「せっかく採用できたのに、3年も経たずに辞めてしまった」「どうすれば定着するのかわからない」など、新卒者の早期離職にお悩みの企業も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では新卒の離職率について詳しく説明していきます。
新卒の離職率や離職理由、早期離職による企業側のデメリットと改善策について解説しますので、ぜひご覧ください。
離職率とは?
離職率とは、ある時点で在籍していた従業員のうち、一定期間後に退職した人の割合です。
対象となる従業員は、「全従業員」や「新卒」と設定されることが多く、
で計算されます。
離職率は、数値が高いほど離職者が多く、低いほど従業員が定着しやすいことを表しているため、「働きやすさの指標」として重視する求職者も多いです。
しかし、“一定期間”に規定はないため、どの程度の期間を対象とするかによって、離職率は大きく変わります。
例えば、2017年4月に入社した新卒社員10名のうち、1年以内の離職者が1名だった場合の離職率は10%ですが、3年間で5名退社した場合は50%になります。
このように、集計期間によって大きく変わるため、「離職率〇%」と書いてあっても、集計期間が分からないと離職率を比較できないのです。
新卒の離職率はどのくらい?
では、新卒の離職率を見ていきましょう。
新卒者の離職率は、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」で公表されています。
この調査によると3年以内の離職率は、
- 大学卒…32.0%
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短大卒など…42.0%
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高校卒…39.2%
-
中学卒…62.4%
であり、若年になるほど離職率が高くなる傾向にあります。
大卒者の3年以内の離職率推移
次に、大学新卒者の離職率の推移をご紹介します。
参考:厚生労働省「学歴別就職後3年以内離職率の推移」
上記は、平成23年~平成28年までの大卒者の離職率推移をグラフにしたものです。
これによると、大卒者の3年以内の離職率は3割程度で推移していることが分かります。
また、どの年を見ても1年目で離職する割合が最も高いことから、早期離職を防止するには入社1年以内の対策が重要と考えられます。
企業規模別3年以内の離職率(大卒者)
企業規模によっても離職率は異なります。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」
新卒者の離職状況を見てみると、規模が大きくなるにつれて離職率が減少していることが分かります。
また、30人未満規模の企業では、5割近くの新卒者が3年以内に離職していることから、従業員が定着しにくいことが伺えます。
規模の小さな企業では、「若いうちから様々な経験ができる」、「裁量権が大きい」などの魅力がある一方、「待遇面での課題」や「従業員一人当たりの負担が大きい」といった課題を抱えている場合も多いです。
企業によっても異なりますが、こういった点が離職に大きく関係していることを理解した上で、労働環境改善に取り組む必要があるでしょう。
産業別3年以内の離職率(大卒者)
次に、産業別の離職率を見ていきましょう。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」
3年以内の離職率が高い産業は、
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宿泊業/飲食サービス業…50.4%
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生活関連サービス業/娯楽業・・・46.6%
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教育/学習支援業…45.9%
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医療/福祉…39.0%
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小売業…37.4%
です。
「宿泊業/サービス業」では、3年以内に離職する大卒者が約5割にも上っています。
どの産業も一般消費者向けのサービスを提供していることから、「勤務が変則的で休みが取りづらい」「体力が必要」といった点も離職の要因と考えられます。
新卒が早期退職してしまう理由と対策とは?
早期退職する理由を見ていきましょう。
引用:内閣府「就労等に関する若者の意識」
上記は、平成29年に行われた16歳~29歳までの男女を対象とした、初職の離職理由をまとめたものです。
これによると、
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仕事が自分に合わなかったため(43.4%)
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人間関係がよくなかったため(23.7%)
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労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため(23.4%)
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賃金がよくなかったため(20.7%)
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ノルマや責任が重すぎたため(19.1%)
が上位を占めています。
また、ターゲットの属性や質問項目は若干異なるものの、労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った「平成25年若年者雇用実態調査」によると、3年未満の早期離職理由は上記の5項目が占めていました。
このことから、
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採用プロセスの見直し
-
労働環境の整備
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社内コミュニケーションの活発化
-
評価制度の見直し
が早期離職に有効な対策と考えられます。
早期離職による企業側のデメリットとは?
早期離職は、企業にとってどのようなデメリットがあるのかご紹介します。
コストが無駄になる
新入社員が戦力として活躍するまでに掛けるコストは「投資」であるため、早期離職されてしまうと、それまでに掛けた時間とお金が無駄になってしまいます。
新入社員へ投資するコストとして、採用コストが挙げられます。
マイナビの「新卒採用の予算について」によると、入社予定者1人当たりに掛かる採用平均コストは53.4万円です。
早期離職が出れば採用コストが無駄になるだけでなく、再び採用活動を行う必要が出てくるため、余分にコストが掛かってしまいます。
また、一人前の社員に育てるためには、教育コストが掛かります。
企業の教育体制によっても異なりますが、座学による研修や配属後のOJT(実務を通して業務を教える手法)を行っている企業が多いです。
外部の研修サービスを利用しなかったとしても、先輩社員が指導する際の人件費は発生するため、早期離職されてしまうと教育コストも無駄になります。
このように、早期離職は採用コストや教育コストが無駄になってしまうため、企業にとって大きな痛手となるのです。
確実に採用できるとは限らない
早期離職によって人手が足りなくなった場合は、追加で募集を掛ける必要が出てきます。
しかし、労使の需給バランスを表す有効求人倍率は、令和2年1月時点で1.49倍と売り手市場の状況です。
そのため、募集を出しても思ったように応募者が集まらず、確実に採用できるとは限りません。
また、離職率が高くなると、応募者は「何か問題のある会社なのではないか」と考えるようになり、敬遠されてしまう可能性も考えられます。
早期離職による企業側のメリットとは?
では、企業に早期離職のメリットはあるのでしょうか。
早期離職のメリットは、ありません。
前述のとおり、早期離職は金銭面・採用活動面において企業に悪影響を与えます。
採用活動が長期化すれば「求人広告への掲載費用」や「採用担当の人件費」が余分に掛かりますし、同じ求人の長期間掲載は、求職者から敬遠される傾向があるため、悪循環に陥りやすくなります。
よって、早期離職による企業のメリットは、ないのです。
早期離職を改善するには
早期離職を改善する方法についてご紹介します。
採用プロセスの見直し
給与や労働条件、仕事内容が原因の場合、企業側と求職者側に認識のズレが起きている可能性があります。
選考段階や入社前面談などで、業務内容や待遇についてしっかりと伝えられるプロセスになっているか、見直しましょう。
労働環境の整備
働き方の多様性は、ライフイベントに合わせて柔軟に働けるため、離職率改善に有効です。
フレックスタイム制やテレワーク、時短勤務といった柔軟な働き方ができるよう、労働環境を整えましょう。
社内コミュニケーションの活発化
「人間関係」を理由として早期離職する労働者は数多くいます。
風通しの良い職場環境を整えたり、新入社員をサポートするメンター制度を導入したりするなど、新入社員が意見・相談しやすいような環境を整えましょう。
従業員同士が感謝の気持ちを報酬として送り合う「ピアボーナス」の導入も、コミュニケーション活性化に役立ちます。
評価制度の見直し
給与への不満や評価制度への不満が早期離職につながることも多いです。
不明瞭な評価基準や勤務年数に重きを置いた評価基準は、モチベーション低下を招きます。
評価基準を明確にし、それを給与へ反映させる仕組みを確立することで、進むべき方向性が決まるためモチベーション向上につながります。
評価制度を見直したら、従業員が理解できるよう、きちんと説明しましょう。
適切な対策で、離職率の高さを改善しよう
企業にとって様々なデメリットとなる早期離職を防止するには、労働者が働きやすい環境を整えることが重要です。
従業員満足度調査などを行い、自社にどのような課題があるのかを把握した上でご紹介した改善法を試してみてはいかがでしょうか。