年末調整 所得金額とは


年末が近づくと、多くの企業で年末調整の手続きが始まります。その際、従業員や人事担当者を最も悩ませるのが「所得金額」の計算と記入です。

 

特に2026年(令和8年分)の年末調整からは、税制改正によって給与所得控除の金額や扶養の基準(いわゆる123万円の壁から136万円の壁への変更)などが大きく変更されました。

 

本記事では、年末調整の対象となる「給与所得の金額」の正しい定義から、2026年最新ルールの計算方法、収入との違い、従業員からよくある質問への人事の回答例までを分かりやすく解説します。

 

【1】年末調整の「所得金額」とは?収入・手取り・課税所得との違い

年末調整の書類を正しく記入してもらうためには、まず従業員に用語の違いを正確に理解してもらう必要があります。

 

日常的に使われる「収入(年収)」「手取り」や、基礎控除申告書で重要になる「合計所得金額」、最終的な税金計算のベースとなる「課税所得」との違いを以下の表で整理しました。

 

用語

意味と計算の考え方

収入金額(額面)

会社から支給される総額(基本給+各種手当+賞与など、税金等が引かれる前)

所得金額(給与所得)

収入金額から「必要経費(給与所得控除)」を差し引いた額

合計所得金額

給与所得の金額に、副業などの「その他の所得(雑所得や不動産所得など)」を足した額

課税所得

所得金額から「各種所得控除(基礎控除や生命保険料控除など)」を引いた、税率をかけるベースとなる額

手取り

収入金額から「税金や社会保険料」が引かれ、実際に口座に振り込まれる額

 

1-1. 「収入金額」と「所得金額」の違いは経費の有無

「収入金額(年収)」とは、税金や社会保険料が差し引かれる前の「額面金額」のことです。

 

一方の「所得金額(給与所得の金額)」は、この収入金額から「必要経費」を差し引いた後の金額です。会社員やパートなどの給与所得者は、国があらかじめ定めたみなし経費である「給与所得控除」を収入から差し引いて所得金額を算出します。

 

従業員が年末調整の書類に「収入」をそのまま「所得」として記入してしまうミスが非常に多いため、人事からアナウンスをおこなう際は注意喚起が必要です。

 

【2】年末調整の所得金額の計算方法

2026年12月の年末調整からは、改正後の新しいルールを用いて計算します。

給与所得者の所得金額を計算するプロセスは、以下の3つのステップに分かれます。

 

2-1. STEP1:その年中に支払うことが確定した収入金額を把握する

まずは、その年の1月1日から12月31日までに支払うことが確定した給与や賞与の合計額(収入金額)を算出します。

 

年末調整の書類を用意する段階では、12月やその年の最後の給与等が未確定である場合もあるため、その場合は最終分まで含めた「見積額」で計算しておこないます。

 

なお、非課税となる通勤手当などは収入金額に含めません。非課税限度額は通勤手段(公共交通機関やマイカー等)や距離によって細かく異なるため、必ず最新の国税庁情報を確認してください。

 

2-2. STEP2:収入金額から「給与所得控除額」を差し引く

算出した収入金額に応じて、国が定めた「給与所得控除額」を差し引きます。

※以下の表は、2026年(令和8年分)以降に適用される最新の給与所得控除の速算表です。最低保障額が従来の55万円から「74万円」に引き上げられています。

 

収入金額(給与収入)

令和8年分からの給与所得控除額

2,200,000円以下

740,000円

2,200,000円超~3,600,000円以下

収入金額 × 30% + 80,000円

3,600,000円超~6,600,000円以下

収入金額 × 20% + 440,000円

6,600,000円超~8,500,000円以下

収入金額 × 10% + 1,100,000円

8,500,000円超

1,950,000円(上限)

 

この給与所得控除を収入金額から引いたものが、基本的な「給与所得の金額」になります。

 

なお、給与収入が660万円未満の場合、年末調整では国税庁の「令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を用いて、給与所得の金額を求めます。

 

2-3. STEP3:対象者は「所得金額調整控除」を差し引く

給与収入が850万円を超える一定の給与所得者のうち、子育てや介護をおこなう世帯の税負担を軽減するための制度です。

 

本人が特別障害者である、あるいは23歳未満の扶養親族や特別障害者の同一生計配偶者・扶養親族がいる場合、以下の計算式で求めた額をさらに差し引くことができます。

 

所得金額調整控除額 = (給与等の収入金額※上限1,000万円 - 850万円)× 10%

 

【3】年収別の所得金額シミュレーション

従業員の働き方や年収帯によって具体的な所得金額はどのように変わるのか、最新の速算表を用いた代表的なケースでシミュレーションをおこないます。

 

3-1. ケース1:年収136万円(パート・アルバイト)の場合

2026年の税制改正で新しい扶養の壁となる年収です。給与収入が220万円以下のため、控除額は「74万円」となります。

 

136万円(収入) - 74万円(控除額) = 所得金額 62万円

 

3-2. ケース2:年収200万円の場合

同じく給与収入が220万円以下の区分に該当するため、控除額は「74万円」です。

 

200万円(収入) - 74万円(控除額) = 所得金額 126万円

 

3-3. ケース3:年収500万円(一般的な会社員)の場合

1年間の給与収入(賞与含む)が500万円の場合を計算します。

 

年収500万円は「360万円超〜660万円以下」の区分に該当。

給与所得控除額 = 500万円 × 20% + 44万円 = 144万円

所得金額 = 500万円(収入) - 144万円(控除) = 356万円

 

【4】最新の基礎控除申告書への「所得金額」の書き方

2026年分の年末調整から、申告書の名称は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」へと変更されています。

 

この書類へ記入する際のポイントを解説します。

 

4-1. 本人の「収入金額」と「所得金額」欄

「収入金額(見積額)」には、非課税の通勤手当等を除外した給与・賞与の合計額を記入させます。

その右隣の「所得金額(見積額)」には、必ず裏面などの手引きにある「令和8年分の計算表」を用いて計算した後の数値を記入するよう徹底します。

 

4-2. 配偶者・扶養親族の所得金額(※要注意ポイント)

控除を受けるためには、配偶者や扶養親族の所得金額も記入する必要があります。

 

ここで最も多いミスが、「パートやアルバイトの年収(収入)をそのまま所得欄に書いてしまう」ことです。

人事からは、「たとえば年収136万円の場合は、控除額74万円を引いた『62万円』と計算して記入してください」と具体例を添えて案内してください。

 

【5】2026年の変更点「136万円の壁」と扶養の基準

2026年分から、扶養親族や同一生計配偶者に関する所得要件が従来の「58万円以下」から「62万円以下」へと引き上げられました。

 

これにともない、給与収入のみの場合の目安となる「壁」も大きく変化しています。

 

5-1. 新しい目安は「給与収入136万円以下」

給与所得控除の最低保障額が74万円となったため、「136万円(収入) - 74万円(控除) = 62万円(所得)」となります。

 

つまり、配偶者や大学生の子どもがパート・アルバイトをしていても、年間の給与収入が136万円以下であれば、所得金額が62万円以下となり、扶養控除等の要件を満たします。

 

5-2. 特定親族特別控除との関係

大学生年代のお子様などがいる場合は、新しい「特定親族特別控除」の対象となるかどうかの確認も必要です。

 

これらの控除では「合計所得金額」が重要な判定基準となります。

特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の特定親族の合計所得金額が62万円を超え、123万円以下の場合に対象となります。

 

給与収入だけの場合は、136万円を超えて197万円以下が目安です。

 

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【6】副業や年金など「給与以外の所得」がある場合の計算

従業員の中には、本業の給与以外にも収入を得ているケースがあります。

その場合の「合計所得金額」の考え方を解説します。

 

6-1. 副業(雑所得・事業所得など)がある場合

給与所得以外の所得(副業による事業所得や雑所得、不動産所得など)がある場合は、「給与所得以外の所得の合計額」欄にその見積額を記載します。

 

そして、「給与所得の金額」と「その他の所得」を合算した数値を、「本年中の合計所得金額の見積額」欄に記入します。

 

※副業などの所得が全くない場合は、空欄(または0)とし、給与所得の数値をそのまま合計所得金額欄へ転記します。

 

6-2. 2カ所以上から給与を受け取っている場合

複数の会社でアルバイトをするなど給与を2カ所以上から受け取っている場合、年末調整は「主たる給与」を支払っている1社(本業)でのみおこないます。

 

もう一方の給与も含めて精算するためには、従業員自身で確定申告をおこなう必要があります。

 

【7】年末調整に関する従業員からよくある質問

年末調整の時期に、従業員から人事・労務担当者へ寄せられることが多い質問とその回答例をまとめました。

 

【Q】源泉徴収票のどこを見れば自分の所得金額がわかりますか?

【人事の回答例】

源泉徴収票の「支払金額」が税金等が引かれる前の「収入金額(年収)」を指します。

そのすぐ右隣にある「給与所得控除後の金額(調整控除後)」という欄が「所得金額」に該当します。過去の所得を確認する際はこちらをご覧ください。

 

【Q】年の途中で転職してきた場合、所得金額はどう計算しますか?

【人事の回答例】

前職の給与と現在の会社の給与を合算して計算します。

年末調整をおこなうために、前職の会社から発行された「給与所得の源泉徴収票(原本)」をご提出ください。
人事にて前職と現在の支払金額を合算し、正確な所得金額を計算します。

 

【Q】会社で年末調整をしても、自分で確定申告が必要になるのはどんな場合ですか?

【人事の回答例】

以下のような条件に該当する方は、ご自身で確定申告をおこなう必要があります。

 

・1年間の給与収入が2,000万円を超える場合

・給与所得や退職所得以外の「所得(副業など)」が年間20万円を超える場合

・医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税等のワンストップ特例不適用時)、雑損控除を受ける場合

・住宅ローン控除を初めて適用する年である場合(※原則として初年度は確定申告が必要です)

 

【8】まとめ

年末調整における「所得金額」は、手取り額や総支給額とは異なる税金計算上の概念であり、従業員に正しく理解してもらうことがスムーズな手続きの鍵となります。

 

特に2026年(令和8年分)からは、給与所得控除や扶養親族の所得要件(136万円の壁)が大きく変更されているため、人事担当者からの丁寧な事前アナウンスが欠かせません。

 

従業員に対して最新の計算ルールや「収入と所得の違い」を具体例を交えて案内し、雇用形態に応じた正しい申告を促すことで、記入ミスや差し戻しのない効率的な年末調整業務を実現しましょう。

 

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