適材適所に人材を配置し、企業を成長させるためには、適切な能力評価が欠かせません。
その解決策として注目されているのが、組織と個人のマッチングに役立つ「人材アセスメント」です。
この記事では人材アセスメントについて、従来の人事評価との違いやメリットをご説明した上で、手法や導入方法、注意点などを詳しく解説します。
人材アセスメントとは
人材アセスメントとは、第三者による人材評価の1つです。
適性検査や多面評価、面談やアセスメント研修などを通じて、本人の行動や言動を観察し、人材の特性を客観的に評価します。
普段は見えにくい特性や能力を客観的に評価できるのが、人材アセスメントの特徴です。
従来の人事評価と人材アセスメントの違い
従来の人事評価と人材アセスメントの大きな違いには、「客観性」が挙げられます。
これまでの人事評価は、上司が被評価者の仕事ぶりを見て評価するため、主観やバイアスが反映されやすく、客観的で公正な評価が困難でした。
一方、人材アセスメントは適性検査やアセスメント研修などの診断ツールを活用するので、データに基づいた第三者による客観的で公正な評価が可能です。
さらに、人材アセスメントは潜在的な能力まで把握できるため、評価だけでなく採用や育成、キャリア開発など戦略的な目的に合わせて活用できます。
従来の人事評価とは異なる、客観性を持った新しい評価手法が、人材アセスメントと言えるでしょう。
人材アセスメントの手法
人材アセスメントの手法は、検査やテスト教材、アンケートを用いるものなど多種多様です。
ここでは、多くの企業が取り入れている代表的な3つの手法をご紹介します。
適性検査
対象者の知的能力や認知能力、性格的特性や興味関心などを測定するテスト形式の検査です。
適正検査を実施することで、対象者の能力や性格を数値化でき、人物像を理解しやすくなります。
個人の強みや向き不向きを把握できる適正検査は、採用や人材配置、育成やキャリア開発など幅広い場面で活用される手法です。
多面評価
多面評価とは、直属の上司や同僚や部下、他部署や取引先など、対象者の関係者が評価する手法です。
業績やコミュニケーション能力、リーダーシップや問題解決能力などを、複数の評価者によって多角的に評価できる点が特徴です。
多面評価は客観性の高い評価となるため、対象者も評価に納得しやすいというメリットがあります。
個人の強みや改善すべき点を明確にするのにも役立ち、自己開発の助けとなるとともに、人材育成やキャリア開発の基礎データとしても活用されます。
面談・研修
面談は応募者と面接官が直接対面し、応募者の能力や適性、人柄などを評価する手法です。
個人面談やグループ面談、行動面談やケース面談などがあり、人間関係やコミュニケーション能力などのソフトスキルを評価するのに適しています。
アセスメント研修は自己理解や他者理解を深め、自己改善やチームの発展につなげるための研修です。
実際の業務に近い状況を作り出して対象者がどのように行動するかを観察し、特別なトレーニングを受けた専門家が評価します。
対象者の実践的な能力や、職務に対する姿勢や考え方を把握することが可能です。
人材アセスメントが注目されている背景
人材アセスメントが注目されている背景には、人材不足や労働環境の変化などが挙げられます。
従来では、年功序列や終身雇用を取り入れた働き方が主流でした。
しかし、少子高齢化や働き方の多様化などにより、従来の日本的雇用慣行は崩壊しつつあります。
加えて、人手不足からマネジメント層が不足し、評価の適正性が損なわれるなどの問題も増えています。
採用難が深刻化し労働環境が多様化する中、より効果的な採用を行って個人のスキルや適性を正確に把握し、適切な配置や育成に取り組むことが必要です。
また、多様な背景や価値観を持つ人材を積極的に採用し、活用していくことも求められるでしょう。
したがって、第三者による人材評価を通じて潜在的な能力の発見やスキルの活用、多角的な人材評価が期待できる人材アセスメントの重要性が増しています。
人材アセスメントを導入するメリット
人材アセスメントを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
企業側の視点からメリットを4点ご紹介します。
採用のミスマッチを防げる
採用プロセスに人材アセスメントを導入することで、候補者の適性や能力、性格や行動傾向を客観的に評価し、企業に必要な能力や特性を持つ人材を採用できます。
また、人材アセスメントを通じて候補者が持つスキルや知識、特性などを客観的かつ多角的に把握できるので、その候補者が企業のビジョンに適合するかどうかを判断することも可能です。
面接だけでは見えてこない候補者の特性を客観的に可視化できるので、採用のミスマッチを防ぐことができます。
適材適所の配置ができる
スキルを発揮できないセクションに人材を配置すると、成果を出すのに時間がかかったり、本人のやる気が失われたりする可能性もあります。
しかし、人材アセスメントによって従業員の能力や特性を可視化できれば、適切なセクションに配置することが可能です。
また、人材アセスメントの実施により、企業も本人も気づいていなかった潜在的な特性や能力を発見できる可能性もあります。
例えば、現在の仕事よりも従業員の強みを活かせる仕事があるかもしれません。
人材アセスメントを導入することで、従業員が本来の能力を発揮できる適材適所の環境が整えば、業績向上につながるでしょう。
人材育成プランが立てられる
人にはそれぞれ向き不向きがあり、同じ方法で教育しても、全員の能力が向上するとは限りません。
人材アセスメントを導入すると、個人の強みや弱みを把握できます。
得意・不得意に応じたトレーニングや、強みを伸ばすための研修などの人材育成プランを実施することで、従業員が効果的に能力を発揮できるようになるでしょう。
個人の特性に合わせた人材育成プランは、確実な成長やスキルアップにつながります。
能力の向上を実感できた従業員は、会社への帰属意識や目的意識を強めるようになるでしょう。
適切な人材育成プランの実施は、定着率アップや優秀な人材の流出防止といった重要な役割も果たします。
適切なリーダーを任命できる
能力が高く成果を出している従業員は、リーダー候補になることも多いですが、必ずしもその従業員がリーダーシップやマネジメント能力に優れているとは限りません。
実績とマネジメントの適性は別物ですので、人材アセスメントによる客観的な評価で適性を見極めることが大切です。
人材アセスメントを導入することで、「マネジメントに適している」と客観的に判断された人材を適切なリーダーとして任命できるでしょう。
人材アセスメントを導入する際のポイントと注意点
人材アセスメントは多面的に人材を評価する有効な手法ですが、効果的に活用するためにはいくつかの注意点があります。
ここでは、人材アセスメントの効果を最大限に発揮するためのポイントをご紹介します。
目的を明確にする
人材アセスメントの導入を成功させるには、明確な目的の設定が欠かせません。
導入目的を明確にすることで、必要な情報の収集や視点の絞り込みが可能です。
また、目的を明確にすると、人材アセスメントの結果をどのように効率的に活用するかを考えることができます。
例えば、キャリア開発や研修の実施、部署配置や昇進の検討をどのように行うかなど、目的に応じたアクションプランの策定が可能です。
目的が明確でないと、人材アセスメントを導入しても収集した情報を活かせず、本来の効果を発揮できません。
求める結果を導きやすくするためにも、目的を明確にすることが大切です。
使用用途を説明する
人材アセスメントを導入するにあたって、評価に不安を抱く対象者もいるでしょう。
不安を抱いたままでは正直に回答できず、不正確な結果になる可能性があります。
そのため、評価結果の活用方法や、どのように従業員に還元していくのかなど、使用用途を必ず説明することが大切です。対象者が人材アセスメントの導入に納得することで回答の正確性が増します。
人材アセスメントは、従業員が活躍するための道筋を示すものであり、組織と従業員の双方に利益をもたらすものであることを明確に伝えましょう。
時間と労力が必要
人材アセスメントの実施には、時間と労力が必要です。
採用する職種に適した評価方法を選択し、目標や項目を設定して評価資料を作成するなど、打ち合わせや調整を含めながらの作業は時間と手間がかかるでしょう。
評価結果を分析するにも、大量の情報を整理して比較し評価しなければなりません。
時間と労力はかかりますが、優秀な人材の採用や流出防止に役立つため、組織の発展にもつながるでしょう。
アセスメントの結果を評価に直結させない
アセスメント結果のみに基づいて、昇進や異動を決定すると判断を誤る可能性があります。
人材アセスメントは客観的で公平性に優れた評価手法ですが、個人の能力を絶対的に判断するものではありません。
人事評価にアセスメントの結果を用いる際は、参考として活用するのが健全です。
人材アセスメントの導入方法
人材アセスメントを導入するには、適切なステップを踏むことが必要です。
以下に、人材アセスメントの効果を最大化するための5つのステップをご紹介します。
目的の明確化
人材アセスメントは、活用の仕方によって得られる情報が違います。
自社の課題に合った人材アセスメントを選ぶために、人材アセスメントでどのような問題を解消したいかといった目的を明確に設定することが重要です。
測定項目の設定
明確にした目的を達成するためには、必要な測定項目を詳細に設定することが大切です。
測定項目が目的に合致していないと、適切な人材の確保が難しくなります。
業務に関するスキルのほかに、積極性や協調性、決断力といった個人的な側面も測定項目に設定すると良いでしょう。
ツールの選定
導入目的を明確にして測定項目を決めたら、それに合致する人材アセスメントツールを探します。
人材アセスメントのツールの選定には、目的に応じたアセスメント方法を選択することが重要です。
数多くの人材アセスメントツールがありますが、測定項目や評価内容はツールにより異なります。
そのため、自社の目的に合った回答が得られるもので、信頼性が高いものを選ぶことが必要です。
結果の分析・施策への反映
人材アセスメントを実施した後は表面的な理解に終わらず、結果をしっかりと分析することが不可欠です。
得た情報を徹底的に分析することによって、新しい課題や強みの発見につながり、企業の施策へも反映される場合があります。
定期的な測定
組織や人は常に変化しています。
そのため、人材アセスメントは1回きりではなく、定期的に実施して目的や測定内容を更新することが重要です。
人材アセスメントの実施を継続することで、課題の再確認に加えて、必要な人材のスキルアップや教育の質が上がります。
定期的に行うことで、柔軟で変化に強い人事マネジメントが実現できるでしょう。
人材アセスメントの導入で生産性を向上
人材アセスメントとは人材の能力や性格、スキルなどを第三者が客観的に評価する手法です。
従来の主観的な評価が排除され、人材の特性や潜在能力を顕在化しやすくなるという特徴があります。
人材アセスメントを導入することにより、採用選考や育成、配置やリーダー職の任命などに、より根拠を持って取り組むことが可能です。
定期的にアセスメントを行い、人材の能力やスキルの向上につなげることで、組織の生産性の向上や成長に貢献しましょう。
ぜひ自社の目的に合った適切なアセスメントツールを導入してみてはいかがでしょうか。