ハッカソンとは、エンジニアやデザイナー、プログラマーなどが集まり、集中的に開発を行うイベントです。
近年では、ハッカソンを開催する企業が増えており、注目が高まっています。
ではなぜ、ハッカソンが注目されているのか、実施する目的やメリットについて詳しく解説します。
採用につなげるコツや事例についてもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
ハッカソンとは?
ハッカソンとは、エンジニアやデザイナー、プログラマーなどが集まり、特定のテーマに対して一定期間集中的に開発を行うイベントのことです。
数時間から数日間、マラソンのように開発に没頭することから「ハック(hack)×マラソン(marathon)」を掛け合わせて「ハッカソン」と呼ばれるようになりました。
近年ではソフトウェア開発に限らず、さまざまなテーマにて開催されています。そのため、営業や広報、商品開発などが参加するハッカソンも増えてきています。
普段と違う環境や仲間と開発を進めるハッカソンは、新たな価値や技術を生み出すオープンイノベーション手法として注目されています。
ハッカソンとアイデアソンの違い
アイデアソンは、「アイデア(idea)×マラソン(marathon)」の造語で、特定のテーマに対してアイデアを生み出すことを目的としたイベントです。もともとハッカソンの準備として行っていました。
ハッカソンとアイデアソンの大きな違いはゴールです。
ハッカソンがアプリやシステムといったプロダクトの成果を競うのに対し、アイデアソンはサービスやビジネスモデルなどのアイデアを競います。
具体性や実現可能性よりも、新たなアイデアや気づきに価値を見出すのがアイデアソンの特徴です。
そのため、アイデアソンにはさまざまな立場の人が参加します。
ハッカソン |
アイデアソン |
|
特徴 |
アプリやシステムなど成果物を作る |
0→1でビジネスモデルや新規事業のアイデアを出す |
参加者 |
開発者/エンジニアが中心 |
さまざまな知見を持つ人々 |
求められるスキル |
開発力・技術力 |
ビジネススキル/合理的な思考力 |
ハッカソンを行う目的
ハッカソンには、開催側と参加側でそれぞれに目的があります。まずは、開催側の目的を4つ紹介します。
新規事業・商品の開発
ハッカソンは、優秀なオープンイノベーションの手法として注目をされています。
ハッカソンの最大の目的は、さまざまな経験やスキルを持った人たちが、集中的に開発することで得られる新たな発想やブレイクスルーです。
企業や業界の垣根を超えた交流によって多角的な視点で意見交換ができれば、イノベーションの創出につながるため、新規事業や新商品の開発に期待されています。
社内外のコミュニティ構築
ハッカソンでは、イベントの参加者とチームを組んでテーマに取り組みます。
ハッカソン後もメンバー同士で交流を続ける傾向にあるため、社内外のコミュニティづくりのきっかけとなります。
開発者同士で情報や意見をシェアすれば、従業員の能力向上を期待できますし、業務委託先の確保などにも役立つでしょう。
社員教育
ハッカソンは、他の参加者との交流を通して技術力の向上、知識・経験を蓄積する機会となります。
普段、エンジニアは部分的な作業を担当することが多いため、システム全体を一貫して作り上げる経験はなかなかできません。
達成感を味わえるだけでなく、全体を俯瞰する経験は将来のキャリアの糧となります。
企業の知名度向上
ハッカソンでは、社外の人を招待するため、自社の名前や商品・サービスの知名度の向上が図れます。
どんなテーマでハッカソンを開催するのかをPRすることで、自社の存在を世の中に広められます。
認知度の向上によって、優秀なエンジニアの人材獲得や社員の帰属意識向上を図ることも可能です。
ハッカソンの種類は3つ
一般ハッカソン
企業や団体などが外部に向けて行うハッカソンです。
テーマの幅が広く、外部に向けて広く募集を行うため、大規模なハッカソンになりやすい傾向があります。
たとえば、ヤフー株式会社が行っている「Hack Day」は、数百名のエンジニアやデザイナーが参加する日本最大級のイベントです。
ヤフー社内においては、クリエイターコミュニティーやスキルアップの仕組みとして機能しています。
また、一般ハッカソンは複数の企業が協賛して開催するケースもあります。
社内ハッカソン
社内ハッカソンは、参加者を自社従業員のみに限定したハッカソンです。
新規事業創出や社内エンジニアの技術力向上を目的としても行われます。
GoogleやIBM、Yahoo!、日立など多くの企業が実施しており、Facebookの「いいね!」やタイムライン機能は、社内ハッカソンがきっかけで誕生しました。
ハッカソンを通じて、社員同士の交流を深められることから、チーム力向上や信頼関係の構築にも役立ちます。
産学連携ハッカソン
産学連携のハッカソンは、大学を中心とした民間企業と教育機関が連携して開催するハッカソンです。
2013年に、東京工科大学と日本ベンチャーキャピタル株式会社が開催した「大学ハッカソン」がはじまりとされています。
新技術の研究開発や新事業の開発を目的として行われるほか、学生の育成や社会問題解決への寄与にも役立ちます。
また、学生との議論を通じて、自社の若手・中堅社員をDX推進役となるイノベーターに変える機会としても活用されています。
ハッカソンを開催するメリット
社員の技術力や知識が向上する
人口知能(AI)IoT、フィンテックといった最新の技術をテーマとしたハッカソンもあります。最新のプログラミング言語やフレームワークを使用するため、参加者は最新技術に触れられます。
また、ハッカソンはAIやIoTの専門家や優秀なエンジニアと交流できる貴重な機会です。
優秀な人材からのアドバイスをもとに開発することも可能なため、技術力と知識の向上につながります。
組織力や帰属意識が向上する
ハッカソンのもうひとつのメリットとして、組織力の向上や社員の帰属意識向上があげられます。
ハッカソンは、不特定多数の人とチームを組んで取り組むものです。
社内ハッカソンを行うと、普段交流のない人ともコミュニケーションをとることになるため、社内コミュニケーションが活性化します。
社内コミュニケーションの活性化によって横のつながりができれば、部署をまたぐ連携もスムーズになり、組織力向上に役立つでしょう。
また、社内ハッカソンでは当事者意識を持ちやすいため、会社への帰属意識が高まります。
オープンイノベーションにつながる
ハッカソンには、社内外を問わずさまざまな人が参加します。
これまでにない意見や考え方を知ることができるうえ、新たな技術にも触れられるため、オープンイノベーションにつながります。
ハッカソンの注意点
ただのイベントで終わることもある
ハッカソンでは、短期間でアイデア出しから開発まで行います。
期間が短いため、実用化できる製品やサービスが生み出されないことも多く、ただのイベントとして終わることもあります。
また、単発のイベントとして開催されることも多いため、その場かぎりとなってしまうことも多いです。人によってはその後の参加へのモチベーションが下がる場合もあります。
こうした事態を防ぐには、ハッカソン開催後のフォローアップや、成果を共有できるツールを活用することが大事です。
参加者が限られるとイノベーションが生まれにくい
開発を行うハッカソンでは、デザイナーや技術職が対象となります。
そのため、敷居が高いと感じて参加を敬遠されることがあります。
また、地域によってはエンジニアの数が少なく、十分な人数が集まらない、毎回同じメンバーばかりになるといったこともあるでしょう。
このように、参加者が限られるとイノベーションが生まれにくくなるため、注意が必要です。
ハッカソンを開催する手順
1.テーマ決め
まずはハッカソンの種類(社内・社外・産学連携)と目的(認知度アップ、商品開発、人材採用など)を定めます。
そのうえで、
- 規模(参加者数)
- テーマ
- 開発形式(使用言語、使用するツールなど)
- 開発日時
- 会場
を決定して、ハッカソン開催の公表と参加者の募集を行います。
2.参加者を募集
参加者のレベルに応じた方法で募集します。
たとえば、
- 知識やスキルレベルの高いエンジニア…インターネットやビジネスSNS
- IT知識がない人も対象…インターネットやSNS、掲示板、チラシ
などです。参加条件を設定すれば、ターゲットも絞れます。
3.事前準備
ハッカソンを実施するための会場の準備を行います。
必要な机の数や椅子の数、Wi-Fiの通信状況などを確認したうえで、準備しましょう。
また、ハッカソンの運営に必要な役割(進行役、参加者の受付、案内役、タイムキーパー、広報など)を割り振ります。
会場選びが重要
ハッカソンにおいて、会場選びは非常に重要です。
狭い会場の場合、座席がなかったり、開発スペースが確保できなかったりとトラブルの原因になります。
会場を選ぶ際は、コンセントとインターネットを確保しましょう。
各席に電源がある会場を用意できない場合は、延長コードなどを活用して人数分の電源を確保してください。
ただし、延長コードで電源を確保する際は、配線に注意が必要です。
床に大量のコードがあると、ケガや事故の原因になります。カバーをかぶせるなどの工夫をして、未然に事故を防ぎましょう。
4.テーマの説明
ここからはハッカソンを開催する際の運営手順について解説します。
まずは、参加者に開催するハッカソンのテーマと目的を説明します。
募集時にもおおよその目的とテーマは発表されますが、あらためてテーマと目的を設定した背景や主旨について説明します。成果発表の形式も伝えるようにしましょう。
5.チーム分け
説明を終えたら、参加者のチーム分けを行います。
スキルや経験をもとに1チーム5~6人程度になるようにチームを分けるのがよいでしょう。
スキルや経験を知るために、アンケートなどで事前に把握しておくこともおすすめです。
ただし、参加者が遅刻や欠席する可能性もあるので、ある程度の偏りは許容範囲と割り切りましょう。
また、大規模なハッカソンの場合、チーム分けで席の移動が発生すると、大幅な時間ロスにつながるので、受付の段階でチーム分けを済ませるとスムーズです。
6.グループワーク
チーム分けができたら、どんなプロダクトを開発するのか、アイデア出し(アイデアソン)を行います。
アイデア出しの段階は、ブレインストーミングなどと同様に他社の考えを批判・否定するのは禁物です。参加者には事前に注意事項も伝えましょう。
アイデア出しを終えたら、どんなアプリやシステムにするのか絞り込んで作業を進めて行きます。
進行役は、ハッカソンが盛り上がるように各チームの様子を実況したり、アイスブレイク中に参加者にインタビューをしたりしましょう。
7.発表・評価
制限時間を迎えたら、進行役は成果発表のプレゼンテーションを促してください。
各チームのプレゼンテーション後に、プロダクトの審査開始です。
審査は必須ではありませんが、順位づけを行うと盛り上がります。審査方法としては、ゲスト審査員による採点や参加者の投票などがあります。
また、一般的に開発されたプロダクトは、「パブリックドメインとして、他の参加者も含めた第三者が無償で自由に利用できる」と考えられています。
しかし、後々トラブルになることもあるため、参加申し込みの段階で使用許諾の同意を取るようにしましょう。
8.フォローアップ
ハッカソンの開催後は、参加者に対するフォローアップを行います。
主催者はアンケートの実施やプロダクトに対するフィードバックを実施します。
また、社外ハッカソンの場合、当日の様子を自社ブログやSNSで公開しましょう。自社の魅力をアピールできるため、人材確保の効果を期待できます。
もし、参加者が開発したプロダクトを開催者が運用する場合、その参加者チームと連絡をとり、運用方法について話し合いましょう。参加者に不信感を与えないようにすることが重要です。
ハッカソンから採用につなげるコツ
ハッカソンは採用活動にも活用できます。
では、どのように採用につなげるのか、コツを見ていきましょう。
企業理解を促すテーマを選ぶ
ハッカソンを採用活動につなげるコツは、自社について知ってもらえるテーマを設定することです。
サービスや商品、業界について、深い理解を得られるテーマにするのがよいでしょう。
また、自社の取り組みを理解してもらうために、社員との交流の場を設けることも重要です。
アイデアを出しやすい環境作り
主催者は、参加者がアイデアを出しやすいように、居心地のよい環境を提供しましょう。
参加者がアイデアの否定や批判をして討論をすると、ネガティブな雰囲気になるので、注意が必要です。
環境が整うことで、知識やスキルを十分に発揮できますし、参加者のモチベーションも向上し、よい開発を行えます。
一般採用との差別化で特別感を演出
ハッカソンから人材を採用する場合、一般的な新卒採用とは明確な差別化を図ることも必要です。
ハッカソンに参加する人は即戦力となる人材なので、リモート勤務や給与など待遇を整える必要があります。
あわせて、実務で利用するツールなど、開発環境も時代に適したものを準備しましょう。
定期的なアプローチ
ハッカソンで優秀な人材を見つけたら、自社に興味を持ってもらえるよう積極的にフォローアップしましょう。
定期的にアプローチすることで、自社を知ってもらう機会をつくれます。ハッカソンの熱を冷めにくくするためにも、担当者は積極的に関わりを持ち、入社意欲が芽生えるように働きかけましょう。
積極的に既存社員を参加させる
講師や評価者として、自社の社員を参加させるのも有効です。
参加者はその企業の社員と直接交流できるため、具体的な業務内容をイメージしやすくなりますし、社内の雰囲気も伝わります。
社員の対応次第では、自社のファンを獲得できるでしょう。
また、社員自身も会社に貢献していると感じられるため、採用活動に対して協力的になりやすいです。
ハッカソンの事例
LINE株式会社
LINE株式会社では、自社の文化や実務の進め方を体験してもらうために、4職種(技術・デザイン・企画・セールス)7コースのインターンシップ制度を設けています(2022年時点)。
技術職のハッカソンコースは、13日間にわたりオンラインでチーム開発に取り組みます。
そのため、同社の雰囲気やノウハウ、チーム開発のおもしろさや難しさを体感できるのが特徴です。
他にも、6週間にわたって実際の業務を行う「技術就業型コース」、2日間で企画立案から提案までを行う「企画職のアイデアソン」など、さまざまコースが用意されています。実務を通して進めていくため、サービス開発やビジネス構築の現場を肌で感じられるでしょう。
株式会社博報堂キースリー
株式会社博報堂キースリーは、2023年8月5日(土)〜27日(日)に日本最大級の学生向けハッカソン「HR3 HACKATHON」を開催しました。
ブロックチェーンのテクノロジーを利用した、学生のためのWeb3プロダクトです。
分散型アプリを構想、設計、構築しつつ、経験豊富なweb3のプロフェッショナルからの指導を受けられます。上位チームには総額100万円の資金提供や、投資家・専門家との交流会といった賞品が贈られます。
ヤフー株式会社
Yahoo! JAPANでは、2013年から毎年「デジタルの日(毎年10月の第1日曜日・月曜日)」に「Digital Hack Day」を開催しています。
数百名のエンジニアやデザイナーがチームを組み、最新テクノロジーを活用して24時間で開発にあたります。2022年の最優秀賞は300万円と高額な賞金が用意されました。
まとめ
ハッカソンは、特定のテーマに対して一定期間集中的に開発を行うイベントです。
社内外を問わずさまざまな人材と交流できるため、従業員の能力向上や新製品の開発といった効果を期待できます。
また、社外へのアピールにもなるため、採用活動にも役立つでしょう。ボーダーレス化やテクノロジーが進む今後、企業が成長していくにはオープンイノベーションが欠かせません。
今後のためにも、ハッカソンを活用してみてはいかがでしょうか。