若手人材の確保が困難な現在、外国人留学生を採用する企業が増えています。
外国人留学生の採用は、人手不足解消の一手となるだけでなく、企業が抱える課題の解決にも効果を発揮するかもしれません。
しかし、言葉や文化の異なる外国人の採用に戸惑いを感じることも多いでしょう。
そこでこの記事では、外国人留学生を採用するメリット・デメリットや、注意点について解説いたします。
外国人留学生の就職事情やおすすめのサービスについてもご紹介いたしますので、参考にご覧ください。
外国人留学生の日本での就職事情
日本学生支援機構が行った「外国人留学生在籍状況調査」によると、2019年5月時点で312,214人の外国人留学生が日本に在留しています。
留学生全体の約65%が日本国内での就職を希望していますが、実際の就職率は約35%と決して高くない状況です。(2018年度に大学を卒業・修了した留学生)
しかし、日本国内で就職する留学生は年々増加しています。
出入国在留管理庁の「令和元年における留学生の日本企業等への就職状況について」によると、日本企業などへの就職を目的として、在留資格変更許可を申請した留学生は38,711人(許可数30,947人)です。
在留資格変更許可の申請者は前年比25.2%増、許可数は前年比19.3%増となっています。
許可人数トップの地域は中国
引用:出入国在留管理庁「令和元年における留学生の日本企業等への就職状況について」
国籍・地域別では、
- 中国(4%)
- ベトナム(7%)
- ネパール(6%)
- 韓国(4%)
- 台湾(1%)
と、中国が最多です。
中小企業への就職が最多
引用:出入国在留管理庁「令和元年における留学生の日本企業等への就職状況について」
企業規模別に見てみると、50人未満(37.2%)が最も多いです。
従業員数が多くなるにつれて許可人数の割合が減少し、2,000人以上の企業では13.1%に留まっています。
外国人留学生を採用するメリット
ここでは、外国人留学生を採用するメリットをご紹介いたします。
若くて優秀な人材を確保できる
少子高齢化により労働力人口が減少している日本では、多くの企業が深刻な人手不足に陥っています。
一方、外国人留学生は年々増加していますし、私財を投じて日本へやってくる留学生には、学習や働く意欲の高い人材が多いです。
そのため、外国人留学生を採用すれば、若くて優秀な人材を確保することができます。
新たなアイディアの創出
同質化が進んだ組織よりも、多様な人材が集まる組織の方が、創造性や課題解決力が高い傾向にあります。
というのも、異なる経験や知識、価値観、考え方を持つメンバーがいれば、様々な角度から課題にアプローチできるからです。
外国人留学生を採用すれば、新たな視点を取り入れられるため、それまで気付かなかった課題発見や斬新なアイディアの創出に繋がります。
職場の活性化に繋がる
日本での就職を希望する外国人留学生は、モチベーションが高い人が多く、勤勉に働いてくれるでしょう。
日本総研の行った「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」によると、外国人労働者の活躍状況のアンケートを行ったところ、「期待以上の活躍をしてくれている」と「ほぼ期待通りの活躍だ」が合わせて約8割と、外国人労働者に対する企業の満足度は高いということがわかります。
また、外国人を雇い入れると、相手が理解しやすいよう丁寧にコミュニケーションを取るようになるため、社員のコミュニケーションスキル向上も期待できます。
海外進出時の戦力になる
日本のマーケットは縮小傾向にあるため、海外進出する企業が増えていますが、現地人とのコミュニケーションに苦戦する企業が多いです。
日本と海外では、言葉や文化、価値観、商習慣が異なるため、この違いを把握していないと商談や現地スタッフのマネジメントが上手くいきません。
海外進出先を母国とする外国人留学生を雇用できれば、
- 商談や現地スタッフとのコミュニケーション時のアドバイス
- 通訳
- 顧客対応
- 現地調査員
など、多様な状況で活躍してくれるでしょう。
外国人留学生を採用するデメリット
外国人留学生を採用すると様々なメリットがあることがわかりました。
では、どういったデメリットがあるのか見ていきましょう。
就労ビザの取得が複雑
外国人が日本に滞在するには、期限や活動内容の定められている「在留資格」が必要です。
在留資格と異なる活動や、在留期限の過ぎた外国人を雇用した場合、不法就労助長罪として罰則を科されてしまいます。
そのため、外国人留学生をフルタイム労働者として雇い入れる場合、在留資格を「留学」から従事してもらう仕事に該当する在留資格に変更しなくてはなりません。
就労ビザを取得するには、在留資格変更許可申請書や必要書類を全て揃えた上で、原則留学生本人が直接入国管理局に出向いて申請します。
必要書類作成は煩雑なものが多いため、ビザの手続きを行っている行政書士事務所などを利用するのが安心です。
ただし、不備のない書類を申請しても必ず認められるとは限りません。
価値観や文化、コミュニケーションの違い
外国人は我々日本人とは違う環境で育ったため、価値観や考え方などが異なります。
そのため、外国人と良好な関係を築くには、相手の民族性や価値観を尊重したコミュニケーションを取ることが重要です。
また、どれほど上手に日本語を話せていても、日本の商習慣や価値観を理解しているとは限りません。
「空気を読む」「察する」といった日本独特の文化は通じませんし、海外では人前で叱責するのはタブーとされています。
日本のやり方を通してしまうと、早期離職やトラブルに発展する可能性もあるため、コミュニケーションの取り方やマネジメント時の注意点を把握しておきましょう。
多言語対応や日本語学校の手配、祈祷室の整備など、外国人が働きやすいような労働環境を整えることも重要です。
外国人留学生を採用するときの注意点
つづいて、外国人留学生を採用する際の注意点をご紹介いたします。
差別的取り扱いは厳禁
日本国内で就労する労働者は、国籍を問わず、原則として労働関係法令や社会保険関係法令が適用されます。
外国人であることを理由に、賃金や労働時間などの労働条件面で差別的な取り扱いをした場合、法令違反となり罰則が科される可能性があるため、注意が必要です。
また、社会保険は当該外国人が被保険者の要件を満たしていれば原則加入です。
これを怠った場合、50万円以下の罰金または、6ヶ月以下の懲役が科される可能性があります。
外国人労働者も、日本人と同等の労務管理が必要であることは把握しておきましょう。
ビザの確認
不法就労防止のため、外国人を雇用する企業には、在留カードやパスポートによる在留資格の確認が義務づけられています。
「適切な就労ビザを保有していない」「有効期限が過ぎている」外国人を雇用した場合、不法就労助長罪で300万円以下の罰金または、3年以下の懲役を科される可能性があります。
有効期限の確認を必ず行い、必要に応じて在留資格を変更しましょう。
外国人雇用状況届の提出
外国人労働者の新規雇用時や離職時は、当該外国人の氏名や在留資格、在留期間などを記入した「外国人雇用状況届出書」を厚生労働大臣に届け出なくてはなりません。
届出の方法は、
- 事業所の地域を管轄するハローワークへ直接出向き提出
- 外国人雇用状況届出システム
の2種類です。
全ての事業主に義務づけられているため、これを怠ると30万円以下の罰金を科される可能性があります。
提出期限は、雇い入れ時が翌月10日まで、離職時が翌日から10日以内です。
外国人留学生採用におすすめのサービス
外国人留学生の採用におすすめのサービスをご紹介いたしますので、是非参考にしてください。
求人広告の活用
インターネット上で自社求人情報を提供できるため、全国の求職者に呼びかけることができます。
Indeed
Indeedは、60ヶ国以上で利用されている世界最大級の求人検索エンジンです。
勤務地や職種などのキーワードを入力・検索すると、インターネットで公開されている様々な求人情報が一括で閲覧できるため、効率的に仕事探しができます。
毎月2.5億人以上、日本では月間2,500万人以上が利用しており、世界的に知名度が高いため、外国人留学生の募集に適したメディアです。
Indeedは、日本語・外国語どちらも無料で求人掲載できますし、有料サービスを利用すれば自社求人の露出を高めることもできます。
LinkedIn(リンクトイン)
LinkedInは、仕事で関わりのある人たちとネット上で繋がれる、実名登録制のビジネス特化型SNSです。
世界で6億人以上が利用しているメジャーなビジネス用SNSなので、外国人留学生の採用におすすめです。
LinkedInに登録すると無料で企業ページが作成でき、企業ページから求人情報を投稿することができます。
また、広告やInmailなどの有料サービスを利用すれば、学校やスキルなど、特定の条件にマッチするメンバーに絞って自社求人をアピールすることも可能です。
Wantedly(ウォンテッドリー)
Wantedlyは、やりがいや価値観で企業と求職者をマッチングする新しいビジネスSNSです。
2020年には登録者数240万人を突破しており、20代~30代の若手が全体の約4割を占めています。
Wantedlyの募集には、給与や待遇の条件を記載しません。
社風や企業の方針、活動内容といった自社の魅力をアピールし、共感した求職者が企業にコンタクトを取って話を聞く形式です。
LinkedInほど外国人ユーザーは多くありませんが、グローバル展開していますし、マッチ度の高い採用ができるため、外国人留学生の採用にも有効でしょう。
人材紹介の活用
企業の採用ニーズに合致する人材を紹介してもらえるため、マッチ度の高い人材を確保できます。
リュウカツ
リュウカツは、日本語が堪能な理系外国人留学生を中心に紹介する採用支援サービスです。
国公立、私立上位校を中心に12,000人の新卒人材が登録しており、約7割がN2以上の高い日本語能力を有しています。
中小企業から大企業まで500社以上と、取引実績も豊富です。
人材紹介の他にも、小・中規模の合同説明会や上位校在学者を対象としたイベントの開催、単独会社説明会も行っています。
また、在留資格変更手続きのサポートや日本語研修など、外国人留学生の雇用に際して必要な支援も豊富に揃っています。
Bridgers(ブリッジャーズ)
Bridgersは、アジアを中心に約30万人以上の人材ネットワークを持つ、人材紹介サービスです。
大卒・日本語ビジネスレベルの候補者との1社単独海外現地面接会を行っており、内定承諾率は92%にも上ります。
台湾・韓国を中心にサービス開始から3,000名が内定しています。
ASIA Link(アジアリンク)
ASIA Linkは、日本語ビジネスレベルの外国人・高度外国人の紹介を行っている完全成功報酬型の人材紹介サービスです。
ASEAN諸国や中国・台湾を中心に87ヶ国・約6,700名が登録しており、20代の新卒が9割を占めています。
採用ニーズに合う人材の紹介はもちろんのこと、在留資格変更のアドバイスや内定者研修といった採用までのサポートも行っています。
また、1社限定型の外国人留学生選考会では、ASIA Linkの一次面接を通過した留学生のみと出会うことができます。
外国人雇用サービスセンター
外国人雇用サービスセンターとは、厚生労働省による外国人向けのハローワークで、東京・大阪・名古屋の3ヶ所に設置されています。
外国人留学生や専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人の就職支援、企業側の外国人雇用の援助などを行っています。
外国人雇用サービスセンターは無料で利用できるため、掲載・採用費用は一切掛かりません。
また、外国人留学生を対象としたインターンシップの募集や面接会・説明会の定期的な開催も行っているため、外国人との接点を持ちやすいです。
外国人留学生を採用して人手不足を解消
少子高齢化により労働力の低下している日本にとって、外国人労働者はなくてはならない存在です。
言葉や文化の違いから躊躇してしまうこともあるでしょうが、外国人留学生は中小企業で多く採用されています。
受け入れた企業の満足度も高いため、知名度の低い中小企業こそ外国人留学生の採用が適しているのではないでしょうか。