年間休日は働きやすさを判断する指標の1つとなるため、労働者にとって非常に重要な条件です。

 

従業員だけでなく求職者から聞かれることもあるため、担当者は年間休日の取り扱いや最低ラインなどについて把握しておきましょう。

 

この記事では、年間休日の概要や休日・休暇の違い、年間休日の平均日数、最低ラインについて解説します。

 

違反時の罰則や年間休日を充実させる取り組み事例もご紹介していますので、ぜひご覧ください。

本記事で紹介している内容については、所管する厚生労働省などの情報も必ずご確認ください。

 

▼厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/index.html

 

年間休日とは

年間休日とは、企業が定める1年間の休日日数のことです。

 

労働基準法により定められている「法定休日」と、企業独自の規則で定める「法定外休日(所定休日)」からなります。

 

十分な年間休日数を確保することで従業員はやプライベートな時間を確保できるため、ワークライフバランスを実現しやすくなるでしょう。

 

また心身のリフレッシュもできるため、従業員の健康維持だけでなく、集中力やモチベーションの向上にも期待できます。

 

近年はワークライフバランスを重視する労働者が多いため、従業員定着の率向上や応募者数増加にも効果を発揮するでしょう。

 

休日・休暇の違い

「休日」「休暇」は、どちらも労働者が休息を取れる日ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

 

休日

休日とは、もともと労働義務が課されていない日のことです。

 

「法定休日」と「法定外休日(所定休日)」の2つに分類され、法定外休日は所定日数と呼ばれることもあります。

 

なお法定休日に勤務させた場合、法定労働時間(40時間)の超過にかかわらず35%の割増賃金を支払わなくてはなりません。

 

所定休日は法律上の休日に当たらないため、休日労働の割増賃金は基本的には必要ないです。

 

休暇

休暇とは、労働義務は課されているがその義務が免除される日のことです。

 

例えば「有給休暇を取得して出勤日に休みを取る」などが休暇に当たります。

 

休日同様、休暇も法律で定められた「法定休暇」と、企業が独自に定めた「法定外休暇(特別休暇)」に分類されます。

 

代表的な法定休暇は、年次有給休暇や産前産後休暇、介護休暇、生理休暇、裁判員休暇などです。

 

特別休暇には慶弔休暇やリフレッシュ休暇、誕生日休暇などがあります。

 

年間休日に含まれる休日

年間休日に含まれるのは、基本的に法定休日や所定休日といった「休日」です。

 

法定休日

法定休日とは、法律で定められた休日のことです。

 

労働基準法第35条により使用者は労働者に対して、週1回以上もしくは4週間に4回以上の休日の付与を義務づけています。

 

違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に課される可能性があるため注意が必要です。

 

法定休日に出勤させるには36協定の締結や労働者の同意を得なくてはならず、必ず35%の割増賃金が発生します。

 

法定外休日(所定休日)

法定外休日(所定休日)とは、企業が任意で設定する休日のことです。

 

法律では「週1回以上もしくは、4週間に4回以上」の休日付与が義務づけられているため、週休2日制を導入している場合、2日のうち1日分が所定休日となります。

 

このほか、創立記念日やゴールデンウィークなどが所定休日に当たります。

 

所定休日の出勤にさせる場合、法定労働時間をオーバーすると超過分に対して25%の割増賃金が発生するため、注意が必要です。

 

ちなみに夏季休暇や年末年始休暇などを就業規則で休日に設定している場合、年間休日に含まれます。

 

こうした休暇の日数や取得できる期間は企業によって異なるため、新しく従業員を迎え入れる際は事前にしっかりと説明しましょう。

 

振替休日

振替休日とは、事前の手続きで休日を出勤日とする代わりに、別の出勤日を休日に振り替えることです。

 

通常の出勤日と同様に扱われるため、割増賃金の対象にはなりません。

 

代休

代休とは休日出勤した後で、代わりに別の出勤日に休日を与えることです。

 

本来休日であった日に働かせたことになるため、割増賃金の対象になります。

 

有給休暇は年間休日に含まれる?

有給休暇は年間休日に含まれません。

 

というのも、年間休日が全従業員に対して適用される休日・休暇であるのに対し、有給休暇は勤続年数や労働時間に応じた日数が付与されるものです。

 

取得できる日数も取得日も人によって異なるため、年間休日には含まれません。

 

有給休暇以外で年間休日に含まれないものとして、以下のような休暇が挙げられます。

 

リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇とは、従業員の心身の疲労回復などを目的として付与される特別休暇です。

 

5~10日程度付与する企業が多く、タイミングは「年1回」「勤続3年ごと」など、企業によって異なります。

 

また、有給休暇以外の休暇に給与支払い義務はありませんが、多くの企業がリフレッシュ休暇を有給としています。

 

慶弔休暇

慶弔休暇とは本人や近親者の結婚・出産もしくは、身内に不幸が出た際に、取得する特別休暇です。

 

法定外のため慶弔休暇を付与する義務はありませんが、多くの企業では慶弔休暇を導入しています。

 

慶弔休暇の取得日数は血縁関係で変わるため、従業員からの問い合わせに対応できるよう、把握しておきましょう。

 

慶弔休暇の日数は企業によって異なりますが、一般的には以下のような日数になります。

 

慶事休暇 弔事休暇

本人の結婚…5日

子の結婚…2日

配偶者の出産…2日

0親等/配偶者…10日

1親等/父母・子…7日

1親等/義理の父母…5日

2親等/兄弟姉妹・祖父母・孫…3日

アニバーサリー休暇

誕生日休暇とは、記念日当日や当月内に取得できる特別休暇です。

 

従業員本人や子どもの誕生日、結婚記念日を対象とする企業が多いですが、記念日を自由に決められる企業もあります。

 

アサヒビールやリクルートなど、多くの企業で取り入れられています。

 

労働基準法における年間休日の最低ラインは105日

労働基準法第35条では「使用者は労働者に対して、毎週1回または4週間に4回の休日を与えなければならない」と定めています。

 

したがって、労働基準法第35条をもとに年間休日数を設けた場合、52日前後になりますが、これだけでは不十分です。

 

なぜなら、労働基準法第32条では「労働時間の上限を1日8時間、週40時間まで」と定めているからです。

 

1日8時間または週40時間の場合、年間に働かせられる総時間は2,085時間であり日数に換算すると、260日程度となります。

 

365日から総稼働日数を引くと「365-260=105」となるため、最低でも105日間の休日を確保しなくてはならないのです。

 

もちろん、法定休日だけでは年間休日の指定基準には届かないため、多くの企業では法定外休日を設けています。

 

年間休日の平均

では、実際どの程度の年間休日数を付与しているのか、平均を見ていきましょう。

 

 

引用:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査

 

厚生労働省の調査によると、2020年の年間休日総数の企業平均は110.5 日、労働者1人あたりの平均は116.1 日でした。

 

前年度調査では、企業平均が109.9日、労働者1人あたりの平均が116.0 日のため、増加傾向にあると言えるでしょう。

 

企業規模別の平均では、

 

1,000人以上…8日

300~999人以上…2日

100~299人…9日

30~99人…0 日

 

となっており、規模が大きくなるにつれて年間休日数が増える傾向にあります。

 

また、1年間に企業が付与した年次有給休暇日数は、労働者1人あたり平均17.9 日で、実際に取得した日数は10.1 日です。

 

有給休暇取得率は56.6%と、過去最高の水準を記録しています。

 

違反した場合の罰則

年間休日が105日を下回った場合、「法定休日の付与義務違反」となる可能性があります。

 

法定休日の付与義務違反と認定された場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されるため、注意が必要です。

 

時間外・休日および深夜の割増賃金支払い義務違反にも、同様の罰則が課されます。

 

法律違反は企業の信頼にも悪影響を与えてしまうため、企業イメージの低下ひいては業績悪化にもつながります。

 

経営リスクを低下させるためにも、管理者や現場リーダーへの周知徹底、勤怠管理システムなどを用いて適切な労務管理を行いましょう。

 

年間休日が105日未満でも違法にならないケース

労働基準法の年間休日はあくまで基準のため、105日を下回ったからといって、必ずしも違法になるわけではありません。

 

ここでは、年間休日が105日を下回っても違法にならないケースについてご紹介します。

 

労働時間が短い

労働基準法第32条ならびに35条では、労働時間の上限(1日8時間、週40時間)や休日の付与(週1日以上)が規定されています。

 

例えば、1日6時間の労働を週6日勤務しても1週間の労働時間は36時間のため、労働時間の上限である40時間には達しません。

 

さらに、この条件で1年間働き続けた場合、年間休日数は約52日です。

 

週1日以上の休日を設定して週6日勤務にすれば、労働基準法の範囲内となるため、罰則の対象にはなりません。

 

よって労働時間を短縮すれば、年間の休日数が105日未満でも問題ないのです。

 

36協定を締結している場合

36協定とは、時間外・休日労働に関する協定のことです。

 

先述のように、労働基準法では法定労働時間(1日8時間、週40時間)と週1日の法定休日を定めています。

 

そのため法定労働時間を超えて労働させるには、労働基準法第36条にもとづく労使協定の締結と労働基準監督署への届出をしなくてはなりません。

 

時間外労働の上限は、月45時間、年360時間と定められています。

 

時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満、2~6か月の平均が80時間以内、月45時間超の時間外労働は年6回までであれば、違法にはなりません。

 

また、時間外労働や休日労働をさせる際は、所定の割増賃金を支払う必要があります。

 

変形労働時間制を採用している場合

変形労働時間制とは、月単位や年単位で労働時間を調整することで、勤務時間が増えても時間外労働としての取り扱いを不要とする制度です。

 

変形労働時間制は1か月もしくは1年の労働時間を平均して、週40時間以内になるよう調整するため、業務の繁閑に合わせて労働時間を設定できます。

 

飲食業や運送業、医療・介護業界などで採用されることが多いです。

 

年間休日を充実させるための取り組み事例

年間休日の確保は、従業員のみならず企業にとってもプラスの影響を与えます。

 

では、十分な年間休日を確保するために、どういった取り組みをしているのか見ていきましょう。

 

リクルートグループ

リクルートグループでは、2021年4月から有給休暇以外に、取得日を自由に決められる休日を15日増やしており、年間休日は130日から145日になりました。

 

1日あたりの就業時間を7.5時間から8時間に変更することで、年間の所定労働時間を変えず、給与の変更もしていません。

 

東洋電装株式会社

広島市で製造業を営む東洋電装では、「ライフ時間」を増やしたいという要望があるものの、残業している従業員が多い状況にありました。

 

ニーズと現状のギャップを解消するため、従業員からの意見をもとに所定内労働時間を7時間45分から8時間に変更し、年間休日を11日増やしました。

 

年間休日が104日から115日になったことで、従業員エンゲージメント向上や採用活動でのアドバンテージになっているそうです。

 

「休日を増やしても業績に影響は出なかった」と語っているため、年間休日を確保によって大きなメリットを得ていることが分かります。

 

年間休日の充実で組織力アップ

労働基準法における年間休日の最低ラインは105日です。

 

あくまで基準のため、105日未満でも違法にならないケースもありますが、年間休日の十分な確保は従業員の心身の健康やモチベーション向上につながります。

 

生産性向上や採用活動におけるアピールポイントにもなるため、結果的に組織力も向上するでしょう。

 

労働基準法をしっかりと理解した上でご紹介した企業事例を参考に、年間休日の充実を図ってみてはいかがでしょうか。

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