ここ数年で、求人を出す際に「給与にみなし残業代は含まれていますか?」と聞かれることが増えたのではないでしょうか。

 

今回は「みなし(固定)残業代」とは何かを正しく理解し、運用する際に気を付けるポイントについて紹介していきます。

 

みなし残業とは

みなし労働時間制とは、基本月給の中にあらかじめ予想される残業代を含んだ給与体系。

 

一定の時間外労働や深夜労働の時間を想定し、毎月固定で支払う割増賃金をみなし残業代と言います。

 

要するに、本来の残業手当は「1時間に対していくら」という基準で支払われるのに対して、みなし残業代は「これくらいの残業が予想されるから○○時間分の給与は固定で支給しよう」ということです。

 

月に30時間分の固定残業代が含まれていたとすると、30時間までの残業は残業代が発生しませんが、30時間を超過した際には残業代が発生します。

 

みなし残業には主に2種類あります。

 

事業外労働

事業所の外で働くこと。

 

営業職や運送系ドライバーなどが該当します。

 

裁量労働制

労働の時間配分が労働者の裁量によって任されていること。

 

エンジニア、デザイナーなどの専門職に多く見られる働き方です。

 

 

上記の二つの特徴は異なりますが、大きな共通点は「実際の労働時間を把握することが難しい」ということです。

 

「勤務中に休憩した結果、残業が増えている」

「休憩時間をほぼ取らずにテキパキ動いて定時に帰っている」

 

など、残業時間の算出が難しい働き方に対して採用されているのがみなし残業です。

ちなみに、事務職や製造業など時間の管理がしやすい職種ではあまり採用されていません。

 

導入するメリット

ここではみなし残業を導入するメリットを紹介します。

 

人件費の把握がしやすい

仮の残業代を予想して予測を立てるより、賃金がある程度固定された方が人件費の予測の正確性が増しブレが少なくなります。

 

また、従業員にとっても給与の変動が無くなるので見通しが立ちやすいです。

 

作業の効率化への意識が高まる

固定残業代の時間に達していなかったとしても手当額は同じなので、なるべく残業時間を減らそうと動く従業員の方もいるはずです。

 

結果的に業務が効率化し、時間外労働も減り、生産性の向上へと繋がります。

 

不測の残業代への備え

少し特殊な例ですが、残業がほぼ無い企業でも、休憩中に電話対応や突然の来客応対など、休憩を中断せざるを得ない状況が発生することも考えられます。

 

休憩時間中の労働も残業時間として換算し、後に時間外手当を請求してくる方がいる可能性も否めません。

 

不慮の残業代の請求に対応するために少額の固定残業代を導入している企業もあります。

 

結果的に不足な対応への備えとなるだけでなく、「休憩時間の労働も考慮してくれているんだ」という従業員の心象もアップにもつながっています。

 

正しい運用方法

メリットが多いみなし残業時間制ですが、正しく運用しないと違法になってしまいます。

 

固定残業代が違法になる場合

みなし残業代の金額・時間の記載が不明確

「給与にはみなし残業代を含む」などあいまいな表記ではなく、「何時間分何円分のみなし残業代を含むのか」と明確に決めないとみなし残業代として認められない可能性があります。

 

みなし残業代制度を運用する際には、通常とみなし残業代の賃金・時間を明確に区分し、労働契約書などに記載するようにしましょう。

 

会社全体への周知業務を果たしていない

みなし残業代を導入した場合には、個別の雇用契約書や就業規則に内容を明示する必要があります。

 

変更した就業規則を労働監督基準書に提出していても従業員へ周知されていなくては、その就業規則は意味を成しません。

 

社内全体で共有し、従業員にも周知させることが大切です。

 

超過分の残業代を支払わない

「みなし残業代を導入しているから、追加の残業代を払わなくていい」という認識をしている経営者の方もいますが、それは間違いです。

 

みなし残業代を導入していても超過分は払わなくてはなりません。

 

例えば、20時間のみなし残業代が導入されている会社で25時間分の残業が生じた場合は、5時間分は別途で時間外手当を出さないと残業代未払いとして扱われてしまいます。

 

労働時間の管理が疎かになっている

みなし残業代を導入し、残業時間に関係なく手当は同等だからという理由で労働時間の管理を疎かにしてはいけません。

 

超過分は支払わなくてはなりませんし、労働者の安全管理の側面からも労働管理は行うことが重要です。

 

固定残業代を導入した結果、給与が最低賃金を下回った

現在の給与体系にそのままみなし残業を導入してしまうと、給与単価が低下するので最低賃金を下回る可能性が生じます。

 

最低賃金は都道府県によって違うので、事業所が複数箇所にある場合は地域ごとの最低賃金をチェックし、適切な給与を決定する必要があります。

 

最低賃金を下回った場合は、そもそもの給与を上げるか、みなし残業時間を引き下げるなど対策をしてください。

 

求人広告掲載の際に気を付けるポイント

求人広告などを利用するときに、固定残業代の有無を問われることが多いかと思います。

 

それは、大手求人サイトが参画する公益社団法人全国求人情報協会では固定残業代の表記が必須となっているからです。

 

ここで、固定残業代を記載する際に明記しないといけないポイントをまとめます。

 

1.固定残業代の金額

2.その金額に相当する労働時間

3.固定残業代を超える労働を行った場合は追加支給をする旨

 

=============================================

▼例

月給25万円

※固定残業代(2万円/20時間分)含む。超過分は別途支給。

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また、入社後にお互いの認識の差異が無いように採用する際にも、書面と口頭でみなし残業代について確認している企業が大半です。

 

まとめ

「超過分の給与を支給しない」など、残念ながらみなし残業を悪用してしまう企業も中には存在します。

 

適正な運用をしないと、企業が大きな損害を受けるかもしれないので、正しい運用を心掛けることが大切です。

 

みなし残業時間制度は企業と従業員の両方にメリットがあるので、これを機会に正しく理解し、改めてみなし残業に対する理解を深めてみるのはいかがでしょうか。

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