インターンや企業説明会に「座談会」を組み込む企業が増えています。
しかし、座談会経験のない採用担当者からすると「具体的に何をするのか」「目的は何か」「どういった点に注意すべきなのか」など、分からないことも多いでしょう。
そこでこの記事では、座談会の概要や種類、メリット、進め方といった、就職活動における座談会について詳しく解説いたします。
座談会でよく聞かれる質問や成功させるコツ・注意点についてもまとめていますので、是非ご覧ください。
就職活動で行う座談会って?
就職活動における座談会とは、社員と就活生がざっくばらんに対話する会のことです。
企業説明会の直後に開催されることが多く、説明会で聞き逃した点や疑問に感じた点など、気になることを社員に気軽に質問します。
企業説明会では、人事や採用担当者がプレゼンすることが多いですが、座談会では様々な部署の社員が複数名参加し、学生と対話するのが一般的です。
そのため、企業説明会だけでは伝えきれない「仕事のやりがい」や、従業員自身が感じている「自社の魅力」をアピールすることができます。
また、現場の社員と話すことで、入社後のイメージを明確化させることも可能です。
座談会を開催する目的
事業内容や採用情報を一方的にプレゼンする企業説明会と違い、座談会は会話形式で行われるため、双方向のコミュニケーションが実現します。
そのため、座談会は就活生の見極めというより、「企業の理解促進」や「魅力付け」を目的として開催することが多いです。
採用の合否に直結することはほとんどありませんが、発言内容や参加態度などから求職者の特徴を把握し、選考に役立てることもあります。
就活生が座談会で知りたいこと
企業の伝えたい情報と就活生の知りたい情報は、イコールでないことが多いです。
座談会を有意義な場とするために、就活生がどのような情報を求めているのかを把握しておきましょう。
引用:株式会社ディスコ「キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果」
2021年卒者を対象とした株式会社ディスコの調査結果によると、学生は企業研究を行う上で、
実際の仕事内容(8%)
社風(8%)
給与水準・平均年収(2%)
求める人材像(6%)
福利厚生(2%)
の情報を求めています。
では、どの項目で学生と企業間のギャップが大きいのでしょうか。
引用:マイナビ「マイナビ 2021年卒 学生就職モニター調査」
上図は、株式会社マイナビの行った「個別企業セミナーで実際に聞いた内容/聞きたかった内容」の調査結果です。
これによると、
企業理念(聞いた:0%/聞きたかった:12.7%)
製品・商品について(聞いた:3%/聞きたかった:7.8%)
詳しい業界説明(聞いた:2%/聞きたかった:15.7%)
社風・社内の雰囲気(聞いた:6%/聞きたかった:45.9%)
若手社員の話(聞いた:0%/聞きたかった:27.5%)
入社後の待遇(聞いた:3%/聞きたかった:23.3%)
入社後のキャリアモデル(聞いた:8%/聞きたかった:28.0%)
の項目でギャップが大きいです。
以上のことから学生は、具体的な仕事内容やマッチ度を測れるような情報を求めていることが判明しました。
座談会を行うメリット
ここでは、企業が座談会を開催するメリットについてご紹介いたします。
学生への本音を聞くことができる
採用面接では、学生は内定を獲得するために必要以上に良く見せようとしたり、緊張して思うように質問できなかったりします。
そのため、採用面接で学生の本来の姿や本音を引き出すことは困難でしょう。
しかし、座談会は合否に直結するものではありませんし、学生と年の近い社員が会話形式で質問に答えていくため、学生もリラックスして回答しやすくなります。
リラックスした雰囲気で座談会が行われれば、学生の本来の姿や本音を引き出しやすくなり、「自社は学生からどのように見られているのか」把握することも可能です。
また、学生に対する理解が深まれば、学生に寄り添った情報提供にも役立てられるでしょう。
企業理解を促進できる
学生は企業研究を行う上で、実際の仕事内容や職場の雰囲気が分かるような情報を求めていますが、こうした情報はテキストだけでは伝えきれません。
座談会であれば、現場の社員に気になることを直接聞けるため「仕事のやりがいや大変なこと」「どういう人が働いているのか」など、リアルな情報を伝えることができます。
企業への理解が深まれば、入社志望度の向上やミスマッチの防止に繋がります。
また、学生が企業の社員と直接話せる機会は滅多にないため、集客アップのツールとしても利用できるでしょう。
座談会の進め方
座談会には、大きく分けて「テーブル(ワールドカフェ)形式」と「パーティー形式」の2種類があります。
形式によって進め方やメリット・デメリットが異なるため、詳しく見ていきましょう。
テーブル(ワールドカフェ)形式
参加学生をいくつかのグループに分けてテーブルに着席させ、10~15分ごとにメンバーを入れ替えて対話する形式です。
カフェでお茶をするようにリラックスして行われることから、テーブル(ワールドカフェ)形式と呼ばれており、座談会の多くで採用されています。
テーブル形式のメリットは、
- 短時間でメンバーが入れ替わるため、より多くの学生と交流できる
- 少人数の中リラックスした雰囲気で進行していくため、学生の本音を把握しやすい
- 社員と交流できて他学生の質問も聞けることから、集客に繋がる
といった点が挙げられます。
一方、テーブル形式のデメリットは、時間配分をしっかりしておかないと、全ての学生とコミュニケーションできない可能性がある点です。
テーブル形式は、長くても15程度で入れ替えなので、一つひとつの質問に時間を掛けて答えていると、順番が回ってこない学生も出てきます。
スムーズに進行できるよう、想定される質問やそれに対する回答を予め用意しておきましょう。
テーブル形式の進め方
参加学生を1テーブルにつき3~5人に分けて着席させ、社員が固定もしくは、一定時間ごとにメンバーを入れ替えて対話を繰り返します。
様々な事業・職種の社員を配置し、学生と交流させることで現場のリアルな情報を伝えられるため、企業や仕事への理解が促進されます。
また、実際に働くイメージも持ちやすくなるため、選考参加者の質向上も期待できるでしょう。
パーティー形式
立食パーティーのように、食べ物や飲み物がテーブルに置いてあり、自由に移動して話ができる形式です。
学生が話したいと思った人と好きなだけ話せる自由度の高いスタイルのため、多くの学生から話を聞くことも、特定の人とじっくり話すこともできます。
パーティー形式のメリットは、
- 時間的な縛りがないため、学生とじっくり話ができる
- 参加学生の行動を観察することで、ある程度の特徴(コミュニケーション能力など)を把握できる
- 学生の本音を引き出しやすい
といった点です。
学生の行動に委ねられるパーティー形式は、自由度の高さがデメリットにも繋がります。
学生同士で話してばかりの参加者や、なかなか話しかけられずに孤立してしまう参加者なども出てくるため、会場全体に目を配る必要があります。
参加者の満足度を向上させるためにも、「学生同士で固まっているグループに話し掛ける」「孤立している参加者へ積極的に声を掛ける」などを行いましょう。
パーティー形式の進め方
居酒屋などの飲食可能な会場へ移動もしくは、説明会後の会場にて立食を行います。
学生が気軽に話せるよう、若手社員と役職者(マネージャーなど)の2人1組を複数組配置するのが一般的です。
上司と部下を同時参加させると、学生は当人同士の関係性を観察できるため、職場の雰囲気や人間関係をイメージしやすくなります。
座談会でよく聞かれる質問
座談会参加者の満足度を上げるためにも、どのような質問をされることが多いのか、把握しておきましょう。
事業内容や仕事内容に関する質問
【質問例】
- 会社として注力している(していきたい)事業は何ですか?
- ○○業界において、どのようなところを差別化されていますか?
- 具体的な仕事内容を教えてください。
- 入社直後はどういった業務を担当されていたのですか?
- 1日の仕事の流れを教えてください。
企業の将来性や、やりたい仕事があるかを判断するために質問されることが多いです。
また、業務の多忙さを判断する目的から「一日の仕事の流れ」について聞かれることもあります。
仕事のやりがいに関する質問
【質問例】
- 仕事のやりがいは何ですか?
- この仕事で苦労した点や大変な点はどのようなところですか?
- 最も嬉しかったエピソードについて教えてください。
- モチベーションを維持するために、何か取り組んでいることはありますか?
- 仕事をする上で心掛けている点はありますか?
- 仕事を通じて実現したいことはありますか?
仕事への理解を深めるために、現場の社員が感じている仕事の魅力や大変な点を知りたいと考える学生が多いです。
また、「仕事を通じて実現したいこと」は、方向性を確認する目的で聞かれることもあるため、自社の方針と大きなズレがないよう回答する必要があります。
入社理由に関する質問
【質問例】
- 入社を決めた理由を教えてください。
- 入社前と後でイメージが変わった点はありますか?
- 就活時の企業選びでどういった点を重要視していましたか?
企業の特徴を把握し、自分とのマッチ度を測る目的で質問されることが多いです。
社員がどういった点に魅力を感じて入社したのか、理由を聞くことで志望動機の形成にも繋がります。
職場環境に関する質問
【質問例】
- 直属の上司はどのような方ですか?
- 社内の雰囲気について教えてください。
- どのようなタイプの人が多いですか?
- 同期入社された方の定着率はどの程度ですか?
- 社員同士の交流には、どのようなものがありますか?
- 働きやすさを感じる点について教えてください。
- 産休育休の取得率や復帰率はどのくらいですか?
- 独自の福利厚生などはありますか?
- 風通しの良さが強みと伺いましたが、どういったところに風通しの良さを感じますか?
人間関係や職場の雰囲気を知るために質問されることが多いです。
また、こういった質問は「気になるけど聞きづらい」内容でもあるため、先回りして説明したり、他の回答に上手く織り交ぜて伝えたりするといいでしょう。
求める人物像に関する質問
【質問例】
- どういったタイプの人が活躍されていますか?
- 求める人物像について教えてください。
- 仕事を行う上で、どういった素養が求められますか?
- 評価される取り組みについて教えてください。
- 入社までにどのような勉強をしましたか?
会社がどのような人物像を求めているのかを把握する目的で、質問されることが多いです。
企業で活躍するタイプや求めている素養について把握することで、入社後のイメージも湧きやすくなります。
座談会を成功させるコツと注意点
座談会は学生と企業が直接接触できる貴重な機会です。
双方にとって有意義な場とするためのコツと注意点についてご紹介いたします。
具体的な仕事体験を伝える
現場の社員が座談会に参加する意味は、社員個人のリアルな仕事体験を伝えることですし、就活生もそれを知りたいと考えています。
仕事体験を伝える際は、端的に説明するのではなく、具体的なエピソードを織り交ぜて伝えるのがコツです。
エピソードを交えながら話すと、イメージしながら聞くことができるため、学生からの共感を得やすくなります。
仕事のやりがいや職場環境の良さ、会社の強みといった項目ごとに「どういったときに魅力を感じたのか」シーンを思い浮かべながら具体的に伝えましょう。
また、現場社員と交流できる座談会は学生からの期待値が高いです。
スムーズかつ的確に受け答えできるよう、話す内容を組み立てておき、参加社員同士でロープレを行うなど、しっかりと事前準備をしておきましょう。
質問しやすい雰囲気を作る
座談会は企業にとっては「魅力づけの場」ですが、「選考の場」と捉えている学生も多いです。
選考の一環と認識されてしまうと、選考を意識した質問や行動を取ってしまい、学生の本音を引き出せません。
そのため、
- 選考とは無関係であることを伝える
- 名札を配布しない
- 質問時の名乗りを廃止する
- スーツ着用を禁止する
- 飲食をしながら行う
など、選考との関連性を打ち消し、質問しやすい雰囲気を作ることが重要です。
対等な相手であることを認識する
企業と学生は対等であり、互いが互いを選んでいます。
社員が学生と直接コミュニケーションを取り合う座談会は、社員を通して企業に対する印象が決まるため、言葉遣いや態度には注意が必要です。
タメ口のようなフランクな話し方は、適度に使えば相手の緊張を解きほぐしたり、親しみを感じさせたりすることができますが、多用しすぎると逆効果になります。
また、足や腕を組んでふんぞり返る、相槌を打たないなどの態度は、印象を悪化させてしまいます。
取引先と接するときと同様、対等な相手として扱いましょう。
当事者意識を持って受け答えする
学生にとって、目の前の社員が会社の代表です。
「担当者に伝えておきます。」のように、当事者意識を感じられない発言をしてしまうと、企業に対する興味・関心を低下させてしまいます。
例えば、「確かに弊社ではそういった点がウィークポイントと言えるでしょう。
会社としても、そうした現状を受けて改善のために○○に取り組んでいます。」など、企業の一員として答えられると好印象を与えらます。
曖昧な表現は避ける
座談会で対話する際は、曖昧な表現を避け、自社情報・一般知識として正しい情報や自分の経験に基づいてはっきりと答えましょう。
例えば、間違った認識をしていた場合「そんなことはないと思うのですが…」と答えると、「結局どっちなの?」となってしまいますし、誤解を招く原因にもなります。
そのため「いえ、そんなことはないですよ。事実、自分は…」など、明確に答えるのが有効です。
また、自分の経験に基づいた事実を伝える際は、経験談であることを述べた上で説明してください。
座談会はミスマッチ防止に効果的
座談会は、企業と学生が直接交流できる貴重な機会です。
学生の疑問に答えることで、魅力付けや企業理解が深まるため、ミスマッチの防止に繋がります。
ただし、座談会は社員を通して企業が評価されるため、参加する社員の態度や回答内容によっては、イメージが低下する恐れもあります。
ご紹介したコツや注意点を踏まえて、実施しましょう。