少子高齢化などの影響で採用競争が激化している近年、「思うように新卒採用ができない」とお悩みの企業も多いのではないでしょうか。
この厳しい採用状況の中、学生と早期接触ができるインターンに注目が集まっています。
そこで、この記事ではインターンについて、詳しく解説していきます。
インターンが注目されている理由やメリット、インターンに参加する学生の目的をご紹介いたします。
また、短期・長期インターンそれぞれのメリット・デメリット、実施の注意点もまとめていますので、ぜひご覧ください。
インターンが注目されている理由は?
インターンシップとは、学生が企業で実習・研修的な就業体験をする制度のことです。
実務能力や職業意識を高めるために行われており、欧米では広く浸透しています。
近年、日本でも教育課程に組み込んで単位を取得できる大学が増えており、インターンが普及してきています。
インターンを実施する企業は増加傾向にありますが、なぜ注目されているのでしょう。
その理由として「採用競争の激化」「新卒採用スケジュールの早期化」「インターン参加者の増加」の3つが挙げられます。
採用競争の激化
少子高齢化などの影響によって有効求人倍率が高くなり、企業間の採用競争は激化しています。
リクルートワークス研究所の「第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)」によると、2020年卒の大卒求人倍率は1.83倍と求職者の方が少ない「売り手市場」が続いている状況です。
厳しい採用市場において、大手に誘引されやすい学生を中小企業やベンチャー企業が獲得するには、様々な工夫を凝らさなくてはなりません。
そのため、他社との差別化や自社PRにつながるインターンが注目されているのです。
しかし、今般の新型コロナウィルス感染症によって、今後の大卒求人倍率は減少が見込まれることから、例年よりも学生の採用がしやすくなると考えている人も多いと思います。
ベネッセキャリアの行った「2022年卒の採用計画に関する調査」によると、67%の企業が「2022年卒の採用人数は変更しない」と回答していることから、楽観視できない状況と言えるでしょう。
したがって、今後も多くの企業が採用戦略の一つとして、インターンを行うと考えられます。
採用活動の早期化・長期化
経団連による新卒採用スケジュールの変更も、インターンが注目される一因です。
これまで新卒採用スケジュールは、
・2015年卒⇒広報活動解禁:12月、選考活動解禁:4月
・2016年卒⇒広報活動解禁:3月、選考活動解禁:8月
・2017年卒⇒広報活動解禁:3月、選考活動解禁:6月
のように、政府の意向を受けて就活ルールの見直しが行われてきました。
度重なるルール変更によって採用活動の時期が大きく後ろ倒しされてきましたが、経団連に加盟していない多くの企業では、人材確保のためにスケジュールよりも早く採用活動を行ってきました。
その結果、採用活動が早期化・長期化していったため、早期に学生と接触する手段として、インターンが注目を集めたのです。
また、2021年卒以降の就活ルールは、政府主導に切り替わっており、将来的には就活ルール廃止の可能性もあります。
就活ルールが廃止されれば、全体的に採用活動の時期が前倒しされると考えられますし、新型コロナの影響でインターン採用を認める動きも出てきています。
このことから、学生と早期接触ができるインターンは、今後さらに注目されるでしょう。
インターン参加者の増加
近年、インターンへ参加する学生が増加傾向にあります。
引用:マイナビ「2020年卒 マイナビ大学生 広報活動開始前の活動調査」
上記のグラフは、マイナビの行ったインターン参加率の推移です。
2014年卒のインターン参加率が32.1%だったのに対し、2020年卒の参加率は79.9%と6年間で約47%増加しています。
また、同社「2021年卒 マイナビ大学生 広報活動開始前の活動調査」では、2021年卒のインターン参加率が85.3%と過去最高を記録しました。
つまり、学生にとってインターンは就職活動の一部になっているため、注目されているのです。
インターンを実施するメリット
インターンを実施するメリットをご紹介します。
優秀な学生と早期接触できる
先述のとおり、インターンは学生と早期接触できる手段の一つとして、注目を集めています。
教育目的で行われるインターンに関しては、広報活動解禁前の実施を認められているため、就活解禁前の学生を対象にすれば、意識の高い優秀な学生と早期接触できます。
学生の囲い込みにもつながるため、インターンの実施は企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
ミスマッチの抑止につながる
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」では、新規大卒者の約3割が3年以内の早期に離職していると公表しています。
企業に大きな損失を与える早期離職の主な原因は、ミスマッチです。
インターンで就業体験や従業員との交流を行うと、企業・業務に対する理解が深まるため、入社後に感じるギャップの軽減につながります。
また、企業側はインターン参加者を観察することができるため、人材を見極める場にもなります。
インターンは、企業・学生双方にとってお互いへの理解を深められるため、ミスマッチの抑止につながるのです。
自社PRができる
インターンの受け入れは、社会貢献の一つであり「若手の育成に積極的な会社」というアピールになるため、企業イメージ向上につながります。
インターンは学生からの注目度が高いため、早い段階で募集すると、認知度を上げたり、参加学生の口コミによって自社情報が広まったりするため、自社PRになります。
社内の活性化につながる
学生を職場へ受け入れるには、指導方法やマニュアルの見直し・整備が必要となるため、社内活性化のきっかけづくりになります。
また、先入観のない学生からの新鮮なアイディアや疑問・指摘は、課題解決や商品開発のヒントになることもあります。
インターンに参加する学生の目的は?
つづいて、インターンに参加する学生の目的をみていきましょう。
業界・企業への理解を深めるため
学生が業界・企業研究を行う場合、新聞やインターネット、合同セミナー参加といった、様々な方法で情報を収集していきます。
しかし、企業の雰囲気や仕事の流れなど、実際に体験してみなければ分からないものも多々あります。
インターンは、実際の業務に近い就業体験や社員との交流ができるため、学生は内情を含めた業界・企業への理解を深める目的で参加するのです。
また、インターンに参加すれば、気になる業界のトレンドや、その企業が求めている人材の特徴を把握することもできます。
業界や企業への理解を深めれば、アピールポイントにもなりますし、インターン未参加の学生よりも優位に就職活動を進めることもできるでしょう。
内定につながる可能性があるから
現時点では、採用に直結するインターンは禁止されています。
しかし、「インターンで活躍した学生は1次面接免除」など、インターン参加者への優遇ルートが確立している企業もあるため、内定獲得を目的に参加する学生も多いです。
また、採用目的でなくても、インターン参加時の行動や言動が企業側に評価されることもあるため、結果的に採用につながることも少なくありません。
短期インターンのメリット・デメリット
インターンには、
・短期インターン…1日~3週間程度
・長期インターン…3ヶ月以上
があります。
短期インターンとは
短期インターンとは、1日~1週間、長くても3週間程度開催されるインターンです。
主に
・サマーインターン…夏休みの時期にあたる7月~9月頃
・ウィンターインターン…12月~2月頃
に実施されることが多く、企業の雰囲気を知ってもらうことを目的としています。
短期インターンは、「セミナー・見学型」と「プロジェクト・ワークショップ型」に分けられます。
セミナー・見学型
セミナー・見学型は、1日~数日程度の短期間の実施が多いです。
より多くの学生に自社を知ってもらう目的で開催される傾向にあるため、
・職場見学
・会社説明
・社員による業界や業務の説明
・社員との交流会
が行われています。
プロジェクト・ワークショップ型
プロジェクト・ワークショップ型は、1週間~3週間程度実施されることが多いです。
採用目的も兼ねているため、
・ディスカッション
・プレゼン
・ワークショップ
といった、課題に取り組む姿を観察する実践的な内容が多い傾向にあります。
メリット
短期インターンについて理解が深まったところで、どのようなメリットがあるのか、みていきましょう。
集客しやすい
最短1日の実施が可能な短期インターンは、長期インターンよりも参加人数を多く設定することができますし、学生も気軽に参加できるため集客しやすいです。
学生が興味を持ちそうな内容のインターンを企画して、大学や求人サイトなどで広報すれば、認知度の低い企業でも参加者を集められますし、学生の認知度を上げることも可能でしょう。
短い拘束時間で学生のポテンシャルを把握できる
短期間の受け入れであるため、現場社員や採用担当者の拘束時間は長期インターンよりも短く済みます。
短期間であっても、参加者の行動や言動、身だしなみといった情報から、その学生の人柄や能力を把握することができる点がメリットです。
デメリット
短期インターンには、様々なメリットがあることが分かりました。
ここでは、デメリットをご紹介します。
手間がかかる
長期インターンの場合、実務に関わる内容がほとんどのため、ユニークな企画を考えたり、新たなコンテンツを開発する必要はありません。
しかし、短期インターンは実施目的に合わせて、学生が魅力を感じるようなプログラムを組む必要があります。
また、場合によってはコンテンツを企画し制作したり、それに付随する資料などの準備も必要です。
短期だからこその手間は意外に多く発生してしまいます。
学生の満足度が向上しない可能性がある
実際に職場で実務に関わってもらう長期インターンと違い、短期インターンはプログラムを企画することがほとんどです。
特に、1dayインターンでは、実際の業務とはかけ離れたプログラムになることも多いため、せっかく参加しても学生が働く姿をイメージできないこともあります。
詳しい仕事内容や企業・業界の内情を知ることができない内容の場合、「参加した意味がなかった」と思われる可能性があります。
長期インターンのメリット・デメリット
短期インターンには、様々なメリット・デメリットがあることが分かりました。
つづいて、長期インターンについてみていきましょう。
長期インターンとは
長期インターンとは、概ね3ヶ月以上実施されるインターンのことで、大学1年生から参加可能です。
数ヶ月~数年の長期に渡り、企業の一員として業務に携わってもらうことで、相互理解を深め、学生のスキルや能力の向上を目的として行われています。
ベンチャー企業など、即戦力採用を目的に実施していることが多く、給料が発生するものが大半です。
長期インターンでは、社員の補助的な業務から始め、学生に仕事の進め方や考え方を学んでもらいます。
仕事に慣れてきたら社員と同様の業務を任せていくため、本人のやる気次第では、社員並の裁量で働くことも可能です。
長期インターンとアルバイトの違い
長期インターンとアルバイトの違いをご紹介します。
スキルアップ
アルバイトは、「収入」を目的としていますが、インターンは「スキルアップ」を目的としています。
インターンは、在学中に一定期間実際の職場で就業体験を行うことで、仕事や社会人に必要なスキルを得ることが目的なのです。
責任の重さ
インターンとアルバイトでは、責任の重さが異なります。
アルバイトは仕事の範囲が決まっているため、社員よりも簡単な業務を担当していることが多いです。
一方、長期インターンは企業の一員として深く業務に携わることが多いため、社員と同等の裁量を持たせることもあります。
そのため、仕事の範囲が決まっているアルバイトよりも、インターンは責任が重いのです。
メリット
長期インターンについて理解が深まったところで、どのようなメリットがあるのかみていきましょう。
優秀な学生を早期に囲い込める
長期インターンは、大学1年生から参加することができるため、就活が始まる前の段階から学生とコンタクトを取れます。
長期インターンに参加する学生は、働く意欲や意識が高く、主体性を持った優秀な学生が多いです。
また、長期インターンを実施すると、企業への帰属意識が高まり、学生側から就職を希望することも少なくありません。
よって、長期インターンは意欲的な学生との早期接触だけでなく、帰属意識の醸成も期待できるため、優秀な学生の早期囲い込みにつながるのです。
人手不足解消
長期インターンは、企業の人手不足解消にも役立ちます。
少子高齢化などの影響により、社員一人あたりの業務量が多く、深刻な人手不足に悩まされている企業は多いでしょう。
長期インターンは、企業の一員として学生が業務を行います。
そのため、社員でなくても任せられる仕事を学生に依頼したり、本人のやる気や能力に応じて仕事を振ったりすることもできます。
したがって、長期インターンは企業の人手不足解消に役立つのです。
即戦力化につながる
長期インターンは、学生が実際の職場で実務を行います。
企業の一員として働くことになるため、学生は業務に必要な知識やスキル、社会人としての考え方、ビジネスマナーを身につけられます。
このように、長期インターンは入社前研修としての効果もあることから、即戦力としての土台を学生のうちに築くことができるのです。
また、実際の業務に携わることで仕事の流れを理解できるため、入社後すぐの活躍も期待できるでしょう。
インターン生を採用することができれば、即戦力人材として優秀な若手社員を確保することができます。
相互理解が深まり、ミスマッチを抑止できる
長期インターンは、実際の職場で長期間働いてもらうため、ネットや書面から集めた情報では分からない、業界・企業のリアルな知識や内情を知ることができます。
そのため、業界・企業への理解が深まり、自分が働く姿を具体的かつ詳細にイメージすることができるのです。
学生は、インターンを通して
・この仕事が自分に合っているのか
・職場の人間関係
・社風
を就職する前に知ることができるため、納得感のある就職が実現します。
また、企業側も学生の働きぶりから適性や能力、人柄を見極められます。
つまり、長期インターンは、学生側・企業側の双方が互いへの理解を深められるため、ミスマッチを抑止することができるのです。
デメリット
長期インターンのメリットが分かったところで、どのようなデメリットがあるのでしょう。
ここでは、長期インターンのデメリットをご紹介します。
受け入れる学生を慎重に選ぶ必要がある
長期インターンは、企業の一員として働いてもらうため、インターン生に社員と同等の裁量を持たせることも多々あります。
仕事の範囲が決まっているアルバイトよりも、責任が重くなるため、アルバイト感覚で応募してくる学生をふるいにかけなくてはなりません。
面接で学生の志望動機を深堀していき、意欲や熱意、インターンへの認識を確認することが重要です。
教育する手間がかかる
学生を職場に受け入れて業務の一端を任せるには、当然教育しなくてはなりません。
業務に関する教育はもちろんのこと、ビジネスマナーやPCの基本操作といった、基礎的なスキルを教える必要も出てくるでしょう。
現場社員は、通常業務に加えて教育も行わなくてはならないため、インターン生が仕事に慣れるまでの間、一時的に負担が増えます。
現場社員の負担を軽減するには、指導方法やマニュアルの見直しを行うことが重要です。
また、長期間勤務してもらえそうな大学1・2年生を、優先的に採用している企業もあります。
インターン実施の際の注意点
短期インターン・長期インターンのメリット・デメリットについてご紹介してきました。
ここからは、インターンを行う際の注意点をご紹介していきます。
会社の実情を伝えること
インターンがきっかけとなって採用につながることもあり、企業もそれを期待して行うことが多いです。
そのため、学生の興味・関心を引こうとするあまり、
短期インターン…実務とかけ離れたプログラムになる
長期インターン…インターン生用に簡単な業務を用意する
など、せっかくインターンに参加しても、企業や業務についての理解が深まらないこともあります。
しかし、学生は業界や企業への理解を深める目的でインターンに参加しているため、ポジティブな側面だけでは、学生の満足度を上げることはできません。
実務体験や業界・企業の実情など、リアルな情報を伝えることが重要です。
過度な囲い込みはNG
インターンで知り合った学生が優秀であれば、「逃したくない」と思うのは当然でしょう。
自社へ入社してもらえるよう囲い込みを行うこともありますが、内定を切り札に就職活動の終了を迫る行為は「オワハラ」にあたります。
自由な就職活動を阻害するオワハラは、学生からの評判や社会的な評価を著しく損ねる可能性があります。
また、モチベーションや信頼関係構築にも悪影響を及ぼすと考えられることから、仮に入社しても早期離職される可能性が高いです。
学生が不快に感じるような過度な囲い込みは辞めましょう。
インターンでも賃金が発生することもある
インターンだからといって、「無給で良い」とは限りません。
インターンは、社員同様の業務を遂行することもあるため、「実態として労働契約である」と判断されれば、労働基準関係法令が適用されます。
例えば、「インターン生の時間を拘束した上で、指揮命令下の元に業務を補助させる」といった行為は、「労働契約の実態がある」と判断される可能性が高いです。
一種のアルバイトに該当するため、最低賃金や残業代など労働基準法の規定に従い、賃金を支払う必要があります。
そのため、
長期インターン…有給(時間を拘束し、実務に携わる)
短期インターン…無給(研修やセミナー、職場体験など労働契約の実態がない)
であることが多いのです。
本来支払うべき賃金を支払っていないと、法律違反として罰則が課されたり、企業イメージを失墜させたりする可能性があります。
インターンの趣旨に沿ったプログラムの設計や、賃金設定を行い、トラブルを回避しましょう。
採用成功にインターンを有効活用!
学生にとってインターンは、就職活動の一環になっており、注目度も高いです。
企業にとっては、優秀な学生との早期接触やミスマッチの抑止といった、様々な効果を期待できるため、実施する企業も増加しています。
しかし、採用につなげようとするあまり、過度な囲い込みや実態とはかけ離れたインターンを実施する企業もあります。
学生の満足度を上げて採用につなげるためにも、学生が何のために参加しているのかを意識して実施することが重要です。
この記事を参考に、インターンの実施を検討してみてはいかがでしょうか