日本企業では基準に基づき評価を行うことが一般的でしたが、グローバル化を続ける経済に対応すべく、海外の企業に倣い評価システムの見直しが加速しています。
今回は、社員を相対的に評価しない「ノーレイティング」とは何か、どのようなメリットがあるのかを、従来型との比較を通してご紹介していきます。
ノーレイティングとは
これまで日本企業の多くは、年初にその年度の目標設定を行い、中間レビューで進捗状況のすり合わせをし、年度末に実績を踏まえてランク付け(レイティング)し、本人へフィードバックをするのが一般的でした。
ノーレイティングでは、ランク付けでの年次評価制度を廃止することを指します。
とはいっても完全に評価をしないというわけではありません。
2012年ごろからアメリカの企業では、年次評価を廃止する企業が増加しており、ギャップ、アドビシステム、マイクロソフト、GE、アクセンチュアなど有名企業でも数多く導入され、今後も増えていくことが予想されています。
近年では、「ランク付けによる評価制度は従業員のパフォーマンス向上に結び付いていない」という声が挙がっており、日本企業でも経済のグローバル化や高度化・複雑化するビジネス課題へ対応するため評価システムや評価プロセスの見直しが行われています。
従来の評価制度との違い
ノーレイティングでは、従来のランク付け、年度末の評価を廃止しますが、結果に対するフィードバックはもちろん行います。
さらに、これまで以上にフィードバックや対話を増やすことで、人と組織のパフォーマンスを最大化することが今回の評価制度改革の本質です。
このような評価制度の変化の背景には、ビジネスを取り巻くスピードが加速していることが挙げられます。
市場に投入したサービスを顧客の声を聞きながら変更していかなければ、競争に勝てなくなってきているからです。
そのような仕事の進め方になると、個人の評価制度もリアルタイムで実施されなければ現場との整合性が取れなくなります。
ノーレイティングでの評価になれば、現場は活性化し業務改革を起こしやすくなるので、結果としてパフォーマンスが上がるという仕組みです。
従来の評価制度
・年度目標の設定
・中間レビュー
・年次評価
・期末フィードバック
ノーレイティング
・リアルタイムの目標設定
・リアルタイムのフィードバック
・年次評価の廃止
ノーレイティングのメリット
納得感を持って目標設定と評価を実施できる
ノーレイティングでの評価は上司と部下が一対一で綿密にミーティングを行うことを前提としており、決まったタイミングではなく業務の延長線上で評価を繰り返し、フィードバックを行います。
綿密なコミュニケーションは、上司と部下の間に信頼関係を構築することに繋がり、双方が納得できる目標設定や評価を行えるでしょう。
優秀な人材を確保できる
社員一人ひとりの直近のパフォーマンスに注目することで、リアルタイムで評価を行います。
そのため、社員は自分の成長を実感でき、高いモチベーションを維持したまま業務に集中できます。
自分の成長を感じられる環境は、離職率低下に繋がり、外部から人材を確保する魅力にもなります。
パフォーマンスマネジメント改革が行える
社員の生産性を向上させるために注目されている手法が、パフォーマンスマネジメントです。
パフォーマンスマネジメントは目標設定と評価制度を明確にし、上司・部下がお互いのコミュニケーションをもとに、組織・個人の能力を最大限に発揮することができます。
導入・運用の注意点
管理職の負担が増える
ノーレイティグは定期的に上司と部下でミーティングを行うことで、リアルタイムで評価を行う制度です。
そのため、評価する立場の管理職はメンバー全員に、定期的に面談・フィードバックを行う必要があり、負担が増えてしまいます。
さらに、リアルタイムで評価をするには今まで以上のマネジメント能力も求められます。
日本企業の多くはプレイングマネージャーであり、適切なマネジメントを行うには研修やセミナーを実施し、マネジメントの意識改革が必要となります。
過剰なコミュニケーションによって引き起こされる混乱
ミーティングの度にフィードバックを行うため、部下から「その都度、評価内容が変わる」と認識される恐れがあります。
フィードバックは必ずしも良い結果を出すというわけではなく、「フィードバックによる評価は、従業員にマイナスの効果が生じる」という研究も報告されています。
そのため、管理職は過剰なコミュニケーション、フィードバックをするのではなく、達成率ギリギリのラインでの目標設定にし、適度な回数の面談・フィードバックを心掛けましょう。
まとめ
近年、日本では少子高齢化や労働人口の減少、顧客ニーズの多様化や経済のグローバル化など経営を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、厳しくなっています。
そのため、企業はグルーバル基準での人事評価を求められており、これまでの評価制度を見直す必要があります。
企業が持続的に成長するためには、優秀な人材の確保・人材育成・生産性向上が不可欠であり、そのためにもノーレイティグによる評価制度を取り入れてみてはいかがでしょうか?