「人を採用するためにかかるコスト」をどうやって減らしていけば良いのか、悩んでいる採用担当の方も多いのではないでしょうか。
人を採用するためには、多くの労力とコストが掛かります。
たとえ広告費をかけていなくても、求人原稿の作成をしたり応募者への対応などを行ったりすることで、採用担当者の業務には見えないコストがかかっているのです。
採用活動をおこなう際の工程数を採用工数と呼びますが、採用工数はどのようにしたら減らすことができるのでしょうか。
今回は採用工数を削減する方法などもいくつかご紹介していきます。
どのコストを減らし、どこにコストを掛けるべきなのかを考えます。
ぜひ採用活動の参考にしてください。
採用工数とは
採用工数とは、採用を行うために必要とされる総作業時間や仕事量のことを指します。
具体的な例を挙げると、
- 面接や書類選考
- 求人原稿の作成
- 広告媒体を使用する場合の担当者との打ち合わせ
- 求職者からの問い合わせ対応
- 内定通知後の内定者フォロー
が含まれています。
つまり、求人広告費がかかっていなくても、求人広告を出すまでの採用担当者の作業に対して、採用工数が発生しているのです。
採用工数と採用コストの関係
採用工数の意味を確認したところで、続いては採用工数と採用コストの関係について解説します。
全ての採用方法は大まかに4つのタイプに分類されます。
※なお、ここでの採用コストは「金銭面のコスト」を指します。
採用工数“多” × 採用コスト“低”
転職を積極的には行っていない潜在層へのアプローチや、自社に興味を持ってもらうための仕組みづくりに対して有効な採用方法です。
採用工数が多く、コストの低い採用法として、
- SNSを活用した採用活動(ソーシャルリクルーティング)
- アグリゲーションサイト(Indeed等)を活用した採用活動
が挙げられます。
アグリゲーションサイトとは、Web上にある情報を自動で収集し、整理して掲載できるサイトのことです。
SNSやアグリゲーションサイトは、どちらもシステム使用料がかからないため、コストは少なく済みます。
ただし、SNSでは「投稿や求職者とのやり取り」が、アグリゲーションサイトでは「情報を拾わせる工夫」などが必要になるので、採用担当者の工数は多くなる傾向にあります。
採用工数“多” × 採用コスト“高”
専門的なスキルを持った人材が必要な場合や、知名度の高くない企業での採用に対して有効な採用方法です。
採用工数が多く、コストも大きい採用法として、
- ダイレクトリクルーティング
- スカウト型の求人サイト
が挙げられます。
スカウトメールの開封率は30〜40%、返信率は10%以下、さらに応募率はもっと低くなります。
そのため、できるだけたくさんのスカウトメールを作成するなど、多くの工数が必要となります。
スカウト型の求人サイトは通常サイトに比べ使用料が高い傾向にあるため、コストも高くなります。
採用工数“少” × 採用コスト“低”
コストや採用工数をできる限り抑えられる採用法です。
採用工数が少なく、コストも少ない採用法として、
- ハローワーク
- 人脈を活用したリファラル採用
- 求人広告
が挙げられます。
コストが小さく工数も少ないので大変魅力的に感じるかもしれませんが、実は問題点も多くあります。
例えばハローワークは無料で求人が出せる一方、若年層の利用が少ないことや、自社の魅力をアピールしにくいなどのデメリットがあります。
また、リファラル採用は従来の人脈を活用するため、不採用になった場合の気まずさといったデメリットもあるので注意が必要です。
このタイプの採用法は、いくつかの手法と組み合わせて行うのが良いでしょう。
採用工数“少” × 採用コスト“高”
普通の求人では人を採用することが難しい職種や、専門的なスキルをもつ人材を求めている場合に対し、有効な採用法です。
採用工数が少なく、コストの高い採用法として、
- 人材紹介(マイナビ、リクナビなど)
が挙げられます。
企業側が必要とする人材を、人材紹介会社が代行して探してくれるため、採用工数を抑えることができます。
人材紹介会社に払うのは成功報酬なので、初期費用はかかりませんが、無料求人サイトに比べ、採用にかかるコストが高くなる傾向にあります。
採用工数を削減するべき理由
採用工数を削減するべき理由は3つあります。
- 就職に関して「売り手市場」となっていること(採用競争の激化)
- 採用活動が長期化してきていること(採用活動の長期化、通年化)
- 採用方法が多様化していること(採用コスト削減)
それぞれの理由を詳しく解説していきます。
採用競争の激化
採用工数を削減するべき理由の1つ目は、売り手市場による「採用競争の激化」です。
新型コロナウイルスが終息に向かいつつある今、国内は再び、売り手市場となっています。
企業は人材を集めたいと考えているものの、応募数が足りず、限られた人材を奪い合う状況です。
今後の人口減少に伴い、採用競争はさらに激しさを増すと予想されます。
このような状況下で優秀な人材を獲得するためには、スムーズな採用活動が重要となります。
採用活動の長期化・通年化
採用工数を削減するべき理由の2つ目は、採用活動の「長期化・通年化」です。
採用競争が激化する中、採用活動の早期化・通年化に取り組む企業も増えてきました。
新卒採用では大学3年の夏前からインターンを始める企業も今は珍しくないです。
HR総研が実施した「2019年&2020年新卒採用動向調査」では、
- すでに通年採用を実施しているという企業が15%
- いずれ通年採用を実施するという企業が39%
という結果が報告されています。
企業によって差はありますが、中長期的な視点で移行を考えている企業が多い傾向にあります。
このことからも、今後ますます採用工数を削減し、採用活動全体を改善していくことが必要となってくるでしょう。
採用コスト削減
採用工数を削減するべき理由の3つ目は、採用活動の「コスト削減」です。
採用コストには2つの種類があります。
- 求人媒体の掲載費用や人材紹介会社への手数料などの「外部コスト」
- 採用担当者の人件費、面接の交通費や宿泊費などの「内部コスト」
経営悪化などにより会社全体のコスト見直しがおこなわれ、採用活動においても限られた予算の中で活動を行わざるを得ないケースもあるでしょう。
しかし負担を抑えるために、採用活動において効果的な方法となりうる採用チャネルを削ることは、あまり良い判断とは言えません。
工数を見直すことで、無駄な業務が削減され、限られた予算でも業務を遂行できる体制が整い、結果的に採用コストの削減にもつながります。
採用活動のプロセス
採用活動のプロセスは大きく6つに分類することができ、それぞれのステップを意識した行動が求められます。
さっそく詳しく解説していきます。
認知
採用活動の行程は「認知」から始まります。
就職活動のために企業選定を行っている大学生や、転職を考えている人に向け、自社の存在を知ってもらうことが採用活動の第一歩となります。
まずは「この会社で働きたい」という人々を集めること(母集団形成)が重要です。
この段階では、
- 求人媒体を使って求人を出す
- 会社説明会を実施する
- SNSを活用して認知度をあげる
といったが手法が効果的です。
認知度向上のメリットは、求職者へのアピールだけではありません。
今すぐ転職を考えていない「潜在層」の人たちにもアプローチを行うことができるのです。
興味
次のステップは「興味」です。
SNS上で貴社の存在を認識した人や、求人媒体を見た人たちが興味を持ち、貴社webサイトやSNSで検索をはじめます。
その興味を次のステップへ繋げるために、入社してからのイメージを想像できるような情報を発信する必要があります。
具体的には、
- 職場の雰囲気
- 仕事内容
- やりがい
を発信していくと良いです。
入社後をイメージすることができると、いっそう貴社への興味も増していきます。
求職者がどんな情報を欲しているのか、的確に判断し発信することも重要となってきます。
検討
「興味」が高まり、「検討」のステップへと移ります。
興味、関心を持った求職者が、実際に貴社を受けるかどうかを決める段階です。
検討を行っている求職者は、様々な条件で比較検討をしながら、最終的に応募する企業を探します。
企業側として、自社の魅力をしっかりとwebサイトやSNSで発信することが重要になってきます。
応募
検討の末、「応募」に至った段階です。
応募者がハローワークや求人媒体などから応募を行ってきます。
先述したように、認知から応募までの段階で「実際に応募へと行動を移す人数」はとても少なくなります。
だからこそ応募者に対し、ストレスなく応募へと進めるよう工夫する必要があります。
なぜなら、応募フローが複雑になることで、応募意欲も薄れてしまうからです。
スムーズに応募できることで、求職者の「入社したい」という熱量を維持したまま、次の選考へとつなげることができます。
選考
応募者を選定する「選考」段階です。
選考では、
- 書類選考
- 能力適性検査
- SPIなどの筆記試験
- 面接
といったさまざまな選考方法があります。
限られた時間で応募者を見極めなければいけない面接では、話しやすい雰囲気作りを行うことが必要です。
入社して欲しい人材に対して、面接の場でも貴社の魅力を伝えることで、志望度をより高めることも大切です。
入社
採用プロセスの最後の段階である「入社」です。
これまでの工程を経て、ようやく入社して欲しい人材が決まり、内定を出せたとしても実際にその人が入社してくれる保証はありません。
なぜなら、応募が1社だけという求職者はほとんどいませんし、優秀な人ほど他社から内定を受けていることが多いからです。
内定通知を出してから辞退されないためには、内定者の負担にならない程度にコミュニケーションを取ることが大切です。
懇親会や入社前の研修などを行っている企業も多くなってきています。
採用工数の削減方法
ここからは、採用工数を改善するために有効な方法を具体例と共に説明していきます。
アウトソーシング
アウトソーシング(専門会社への委託)を利用することで、採用工数の大幅な削減が可能です。
たとえば説明会を実施する際、より多くの応募者を集めたい場合には、イベントに慣れている代行会社に依頼するほうが効率的です。
なぜなら、説明会では「人材を見抜くスキル」よりも「多くの来場者への迅速な対応」が必要となるからです。
書類選考や試験等においても、合否基準が明確になっているのであれば、必ずしも人事担当者でなくて良いため、外部の専任担当者を配置することも可能です。
オンライン化
採用活動のオンライン化も、採用工数改善に効果的です。
応募者からの問合せや申し込みを、電話や郵送で行っている場合、メールやオンラインサービスの活用に変えることで採用工数を削減できます。
その他、説明会や選考をオンライン化することで、会場確保にかかるコスト節約も可能となります。
さらに内定後のフォローもオンライン化することで、遠方の内定者でも説明会などに参加しやすくなります。
また対面で面接を行う場合も、初期段階は大人数のグループ面接などにすれば、工数やコストの削減も可能です。
採用チャネルの絞り込み
採用活動のチャネルの絞り込みも、採用工数の改善に効果的です。
採用チャネルとは、企業側が求職者へアプローチするための手段のことです。
例えば、
- SNS
- ダイレクトソーシング
- リファラル採用
- 人材紹介
- ハローワーク
- 求人広告
- 自社サイト
といったものが挙げられます。
より幅広い層に自社をアピールするためには、採用チャネルを多く持つことが大切です。
チャネルごとに様々な工数が発生するため、より効果の高いものに絞り込む必要があります。
自社の求める人材層にマッチした採用チャネルを厳選するようにしましょう。
HRテックの導入
HRテックとはテクノロジーを用いて人事が抱える課題を解決に導くサービスや技術のことです。
例えば、
- 人事管理システム
- 採用管理システム
などのサービスやツールのことを指します。
AIが問い合わせ対応を行うので、「応募者のデータ収集」を同時に行うこともでき、採用時の判断材料としても利用することができます。
書類選考では、過去に入社した人のデータを学習させておくことで、自社で活躍する人材に近い応募者を的確に見つけることができ、採用工数削減が可能です。
さらに、面接では過去の合否などを学習させたデータから合否を決定し、人の経験や勘に頼ることのない採用ができるため、作業の効率化も期待できます。
採用工数を見直して効率的な採用活動を
近年、労働人口の減少も相まって採用活動は激化しています。
手法を工夫したり、通年で採用に力を入れたりなど、一筋縄では採用にいたらないのが現状です。
そのような状況では、採用活動の効率化が求められます。
採用活動のプロセスを見直して、削減できる採用工数は削減し、より良い採用活動を実施しましょう。