勤務中にタバコを吸いに行く「タバコ休憩」は、少し前なら当たり前の風景でした。
しかし、近年では喫煙者が減少しています。
そのため、タバコを吸わない人と喫煙者では休憩時間の長さが変わり、不平等ではないかと問題視されているのです。
喫煙者としては、タバコ休憩があることでストレス解消になっていた人もいたでしょう。
今回はタバコ休憩が抱える、企業側の問題と改善策について解説します。
タバコ休憩の扱いについてどうすべきなのか、詳しい内容を紹介していくので参考にしてみてください。
「タバコ休憩」とは?
タバコ休憩とは、就業時間中に社員が喫煙するために席を離れ、喫煙所でタバコを吸う際の休憩時間を指しています。
タバコ休憩は、社員同士のコミュニケーションの場としても活用されており、職場の慣習のため黙認されていました。
しかし、非喫煙者はタバコ休憩がないことから、不公平さを不満に思う社員が増えています。
そのことから、企業側はタバコ休憩の慣習をどうするのか、今後の対応が問題視されているようです。
労働基準法上の休憩時間について
労働基準法における休憩時間とは、労働者が休息のために労働から完全に解放されるために保障されている時間を指しています。
連続して労働することは、業務効率を下げる恐れがあり、労働災害のリスクを高める可能性が高いです。
そのため、企業側は労働者に対して一定の休憩時間を与える必要があります。
休憩時間中は、使用者の指揮命令下にない状態になるため、完全に労働から解放されることが重要です。
一方で、反対に作業をおこなっていないものの、使用者の指示に素早く対応できる状態の時間を手待時間と呼びます。
これは、休憩時間とは違い労働時間としてカウントされます。
休憩時間に関する取り決め
労働基準法では、就業中の休憩時間について細かく取り決めされています。
労働時間が6時間を超える場合は、最低でも45分の休憩が求められているようです。
就業時間によって休憩時間の取り決めは変わるので、自分が最低ラインの休憩時間が与えられているのか、事前に把握しておくことが大切です。
労働基準法で取り決められている休憩時間の目安としては、下記の通りになります。
労働時間 |
休憩時間 |
6時間以内 |
不要 |
6時間を超えて8時間まで |
45分 |
8時間を超える場合 |
1時間 |
引用元:労働基準法「電子政府の窓口」
休憩の使い方は労働者の自由
労働基準法によって、休憩は社員に与えられている権利のひとつであることがわかりました。
また、休憩の使い方に関しては、労働者が自由に利用できます。
そのため、休憩のときにタバコを吸うことは社員に与えられている権利で、使い方は自由です。
上司が休憩の使い方について指示することはできないので、タバコのために休憩時間を使うかどうかは、社員次第となっています。
しかし、タバコ休憩とは就業時間中にタバコを吸う行為であり、社員が一律に与えられている休憩時間とは違うのが問題の中心となっているようです。
労働基準法ではタバコ休憩に関する明確な記載はない
労働基準法ではタバコ休憩に関する明確な記載はありません。
しかし、日本でタバコ休憩が許されているのは、慣習として根強く残っているためです。
会社でタバコ休憩が許されているかどうかが焦点になり、会社側が容認しているならタバコ休憩は問題ないとされています。
一方で、業務時間中にタバコ休憩で席を外すのはとして抜け出すのは、非喫煙者からすればサボリのように見えてしまうことも少なくありません。
実際、タバコ休憩は就業時間中におこなわれるので、その間も賃金の支払いが発生している状態です。
そのため、日本企業における慣習だからといっても、不満を抱えている人もいるでしょう。
この不満を企業側がどのように解消するのか、今後の対応が重要になってきます。
タバコ休憩がもたらす問題とは?
タバコ休憩は労働基準法に定められているわけではなく、日本企業の慣習として残っているものです。
そんなタバコ休憩がもたらす問題とはさまざまあり、その問題を解決することが企業側に求められています。
タバコ休憩がもたらす問題としては、下記の通りです。
・勤務時間の不公平感
・生産性の低下
・健康へのリスク
ここからはタバコ休憩がもたらす問題について、詳しく解説します。
勤務時間の不公平感
タバコ休憩の問題として、喫煙者がタバコ休憩をおこなっているときにも、非喫煙者は労働している点です。
同じ労働者であるにもかかわらずなのに、休憩時間に差が出来てしまうのは、不公平感が出ます。
特に何度もタバコ休憩を取るのは、慣習だからといっても、会社の業務に支障が出る恐れがあるでしょう。
また、同じ給料が出る場合は社員のモチベーション低下にもつながりつながります。
タバコ休憩といっても、何度も休憩をしているのは常識的に見ても問題があるといえるでしょう。
そのため、タバコ休憩は職務専門義務の例外として、あくまでも常識的な範囲での休憩だけが求められます。
生産性の低下
タバコ休憩をおこなう社員が多いと、業務に支障が現れ生産性の低下が生じる恐れがあります。
タバコ休憩は、わざわざ喫煙所まで足を運ぶ必要があるため業務を中断しないといけません。
そのためタバコ休憩を頻繁におこなっていると、自然と業務遂行の時間が少なくなります。
また、業務遂行時間が少なくなると、その分労働時間が長くなり、残業が生じる可能性も高くなるでしょう。
企業としても無駄な賃金が生じるリスクもあるため、タバコ休憩におけるルールの制定が求められます。
健康へのリスク
タバコの煙は喫煙者だけでなく、「副流煙」によって周囲の人間も不健康になるリスクがあります。
喫煙所があったとしても煙が流れてしまうことがあるため、デスクが近い人は副流煙が流れてくる恐れがあるでしょう。
副流煙は主流煙よりもニコチンやタールの量が多く、喫煙者よりも健康被害が大きくなるリスクがあります。
このように、非喫煙者にも健康負担が生じるリスクがあり、企業側には問題への対応が求められているのです。
企業として喫煙者を採用しない方針はできるのか?
タバコ休憩を問題視するのであれば、喫煙者を企業側が喫煙者を採用しない方法も考えられるのではないでしょうか。
実際に、企業は採用の自由があるため、誰を採用するのか企業側の方針で決定することは可能です。
ただし、採用の自由といっても、下記のような制限があります。
・年齢制限をおこなう
・性別を条件にする
・本人に責任のない事柄や思想信条に関して採用基準を決める
このような条件で採用するのは、違法行為となるので注意が必要です。
喫煙者に関しては採用の自由に関する制限がないので、喫煙者を不採用にするのは違法にはなりません。
ただし、採用した後に喫煙者だと発覚したとしても、退職を促すことは難しいです。
そのため喫煙者であることを隠して、企業の面接を受けるに訪れる人がもいるといういったリスクも、あらかじめ想定しておかないといけません。
企業側の改善策について解説
タバコ休憩は、非喫煙者との不公平感が増したり、生産性の低下につながったりするリスクがあります。
そのリスクを避けるためにも、企業側は改善策を講じる必要があるでしょう。
企業側の改善策としては、下記のような方法が考えられます。
・決められた時間外のタバコ休憩を認めないようにする
・非喫煙者にも同等の休憩時間を認める
・非喫煙者に対して、喫煙休憩分を考慮した制度をつくる
タバコ休憩の問題を解決するための企業側の改善策について、詳しく解説します。
決められた時間外のタバコ休憩を認めないようにする
タバコ休憩に対して不満が出るのは、事前に定められている休憩時間外にタバコ休憩をおこなうために生じます。
そのため、決められた時間外のタバコ休憩を認めないルールを設ければ、不公平感を無くすことが可能です。
また、喫煙するために喫煙所に行くと、その分は業務効率が下がってしまいます。
企業としてもリスクを軽減するためにの一端になるので、決められた時間外のタバコ休憩を認めないようにすれば、業務効率も向上する可能性があるでしょう。
非喫煙者にも同等の休憩時間を認める
喫煙者のタバコ休憩のように、非喫煙者にもタバコ休憩と同じような休憩を与えれば、不公平感は無くなります。
適度な休憩があったほうが、業務効率は全体的に良くなる可能性があるため、社員全体に同じ休憩を与えるのは良い施策といえるでしょう。
ただし社員によってはこまめに休憩すると、集中力が持続しないため必要ないといった意見もあるかもしれません。
企業内部の状態も把握したうえで、適切な休憩時間を設けることが重要になってきます。
非喫煙者に対して、喫煙休憩分を考慮した制度をつくる
喫煙者にタバコ休憩を与えるなら、その分非喫煙者にとって有益な制度をつくる方法があります。
たとえば、非喫煙者には「非喫煙手当」を与えたり「有給休暇」を与えたりという方法があるでしょう。
タバコ休憩の代わりとなる制度を設ければ、喫煙者と非喫煙者の間に不公平感は無くなるので、社内の不満は少なくなるはずです。
実際に非喫煙者に対して、手当や有給休暇を与えるといった制度を設けている企業も増えています。
どちらにも損がないよう、企業側は社員が気持ちよく働ける職場環境を整えることが重要になってくるでしょう。
まとめ
今回はタバコ休憩によって生じている、企業側も問題について詳しく解説してきました。
企業側は問題を解決するための改善策を講じ、社員が不満を抱かない環境を整えることが重要になっています。
そのため、喫煙者と非喫煙者に不平等が生まれないよう、制度の導入やルールの設定が必要です。
今回紹介したタバコ休憩の問題や解決策を参考に、自社で必要な対応を試みてください。