経済活動を行う企業にとって、「ヒト」は欠かせない資源であるため、ヒトを獲得する採用担当は重要な存在です。
しかし、「仕事内容や必要なスキルがよく分からない」という方も多いでしょう。
そこで、この記事では、人事採用担当に必要なスキルや仕事内容について解説していきます。
向いている人の特徴や活かせる経験についてもご紹介しますので、是非ご覧ください。
人事採用担当の仕事内容とは?
人事は、採用や労務、評価、教育といった「ヒト」を管理する業務を行う部署です。
採用担当は、「ヒト」の獲得を行う重要な仕事を行っています。
具体的には
- 採用計画の策定(予算やスケジュール、採用人数、求める人物像の明確化)
- 求人募集情報の広報活動
- SNSを活用した自社情報の発信活動
- インターンや会社説明会などイベントの企画立案・実施
- 応募者の管理・対応
- 書類選考や適性検査、面接の実施
- 合否判断・通知
- 内定通知の発送
- 内定者フォロー
- 内定後の事務処理(入社手続きに必要な書類の作成や説明)
といった、採用に関する様々な業務を行っています。
中でも、応募者を見極める「ジャッジ」と入社の動機づけを行う「フォロー」は、採用担当者にとって重要な業務です。
「ジャッジ」業務
どれほど優秀な人材でもマッチ度が低いと、なかなか職場に馴染めません。
コミュニケーションが上手くいかないと、本来の力を十分に発揮できませんし、早期離職する可能性が高まります。
ミスマッチを防ぐには、応募者の経験や能力だけでなく、企業風土や文化との相性を見て、「自社での活躍が期待できる人材」であるかを見極める必要があります。
「フォロー」業務
内定を出したからといって、必ずしも入社してもらえるとは限りません。
そのため、自社アピールや、密接なコミュニケーションによって応募者との信頼関係を築き、入社意欲を高める必要があります。
採用担当者は、この2つの業務のうち、どちらが得意かによって、「ジャッジタイプ」と「フォロータイプ」に分けられます。
では、ジャッジタイプとフォロータイプには、どのような特徴があるのでしょう。
ジャッジタイプの特徴
ジャッジタイプは、人を見極めることが得意なタイプです。
選考を行う際、履歴書や職務経歴書に書かれている経験やスキル、応募者の見た目といった、「分かりやすい指標」で判断しがちです。
しかし、こういった指標だけでは、応募者の本質を見極めることはできません。
そのため、「このタイプはこういう人だろう」という先入観にとらわれず、客観的に応募者の適性を判断できる人がジャッジ業務に向いているのです。
また、「適性があるか判断しづらい人」は、他の面接官にも良さが伝わりにくいため、次回選考で落とされる可能性があります。
このことから、上位選考者へ応募者の情報を的確に伝えられる能力も必要となります。
したがって、
- 観察力がある
- 客観的に物事を判断できる
- 情報を整理し、論理的説明ができる
がジャッジタイプの特徴と言えるでしょう。
フォロータイプの特徴
フォロータイプは、信頼関係を構築するのが得意なタイプです。
応募者にとって、採用担当者は企業そのものであるため、入社意思を左右させるほど重要な存在です。
そのため、自社の魅力や仕事のやりがいを伝えて入社意欲を高めると同時に、応募者とコミュニケーションを取り合い、不安や疑問の払拭に努める必要があります。
また、採用は応募者の人生に大きな影響を与える仕事であるため、その重みを理解した上で、積極的にアピールしなくてはなりません。
したがって、
- 信頼を獲得しやすい
- 熱意がある
- 愛社精神がある
がフォロータイプの特徴と言えるでしょう。
人事の採用担当に向いている人の特徴
ジャッジタイプとフォロータイプについてご紹介してきましたが、どちらのタイプにも必要となる特徴があります。
人事の採用担当に向いている人は、
- 調整が得意な人
- 変化を恐れず、柔軟に対応できる人
- 自分の言葉で伝えることができる人
- 言葉の影響力を考えてやり取りできる人
- 周囲を巻き込んでいける人
といった特徴を持っています。
調整が得意な人
採用担当者は、面接の日程調整や応募者の年収設定、イベントの企画・実施など、社内外のあらゆる立場の人と調整や交渉を行います。
また、面接日の急な変更依頼も珍しくありません。
このようなイレギュラー対応は頻繁に発生するため、採用担当者には調整力が求められるのです。
変化を恐れず、柔軟に対応できる人
基本的なフローやルールがあっても、採用業務にはイレギュラーがつきものです。
また、採用活動は採用市場やトレンドといった、外的環境の影響を受けやすいため、状況に合わせて採用フローや採用手法を変えていく必要があります。
そのため、今ある採用フローや採用手法に固執するのではなく、状況に合わせて柔軟に対応する力が必要なのです。
自分の言葉で伝えることができる人
採用担当者は会社の広告塔です。
そのため、採用候補者となる人材に自社の魅力が伝わるよう、人材エージェントや求職者に対して、仕事内容や自社情報を伝達しなくてはなりません。
しかし、会社案内やWebサイトに掲載されているような内容だけ伝えても、相手の心には届きません。
エピソードも交えながら、自社の良さや仕事のやりがいを自分の言葉で伝えると、相手の心に訴えかけることができます。
言葉の影響力を考えてやり取りできる人
会社の広告塔である採用担当者は、「自分の発言がどのような影響を及ぼすか」考えた上で発言する必要があります。
自分の意図とは別の意味で捉えられてしまう可能性もあるため、常に自分の言動や行動、服装を客観視し、相手がどう受け取るかを考えて取り組まなくてはなりません。
特に、SNSが普及している近年、掲示板や口コミサイトへ企業の対応について書き込みする求職者も増えているため、注意が必要です。
周囲を巻き込んでいける人
採用は、人事だけでなく会社全体で取り組む必要があります。
優秀な人材を口説くには、自社の魅力はもちろんのこと、やりがいや詳細な仕事内容について説明しなくてはなりません。
そのため、それらを最も理解している現場社員との連携は必要不可欠です。
よって、部署の壁を超えて必要な時に協力を依頼できるような、周囲を巻き込んでいける力が必要と言えるでしょう。
一方、採用担当に向いていない人は、
- ルーティンが好きな人
- 変化が苦手な人
- 自分の意見を言わない人
- 言葉の影響力を考えられない人
- 周囲を巻き込むのが苦手な人
といった、特徴があります。
人事の採用担当に求められるスキル・知識
人事の採用担当に向いている人の特徴をご紹介しました。
では、採用業務を行うにあたって、どのようなスキルや知識が必要なのでしょう。
採用担当には、
- 労働や雇用に関する法令の知識
- 面接での質問力
- コミュニケーション能力
- 調整力
が求められます。
労働や雇用に関する法令の知識
採用活動を行うにあたって、労働や雇用に関する知識は必要不可欠です。
求人募集を行う際、「掲載するべき事項が漏れていないか」や「掲載してはいけない文言が記載されていないか」を確認する必要があります。
労働条件の明示(職業安定法)
ハローワークへ求人申し込みをする際や、ホームページなどで募集を行う際は、
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間
- 就業場所
- 就業時間/休憩時間
- 休日
- 時間外労働
- 賃金
- 加入保険
- 募集者の氏名または名称
を明示する必要があります。
募集を行う際は、抜け漏れのないよう注意しましょう。
参考:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」
性差別表現(男女雇用機会均等法)
性別を理由として募集・採用の対象から外したり、条件を変えたりすることはできません。
「男性(女性)のみの採用」といった直接的な表現はもちろんのこと、「事務職は女性限定」「男性3名・女性2名募集」のように、性別によって条件や人数制限を設けてはいけません。
また、「看護婦」「ガードマン」など、性別を特定する表現も違反事項となるため、注意が必要です。
参考:厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」
年齢制限(雇用対策法)
「25歳以下のスタッフ募集」のように記載すると、雇用対策法に抵触する恐れがあります。
ただし、「例外事由第3号」に該当する場合は、年齢制限が可能です。
特定の人を差別・優遇する表現(労働基準法)
「日本人のみの採用」や「コミュニケーション能力が高い人」など、特定の人を傷つける表現や優遇する表現は差別表現に当たるため、注意が必要です。
コミュニケーション能力について触れる場合は、「コミュニケーションを取り合って○○ができる人」のように、記載しましょう。
面接での質問力
採用面接の限られた時間内で応募者を見極めるには、知りたいことを相手から聞き出すための質問力が必要です。
応募者の本音・価値観を引き出す質問の仕方や、応募者がリラックスして受けられる雰囲気作りができているか、見直しましょう。
また、採用選考は公正に行われなくてはなりません。
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そのため、「本人に責任のない事柄」や「思想信条に関わる事柄」について質問した場合、就職差別につながる可能性があります。
本人に責任のない事項
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本籍・出生地に関すること
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家族に関すること
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住宅状況に関すること
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生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項(思想信条に関わること)
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宗教に関すること
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支持政党に関すること
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人生観、生活信条に関すること
-
尊敬する人物に関すること
-
思想に関すること
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労働組合に関する情報、学生運動など社会運動に関すること
-
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
評価とは関係のない雑談であっても、誤解を与えないよう注意が必要です。
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
コミュニケーション能力
採用担当者は、応募者対応や人材エージェントへの自社情報提供といった、採用に関する幅広い業務を行っています。
例えば、面接では候補者の情報を的確に上位選考者へ伝達しないと、ポテンシャルを秘めた候補者が次回面接で落とされてしまう可能性があります。
また、日頃から各部署と連携しておかないと、いざという時スムーズに対応できません。
このように、採用担当者は様々な立場の人たちとやり取りする必要があるため、コミュニケーション能力は非常に重要なスキルなのです。
調整力
採用担当者は、面接や内定者のフォローなどを、相手の都合に合わせて行う必要があります。
人と関わる業務が中心となるため、計画通りに進まないことやイレギュラーな案件は、頻繁に発生します。
そのため、採用担当者には、状況に合わせて臨機応変に対応する調整力が必要なのです。
人事の採用担当で活かせる経験とは?
ここでは、どのような経験があると採用担当に活かせるのかをご紹介します。
採用担当で活かせる経験は、営業職です。
採用担当は、会社の採用ニーズに合わせて、必要な数の人材を期限までに採用することが求められます。
「どのようにすれば応募者を増やせるのか」、「ニーズに沿った採用を行えるのか」考えて目標を達成しなくてはなりませんし、高いコスト意識を持っていないと務まりません。
また、内定者の入社意思を固めるには、内定者がどういったところに不安を感じているのかを聞き出し、的確に情報提供した上で自社の魅力を伝える必要があります。
そのため、
- 数字への意識
- 交渉力
- コミュニケーション能力
といった、営業職で培ったスキルや考え方は、人事の採用担当に大いに役立てられるのです。
事実、採用担当の求人では、営業経験者が優遇される傾向にあります。
スキルや知識を磨いて良い人事採用担当になろう
採用担当者には、コミュニケーション能力や調整力といった、人と接するのに必要なスキルに加え、法令の知識も必要です。
こういったスキル・知識は身につけることができるため、不足している部分がないか、見直してみましょう。
採用は、会社の将来を左右する重要な仕事であるため、厳しい面もありますが、その分やりがいや達成感も十分得られます。
採用担当になったばかりの方も、これから目指す方も、ご紹介した内容を参考にスキルや知識を磨いてみてはいかがでしょうか。