情意評価で従業員エンゲージメントを向上! 具体的な項目やポイント、例文について情意評価は、人事評価において、態度や貢献度を基準とする評価方法を指します。

 

情意評価を適切に活用することで従業員のエンゲージメント向上が期待でき、離職率を減らす効果もあります。組織力の強化にもつながるので、人事に携わる方は把握しておきましょう。

 

本記事では、情意評価の特徴やメリット、導入時に留意すべき点などについて紹介します。

 

情意評価とは

「情意評価(じょういひょうか)」とは、従業員の意欲や態度、貢献度を評価する方法です。

 

勤怠状況やモラル、周囲との関係性といった具体的な項目が、評価の対象となります。従業員の人間力を測定し、組織へのエンゲージメントを向上させることが目的です。

 

情意評価における評価基準の項目は、業績評価や能力評価とは大きく異なります。

 

業績評価や能力評価との違い

情意評価・業績評価・能力評価は、全て「評価」という言葉が含まれることから混同されることがありますが、それぞれ異なります。

 

具体的な違いは以下の表の通りです。

  評価項目
業績評価

業績目標達成度

課題目標達成

日常業務成果

能力評価

企画力

スキル(資格)

実行力

改善力

情意評価

協調性

積極性

貢献度

勤務態度

 

業績評価は成果や数字で評価されることが多く、能力評価は業務に必要なスキルや能力を評価することが主な目的です。

 

それに対して情意評価は、従業員の意気込みや態度、貢献度といった内面的な要素を評価するものです。

 

情意評価は、業績評価のように数字で具体的に表現できるものではありませんし、能力評価のように業務に必要なスキルを評価するものでもありません。

 

そのため、主観的になりやすい傾向があり、的確な評価が難しい特徴があります。

 

情意評価の項目

一般的に、情意評価には4つの項目が設定されています。順に見ていきましょう。

 

規律性

1つ目は規律性です。会社の規則や慣習に従って業務を実行できるかどうかを評価します。

特に管理職の場合は、その行動が周囲に与える影響力も考慮して評価する必要があります。

 

例えば、「勤怠や情報セキュリティに関する社内規則を守れているか」という観点から評価することが可能です。規律性を評価することで、従業員の規範意識を高められます。

 

従業員がルールを守らないと、職場のモチベーションが下がるだけでなく、会社にとって直接的な不利益につながる可能性があるため、規律性の評価は非常に重要です。

 

積極性

2つ目は積極性です。与えられた業務を遂行するだけでなく、工夫や改善提案といった積極的かつ能動的な行動ができるかを評価します。

 

具体的には、

  1. 与えられた仕事以外の付加価値を提供するために自らアイデアを出しているか
  2. 会議で自らのアイデアを発表しているか

といった項目が評価基準となるでしょう。

 

上司が忙しくて細かい指示を出せないときでも、自分で考えて行動できる従業員は会社にとって貴重です。

 

積極性のない従業員ばかりだと、会社全体の生産性が低下します。従業員が挑戦し、新しいことに挑戦する意欲の育成は、会社の成長に直結します。

 

責任性

3つ目は責任性です。業務や役割の影響力の大小にとらわれず、責任を認識して遂行しようとする姿勢を評価します。

 

具体的には、自分が任された業務に対して責任を持ち、他の社員に対しても責任を持って指導やサポートを行っているか、といった評価項目が考えられるでしょう。

 

責任感のある従業員は、チームや組織全体の信頼を得られ、全体の協調性やチームワークを高めることができます。

 

反対に責任感のない従業員は、業務の遂行に支障をきたすだけでなく、チーム内の不協和音を生む原因になるのです。

 

責任感を持って業務に取り組むことは、自己成長にもつながり、会社の発展にもつながる重要な要素だと言えます。

 

協調性

4つ目は協調性です。他の社員と協力して業務を行う能力を評価します。

 

他の社員と対立することなく協力的な態度を示し、困っている社員に対して手助けする姿勢が重要です。

周囲と良好な関係を築きながら業務を進められる従業員は、会社への貢献も期待できるため、貴重な存在と言えるでしょう。

 

情意評価のメリット

情意評価を取り入れると、どのようなメリットを得られるのでしょうか。メリットを具体的に解説していきます。

 

多角的に評価できる

情意評価を取り入れると、多角的に従業員を評価できます。

 

従業員が真摯に業務に取り組んでいるのに、外部の影響により成果が上がらなかった場合、業績評価ではその従業員を適切に評価できません。

 

しかし、情意評価はデータに表れない勤務態度を評価するため、会社に貢献した従業員を多角的に評価できます。

 

さらに、業績を上げられなかった従業員でも、真摯に業務を邁進していたことを評価すれば、全体のモチベーションが上がるので、業績アップが期待できます。

 

理想的な従業員を育成できる

情意評価は、理想とする従業員の育成に効果的です。

 

情意評価を通じて企業の理想像を提示することで、従業員はどのような行動が求められているのかを明確に理解できます。

 

さらに、項目を具体的に提示すると、従業員は積極的に行動できます。

 

理想モデルとなる従業員を育成できれば、社内のエンゲージメントが向上し、離職率低下にもつながるでしょう。

 

従業員全体の連携を強化できる

情意評価は、従業員全体の連携強化にも有効です。

 

情意評価では、従業員同士の思いやりや協力する姿勢を評価します。このような評価をすれば、従業員は普段の業務においても「協調」に意識が向くため、連帯感を高める効果を期待できます。

 

また、勤務態度を評価することで、成績ばかりを重視する自己中心的な考え方や行動を抑制できます。

さらに、協力する姿勢を評価すると、従業員同士の関係性を良好に保つことができる点も大きなメリットでしょう。

 

社内全体の連携が強化され、会社としての一体感が得られれば、業績向上や離職防止につながります。

 

情意評価のデメリット

情意評価には多くのメリットがありますが、導入の際にはデメリットがあることも理解し、具体的な評価プロセスを設定することが大切です。ここからは情意評価のデメリットを解説していきます。

 

目標設定が難しい

1つ目のデメリットは、目標設定が難しいことです。

 

情意評価は、業績評価のように具体的な数値で評価されるものではないため、自分自身の現状と目標レベルの差を正確に測定することが難しいです。

 

そのため、目標が容易または過度に困難なものに設定されてしまうと、正しい評価ができません。この問題を回避するためには、評価者と評価対象者の認識を合わせる必要があります。

 

1on1ミーティングの場を設け、従業員が自分自身の状況を正確に把握し、難易度に応じた目標設定をすることが望ましいでしょう。

 

評価者の主観が入り込みやすい

2つ目のデメリットは、評価者の主観に左右されやすい点です。

 

主観やバイアスに注意して評価しないと、正当な評価ができず、従業員のモチベーション低下や、評価者の信用を失う懸念があります。

 

適切な評価を行うためには、360度評価の導入が有効です。この手法を用いることで、評価者の主観に左右されにくくなり、評価の客観性を高められます。

 

 

行動レベルに落とし込む必要がある

3つ目のデメリットは、評価を実行可能な行動レベルに変換する必要がある点です。

 

内面的な側面である「態度」や「信念」を第三者が評価することは、明確な基準がない分、容易ではありません。

 

情意評価の基準と項目は、「従業員が職務に臨む姿勢や考え方ができているのか」を行動で判断することが重要です。

客観的な勤務態度や行動を評価基準にすると、評価者の主観が入りづらくなります。

 

仕事への姿勢や考え方の不一致は、評価者への信頼の欠如にもつながります。そのため、評価基準を「観察可能な行動」に落とし込み「客観的事実」として評価できるようにしましょう。

 

情意評価を行う際の注意点

情意評価においては、適切な評価基準を用いることが重要です。

しかし、運用する上でいくつかの点に注意する必要があり、おろそかにすると従業員の不満を引き起こす可能性もあります。

 

ここからは、情意評価における注意点について見ていきましょう。

 

ハロー効果

ハロー効果は、対象者の良い特徴や悪い特徴に引きずられてしまい、全体の評価が偏ってしまう現象です。

 

ハロー効果には、良い特徴に引きずられて全体の評価が高くなってしまう「ポジティブ・ハロー効果」と、その逆の「ネガティブ・ハロー効果」の2種類があります。

 

評価者の主観が反映されやすい情意評価において、ハロー効果には最大の注意が必要です。

 

ハロー効果の影響を評価に持ち込まないためには、従業員の長所だけをみて評価するのではなく、一つひとつを客観的に評価することが大切だといえるでしょう。

 

寛大化傾向

寛大化傾向とは、従業員に対する好意的な感情から評価全体が甘くなってしまう現象です。

 

情意評価は、職務に対する態度や姿勢といった目に見えないものを評価するため、評価者の主観に大きく左右される傾向があります。

 

しかし、寛大化が起こると全体的に高評価の従業員が多くなり、評価そのものの意味が失われる危険性があるので注意が必要です。

 

日頃から評価対象者をよく観察し、公平かつ客観的な評価を下すことが求められます。

 

中心化傾向

中心化傾向とは、無難な評価を優先して平均的な評価になってしまうことです。

 

この傾向が進むと、本来は高評価に値する成果が過小評価されたり、逆に低評価に値する成果が高評価されてしまうことがあります。

従業員からの不信感や、評価者の信頼低下につながる可能性もあるため、注意が必要です。

 

適切な評価を行うためには、実績や行動を普段からしっかりと観察し、公平に評価をするよう意識的に取り組む必要があります。

 

情意評価を導入する際のポイント

情意評価を導入する場合、評価手法や評価項目を決定する必要があります。ここからは、情意評価を導入する際に実施すべき手順や注意点について説明します。

 

評価手法の検討

情意評価を導入する際には、評価手法の検討が必要です。

代表的な手法には、バリュー評価とコンピテンシー評価の2種類があります。

 

コンピテンシー評価は、優秀な社員の行動特性を明確にし、その特性をもとに評価する手法です。従業員が目指すべき方向性が明確になるという利点がありますが、基準が高すぎるとモチベーションを下げる恐れもあるため、注意しましょう。

 

バリュー評価は、自社が理想とする人物像の価値観や行動基準を「バリュー」として想定し、評価する考え方です。

 

どちらの手法も多少違いはあるものの、自社が求める行動特性が明確になる点が共通しているのが特徴です。

 

バランスを考える

人事評価には情意評価以外にも、業績評価や能力評価が存在します。

これらの評価方法は、等級や部署(所属)ごとに配分を考えることが必要です。

 

例えば、管理職や営業は結果が求められる属性にあるため、業績評価の割合の方が高くなる可能性があります。

 

逆に、事務や総務といった定量的な成果が発生しない部署や経験の浅い社員ならば、意欲や態度を重視した情意評価の割合を高くすると良いでしょう。

 

さらに、情意評価の中でも、重要な項目を定めて評価割合を高くすることも有効です。

 

具体的に言うと、中間管理職なら指導育成に関する項目に関して、評価の割合を高くする必要があります。また、経験の浅い社員なら「報告・連絡・相談」といった基本的な業務に関する評価割合を高く設定すると良いです。

 

このように等級や展開、それに応じた評価配分を行うことで、公平性の高い評価制度を構築できます。

 

評価者の意見だけでなく事実も書く

情意評価では、客観的事実を記載することも大切です。

「評価」と「客観的な事実」を分けて書くと、従業員が事実と評価を区別できるので、自分の改善点を認識できます。

 

情意評価の項目は定量的に表現できないため、従業員にとって具体的な行動をイメージすることが難しい場合があります。

 

具体例を挙げることで、自分に何が求められているのかを明確に理解することが可能です。

職務に対する熱量は行動に現れるため、行動を評価することで内面を評価できます。

 

評価に取り入れる項目をおさえる

情意評価に取り入れたい項目もおさえましょう。以下の5つの項目を取り入れることで、情意評価の質を向上させされます。

 

  1. 感謝
  2. 思いやり
  3. 責任感
  4. 積極性
  5. 地域貢献

 

 

職務を遂行するにあたり、感謝や思いやりの気持ちを持って取り組むことは重要です。また、責任感や対応性も欠かせません。

 

与えられた業務に積極的に取り組み、やり遂げる意志を持つことで、目標達成だけではなく従業員自身の成長にもつながります。

 

さらに、企業にとって地域貢献活動は、求められる大切な要素のひとつです。情意評価を行うことで、地域に貢献する人材の育成につながります。

 

4段階評価を取り入れる

情意評価を取り入れるにあたり、4段階評価を取り入れることも有効です。

 

一般的に5段階評価を採用している企業が多いと思います。

しかし、5段階評価は一目でレベルが把握できる分、1や5のような極端な評価を避ける傾向が見られるため、評価に差がつかない「中心化」が生じやすいです。

 

4段階評価では、中心値の評価をあえて排除することで、中心化を防げます。

 

自社に合った評価方法を決める

評価方法には、絶対評価と相対評価の2つがあります。

 

絶対評価は、評価基準に対する達成度で評価する方法で、1つの評価基準に対して公平性の高い評価ができます。ただし、基準を満たせば誰でも評価が高い評価を受けるため、賞与やインセンティブの算定に課題が生じる点に注意が必要です。

 

一方、相対評価は他の従業員と比較して評価する方法で、あらかじめ設定された割合でランキングを決めます。この方法は、人件費を事前に決定し配分できますが、評価基準が曖昧になり、従業員の目標が不透明になってしまう点に注意が必要です。

 

自社の予算や風土に応じて、最適な評価方法を選択しましょう。

 

情意評価の書き方・例文

情意評価は見えない部分の評価であるため、主観に左右されてしまう可能性があります。

 

客観的かつ公平な評価を行うためには、どのような書き方をすれば良いのでしょうか。ここからは、情意評価の書き方と例文を紹介します。

 

情意評価の書き方のポイント

人事評価を適切に運用するには、評価制度の大幅な変更や新たな評価者が増えた際に、説明会や研修などを実施して共通認識を持たせることが重要です。

 

さらに、評価するにあたって、中央化傾向・ハロー効果・寛大化傾向・逆算化傾向といった評価エラーに関する知識を持ち、自己点検する習慣をつけると良いでしょう。

 

評価の根拠を具体的に示すことも重要です。具体的な行動やエピソードを例に挙げ、「○○な部分が高い評価を得た」と、評価の理由を明確にすれば被評価者が納得できます。

 

また、改善方法を伝えることも重要です。特に情意やスキルといった尺度は被評価者が自覚していないことが多いので、人事は評価だけでなく、その後のフィードバックも必要となります。

 

従業員の人間性を把握するためには、定期的な観察や1on1ミーティングが有効です。人事担当者は、従業員のメンタルケアや自己成長につながるよう、丁寧にフォローを行いましょう。

 

情意評価の例文

遅刻や欠勤もなく、担当した業務に対して最後まで責任を持ってやり遂げた点が高く評価できます。

また、課題が発生した際にも、周囲と協力して業務の効率化を図るために、タスク管理システムの導入を提案するなど、積極的に行動した点も評価できます。

今後もこのような模範的な行動や態度を維持し、他の従業員に良い影響を与えることを期待しています。

 

情意評価をうまく活用して組織力を強化

情意評価は定量的な評価ではないため、難しい面もあるでしょう。

 

しかし、評価基準を行動レベルにまで落とし込むことができれば、自社にとって理想的な社員を育成できます。

協調性も育めるため、助け合いながら仕事をする文化も根付くでしょう。

 

上手に運用すれば組織力強化の一助となるため、この機会に運用方法を見直してみてはいかがでしょうか。

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