近年、内定辞退防止や新入社員の早期活躍を目的として、内定者研修を実施する企業が増えています。
しかし、「どのような内容にしたら良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では内定者研修について詳しく解説していきます。
内定研修の目的や必要性、内定者の抱える不安、内定者研修に含めるべき内容と実施時期をご紹介していきますので、ぜひご覧ください。
内定者研修とは?
内定者研修とは、内定出しした学生を対象として、入社前に行われる研修のことです。
内定者は、社会人として働くことや職場に対して様々な不安を抱えています。
マイナビが行った「入社前研修の目的と内容について」の調査では、内定者の約6割が「内定獲得後に不安を感じたことがある」と回答しており、その不安から内定辞退する人も少なくありません。
内定者研修は、企業理解の促進や人間関係構築に役立つため、内定者の不安や悩みを解消することができます。
内定辞退防止や入社意欲向上だけでなく、研修を早めることで社員の早期育成にもつながるため、多くの企業で取り入れられているのです。
学生はどんな内定者研修を望んでいる?
では、学生は内定者研修についてどう思っているのでしょう。
「キャリタス就活2018 学生モニター調査結果」によると、内定期間中に出される課題や研修の実施に対して、61.3%の学生が賛成と回答しています。
また、2020年度卒の内定者を対象に行われたラーニングエージェンシーの「内定者の意識調査」によると、
・マナーや仕事の進め方など、社会人としての基礎を教えて欲しい(52.3%)
・業界の専門知識や専門スキルを教えて欲しい(44.0%)
・先輩社員との人間関係を築く機会が欲しい(35.5%)
・内定者と人間関係を築く機会が欲しい(25.1%)
と回答しています。
このことから、内定者は「社会人として活躍するためのスキル獲得」や、「人間関係構築」に役立つ内容の研修を望んでいると言えるでしょう。
内定者研修を行う目的や必要性は?
内定者研修の目的と必要性についてご紹介します。
内定者研修の目的
内定者研修は、内定者の不安を解消し、いち早く社会人として活躍するために行われます。
不安を解消し、内定辞退を防止する
内定者研修を行う目的は、内定者の不安を解消し、内定辞退を防止することです。
先述のとおり、内定者は「この会社で良かったのだろうか」「上手くやっていけるだろうか」など漠然とした不安を感じており、その不安から内定辞退する人も少なくありません。
就職みらい研究所の「就職プロセス調査(2019年卒)」によると、新卒生の内定辞退率は65.3%に上ることが判明しています。
内定者研修は、人間関係構築や企業・業務への理解が促進され、内定者の不安を解消できるため、内定辞退防止の目的で行われているのです。
また、内定辞退されると、採用活動にかかった時間やお金が無駄になるばかりか、人手を確保できなかったことで事業に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、内定辞退防止つながる内定者研修は、重要なのです。
社会人としてのマナーや心構えを身につけさせ、即戦力として活躍してもらう
内定者研修を行う2つめの目的は、社会人としてのマナーや心構えを身につけさせ、即戦力として活躍してもらうことです。
一人前の社員として活躍するには、まず学生と社会人の違いを理解し、社会人としての心構えを身につけさせる必要があるのです。
また、学生は社会人経験がないため、名刺交換・電話対応といったビジネスマナーを習得させなくてはなりません。
人手不足が深刻化している現在、若手社員の早期活躍は急務であるため、社会人に必要な能力を入社前に習得させておくことが重要なのです。
企業や業務への理解を促進させる
就職活動中に企業研究は行っているものの、企業や仕事内容についてきちんと理解できている学生はそれほど多くありません。
入社後にギャップを感じると、仕事に慣れるのに時間がかかってしまいますし、早期離職にもつながります。
そのため、企業や業務への理解を促進させる目的で、職場見学や先輩社員と交流できる内定者研修を実施しているのです。
また、内定者研修では、応募書類や面接では分からない、内定者の性格や行動パターンを観察できるため、配属先決定の判断材料としても利用できます。
人間関係の構築
「職場に馴染めるか」「周りと上手くやっていけるか」など、職場の人間関係に不安を感じている内定者は多いです。
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」によると、大卒者の約3割は3年以内の早期に離職しているとされています。
早期離職理由として「職場の人間関係」をあげる人が多いことから、社会生活を送るにあたって、人間関係の構築は非常に重要です。
内定者研修を行うと、事前にどういった人達と働くのかが分かったり、同期や先輩社員との親睦を深めたりすることができます。
不安解消や入社意欲の向上にもつながるため、良好な人間関係を構築する目的で行われているのです。
内定者研修の必要性
近年、少子高齢化による影響で、日本の労働力人口は減少の一途を辿っています。
若い働き手は少なく、ベテラン社員も退職を迎えていくことから、深刻な人手不足に悩んでいる企業も多いです。
また、今後は人口減少が進むことで国内の消費が少なくなると予想されているため、海外市場への進出や、新規事業開拓に力を入れていかなくてはならないと考えられます。
働き手が減少する一方で複雑化するビジネス環境に適応するには、高いマインドとスキルを持った若手社員をいち早く育てなくてはなりません。
つまり、入社前に社会人としての土台をしっかり作り、若手社員の早期育成を行うため、内定者研修の必要性が高まったのです。
?内定者が抱えている不安は?
先述のように、内定者は様々な不安を感じています。
内定者の不安解消は、内定辞退防止につながるため、どういった不安を感じているのか把握することが大切です。
内定先の企業で上手くやっていけるか
内定者は、「仕事についていけるだろうか」「会社の人と上手くやっていけるだろうか」といった様々な不安を感じています。
半年以上ある内定期間中は、業務に関わることはありませんし、社員や同期と会う機会もないため、企業側から何のアクションも起こさなければ不安や悩みは増していくでしょう。
内定期間中に研修を実施し、企業とのつながりを持たせれば、入社までの日々を安心して過ごせるようになります。
また、社会人の基礎的なスキルであるビジネスマナー研修を行うことで、「教育制度が整った会社」というアピールにもなります。
本当にこの会社で良いのか
内定者の中には、内定を承諾したものの、「本当にこの会社で良いのか」「他の会社の方が良かったのではないだろうか」と不安を感じて、気分が落ち込む “内定ブルー”になる人もいます。
そして、内定ブルー状態が続いて内定辞退する学生も少なくありません。
内定辞退を防止するためにも、「受け入れる準備が整っていること」「気にかけていること」が伝わるよう、内定者研修を行うことが重要です。
企業や仕事についてよく分かっていない
就活中に企業研究は行っていても、企業のホームページや説明会だけでは分からないことも数多くあります。
自分が担当する業務や企業の雰囲気、社員のタイプが分からないと、自分が働いている姿をイメージしづらいため、不安を感じやすくなってしまいます。
実際の業務内容や仕事の進め方、職場の雰囲気が分かるような研修内容にすると、企業や仕事への理解が深まり、不安を払拭できるでしょう。
内定者研修のプログラム内容や時期は?
内定者研修の内容を考える際は、入社1年後に「どうなっていて欲しいのか」期待する姿(ゴール)を明確にした上で、
・何を(知識/スキル/心構え)
・どの段階(内定者研修/入社後の新人研修/配属後の現場)
で教えるべきなのか、大まかに考えると設計しやすくなります。
また、新入社員は入社前後の研修を経て、実際の現場へ配属されます。
研修内容を設計する際は、現場で必要となるスキルと研修内容が乖離しないよう、必ず現場の声を反映するようにしましょう。
内定者研修の内容
社会人経験のない学生には、社会人としての心構えや基礎的なスキルがありません。
そのため、内定者研修は、
・社会人としての意識を醸成させる
・基礎的なビジネススキルを身につけさせる
・チームワークを強化させる
について教育し、即戦力化を目指しましょう。
社会人としての意識を醸成させる
新入社員の即戦力化を促すには、社会人としての心構えを学び、マインドを転換させる必要があります。
例えば、
・学生と社会人の違い
・会社が成り立っている仕組み
・役割について
・基礎的なビジネスマナー
・チームワークとは何か、その重要性
・仕事の進め方と考え方
といったことを学びます。
【研修方法】
社会人としての意識を醸成させるような研修には、
・企業の会議室など一箇所に集まり、座学で受ける「集合研修」
・外部の公開講座を受けてもらう「オープンセミナー型」
が適しています。
内定者を一箇所に集めて行う「集合研修」は、内定者同士が顔合わせできるため、交流を深めることが可能です。
一方、「オープンセミナー型」は、参加する会場や日程を内定者自身が選んで受講するため、全国各地にいる内定者を一箇所に集められない場合、有効です。
基礎的なビジネススキルを身につけさせる
基礎的なビジネススキルは、
・ビジネスマナー(身だしなみ・言葉遣い・お茶の出し方・電話応対・名刺交換など)
・書く力/聴く力/話す力
・OAスキル(Excel・word・PowerPoint)
・SNSリスクやコンプライアンス
が挙げられます。
社会人にとってビジネスマナーの習得は必須ですが、円滑に仕事を進めるには、コミュニケーション能力も欠かせません。
そのため、まずは身だしなみや言葉遣いといった基礎的なビジネスマナーを習得させると共に、グループワークなどで、聴くスキルや伝えるスキルを身につけさせましょう。
また、「学生の間はほとんどスマートフォンで済ませていた」という人も多いため、PC操作が苦手な人も少なくありません。
社会人にとってPCは必要不可欠ですので、入社してから困らないよう、OAスキルについて学ぶ機会を与えましょう。
近年、個人情報の取り扱いやSNSによるトラブルが多発しています。
こうしたトラブルは、企業の信用を失墜させる恐れもあるため、SNS利用時の注意点や個人情報の取り扱いについて説明し、コンプライアンスの意識づけを行うことが重要です。
【研修方法】
基礎的なビジネススキルを身につけさせる研修方法は、オンラインで受講できる「e-ラーニング」がおすすめです。
動画であれば、スマートフォンから視聴することもできますし、都合に合わせて受講することもできます。
また、繰り返し動画を見て学習できるため、理解度も向上するでしょう。
e-ラーニングはインプットに特化した教材であるため、事前に必要なスキルや知識を学習させ、アウトプットする研修を組むと、効果を最大限に発揮できます。
例えば、インターンシップは実際の職場で就労体験できるため、e-ラーニング学習後に参加してもらうと、業務理解やスキルアップの促進に役立ちます。
チームワークを強化させる
内定者研修は、内定者同士の人間関係構築や、チームワークの重要性を学ばせる目的でも行われます。
内定者同士が親睦を深める機会を用意することで仲間意識が芽生え、不安が軽減されて内定辞退防止につながります。
また、内定者同士の仲間意識が強くなれば、仕事のフォローや部署を超えた連携も期待できるでしょう。
研修内容によっても異なりますが、
・ビジネスにおけるチームワークの重要性
・コミュニケーション力
・主体性
・リーダーシップ
・PDCAサイクル
について、学ぶことができます。
【研修方法】
チームワーク強化の研修には、体感型研修がおすすめです。
座学研修でPDCAやチームワークについて学んでも、具体的なイメージができず、身についていないこともあります。
ビジネスゲームなどの体感型研修であれば、実体験から気づきを得ることができます。
また、体感型研修を行った上で座学研修を実施すると、経験に基づいた知識を身につけられるため、有効です。
内定者研修の時期
目的に合わせて研修の内容と時期を決めましょう。
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8月~10月
内々定から内定までの間は、複数の内定を獲得している学生が就職先を検討している時期です。
内定者の不安を払拭し、入社意思を固めてもらうためにも、企業理解の促進や同期との関係性を強める研修を行いましょう。
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11月~1月
内定者の入社意思が決定し、無事内定式を迎えたら、社会人としての意識を醸成していきましょう。
学生から社会人マインドへ切り替えられるような研修がおすすめです。
また、会社から求められている役割や人物像を理解できる研修を行えば、社会人像を確立することができます。
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2月~3月
社会人マインドの醸成を行ったら、社会人に必要なスキルを身につけさせましょう。
この時期から基礎的なビジネススキルを学ばせることによって、入社後早期の活躍が期待できます。
また、配属先の業務に必要なスキルを事前に学習することで、「仕事についていけるだろうか」という不安を軽減させることも可能です。
ただし、内定式後は卒業論文やアルバイト、卒業旅行などで忙しくなる学生も多いため、頻繁に研修を行うと学生の負担が大きくなってしまいます。
学生の状況を考慮した上で開催回数や時期、内容を決定しましょう。
適切な内定者研修で、即戦力化、事態防止につなげよう!
内定者研修は、社員の即戦力化や内定辞退防止が期待できるため、企業にとって大きなメリットがあります。
初めて社会に出る学生にとっても、社会人としての心構えやスキルを身につけ、人間関係を構築できる機会です。
内定者が安心して社会人生活をスタートできるよう、内定者研修の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。