いことから、U・I・JターンではWebツールの活用が重要です。

 

就職・転職サイトへの掲載

リクナビやマイナビ、DODAをはじめとした就職・転職サイトには、地域問わず多くの求職者が登録しています。

 

そのため、就職・転職サイトへ掲載すると、地元での就業を希望している求職者に一斉に情報を届けられます。

 

また、「U・Iターン歓迎」「U・Iターン支援あり」など、求職者の検索条件に紐づける機能を利用すれば、より自社の求人を見つけてもらいやすくなるでしょう。

 

求人検索エンジンへの掲載

求人検索エンジンとは、求人情報のみを取り扱う検索エンジンです。

 

インターネットで検索するときのように、「地域×職種」などとキーワードを打ち込むと、合致する求人情報が一覧で表示されます。

 

就職・転職サイトと違い、会員登録なしでネット上にある求人情報を一括検索できるため、利用者が急増しているサービスです。

 

Indeedや求人ボックス、スタンバイといった多様なサービスが展開されています。

 

基本無料で掲載できますが、有料掲載で求人の露出を高めることも可能です。

 

クリック数に応じて課金される「クリック課金型」を採用しているため、採用コストを無駄なく利用できるでしょう。

 

求人検索エンジンは、より多くの求職者に自社の求人を届けられる反面、無料掲載では埋もれてしまう可能性があるため、注意が必要です。

 

自社サイトへの掲載

多くの求職者は、就職・転職サイトや求人検索エンジンで求人情報を入手した後、企業サイトを確認して応募するかどうかを判断しています。

 

そのため、自社サイトで求職者向けの情報が用意できていない場合、応募を控えてしまう可能性が高いです。

 

転居を伴うU・I・Jターン者は、より一層情報収集に注力するため、U・I・Jターン向けの採用ページや採用サイトを用意しましょう。

 

SNSでの情報発信

SNSで情報収集する求職者も多いため、積極的に情報発信するとU・I・Jターン希望者に見つけてもらいやすくなります。

 

TwitterやInstagramといったSNSには、カジュアルな情報も投稿できますし、相互コミュニケーションも可能なため、応募意欲も向上させられるでしょう。

 

企業の魅力が伝わるよう、職場の雰囲気が伝わるリアルな情報を写真と一緒に掲載するのがおすすめです。

 

また、SNSでは特定の人だけに広告を出すターゲティング広告も可能なので、余裕があれば、SNS上で求人広告を出すのも良いでしょう。

 

都市圏での説明会や面接会

U・I・Jターン希望者は、都市圏で生活しています。

 

効率よくU・I・Jターン希望者と交流するためにも、都市圏で説明会や面接会を開催しましょう。

 

U・I・Jターン希望者向けの移住フェアや、会社説明会などを行っている地方自治体もあります。

 

リファラル採用

リファラル採用とは、従業員の知人や友人を紹介してもらう方法です。

 

自社の内情を理解している従業員が、自分の知人・友人を紹介するため、ミスマッチ採用を抑止する効果があります。

 

また、職場に気心の知れた人がいるため、職場に馴染みやすく、早期離職も起こりづらい方法です。

 

リファラル採用は、広告掲載費などの外部に支払うコストがかかりません。

 

紹介してくれた従業員に、インセンティブとして数万円支給する程度なので、採用コストも抑えられます。

 

U・I・Jターンでは、家族や親族、友人からの紹介で就職する人も多いため、自社の従業員に積極的に呼びかけましょう。

 

人材紹介サービス

なかなかU・I・Jターン希望者が集まらない場合は、人材紹介サービスの利用を検討しましょう。

 

地方転職向けの人材紹介サービスを利用すれば、要望に合致するU・I・Jターン希望者を紹介してもらえるため、苦戦しがちな母集団形成を行う必要はありません。

 

さらに、ある程度スクリーニングされた状態で面接をスタートできるので、採用工数を大幅に削減できます。

 

人材紹介サービスは、成功報酬型のため、採用するまで料金がかかりませんが、採用者1人つき理論年収の30~35%を紹介料として支払う必要があります。

 

複数人を採用する場合、コストが増大する可能性があるため、注意が必要です。

 

UIJターンを採用する際のポイント

つづいて、U・I・Jターン希望者を採用する際のポイントについてご紹介します。

 

転居を伴う転勤の有無について明確にする

U・I・Jターン希望者は、その土地で生活することにメリットを感じています。

 

そのため、U・I・Jターン向けの募集にもかかわらず、転居を伴う転勤があると、応募者が集まりません。

 

転勤の有無を明確にした上で、転勤がある場合は「転居を伴う転勤をなしにする」など、できる限りその土地で働けるよう配慮しましょう。

 

地域限定社員として募集を行うのも一つの手です。

 

労働環境を整える

テレワークの普及に伴い、U・I・Jターン希望者は増加しています。

 

テレワークやフレックスタイム制など、さまざまな働き方ができるよう、労働環境を整えると、U・I・Jターン希望者も含めた応募者増加につながります。

 

また、柔軟性のある働き方を認めることで、介護や育児といった事情を抱えている人も働きやすくなるため、多様性の確保も期待できるでしょう。

 

待遇の見直し

U・I・Jターンでは、賃金の減少を不安視する人が多いです。

 

都市部よりも物価が低いものの、地方は収入が下がって当然という考えでは、優秀な人材を確保できないでしょう。

 

例えば、

  1. 成果や能力が給与に反映されるよう、不公平感のない評価制度を整備する
  2. 引っ越し補助や家賃補助を導入する
  3. 借り上げ住宅や社員寮を用意する
  4. 家探しや移住に伴う手続きのサポートを行う

など、待遇面を見直すことで、他社との差別化につながります。

 

Web面接を実施する

採用選考のために遠方へ向かうのは、求職者にとって大きな負担となります。

 

選考参加へのハードルを下げるためにも、Web面接対応を可能にし、求人情報にも必ずその旨を記載してください。

 

Web面接だけで不安な場合、最終面接だけ訪問してもらい、交通費を支給するのが良いでしょう。

 

U・I・Jターン採用を後押しする助成金

国や地方自治体では、U・I・Jターン採用を後押しする助成金を用意しているので、積極的に活用しましょう。

 

なお、助成金や補助金の内容は変更される可能性があるため、厚生労働省などの情報も必ずご確認ください。

 

中途採用等支援助成金(UIJターンコース)

UIJターンコースは、U・I・Jターン者の採用にかかった経費を助成する制度です。

 

100万円を上限として、中小企業は費用の1/2、中小企業以外は1/3が助成されます。

 

対象となる経費は、

  1. 募集・採用パンフレットなどの作成・印刷経費
  2. 自社ホームページの作成・改修経費
  3. 就職説明会・面接会・出張面接などの実施経費
  4. コンサルティング費用

です。

 

参考:厚生労働省「中途採用等支援助成金(UIJターンコース)

 

地方自治体の助成金・補助金制度

各自治体では、U・I・Jターンの雇用を支援するさまざまな助成金・補助金を用意しているため、事業場のある自治体の助成金を探してみましょう。

 

人事バンクでは、「助成金・補助金検索」をご用意しています。

 

エリアや目的などに応じて対象となる助成金・補助金を一括検索できますので、ぜひご活用ください。

 

U・I・Jターンで人材確保

地方創生政策や労働者の意識の変化などにより、U・I・Jターンの機運が高まっています。

 

U・I・Jターン採用は、新しいアイデアの創出や優秀人材の確保といった、さまざまなメリットがあります。

 

とはいえ、デメリットが全くないわけではありません。

 

デメリットも把握した上で、U・I・Jターン採用を検討し、ご紹介したポイントを踏まえて実施しましょう。

 

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