ビジネス面で課題となっているのが、プレゼンティーイズムです。
プレゼンティーイズムは、健康の問題を抱えながら仕事を行っている状態を指しており、今後の働く世代にも重要なテーマとなっています。
プレゼンティーイズムの原因はさまざまあり、食生活の偏りや運動不足などの生活習慣が影響しているケースも多いです。
今回はプレゼンティーイズムとはどのようなものなのか、詳しい内容と原因、そして対策から改善方法まで、詳しく解説します。
プレゼンティーイズムとは何か
プレゼンティーイズムとは、一般的に「健康の問題を抱えながら仕事を行っている状態」を指しています。
仕事をするうえで、健康は生産性を維持するために大切な要素です。
しかし、持病や突発的な病気によって、仕事に支障を与える可能性があります。
そういった病気を抱えながら仕事を行っている状態のことをプレゼンティーイズムと呼び、現代社会では問題視されている課題となっているようです。
プレゼンティーイズムの定義
プレゼンティーイズムの定義としては、従業員が心身の不調を抱えながら仕事をしている状態を表しています。
主に心身の不調とは、頭痛や胃痛などが該当しており、軽度ながらも病気を抱えて仕事をしている人は多いです。
・頭痛
・胃痛
・花粉症
・睡眠不足
・メンタルヘルス
病気を抱えながら業務を行えば、効率が悪くなり生産性の低下を招きます。
社員のケアレスミスにつながる恐れがあることから、企業でも配慮すべき課題となっているようです。
また、心身に不調を抱えている状態で業務を行えば、状態が悪化して健康を大きく損なう事態に発展する恐れがあります。
そのため、プレゼンティーイズムの早めの対策や予防が肝心です。
プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの違い
プレゼンティーイズムと混同されがちなのが、「アブセンティーイズム」です。
アブセンティーイズムとは、体調不良で欠勤や遅刻、早退、長期休職が頻繁に起き、仕事が行えない状態を指しています。
アブセンティーイズムで欠員が出れば、企業としてもパフォーマンス低下につながるため、著しく生産性が低下する事態に発展する恐れがあるでしょう。
プレゼンティーイズムの原因
プレゼンティーイズムに該当する健康問題は、下記の10個といわれています。
・アレルギー
・関節炎
・喘息
・首や腰の痛み
・呼吸系の疾患
・うつ
・糖尿病
・偏頭痛
・循環器系疾患
・胃腸の疾患
これらの健康問題を抱えた状態で仕事を行うと、重大な健康問題に発展する恐れがあるため、早急な対策や改善が求められます。
プレゼンティーイズムの原因は下記の通りです。
・食生活
・運動不足
・生活習慣の乱れ
・社員の健康に対する意識が低い
・医療機関にかかっていない
個々の健康意識を高めることで、プレゼンティーイズムの改善や予防は可能です。
健康問題は社員自身の考え方を改めることで改善できるので、社内で健康診断を定期的に行う必要があります。
ただし、残業時間の増加による睡眠時間の低下が、社員のプレゼンティーイズムに影響を与えている可能性もあるはずです。
職場環境の悪化もプレゼンティーイズムの原因になるので、企業は職場環境を整えるよう配慮する必要があるでしょう。
プレゼンティーイズムの測定方法
プレゼンティーイズムは、企業や社員の生産性を低下させる原因になります。
そのため、プレゼンティーイズムの測定方法を把握し、定期的に実施することが大切です。
プレゼンティーイズムの測定によって、健康問題が悪化する前に対策を講じられれば、悪化の予防につながるでしょう。
プレゼンティーイズムの測定方法としては、下記の通りです。
・健康経営指標に基づき対象者を評価する
・ストレスチェックを実施する
・従業員サーベイをおこなう
・ラインケアを強化する
具体的に、プレゼンティーイズムを測定する方法について、詳しく解説します。
健康経営指標に基づき対象者を評価する
プレゼンティーイズムの測定方法として、「健康経営指標」と呼ばれるものがあります。
健康経営指標では「生産性hの影響度を評価する指標」として、評価手法が主に5つ用意されているのが特徴です。
健康経営指標で紹介されている評価手法は、下記の5つになります。
・WHO-HPQ
・東大1項目版
・WLQ(Work Limitations Questionnaire、タフツ大学医学部作成)の日本語版
・産業医科大学で開発された、WFun(Wrok Functioning Impairment Scale)
・QQmethod(健康問題の有無を確認した上で、4つの質問で評価する)
評価を行うためには、対象者に質問紙を渡して自己記入形式で回答してもらいます。
その内容によって、健康上の問題を理由とした業務パフォーマンスの低下がどの程度なのか把握することが可能です。
ストレスチェックを実施する
労働安全衛生法によって、常時50名以上の従業員がいる企業は1年間に1回は従業員のストレス度合いを測定する義務が設けられています。
ストレスチェックの内容は、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」といった項目です。
このストレスチェックで「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い人は「高ストレス者」として判断されます。
高ストレス者と判断される人は、疲れがとれない、仕事の内容が気になって家でも落ち着かないといったメンタルヘルスに不調をきたしていることが多いです。
ただし、実際にメンタルヘルスの自覚症状が出ていなくても、業務の責任が重い、業務量が多いといった人は懸念材料として高ストレス者に分類されることがあります。
従業員サーベイをおこなう
従業員サーベイとは、定期的に同じ項目でアンケートをとって変化を定点観測する手段を指しています。
従業員の変化に気付く手段として活用できるので、メンタルヘルスに不調をきたしていないか、細かく観測することが可能です。
個人の状態を定量的に説明することは難しく、ストレスチェックでは判断しにくいケースがあります。
心身の不調の発見が遅れる可能性もあるので、定期的にサーベイを行って組織状態の把握に努めていきましょう。
ラインケアを強化する
ラインケアとは、職場のライン上にいる上司が部下の異常に対して反応し、対策を講じることをさしています。
部下の変化に気付きやすい人材を配置すれば、従業員のストレスケアを適切に行うことが可能です。
ラインケアの方法は上司によってさまざまで、相談に乗ったり休みを促したりする方法があります。
しかし、メンタルヘルスに関して適切な知識を持っていない方や、偏見を持っている人は適切にラインケアを行えない可能性があるでしょう。
また、働き方の多様化によって、テレワークをしている部下の変化に気付きにくいといった問題もあります。
できるだけ部下と話し合える場を設け、密にコミュニケーションをとっておくことが、ラインケアで重要になってくるでしょう。
プレゼンティーイズムを防ぐためにも、上司がメンタルケアを行い、未然に食い止めることが重要になってきます。
プレゼンティーイズムを予防・改善するための対策
プレゼンティーイズムを引き起こさないためにも、予防や改善するための対策を把握しておくことが大切です。
プレゼンティーイズムを予防・改善するための対策としては、下記の通りになります。
・セルフケア
・組織でのラインケア
・保健スタッフ等によるケア
プレゼンティーイズムを予防・改善するための対策について、詳しく解説します。
セルフケア
従業員自身が心身のケアを行い、ストレスを予防する「セルフケア」でプレゼンティーイズムを予防・改善する方法があります。
セルフケアは従業員自身にやり方が委ねられるので、自分自身のことを理解して適切な対策を講じないといけません。
自分の異変度合いを理解することは難しく、ストレスに対して適切な知識がないと、セルフケアが有効に働かない可能性があります。
従業員が適切にセルフケアを行うためにも、企業は研修機会を設けてセルフケアに対する意識を高めるきっかけを与えることが大切です。
セルフケアを十分に行える環境を整えることができれば、社員がメンタルヘルスの不調を未然に防げるようになるでしょう。
組織でのラインケア
上司が直属の部下のストレスケアを行う方法をラインケアと呼びます。
適切にラインケアを実施するために、上司は部下の具体的なストレス要因を把握して、適宜相談に乗るといった対策を講じることが大切です。
適切にラインケアを行うためにも、企業は上司に対して定期的に教育や研修を実施する必要があります。
ラインケアは上司が適切にストレスケアを行えるか、部下の変化に気付いて適切な対応ができるかどうかが重要です。
また、上司自身が強いストレスを抱えている可能性もあるので、定期的なコミュニケーションや研修機会を設ける必要があるでしょう。
保健スタッフ等によるケア
企業と契約している産業医や衛生管理者などの保険スタッフが、従業員のストレスケアを行い、プレゼンティーイズムを予防・改善する方法があります。
専門的な知識を有している人材からケアしてもらうことで、心の健康づくりに効果が期待できるでしょう。
保険スタッフによるストレスケアの方法はさまざまあり、主に下記のような内容が実施されます。
・メンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
・個人の健康情報の取り扱い
・事業場外資源とのネットワークの形成や窓口
・職場復帰における支援
社内でセルフケアやラインケアを行うよりも、効率のよいストレスケアが行える可能性があります。
まとめ
プレゼンティーイズムにより、就業が困難になる社員も出てくるかもしれません。
そうなってしまうと、社員や企業の生産性が著しく低下する恐れがあります。
プレゼンティーイズムを予防・改善するためにも、事前に対策方法について理解しておくことが大切です。
今回紹介したプレゼンティーイズムの原因や予防、改善方法を参考に、適切な対応を検討してみてください。