中小企業の資金調達方法で人気が高い助成金や補助金。
大々的な公表や情報発信がされないため、”知っている人が得をする”制度かもしれません。
「気が付いたら申請期間が終わっていた」「この助成金があったら新規事業を立ち上げられたのに…」など、”知らなかった”ということだけで、大きな機会を逃していませんか。
ここでは、中小企業の経営陣なら知っておきたい「補助金・助成金」について、基本的なことから活用例などまでご紹介していきます。
補助金・助成金とは?
補助金・助成金は、民間事業主や政府に対して、その事業が公益上必要があると判断された場合に国・行政や地方公共団体から給付・交付されるお金です。
いわゆる融資とは違って「原則返済不要」なので、起業や新規事業立ち上げの資金として活用できることが最大のメリット。
厚生労働省が行っているものから各市区町村が独自に実施しているものまで幅広く、それぞれ特定の条件が設けられています。
厚生労働省による助成金は主に雇用や職場環境改善に関するものが多く、豊富な種類があります。
また、「補助金」助成金」の明確な違いについての定義は特にありません。
それぞれの申請期間ですが、常時申請できるものもあれば期間が決まっているものも多いので事前にきちんと準備しておくのがベスト。
そのためにも普段から情報や知識を得られるようにしておくといいでしょう。
助成金と補助金の違いは大きく3つ
財源
補助金の財源は主に税金、助成金の財源は主に雇用保険料です。
受給の難易度
助成金は、要件等が合えば受給できる可能性が高いです。
一方補助金は、予算などの関係上申請しても受給できない場合があります。
申請期間
助成金は、随時もしくは長期間設けられていることが多いですが、補助金の申請(公募)期間は短く、1ヶ月程度の場合もあります。
補助金・助成金の申請方法
では、応募条件もクリアして申請したい補助金・助成金があった場合、どのように申請すればいいのでしょうか。
一般的に申請から受け取るまでの基本的な流れは以下のようになります。
【1】助成金の申請(Webサイトや書類提出など申請方法はさまざま)
【2】申請した内容の活動を行う(活動内容・かかった経費などを記録)
【3】活動記録を提出
【4】承認(活動記録を各団体が調査し、承認の可否を決めます)
【5】助成金を受け取る
ここで注意しなければならないのは、申請したからと言って「すべての活動が承認されるわけではない」ということと、申請してすぐお金がもらえるのではなく「活動後に給付される」ということ。
特に助成金は財源が雇用保険料ということもあり”実績”が重要視されるため、支給までに半年から1年以上かかるものもあります。
期間補助金・助成金の種類によって承認率も違うので、確実にもらえるものではないということを了承したうえで申請することを決めましょう。
補助金の場合は財源が主に税金のため、事業終了後に会計監査院による審査を受けることがあります。
そのため資料や書類などは最低手でも5年間は保存しておくのが望ましいです。
中小企業に役立つ補助金・助成金
厚生労働省の助成金は雇用や職場環境に関するものが多く、最近は社員のスキル向上のためのに活用する企業も増えています。
一方、地方自治体で行っているものは年度ごとの実施や取り組み内容が細分化されている傾向があります。
まず常時募集を行っている「採用系」「キャリアアップ促進系」は比較的申請しやすく、種類も多いので一度チェックしてみることをおすすめします。
キャリアアップ助成金(常時募集)
非正規雇用の労働者のキャリアアップを支援する取り組みが対象。
その他の雇用に関する助成金は多数あります。
キャリア形成促進助成金(常時募集)
従業員のスキル・技術向上のための研修などの取り組みが対象。
中小企業を対象に業界別・地域別など多数あります。
また、中小企業向けに「知っておきたい助成金」として下記5つご紹介します。
創業補助金(創業・第二創業促進事業)
産業競争力強化法に基づく認定市区町村での創業のみが対象。
【補助率】2/3
【助成額】200万円まで
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新事業)
革新的な設備投資やサービス開発・試作品の開発が対象。
【補助率】2/3
【助成額】 (1)一般型:1,000万円まで (2)コンパクト型:700万円まで(設備投資を伴わない)
小規模事業者持続化補助金
中小企業の販路開拓等の取り組みを支援。
【補助率】2/3
【助成額】50万円まで
女性若者シニア創業サポート事業(東京都のみ)
創業時の融資を地域のアドバイザーが支援する制度。融資後も5年間の経営サポートあり。
【融資限度額】1,500万円以内(運転資金のみは750万円以内) 利率(年):固定金利1%以内
地域資源活用イノベーション創出助成事業(東京都のみ)
東京の魅力向上や課題解決のために必要な経費が対象。
【補助率】1/2
【助成額】800万円まで(最長2年間)
補助金・助成金の活用事例
どんな業界・企業においても有効に活用しやすいのは、スキルアップなどを目的とした研修や教育費です。
たとえばリーダーや管理職向けの研修から、Webマーケティング、SEO、会計戦略や貿易・通関業務などの業務系研修などさまざま。
中小企業では社内に研修でやセミナーなどができる人がいないことが多いため、助成金をもらって授業員のスキル向上に役立てることはとても有効な使い方です。
また、ものづくり補助金を活用する企業も増えています。
「ものづくり」というと製造業を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、製造業に限らずITやサービス業などあらゆる事業に対象を拡大しています。
ここではいわゆる製造業以外の業界・事業で活用された例をいくつかご紹介します。
(2015年度、事業系公的助成金事例)
業種:旅行業 新たなツアー商品企画
■既存事業:国内向けツアー企画
■資本金:1500万円
■従業員数:7名
■活用した支援制度:ものづくり補助金(620万円)
業種:通信業 新製品開発
■既存事業:防犯カメラ販売・設置・保守
■資本金:450万円
■従業員数:19名
■活用した支援制度:経営革新計画、ものづくり補助金(680万円)
業種:サービス業 クリーンエネルギーのコンサルティング
■既存事業:クリーンエネルギーのコンサルティング
■資本金:2,000万円
■従業員数:27名
■活用した支援制度:ものづくり・商業・サービス革新補助金(1500万円)
まとめ
補助金・助成金の最大のメリットは、融資とは違って返済する必要が無いこと。
中小企業にとっては創業時や新しい事業のスタートの際に非常に役立つ存在でもあります。
でも、そんな大きなことではなくても、たとえば社員のスキルアップやアルバイト・パート社員のキャリア支援など「人」に関する活動にも役立てられることがわかりました。
助成金の財源は主に雇用保険料なので、「国が会社と従業員に還元しているもの」と考えると大いに活用する意義があると思います。
一般的に積極的な公表や情報発信をしていないため、自ら行政や自治体などのサイトにアクセスしてどんな助成金・補助金があるのか情報収集をしてみてはいかがでしょうか。
「やりたい事業がある」「社内で解決したい課題がある」という場合は、積極的に助成金を利用していきましょう。