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社員の行動を変えるためのアプローチ方法に悩む経営層や管理層の方は多いのではないでしょうか。

 

行動変容を促すには、5段階のステージに沿って進む「行動変容ステージモデル」の理解と活用が効果的です。

 

本記事では各ステージの特性について解説し、ビジネスシーンでの取り組み方や行動変容を促進させるコツについても紹介します。

ビジネスシーンにおける行動変動とは?

行動変容とは一般的に「人の行動が変わること」を指しますが、ビジネスにおいては「業務で課題となっている行動を、より望ましい行動に変えること」を意味します。

 

社員が業務の課題に向けて行動を変えるよう促すことは、社内の業績向上につながるのです。

そのため、行動変容はビジネスにおいて非常に重要な要素といえるでしょう。

 

課題を克服し、社員の成長を促したいのであれば、行動変容を積極的に取り入れることをおすすめします。

 

5つの行動変容ステージモデル

行動変容ステージモデルでは、行動が変化するまでのプロセスを以下の5つの段階で示しています。

 

・無関心期(前熟考期):自身の課題が明確でなく、新しい行動に取り組もうとしない状態

 

・関心期(熟考期):課題をおぼろげながら理解し、どのような課題に取り組むべきかを考える

 

・準備期:課題を明確化し、その解決に向けて準備やトライアルを行う

 

・実行期:設定した課題に向けて新しい行動に取り組む

 

・維持期:新しい行動を習慣化させ、定着を意識する

 

それぞれのステップの特徴を、詳しく見ていきましょう。

 

第1ステージ【無関心期(前熟考期)】

無関心期(前熟考期)は行動変容の最初の段階で、対象となる行動変容にまったく興味がない状態です。

物事について学び、学びから行動を起こす準備が整っておらず、行動を強制しても意味がありません。

 

社員がこのステージにいる場合、変化のメリットを伝えたり、課題点に気づかせたりしましょう。

 

なぜ行動を変える必要があるのかを理解してもらうことが、次のステップに進むための第一歩となります。

 

第2ステージ【関心期(熟考期)】

関心期(熟考期)は無関心期(前熟考期)の次のステージで、徐々に関心を持ち始めた段階です。

行動変容に関心はあるものの、まだ実行する意思は固まっておらず具体的な行動計画もありません。

 

行動変化の必要性は認識していますが、懸念や不安があり実際の行動には至っていない状態です。

 

この段階では具体的なアクションプランを提案し、変化に対する不安や疑問を解消するサポートが求められます。

 

第3ステージ【準備期】

準備期は、変化に向けた準備を始める段階です。

関心を持った後、具体的な行動を起こそうと考えている状態で「なぜ行動を起こすのか」「現状維持ではダメな理由」が明確になっています。

 

目標や課題に挑むべく計画を立てるなどしてトライアルを試みますが、変化に対する動機が不十分です。

そのため、変化に対する不安が強まると、前のステージに戻ってしまう可能性もあるため注意しましょう。

 

第4ステージ【実行期】

実行期は、目標達成に向けて具体的な行動を起こし始めた状態です。

準備期との違いは単に目標を意識するだけでなく、実際に行動を伴っている点が挙げられます。

 

この期間はスキルアップや知識習得のための勉強など、目標達成に必要な行動を実践しているのが特徴です。

ただし、まだ自信が持てないため行動を継続できるかどうかは不確かでしょう。

 

実行期に目標達成に向けた行動を続けられなかった場合、無関心期や関心期、準備期に戻る可能性があります。

 

第5ステージ【維持期】

維持期は行動を変えて6か月以上経った時点で、新しい行動が習慣化した状態です。

社員は行動変容の効果を実感しており、継続できたことで自信を持って行動を続けられます。

 

この行動変容の最後のステージでは、習慣の定着が重要です。

外部ストレスへの対処や新たな目標設定などにより、行動変容を完全に定着させるための工夫と動機づけを意識しましょう。

 

行動変容ステージモデルに合わせた取り組み

前述したように、行動変容ステージモデルには「無関心期(前熟考期)」「関心期(熟考期)」「準備期」「実行期」「維持期」の5つのステージがあります。

 

行動変容ステージモデルに合わせた取り組みでは、各ステージの特性に応じたアプローチを取り入れることが重要です。

さらに、社員がスムーズに変化を実現できるようなサポートも必要になります。

 

ここからは、それぞれのステージごとの取り組みを見ていきましょう。

 

無関心期(前熟考期)の取り組み

無関心期(前熟考期)は、行動変容に対する意欲がない状態を指します。

この期間では、まず本人に現在の状況の深刻さを認識させるアプローチが必要です。

現状を放置するとどのような問題を引き起こすか、周囲に悪影響を及ぼす可能性があることを伝えましょう。

 

それでも反応がない場合は、行動することで得られる具体的なメリットを伝えます。

例えば、仕事の成果向上や給与の増加などのポジティブなイメージを提示するなどが挙げられます。

 

本人に自信が持てない場合は、環境を変える提案をしましょう。

新たな視点からのアプローチを試みることも有効です。

 

関心期(熟考期)の取り組み

関心期(熟考期)は、行動変容に対する関心が徐々に高まる時期です。

この段階では、具体的な行動変化の提案が効果があります。

例えば、毎日1時間の勉強や、30分早く出社してスキルアップに努めるなど、実行可能な行動を提示しましょう。

 

行動によって得られるメリットと、行動しないことによるデメリットを明確に伝えると、関心をさらに引き出せる可能性が高まります。

 

ただし、行動の強制や押し付けは逆効果になるため、本人の自主性を尊重し、無理のない提案を心がけましょう。

 

準備期の取り組み

準備期は、行動の実行を考え始める時期です。

この段階では、社員に自信を持たせるためのアプローチを行いましょう。

例えば、社員の考え方や行動、言動を褒め、現状の努力が変化や成長につながることを伝えるなどです。

 

現在の取り組みを認め、ポジティブなフィードバックを通じて自信をつけてもらいます。

関心期と同様に行動や考え方を強制するのは避け、あくまで褒めることや認めることだけにしましょう。

 

実行期の取り組み

実行期は、行動が実際に変化し始める時期です。

この段階では、継続的に自信を持たせるためのアプローチを行いましょう。

準備期とは異なり、実行期では具体的な成果を評価し、称賛することが効果的です。

例えば「スキルアップのための学習を継続しているのは立派」や「早く出社して準備に余念がないのは素晴らしい」などといった、具体的なフィードバックが有効でしょう。

 

また、実行期には経営層や上司だけでなく、同僚など周囲の人々も積極的にポジティブな環境作りに参加することをおすすめします。

周りの人々も変化を認めて称賛することで、行動している社員はさらに自信を持てるでしょう。

 

維持期の取り組み

維持期では、現在の取り組みを否定せずに自信を持続させるアプローチを行いましょう。

否定的な意見がある場合でも、まずは成果や努力を褒め続けてください。

 

維持期に自信を損なうと、無関心期や関心期に逆戻りするリスクがあります。

逆戻りした場合は、再度ステージモデルに適したアプローチが必要です。

 

行動が確実に定着するまで褒めることや否定しない姿勢を貫き、自信を持続させる環境を整えましょう。

 

社員の行動変容を促進させるコツ

社員の行動変容を、うまく促すためのコツは以下の5点です。

 

・積極性を評価する

・失敗もポジティブに捉えられる環境を作る

・社員同士の関係を整える

・実行期に適切なサポートをする

・コンスタントにフィードバックを行う

 

上記を実践することで、社員が自発的に行動変容できる環境につながります。反対に、環境が整っていなければ行動変容を促すのは難しいでしょう。

 

積極性を評価する

社員の行動変容を促進するには、積極的に行動できる環境を整えましょう。

経営層や上司は、指示を押し付けたり強制してはいけません。

社員に自主的な考えや行動を促すことで、社員は自分で問題を解決する能力を養えるのです。

 

なぜその行動が必要か、どのように成果を上げられるかを自ら考えさせれば、自分で考えた行動に対して結果が出たとき社員は自信が持てるでしょう。

 

経営層や上司は社員が間違った方向に進んでいない限り、見守りサポートする姿勢を保つようにしてください。

 

失敗もポジティブに捉えられる環境を作る

社員の行動変容を促進するには仕事での失敗をとがめず、前向きに捉える環境を整えましょう。

失敗を前向きに評価することで、社員は自信を持って再挑戦できるようになります。

例えば、失敗した際にはその中から良い点を見つけ、次回に向けた建設的なアドバイスを行うなどです。

 

反対に、失敗を批判する姿勢は社員の自信を損ない、受け身な行動を引き起こしかねません。

このような場合、社員は上司からの指示を待つだけの受動的な態度に変わり、行動変容が進まず、目標達成や成果の向上につながりにくくなってしまうでしょう。

 

失敗をポジティブに捉え、社員が自信を持ち続けられる環境を作ることを心がけることが重要です。

 

社員同士の関係を整える

社員同士の良好な関係は、行動変容の成功に大きく影響します。

チーム内での協力やコミュニケーションの強化が、変化を支える重要な要素となるためです。

 

例えば、同僚や上司と信頼関係を築けているとします。

その場合、社員が困難な状況に直面した際に周囲のサポートを得られ、前向きな姿勢を保ちやすくなるはずです。

 

こうしたサポート体制が整っていると、社員は自信を持って行動できるため、変容プロセスがより効果的に進みます。

 

実行期に適切なサポートをする

実行期には、社員が計画にもとづいて行動を起こし始めます。

この段階で適切にサポートすると、行動変化が定着しやすくなるでしょう。

 

進捗を定期的にチェックし、必要なリソースや助言を提供して社員の行動が計画通り進むよう支援します。

問題が発生した際には迅速に対応し、解決策を一緒に考えましょう。

 

コンスタントにフィードバックを行う

定期的に適切なフィードバックを行うと、社員の行動変容を促進できる可能性が高まります。

なるべく短い期間で頻繁に振り返りの機会を設けると、社員が実際に行った行動を思い出しやすくなるため、改善につなげられるでしょう。

 

成功や失敗の要因を分析させる際には、具体的な状況を考えさせ必要に応じてヒントを提供することが効果的です。

その後、新しい行動を習慣化するための対処法を考えさせましょう。

 

行動変容には時間がかかるため、社員が納得して取り組めるよう見守る姿勢を持つ必要があります。

 

上長や教育担当が気を付けたい6つのポイント

上長や教育担当者は、社員の行動変容をサポートする際に重要な役割を担います。

効果的にサポートするには、以下の6点を意識しましょう。

 

・期待する行動の明確化

・率先して実践する

・短期間でのフィードバック

・フィードバック内容の事前決定

・社員の意見を否定しない

・前向きな発信を尊重する

 

これらのポイントを押さえたサポートが、社員の成長を促進します。

 

期待する行動を明確化する

社員の行動変容をスムーズに進めるには、上長や教育担当者が期待する行動を明確に伝えることが求められます。

育成対象者には、期待される具体的な行動を理解させる施策を実施しましょう。

 

知識テストを行って定量的に課題を把握させる方法や、上司から会社の期待を伝えること、現状とのギャップを自覚させる方法などが挙げられます。

 

期待を伝える際は漠然と指示するよりも「こういう状況ではこう行動してほしい。なぜなら…」と具体的に説明する方が、現実に即した行動を習得しやすくなるでしょう。

 

また、課題となる行動を言語化し書き出すと、どのような取り組みが必要かを明確に意識しやすくなります。

 

期待する行動が不明瞭だと社員は方向性を見失うことがあるため、具体的かつ実現可能な目標設定を心掛けてください。

 

 

上長や教育担当者は率先して実践する

組織にとって望ましい行動ならば、上司や育成担当者も実践できている必要があります。

上長や教育担当者が率先して行動変容のステップを実践すると、社員の変容を促す強力なメッセージとなるでしょう。

自らが模範を示すことで、社員もその行動を見習う可能性が高まります。

 

上長や教育担当者が実際に変化を遂げる姿を見せれば、社員に対して行動の重要性を伝えられるはずです。

ほかの社員に教える前に、自らが行動できるよう準備しましょう。

 

短期間のスパンでフィードバックを行う

社員の行動変容を促進するためには、フィードバックを短い間隔で行うことが効果的です。

時間が経つと、社員は具体的な状況や自分の行動を忘れてしまう可能性があります。

 

課題や目標に向けた行動が確認できた際には即座にフィードバックを行い、望ましい行動が実践できていた場合にはポジティブな言葉で成果を認めましょう。

 

例えば、目標が「早めの相談」であれば、少し遅れた相談でも「相談してくれてありがとう」と言葉をかけるなどです。

具体的な感謝の言葉を伝えることが、行動の定着につながるでしょう。

 

反対に、望ましい行動が実践されていない場合には、リマインドメールを送ったり、注意喚起をしたりして行動の習慣化を促します。

 

フィードバックの内容はあらかじめ決めておく

フィードバックの内容をあらかじめ決めておくと、一貫性のある公平なサポートが可能になります。

具体的な評価基準や重点事項を明確にしておけば、社員は望ましい行動を明確に理解でき、適切に対応できるでしょう。

 

あらかじめ設定されたフィードバックの内容にもとづき、社員は自分の行動を振り返りやすくなり、学習と改善が効率的に進みます。

 

結果として、目標達成が促進され、行動変容がスムーズに進行するでしょう。

 

社員の意見をむやみに否定しない

意見を否定されると社員は自信を失い、行動変容の意欲が低下する恐れがあります。

考えが受け入れられるという心理的な安全性が確保されていると、行動変容をスムーズに促せるでしょう。

 

また、モチベーションも高まり、改善のための取り組みがより積極的に行われる可能性もあります。

心理的安全性が確保されていれば社員は変化を受け入れやすく、積極的に新しい行動に挑戦する意欲を持てるでしょう。

 

社員の前向きな発信は大切にする

上長や教育担当者が社員の前向きな発信を大切にすると、社員の行動変容の促進につながります。

社内でのポジティブな言動を尊重することで前向きな雰囲気が作られ、社員は目標達成に向けて行動しやすくなるためです。

前向きな環境は失敗を恐れずにチャレンジできる土壌を提供し、自信を持って行動する姿勢を育てます。

 

反対に、ポジティブな発信が不足すると社内の士気が弱まり、挑戦を避ける雰囲気になりかねません。

社員のモチベーションが低下し、行動変容のプロセスが後退する可能性があります。

 

前向きな発信は大切にし、社員の積極的な取り組みをサポートすることが重要です。

 

まとめ

行動変容ステージモデルは、社員に望ましい行動を習得させ、適切なサポートを行うための有効なツールです。

 

「無関心期(前熟考期)」「関心期(熟考期)」「準備期」「実行期」「維持期」の各ステージに応じた取り組みを実施することで、社員の行動変容を効果的に促し、業務の改善や成長につながるでしょう。

 

ビジネスでの成功に向けて、ぜひこのモデルを活用してみてください。

 

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