2022年4月から白ナンバーもアルコールチェック義務化! 道路交通法改正のポイントやチェック方法、対応方法、罰則について解説

道路交通法の改正により、2022年4月1日から白ナンバーもアルコールチェックが義務づけられました。

 

10月にはより厳しいチェックを求められるため、対応に追われている企業も多いでしょう。

 

この記事では、白ナンバー事業者向けに、道路交通法改正のポイントやアルコールチェックの実施方法についてご紹介します。

 

企業が行うべき対応や罰則についても解説しますので、ぜひご覧ください。

 

本記事で紹介する制度、法令などにつきましては所管する警視庁、その他関連する団体などの情報も必ずご確認ください。

 

アルコールチェック義務化とは

アルコールチェック義務化とは、安全運転管理者がドライバーに対して、検知器を用いた運転前後のアルコールチェックを義務づけたものです。

 

2011年5月から、運送・輸送事業者(緑ナンバー)のみを対象にアルコールチェックが義務づけられていましたが、2019年には航空・鉄道業界も義務化の対象となりました。

 

2022年4月からはさらに対象が拡大し、自社製品などを運ぶ事業者(白ナンバー)にもアルコールチェックが義務づけられています。

 

アルコールチェックの対象が拡大した背景

アルコールチェックの対象が拡大した背景は、2021年6月に千葉県八街市で発生した、白ナンバーのトラックによる交通死亡事故です。

 

児童5人を死傷させた加害者は、常習的に飲酒運転をしていたことから、道路交通法施行規則の一部が改正され、白ナンバーの乗用車も義務化の対象となりました。

 

道路交通法の改正でアルコールチェック義務化はどう変わる?

では、道路交通法の改正でアルコールチェック義務化はどう変わるのか、改正のポイントについて見ていきましょう。

 

アルコールチェック義務化の対象

アルコールチェック義務化の対象は、

  • 乗車定員11人以上の白ナンバー車1台以上を保持
  • 白ナンバー車5台以上を保持

です。

 

いずれか一方でも該当する事業者は、アルコールチェック義務化の対象となり、安全運転管理者の選任もしなくてはなりません。

 

なお、原付をのぞく50cc以上のオートバイは、0.5台として換算されます。

 

アルコールチェック義務化の内容

2022年に改正される道路交通法は、下表のとおり同年4月と10月で段階的にアルコールチェックが強化されます。

開始時期 改正内容
2022年4月1日~

安全運転管理者が運転前後にドライバーの酒気帯びの有無を目視で確認

書類やデータに確認内容を記録し、1年間保管

2022年10月1日~

安全運転管理者が運転前後にドライバーの酒気帯びの有無をアルコール検知器で確認

アルコール検知器を常時使える状態に保持すること

これまで、安全運転管理者による運転前のアルコールチェックは義務づけられていましたが、法改正後は運転後の確認と確認記録の保存義務も加わりました。

 

なお、2022年10月以降は、アルコール検知器による確認が必要となるため、常時正常に検知器を使えるよう、備えつけておかなくてはなりません。

 

アルコールチェック方法

アルコールチェックの基本的な実施方法は、

  • ドライバーの顔色や呼気の臭い、応答時の声の調子を運転前に対面で確認
  • アルコール検知器でアルコール濃度を計測(2022年10月~)
  • 記録簿などに酒気帯びの有無や確認方法を記入
  • チェックをクリアしたドライバーは運転業務開始
  • 運転後にも同様の検査を行い、記録

です。

 

アルコールチェックは、運転前後に対面での確認が原則とされています。

 

しかし、対面でのチェックが困難な場合や、1日に何度も運転する場合は、どうすれば良いのでしょうか。

 

対面でチェックできない場合

直行直帰など対面での確認が困難な場合、

  • テレビ電話
  • 携帯電話
  • 業務無線

などにより、ドライバーの顔色や応答の声の調子を確認する方法が認められています。

 

ドライバーにアルコール検知器を携行させておき、検知器による測定結果も合わせて報告してもらいましょう。

 

なお、1度もドライバーと対面できない場合、運転前後の連絡に加え、中間連絡も行う必要があります。

 

1日何度も運転する場合

業務時間内に複数回運転する場合、都度アルコールチェックを行っていては業務に支障が出ます。

 

この場合、「出勤時や運転を含む業務開始前」と「退勤時や業務終了後」のみのチェックが認められているため、自社に合った方法で確認しましょう。

 

出張先でレンタカーを借りる場合

5台以上の白ナンバー車を保持している企業の場合、業務のために出張先でレンタカーを借りる際は、アルコールチェックが必要です。

 

アルコールチェックは、直行直帰と同様の方法で実施します。

 

アルコールチェック義務化で企業が行うべき対応

アルコールチェックの義務化にあたり、企業はどのような対応をする必要があるのでしょうか。

 

安全運転管理者の選任

法定台数以上の自動車を保有している事業者は、事業所ごとに安全運転管理者を選任しなければなりません。

 

安全運転管理者は、選任した日から15日以内に所轄の警察署を経由して、公安委員会に届け出る必要があります。

 

また、20台以上の自動車を使用している事業所では、副安全運転管理者の選任(20台ごとに1人)も必要です。

 

安全運転管理者ならびに副安全運転管理者の資格要件は、下表のとおりです。

 

安全運転管理者 副安全運転管理者

20歳以上(副安全運転管理者を選任する場合は30歳以上)

自動車の運転管理に関する実務経験が2年以上

実務経験2年未満でも、公安委員会が認定した者

20歳以上

自動車の運転経験が3年以上

運転経験3年未満でも、運転管理に関する実務経験が1年以上

 

ただし、

  • 公安委員会の命令で安全運転管理者等を解任されてから、2年未満の者
  • 無免許運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転無免許運転にかかわった車両の提供・乗車、放置駐車違反、過労運転などの違反行為をした日から2年未満の者

に該当する場合、安全運転管理者にはなれません。

 

安全運転管理者の業務は?

安全運転管理者の基本業務は、以下のとおりです。

  項目 内容
1 運転者の適性等の把握 運転者の適性・知識・技能や道路交通法等の規定を守っているかの把握
2 運行計画の作成 過労運転の防止、その他安全な運転を確保するために必要な自動車の運行計画作成
3 交替運転者の配置 長距離運転または夜間運転の場合、安全な運転ができるよう交替要員を配置
4 異常気象時等の措置 異常気象・天災などにより、安全運転の確保に支障が生ずるおそれがある場合、必要な指示や措置を講ずる
5 点呼と日常点検 点呼などを行い、安全な運転を確保するために必要な指示を与える
6 運転日誌の備付け 運転状況の把握に必要な運転日誌を備え付け、運転者に記録させる
7 安全運転指導 自動車の運転に関する技能・知識など、安全な運転を確保するのに必要な事項の指導
8 酒気帯びの有無の確認

運転者に対して運転前後の酒気帯びの有無を確認

※2022年10月以降は、目視に加えてアルコール検知器で確認

9 結果の記録と保存 酒気帯びの有無に関する内容の記録および、1年間の記録保存

 

2022年の道路交通法改正では、「酒気帯びの有無の確認」「結果の記録と保存」の実施が加わりました。

 

アルコール検知器の準備

2022年10月以降は、目視による確認に加えて、検知器を用いたアルコールチェックが義務化されます。

 

アルコールチェックに用いる検知器の要件に細かい指定はなく、警視庁では「酒気帯びの有無を音や色、数値などで確認できれば問題なし」としています。

 

さまざまなタイプの検知器が販売されているので、必要に応じて選びましょう。

 

また、道路交通法施行規則で「アルコール検知器の常時有効に保持すること」と定められているため、いつでも正常に作動できるよう、定期的にメンテナンスする必要があります。

 

ちなみに、酒気帯びの基準値は「血中アルコール濃度0.3㎎/ml以上」or「呼気中のアルコール濃度0.15㎎/ℓ以上」です。

 

ただし、「アルコール濃度が基準値未満なら問題ない」わけではありません。

 

アルコールへの耐性は個人差が大きいですし、少量であっても飲酒は飲酒であり、通常時よりも判断力は劣ります。

 

アルコール濃度が基準値未満であっても、検挙される可能性があるため、少量でもアルコールを摂取した場合は運転を控えましょう。

 

記録保存のための準備

2022年4月以降は、酒気帯びの有無に関する内容を記録し、1年間保存する必要があります。

 

記録方法は日誌やExcelでも構いませんが、ドライバーの多い事業所はクラウド連動型の検知器を利用すると、安全運転管理者の負担を軽減できます。

 

具体的な記録項目は、

  1. 確認者名
  2. 運転者名
  3. 運転者の業務にかかわる自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号など
  4. 確認日時
  5. 確認方法

a:アルコール検知器の使用の有無

b:対面でない場合は具体的方法

  1. 酒気帯び運転の有無
  2. 指示事項
  3. その他必要な事項

です。

 

アルコールチェックを怠った場合の罰則

安全運転管理者がアルコールチェックを怠った際の罰則は、設けられていません。

 

しかし、安全運転管理者の怠慢により、「安全な運転が確保されていない」と認められた場合、解任される可能性があります。

 

そもそも、酒酔い運転や酒気帯び運転には、厳しい行政処分と罰則が設けられています。

 

飲酒運転によって事故が発生した場合、ドライバーや安全運転管理者への責任追及だけでなく、企業の責任問題にまで発展する可能性が高いため、十分注意しましょう。

 

また、法定台数以上保有している事業所における、安全運転管理者や副安全運転管理者の選任・届出に関する罰則は、以下のとおりです。

安全運転管理者などを選任しなかった場合…5万円以下の罰金

安全運転管理者などを選任したが届出しなかった場合(15日以内)…2万円以下の罰金

安全運転管理者などの変更を届出しなかった場合(10日以内)…20万円以下の罰金

 

アルコールチェックの徹底で飲酒運転を防止

2022年4月から、白ナンバーにもアルコールチェックが義務づけられており、同年10月には、検知器を用いたチェックが必須となります。

 

現時点では、アルコールチェックを怠ったとしても罰則を受けることはありませんが、重大な事故が発生すれば、被害者やドライバーの人生を大きく変えてしまいます。

 

さらに、法令違反をしていたとなれば、企業の責任問題にも発展し、社会的信用を失うことになるでしょう。

 

安全な運転を確保するためにも、法令改正の背景を理解した上で、飲酒運転防止に努めましょう。

 

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