スマートフォンやパソコンなど、現代は誰もが簡単にインターネット上で情報発信できるようになっています。
今やインターネットは日常生活から切り離せない存在でしょう。
その中で注目を集めているのが、デジタル技術を適切に理解、活用できる能力である「デジタルリテラシー」です。
今回はデジタルリテラシーの定義、デジタルリテラシーを高めるメリットとデメリット、高めるための方法を具体的に解説しています。
デジタルリテラシーとは何か
「デジタルリテラシー(Digital Literacy)」は、デジタル技術を理解し、使いこなすスキルを指します。
そもそも「リテラシー(Literacy)」は「読み書きの能力」を意味し、それが転じて「ある分野について理解、活用できる能力」と解釈されるようになりました。
現在の日本では、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいます。
デジタル技術を積極的に取り入れ、生活や質の向上を目指すDX化により、今後ますますデジタル技術との関係性は深まっていくと言えます。
そこで重要なのがデジタルリテラシーです。一人ひとりがデジタル技術を理解して安全に使いこなせるようになることが、これからの企業にとっては欠かせません。
デジタルリテラシーとITリテラシーの違い
デジタルリテラシーとよく似た言葉に「ITリテラシー」があります。
混同しやすい言葉ですが両者には異なる点があるので使い方に注意しましょう。
「IT(Information Technology:情報技術)リテラシー」とは、ITに関する知識や技術を適切に活かせる能力を指します。
例えば、
- インターネット上で必要な情報を集める
- オンラインでのやり取りがスムーズにできる
- パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどのデバイスを適切に扱える
- 基本的なセキュリティ面の対応ができる
などの能力です。
一方、デジタルリテラシーはデジタル技術をより広範囲で活用する能力を指します。
具体的には、
- 企業の変革のためにデジタル技術を取り入れる
- デジタル技術を使って組織の成長を促す
などです。
デジタルリテラシーは、単にITツールやデバイスを扱える能力ではなく、デジタル技術に関心を持ち積極的に活用できる能力を意味します。
そういった意味では、デジタルリテラシーにITリテラシーが含まれていると考えられるでしょう。
デジタルリテラシーがなぜ求められているのか
デジタルリテラシーが注目を集める背景には、次の3つの変化があります。
- デジタルデバイスが不可欠な社会になったため
- 効率化が求められているため
- 働き方を改革
デジタルリテラシーがなぜ今必要なのか、それぞれ解説します。
デジタルデバイスが不可欠な社会になったため
今や、パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどの各種デバイスを使わずに仕事をするのは難しいでしょう。多くの人が仕事で日常的にパソコンなどのデジタルデバイスを使っているため、ビジネスを進める上でも欠かせない存在です。
仕事を円滑に進めるためには、デジタルデバイスの使い方を理解している必要があります。
操作方法はもちろん、利用時のリスクを考慮して安全に使えるように、企業は従業員一人ひとりのデジタルリテラシー向上に取り組まなければなりません。
効率化が求められているため
日本は超少子高齢化社会といわれるほど高齢化が進んでいます。
労働人口は今後も減少すると予想され、人材不足に悩む企業は多いです。
そのため、少ない人数で企業が事業を継続、拡大するには、業務の効率化が必要不可欠です。
DX化は業務効率化に役立つため、デジタル技術の導入を進める企業が増えてきました。システムやITツールにより業務の自動化や情報の電子化が進み、スピーディに業務が進むようになっています。
そこで、新しく導入するシステムなどを適切に扱えるように、デジタルリテラシーが求められているのです。
働き方を改革
個人がそれぞれの事情に合わせて働き方を選択できる社会を目指す「働き方改革」をご存じでしょうか。働き方改革は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で広まり、多くの企業がテレワークの導入に踏み切りました。
自宅やコワーキングスペースなどを仕事場にできるテレワークでは、オフィスから離れた場所で仕事ができるようセキュリティや情報管理体制を整える必要があるでしょう。
また、長時間労働にならないよう効率化を図る仕組みづくりも必要です。
このように、働き方改革の実現にはDX化が欠かせません。高いデジタルリテラシーを身につけて、積極的に働き方改革に取り組みましょう。
デジタルリテラシーを得ることによるメリット
デジタルリテラシーはこれからの企業にとってますます重要になる能力です。
デジタルリテラシーを得ると、以下の4つのメリットが得られるでしょう。
- セキュリティが強化される
- トラブルの防止
- 生産性の向上
- DX推進の促進
それぞれ解説します。
セキュリティが強化される
デジタルリテラシーの向上は、従業員のセキュリティに対する意識向上に役立つでしょう。
業務で取り扱う情報の重要性を理解できるようになるため、会社の機密情報や個人情報を注意して取り扱うようになります。
その結果、企業全体のセキュリティに対する意識が高まり、セキュリティの強化につながるのです。
トラブルの防止
企業は情報漏洩などによるトラブルを未然に防がなければなりません。個人情報や機密情報を扱う従業員に対して情報の扱い方を正しく伝えていないと、大きなトラブルが起きるリスクも高いと言えます。
重要な情報を扱う従業員のデジタルリテラシー向上に努め、トラブル防止に役立てましょう。
生産性の向上
デジタルリテラシー向上は、生産性の向上につながります。
デジタル技術を適切に扱える人材が増えることで、スムーズに業務が進み、業務効率化が実現するでしょう。
従業員のデジタルリテラシーを高めると、ツールやシステムを扱えるだけでなく、それぞれの性能を利用して新しい仕組みを提案する従業員が現れるかもしれません。
多くの人が積極的にデジタル技術に関わるようになると、業務効率が増して生産性が高まることも期待できます。
DX推進の促進
「DX化をしたくてもなかなか進まない」と悩む企業は多くあります。
DX化は経営陣や管理部が進めようとしても、現場レベルでは反対されるケースがあるためです。
デジタルリテラシーを高めると現場の従業員の意識が変わり、DX化は業務効率化などに役立つと理解しやすくなります。
積極的に関わろうとする人材が増えるため、DX推進がしやすい環境が整うでしょう。
デジタルリテラシー欠如によるデメリット
デジタルリテラシーが低いと何が起こるのでしょうか。
デジタルリテラシー欠如によるデメリットは、以下の2つです。
- 企業としての競争力低下
- チームメンバーの労働生産性低下
企業は自社の従業員のデジタルリテラシーが低下していないか常に注意し、必要に応じて適切な対応を心がけましょう。
企業としての競争力低下
デジタルリテラシーの欠如は、企業の競争力低下を招きます。
誰もがスマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスを使っている今、企業のマーケティングでデジタル技術を活用しない手はありません。
デジタル技術を使わないことで、顧客に対して自社商品やサービスをアピールする機会が少なくなるため、認知度が上がりにくくファンを獲得しにくくなります。
マーケティングでは過去のデータを分析してより良いマーケティングを実践する方法が一般的です。データの取得にも、デジタル技術は欠かせません。
デジタルリテラシーが欠如しているとデータ分析ができないため、市場の動向や顧客のニーズを把握しにくくなります。
その結果、企業の競争力が低下し、成果が出しにくい状況になるのです。
チームメンバーの労働生産性低下
デジタルリテラシーが欠如していると、生産性が低下していくことが懸念されます。
デジタルリテラシーが欠如しているということは、デジタル技術を効果的に使えないということです。そのため、電話や対面でやり取りする、情報を紙媒体で管理するなど、アナログな手段が取られることになるでしょう。
そうすると、
- 必要な情報を見つけにくい
- 印刷や保管の手間がかかる
- アポイントメント取得まで時間がかかる
- 移動時間が必要になる
- 人的ミスが起きやすくなる
といったリスクが高まります。
面倒な作業は人の集中力やモチベーションを低下させるため、一人ひとりの生産性は低下していくでしょう。結果的に組織全体の生産性も低下します。
デジタルリテラシーを高める方法
デジタルリテラシーを高めるには、何が効果的なのでしょうか。
具体的には、
- デジタルリテラシーを高める目的を明確にする
- 現状を把握する
- 社内環境を整える
- 継続的なデジタルリテラシー教育
- 習得したスキルの実践
- 継続的に知識をアップデートする
- 上司や同僚とコミュニケーションを取る
の7つの方法があります。
取り組める範囲のところから始め、企業のデジタルリテラシーを高めていきましょう。
デジタルリテラシーを高める目的を明確にする
デジタルリテラシーの効果を高めるためには、明確な目的意識を持つことが重要です。
「なぜ取り組むのか」「何を目指して取り組むのか」が明確でないと、方向性がブレたり、担当者ごとの認識がズレたりします。
目的は、企業のビジョンや事業戦略に基づいたものにしましょう。部署や個人の業務目標ともリンクした、現場目線でもわかりやすい具体的な目標にすることが大切です。
目的の明確化は、企業全体の方向性を定めるとともに、デジタルリテラシーの重要性を社内に伝える効果があります。
現状を把握する
デジタルリテラシーを高めるためのアクションを決めるには、現時点での従業員のデジタルリテラシーが、どの程度あるのかを知らなければなりません。
なぜなら、デジタルリテラシーレベルによって必要な教育が異なるからです。
従業員一人ひとりのデジタルリテラシーレベルを知り、それぞれに合わせた教育を実施すると効率的にデジタルリテラシーを高められます。
業務内容に合わせた教育を行うことも重要です。どの部署でどのようなデジタルツールが使われているかによっても、必要な知識やスキルが変わるでしょう。
だからこそ、部署単位、個人単位での現状を把握することが大切なのです。
社内環境を整える
社内環境を整えることは、デジタルリテラシー向上につながります。デジタルリテラシーを高めるためには、従業員がデジタル技術に関する知識を得て、さらに「知りたい」「活用したい」と思える環境や雰囲気づくりが必要です。
例えば、以下の施策が効果を発揮します。
- 人事評価にデジタルリテラシーに関する項目を含める
- 資格取得支援を行う
- ナレッジシェアリングの仕組みをつくる
- 知識共有しやすい社内風土の醸成
給与や待遇といった従業員の関心が高い人事評価に、デジタルリテラシーを組み込むと、スキルアップや知識習得に積極的になる可能性があります。スキルアップしやすいように会社が資格取得支援を行うと、さらに取り組みやすくなるので効果的です。
そして、従業員が得た知識やスキルは、ぜひ社内にシェアしてもらいましょう。業務に必要なスキルやノウハウを共有することで、組織全体のデジタルリテラシー向上が期待できます。
また、積極的に「情報共有しよう」と思えるような社内の雰囲気も大切です。仕組みをつくって終わりにせず、ランチミーティングや勉強会といった、従業員間の関係性を深める工夫をおすすめします。
継続的なデジタルリテラシー教育
デジタルリテラシーを高めるには、従業員のレベルに合わせた適切な教育を実施することが重要です。さらに大切なのは、教育を継続することだと言えるでしょう。
デジタル技術は日々発展しているため、時代の変化に適応する上で継続的なデジタルリテラシー教育が重要です。
また、一度きりで終わらず定期的に教育の機会を設けることで、従業員のデジタルリテラシーに対する関心を高く保つことができます。
デジタルリテラシー教育には、e-ラーニングや研修会の開催がおすすめです。誰もが自分のペースで無理なく学習を継続できるため、学ぶことへの抵抗感を少なくできるでしょう。
習得したスキルの実践
従業員が習得したスキルは、業務で実践してもらいましょう。
習得したスキルの実践は、デジタルスキルの有用性を確認できる良い機会です。
デジタルスキルが役立つとわかれば、学習する意義の再確認もでき、モチベーションアップが期待できます。
デジタルリテラシーを高めるためには、まずデジタル技術に対する苦手意識をなくすことが重要です。最初は反対意見が多くても「実際に導入したシステムを使ってみたら仕事が捗った」というケースは多くあります。
実体験は従業員の意識改革に役立つため、積極的にデジタルツールやデバイスに触れる機会をつくりましょう。実践を繰り返すうちに、従業員一人ひとりがデジタルリテラシーの重要性に気づき、積極的にデジタル技術を活用するようになります。
継続的に知識をアップデートする
デジタル技術は日々進化しています。時代の変化に柔軟に対応するには、継続的に知識をアップデートすることが求められます。
一度きりの学習では、いつの間にか古い知識になっているかもしれません。学びが一時的なものとならないように、定期的に最新情報をチェックしましょう。
企業としては、
- 定期的な研修会の実施
- 最新ツールの導入
- 企業が得た最新情報を社内へ共有
などの対応ができます。
上司や同僚とコミュニケーションを取る
意外と見落としがちながらも効果的な方法が、上司や同僚とのコミュニケーションです。
企業がデジタルリテラシーに関する教材を渡し、研修を実施しても、興味が持てず勉強に身が入らない従業員もいるかもしれません。
このような場合、上司が学習の進捗を確認し、フィードバックをする必要があるでしょう。
上司に見守られている緊張感や安心感が、従業員のモチベーションを高めてくれます。
同僚と一緒に学ぶ環境にすると、競争意欲が生まれて積極的に学習する可能性もあるでしょう。
まとめ
DX化が進む昨今、デジタル技術を活用する能力である「デジタルリテラシー」が注目を集めています。
企業は従業員一人ひとりが適切に情報を扱えるように、それぞれに適した教育を実施しなければなりません。
デジタルリテラシーの向上は、セキュリティ強化や生産性アップにつながります。
一方、デジタルリテラシーが欠如すると生産性が低下し、競争力が失われてしまうので注意が必要です。
現状把握や社内活性化、学びの機会の提供などの方法で、社内のデジタルリテラシーの向上に取り組みましょう。